2022年7月1日、新潟県と群馬県にまたがる日帰り最難関の百名山と呼ばれる平ヶ岳を歩いてきました。
標高は2,141mで、山頂部に広大な湿原を有するが……登山口までのアクセスがめちゃくちゃしんどいという山です。
平ヶ岳を登るということですが、美しく登ることを考えますと麓の宿で一泊し、プリンスルートを利用した縦走になるのですが、多くの登山者は鷹ノ巣登山口からのピストンになるのではないでしょうか。
そのコースタイムは往復で約12時間、一般登山道の往復計算で12時間なので確かに長い、谷川主稜縦走や幌尻岳といった鬼ハードなコースと肩を並べるような厳しさがあります。
そのコースの構成は前半が激登り、中盤からは緩やかに平たんな道を交えてゆっくりと標高を上げていきます。山頂部の湿原は丘陵地帯のような場所で木道階段を利用した移動が続きます。
前半の激登りを超えて稜線に立てば気持ちのいい景色が続くので幾分か気は晴れますが、登山時間7時間を越えた付近から感じる緑の牢獄感が登山者の精神を蝕むことでしょう。
非常にコースタイムが長い山なので、水は大目に持っていたほうが良いです。夏場は3リットルあると安全です。
水の補給が可能なのは実質的に山頂部の水場だけです。途中の水場はあまり期待ができないので注意してください。
そして……、7月1日といえども今の夏はかなり蒸し暑くなりました。
標高2,141mが最高峰である平ヶ岳、道中は日を遮るものも少なく、灼熱の日光と湿気で体力を奪われることでしょう、というわけで熱中症対策は万全に。

日帰り最難関平ヶ岳をついに歩く、つかみ取ったと思った万全の天候コンディションだが……その空の下では灼熱の戦いが始まるのでした。
平ヶ岳、鷹ノ巣ピストン日帰り登山の概要



Redsugar的には11時間の登山はそんなに少ないわけじゃないんだけど、平ヶ岳はその日の天候的に快晴過ぎて逆につらい11時間となってしまった。
尾瀬の先の平ヶ岳、地獄の始まり






2022年7月1日午前4時50分、平ヶ岳登山口。
おはようございます、限界Redsugarです!!!夜通し運転してきたからもうテンションがめちゃくちゃです!
クッソ暑い2022年7月!!朝だってのに全然涼しくない!ジメジメ!ここは本当に日本の秘境平ヶ岳の登山口か!?
というような状況で迎えます百名山日帰り最難関「平ヶ岳」です。
平ヶ岳よりもコースタイムが長い山々を歩いてきたRedsugarですが、夏の2,000m級の稜線の恐ろしさを加味すると全く気が抜けません。



ネットに上がっているどのレポートでも言われていますが、この登山口は車で来るのがそもそもつらい。
公共交通機関の新幹線バス船利用の漫遊アクセスで楽しむのが一番いい方法なんだと思う。自走に関しては私から言わせていただいても「御池から先がマジで長く感じた」です。


平ヶ岳登山口には結構は車が、毎回思うんだけど意外にSUVって少なかったりするよなーと思う。
自走で登山をしているとSUVが欲しくなることが多いのだが、登山口でじっくりと観察してみると地元のおじいちゃんは軽自動車だし、お父さんっぽい人はミニバンだし。
登山口までダートが続くっていうところもそんなに多くないから、登山=SUVじゃなくても全然いいと思う。



私は車中泊しやすい車の中でも本当に段差のないフルフラットが実現できる車種が好き。






午前5時5分、平ヶ岳登山開始。
じめッとした空気が流れつつもまだ涼しい平ヶ岳登山口へ吸い込まれるように入山。
聞いてたように最初は中々の登りだったのですが……、歩いていくうちに「思ったよりもだいぶ登る」ことがわかってくる。しかも、思ったよりもだいぶ早く日差しが差し込んできたのだ!


平ヶ岳の恐ろしい所はすぐに尾根に上がってしまうところにある。秋であれば最初からいい景色が見れるんでしょうけど、夏は早朝から日差しを背負うことになる。



7月1日はもうすでに暑い、梅雨じゃなくて真夏だこれ。
じめっとした空気だったが日差しが差し込むことで一気に気温が上がり始めてしまった。


まだ気温が上がり切らないうちにどこまで進めるかが体力を温存するのに大事だと思うのですが、台倉山までは厳しい道が続くんだなというのが平ヶ岳の印象。秋口登った勢は涼しかったこともあり、最初の登りの印象が薄いのかもしれないが、夏登った身としてはこの登山口から台倉山までの道のりがきついのなんの……。


思ったよりも急な登りが続く、平ヶ岳の名前の通り平らな場所はいったいいつになったら現れるんだ!?という疑問を抱きながらとにかく登るしかない。写真のような場所に躍り出ると……とにかく暑くて汗が噴き出てくる。
台倉山、灼熱の稜線漫歩


下台倉山を目指してまずは尾根道を登る、登山口から急坂を登り続けるとすぐに眺望が開けるのですが……そこから見える景色がまぁ割と絶望的。秋はきれいなんだろう、秋は。
盛夏直前の7月1日ともなると青々と茂った森が目の前に広がるのみ、そして延々と続く尾根道に結構な絶望感を抱く。


夏場は湿度も高く空気がかすんでいることもあります、隣の尾根を見ると差し込む日差しが優しくエモい景色が広がっていることがありますが、そんなもんに癒されるような余裕はあまりなかったのは事実。



水がみるみるうちに減っていくの、怖かったよねぇ……


尾根に上がるとすぐに表れるのが燧ヶ岳。尾瀬の盟主はどこから見てもわかりやすい。






下台倉山、上台倉山と目指して歩き続けるのですが、傾斜が緩やかになりつつもずーっと上り続けるという厳しい道をたどっていきます。マラソンコースとかで緩やかな傾斜が数キロ続くようなコースとかあるじゃん?ああいうの辛いじゃん?平ヶ岳も同じつらさがあるじゃん?



ダメージ床みたいな感じで疲労がゆっくりと蓄積していく平ヶ岳、手ごわい。


見回すと笹で包まれた山肌から巨大な露岩が顔を見せる景色が意外に多いことがわかる。意外に厳ついんだこの辺の景色。


遠くに見える燧ヶ岳を眺めながら登る。平ヶ岳がすごいのは周りが全部山、街が全く見えない。最寄りが檜枝岐村だから当然なんだけど……、山の上から街や海が見えない、山しか見えないっていうのは日本だと貴重だと思う、平ヶ岳はそんな景色が見られる貴重な一座。






午前7時00分、下台倉山。
指導標が傾いた下台倉山に到着するまで登山口から約2時間、すでに結構上った満足感が体に満ち満ちている。
そして、下台倉山からこの平ヶ岳の恐ろしい道が始まる……!
登っているほうが山頂に近づいていて気持ちが楽になる、という心理があるのだというのに気が付いてしまった。
だって下台倉山から先ってちょっと下ったり平坦な道がかなり長く続くんだもん……。


木道が続いて歩きやすいんだが、長い、ひたすら長い、台倉清水までは微妙な登りか微妙なくだりを繰り返して歩いていく。ここはラジオでもないとメンタルがつらくなってしまう。


午前7時55分、台倉清水。
下台倉山から1時間程度で台倉清水に到着しましたが、指導標は無残な姿をさらしています。
野生動物の手によるのか、雪の重みでこうなってしまったのか……。周囲を見回してみるんだけど水場なんてない。



水たまりみたいな感じのよどんだ水場はあったんだけど……、とてもじゃないけど飲む気にはなれなかった。






台倉清水から先は背の高い笹や高層の木々に覆われた登山道を進むことになる。雪の影響で立ち枯れしてしまった木々を眺めながら進む。新潟エリアに多いタイプの光景が広がる登山道だよなぁと思いをはせるが、歩いていてそんなに楽しいもんじゃない。


新緑が空に手を伸ばす中、立ち枯れの木々が道しるべのようにぽつぽつと現れる。
台倉清水からしばらくはコメツガの原生林が続くので展望が悪い道を1時間程度歩くことになってしまう。


コメツガの原生林が終わりを迎えると池ノ岳へと向かう尾根道が見えてくる。笹に覆われた眺望のいい山肌が最後の登りだと期待するが……、平ヶ岳は山頂が広大なため最後まで緩やかな登りが続くことをこの時のRedsugarは知らないのだ。



登りはここで終わりだと思ってたんだよ俺……。


池ノ岳手前でようやく開けた景色が現れる。新緑の葉を纏ったダケカンバが笹の草原の中にぽつぽつ現れる開放感あふれる稜線に出た。


先行する登山者もここまで眺望がない修行のような道を歩き続けていたこともあり、ここでは速度を緩めてあたりの景色を楽しんでいましたね。


牧歌的で素晴らしい景色が広がっているんだけど、前に目を向けるとご覧のような登り道がずーーーッと続く。
この登りはいったいどこまで続くの?と問いかけたくなる。真綿で首を締めるような時間が続くのが平ヶ岳よ。



持久戦に持ち込まれるのが平ヶ岳、マラソンとかでメンタル鍛えておくと楽しめると思う。記事ではつらいつらい書いてるけど登っているときは楽しく登れていたとは思う。下山までは。


至仏山が遠くに見える。手前に池ノ岳の一部と思われる優しい弧を描いた稜線が見える。
これがまためちゃくちゃ大きいので、今歩いているところからあそこまで行くのか??と気が付くとなかなか気がひけてしまう。


振り返れば素晴らしい景色が広がっている、山しかねぇ!!!
これは個人的には絶景かなぁ……、街が一切見えないっていうのはやっぱり良い。文明から本当に離れた所というか、自然の腹の中だなと思えていいなーと思う。


前を向くと山頂に向かってクジラのような雲が流れていく。季節は夏……正午にもなれば空は雲で覆われてしまう。
経験上、雲が広がり始める時間帯である午前11時くらいまでに山頂にたどり着きたいという気持ちが強く、気持ちは前に前にと進んでいく。身体は思ったよりも進まないんだけどね。



時計に目を落とすと午前10時が近い。平ヶ岳はここから先の山頂も広大と聞く……。1時間で山頂を回れるはずがないから焦っちゃうんだよね。
平ヶ岳、広大な湿原を渡り歩く


午前9時55分、池ノ岳。
出発から約5時間で山頂の入り口池ノ岳到着。
平ヶ岳山頂部分は広大な湿原が広がり最高にご機嫌な景色が広がっている。
確かにこの光景は素晴らしいものがある。ただ……登山口から5時間で山頂入り口はやっぱり遠いよ!!



広大すぎる故に恐ろしいのが平ヶ岳山頂部分の周回。思いのほか時間がかかるということだ。山頂と池ノ岳往復すると普通に1時間くらいかかるし、玉子石の往復も30分程度はかかる。
山頂部にもアップダウンがあるから、歩くのも一苦労なのが平ヶ岳。


池ノ岳はその名前の通り大きな池塘が点々した湿原が広がる風光明媚な場所。平ヶ岳の山頂はここから一山先の丘陵地帯のような場所にある。


玉子石方面と山頂の分岐がこの地点。山頂は目の前のこんもりとした丘の向こうにある。これを見たときに「まだ一山あるのか……」と思ってしまうのは仕方がない。大した登りじゃないんだけど……長い、長いぞ平ヶ岳。
そして山頂に登った後、ここまで戻ってきて玉子石方面に行かないといけないのだ。


草原地帯にぽっかりと開いた池塘、異世界へ向かう入り口みたいになっている。
池塘が点々とする湿原歩きは心が癒される、岩稜帯のような気を遣う感じが無いからのんびり歩けるのが好き。


山頂へは木道と階段を交互に繰り返して徐々に標高を上げていく。ずいぶんと大回りしながら山頂へ向かうんだなと思うような道で、中々じらせてくれる。






7月の平ヶ岳山頂部はワタスゲとチングルマが大盛況なんですが、チングルマのサイズはそんなに大きくない。
平ヶ岳は広大な高層湿原を持ちながらも花の山という印象はそこまで強くないなというのが感想。
お花と湿原なら会津駒ヶ岳のほうが色々な意味で良いと思える。



広大な山頂部を振り返ったときの独特な高揚感と満足感は平ヶ岳特有ではある。


もりもり咲くチングルマ、山頂の湿原が近づくにつれて花の勢いは増してくる。


7月頭ということで湿原もまだ最盛期ではないのでしょう、枯れ草と花が入り乱れる山頂湿原の木道をゆっくりと歩いていく。山頂部は……まだ見えないのよね。






午前10時30分、平ヶ岳山頂。
池ノ岳から歩いて35分の場所に平ヶ岳がありました。休憩もせずに黙々と歩いたんだけどな……やっぱり結構距離が長いので時間がかかりました。平ヶ岳の山頂は皆さんご存じの通り展望なしです。
その手前の木道のテラスや、山頂からもう少し進んだ木道終点が展望スポットになるので、そこで休憩するのがいいでしょう。






三角点に挨拶したら山頂より先の木道終点を目指します。平ヶ岳の真の山頂はこの湿原にあると言っていい。
積雪を測る気象計測用アンテナがあるところあたりが一番眺望がいいのでそこで休憩。
湿原地帯はハクサンコザクラが群生していて紫色のじゅうたんが一部広がっていてとてもきれい。
そして何より、本当に山の上かと思えるような草原地帯が視界の先にずーっと広がるのが平ヶ岳。


木道終点までやってきました、長かった平ヶ岳ヘヴンズロードもここで終わりです。
稜線の草原地帯は開放感がすごい。



そらが……空が広い!!


平ヶ岳からは越後駒ヶ岳や中ノ岳といった越後三山方がよく見えます、やはりすごい積雪量なのか向こうはかなり雪が残っている景色です。越後三山の中でも中ノ岳から丹後山の稜線はめちゃくちゃ楽しそうなのでぜひ歩いてみたい。



裏越後三山の縦走やってみてぇ……。


尾瀬方面と比較すると越後三山方面の雪の多さを実感できる。そして平ヶ岳山頂の広すぎる草原地帯も堪能できます。



目の前には至仏山、その奥に上州武尊山が見えますね。向こうは青々としている。






午前11時10分、山頂出発。
誰もやってこない木道終点に座り込んでちょっと補給、早朝5時から歩き続けてようやく到着した平ヶ岳山頂でかみしめる軽食。ここで食べておいたから下山の体力がギリギリ持った、7月の平ヶ岳は本当に暑かった……。
玉子石、下山も圧倒的に厳しい山




山頂の後は玉子石を見てから降るのが平ヶ岳登山の常道になるかと思いますが、山頂から玉子石までも結構長い。
まずは分岐まで戻るんだけど、そこまでは下り一辺倒だから快適に歩くことが出来る。






分岐に到着したら水場に向かいます。山頂に水場があるってどういうことなの??と思いますが、平ヶ岳は山頂部が丘陵地帯になっていて、その一番低い所に雪解け水が作り出す川が流れているような状況になっています。
水場には緊急避難の人が使えるような木のテラスがあったり至れり尽くせりな感じ。
7月最初で雪渓が残っているくらい雪が豊富ということもあり、清流がジャバジャバと流れている水場。



平ヶ岳沢源流の美味しいお水をがっつりと飲んだら玉子石に向かいます。


水場のすぐそばに巨大な雪渓。玉子石に行くためにはこれを登る必要があります。気温も高く雪の状態も良く、柔らかいトレランシューズでも登ることが出来たのが幸い。



斜度が結構すごかった思い出。


雪渓を登り切ると玉子石へと向かう木道に合流。プリンスルートとの合流地点が画面右側にあります。


午前11時50分、玉子石。
雪渓を登り切ってからちょっとしたアップダウンを乗り切ると玉子石に到着します。山頂からけっこう遠かったよ……片道40分くらい、平ヶ岳の山頂はマジで広い。


玉子石ってどうなってるの?と、いろんなレポートを見る中で不思議に思うことがあったんだけど、実際にたどり着いてみて観察してみて謎が解けた。これは2つの岩に見えるけど、つながっているようです。
下の岩に別の丸い岩が乗っているのかと思ってしまうような見た目の玉子石、実物を見てみると「はぇ~、これすげぇな……」と感心してしまった。



ネット上のレポートを見ていると結構叩いたり押したりするものを見かけるので、多分そのうち本当に転がってくんじゃないだろうかと心配になる。


玉子石から先にも山頂の一部となる湿原が広がっている、道はないので降りることはできないけど。
目の前の湿原の向こう側は深い谷間となっていて中ノ岐川へとつながり、奥只見湖へと注がれるようです。


午後12時00分、下山開始。
玉子石を後にしたら全力で下山開始です、鷹ノ巣コースはとにかく体力が求められるピストンコース。
池ノ岳まで戻り一呼吸置いたら一気に下山へと移りました。というのも下山で4時間くらいかかるため、正午出発だとしても下山が16時、日帰り登山としては遅めの下山になってしまいます。



下山時の景色も素晴らしい、あたり一面山しかない景色。そして燧ヶ岳がよく目立つのが最高、数歩進むたびに眺めたくなってしまう。


池ノ岳から少し進んだ笹の草原が広がる尾根道の眺望は素晴らしい。緑に覆われた山の向こうにとても目立つ形の燧ヶ岳が座っていて、目の前の登山道を歩く人がいれば言葉にならない感傷的な景色が完成する。


山深いなぁと周囲の山々を眺めながら進むが、本当に山深いところに来てるんだよ。
燧ヶ岳から少し東側に目をそらすと、横一線の稜線を持つ山……会津駒ヶ岳から窓明山の稜線が見える。


午後1時35分、台倉清水。
池ノ岳からコースタイムで2時間かかるところを30分近く巻いて到着することができました。というのも池ノ岳からこの台倉清水までは比較的下り一辺倒で歩けるから。
問題はこの先の台倉山から下台倉山の区間で、アップダウンと日光を避けることができない道が続くため、体力を消費している身体に一気にダメージが現れます。



ここまではよかった、本当にここまでは……。


台倉清水から少し上り返して眺望のいい台倉山へ、ここから先がアップダウンなんだよねぇ……。




台倉清水から少し歩いて台倉山まで来ると燧ヶ岳の素晴らしい景色を再び拝むことができる。
大気が不安定な梅雨時だというのにこの日の天候は素晴らしく、燧ヶ岳山頂が雲に包まれる様子は一度もなかった。
つまり、灼熱。






台倉山から先、下台倉山までの移動で一気に身体の動きが鈍ってきた。シャリバテしてきたんだというのがわかるため行動食やアミノバイタルを口に含むがなかなか回復しない。それもそのはずでギンギンの日光が照りつける尾根道の気温は25度は全然超えてる。体感30度くらいはあるし湿度も結構高くて……汗が出続けるので体力がかなり削られている。



斜面を一気に横切る登り返しとかを見るたびに「まじかよ……、またか」という気持ちにさせられる。さすが平ヶ岳、一筋縄ではいかない。


立ち止まって燧ヶ岳を眺めて、そして再び歩き出す。もう下山だからさ、下山だから曇って涼しくなってもいいんだよ!?ここまで暑くなくてもいいんだよ!?と思っても、カンカン照りは止まらない。


やっとのことで下台倉山を乗り越えて急坂の下りへ。登山口目指して降りていくんだけど汗を絞られ切った身体で踏ん張りながら急な坂を下っていくんだけど、これがまた体力をがりがり削っていく。
道中写真のような倒木の間をすり抜けるような面倒な場所もあるので大変だ。


長い長い下り坂。下れば下るほど気温が高くなってきている、そしてこの写真くらいの場所でついにその時が来た。
「だ、だめだぁ~~!」
登山してて2回目くらい、歩いてられなくて膝から崩れ落ちてその場に座り込んでしまった。
残していた500mlくらいの水を全部飲みながら、胡座をかいて5分ほど景色を眺めて回復するのを待つことに。



登山をしているとき山頂以外で休憩を取ることがほとんどないのだが、この平ヶ岳はたまらず腰を下ろしてしまった。それくらいこの日の太陽は強かった。


「あと30分くらいかな……頑張って降りよう」
ゆっくりと立ち上がると目の前に道しるべのような松の木がお別れを言っているような感じで立っていた。
下山しながら「あー、飯豊山歩き通して丸森尾根下山したとき同じように身体しびれてきたよな……」とか「マラソンの後半でこんな感じでしびれるときあるけどやっぱりこれ良くないよなぁ」といったことを考えていた。



そう、手先が痺れるってことは水分と塩分が足りてなかった。
最初に思っていたよりも暑くて、水と塩をすごいたくさん消費したということ。




何とか坂を降りきって下山、鷹ノ巣の登山口近くにある下台倉沢に降りてきたらたまらず腰かけて沢の水を汲んでいた。清四朗小屋でドリンクを購入するまで、とてもじゃないけど待ちきれなかったよね。



沢の下流にはなるから、気になる人は浄水器などを必ず使おうね。






午後4時10分、登山口駐車場到着。
池ノ岳から4時間はかかると見込んでいた下山路、本当に見込み通りの時間で下山できた。
普段から写真撮影の都合でもう少し遅くなるもんだけど、平ヶ岳は歩くのに必死だったから目論見通りの時間で歩けたらしい、危機感が及ぼす底力に関心。
下山後は清四朗小屋に移動して登山バッチを買おうとしたんだけど、なんと7月初頭は登山バッチが入荷していなくて購入できませんでした!!(その翌年燧ヶ岳御池入山をやった際に買いに行った)
悔しいなと思いながらも、越後駒ヶ岳のバッジを持ってないのに気が付いたRedsugarはそれを購入。
ドリンクはお茶くらいしかないよ、ということでしたがとにかく水分が欲しかったので大歓迎。


とにかく水分を補給したら気を取り直して檜枝岐村へ戻る。驚いたのは日中だと352号線は結構往来があるということ。登山者と釣り人がほとんどだと思うけど、結構すれ違うから注意して運転しないといけない。
檜枝岐村では「燧の湯」へ行ったんだけど、なんとこの日檜枝岐村だけ停電に見舞われていました。
ギリギリ温泉には入れたんだけど……その他のご飯屋さんは全滅でびっくり、村営放送を聞くに東電の職員が送電線の修理に向かっているとか。



隣の窓明温泉まで行けば電気が来ていたので、本当に檜枝岐村だけ停電していたらしい。


「ご飯食べるところを完全に逃した気がする、たじま越えると那須まで何もないから会津地区で何とかしなければ」
何度も尾瀬に自走で来ているとわかるのですが、道の駅たじまから先西那須野インターまでは気軽に入れるお食事屋さんがありません。営業時間的に15時以降も空いているところがないんです。
そんな中、中華料理あいづ亭は19時までやっていることもあり、ボロボロの登山者にとっては駆け込み寺のようなお店なのです。



焼肉定食とタンタンメンでめちゃくちゃ迷った挙句、担々麺大盛りでスープも全部頂きました。登山で失った塩分をしっかりと回収した気がします。
気さくな女将さんと山の話や周辺のお話をして店を出たころにはすっかり夜。
真っ暗な道の中車を走らせ、西那須野インターから東北道でさいたまのお家へと帰還。
こうしてアクセスも長ければ登山コースも激長な平ヶ岳日帰りピストンの一日が終わるのでした。


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