2023年5月2日、山形県は天童市にある里山「雨呼山」を歩いてきました。マイナーな山ですがその登山口である若松寺は有名な縁結び寺、下山は垂水遺跡から一大観光地山寺の立石寺前に至るといった感じで由緒正しい寺院を結ぶ「奥山駆け」と呼ばれるコースになります。
雨呼山自体の標高は903m、山形県にいる人なら聞いたことがある地名であろうジャガラモガラから登るコースなどが整備され、山菜取りの方々も多く歩く地元に愛された山でもあります。
今回はGWの山形県内、東北地方は雪に閉ざされた山がまだまだ多い時期ですが、標高1,000m以下の山であれば夏道が歩ける場所も多いということで雨呼山をチョイス。
さらに、天童市内にある家族の家から歩いていけるんじゃね?ということで「家から登る場合はどういう山に通うことが出来るのか?」という実験もかねて歩いてみました。
関東平野に住んでいると中々こういうことはできませんが、山が近い場所に住んでいる人は「家から歩いて登れる山」を実際に歩いてみると面白いかもですよ。
春の里山は山菜の宝庫じゃったぁ~!!
雨呼山日帰り登山の概要
天童市内から若松寺へ登る
2023年5月2日午前7時35分、お宝中古市場前。
おはようございます、Redsugarでございます。本日は奥さんの実家から歩き始めて山寺を目指すという「家の近くにある山に歩いて登りに行ってみよう」という山歩きをしたいと思います。実家に帰省したのですがマスオさん状態で家に居続けるのもつらいだろうから山に行ってきなよという気遣いをいただけまして……甘えようと思います。
というわけで、地元の方々がオタチューと呼んでいるお宝中古市場前までやってきました。若松寺はこの先にある!
通学路といえば様々なオブジェクトがあり、全国的に滋賀県の飛び出しボーイの浸食が進んでいますが山形県はこいつのイメージです。
げ!!!な、内臓落ちてるぅ!!!
道を歩いていたら何か小動物の内臓が……、キツネとかが食べてたんだろうか?道端にこういうものがポンッと落ちているのも田舎らしくてワイルドだぜぇ。
午前8時45分、若松寺登山口。
お宝中古市場のある交差点を渡り、ひたすら山のほうを目指して段々になった水田地帯を歩き続けると若松寺入り口がやってきます。街から本当に近い所にあるのがビックリ。実は有名な寺ということもあり、若松寺へ向かう道の車通りは意外に多かったりします。
若松寺には参道が実はしっかりと存在しています、車道の脇にある鳥居から登山道を登ってゆくのが正規のコース。鈴立山若松寺というお寺なんだけど鳥居がある神仏習合スタイルなんですねぇ。
以前若松寺へ向かう記事の中でこの参道を詳しく取り上げていますが、廃仏毀釈の傷跡と思わしき地蔵菩薩などを見ることが出来、山と信仰と歴史といったものに触れやすい場所なのかなと思います。
参道を登って本日の登山口が存在する若松寺へ到着。登山口自体はお寺の逆側の駐車場方面にあります。
せっかくなので若松寺の展望台まで歩いてここまで歩いてきた道のりと天童方面の景色をチェック。
画面左側に天童の街が少し見えます。本日は薄曇りで目の前にあるはずの月山が見えません、残念。
若松寺の駐車場入り口にある登山口を少し上ると案内板があります。山寺までは三角山、鶏沢山、雨呼山と3つの山を越えていく必要があるようです。登山口を過ぎるとすぐにヤマツツジの群生がご挨拶だッ!!
若松寺周辺は場所によって開けていて、盆地+山という山形の眺めを堪能できる。
盆地+山は長野の特権ではない、むしろ景色的には山形のほうが美しいと思っている。
山菜と龍神の山はハードコースだった
午前9時50分、三角山。
若松寺を出発して実際は40分くらいで三角山山頂に到着。若松寺の上のほうは結構道があれていて、足元が脆い箇所もあり登るのに難儀しました……。そしてこの辺を歩いていて気が付いたのですが
あれ、この辺周りを見渡すとコシアブラがたくさんあるぞ???地元の人がジャガラモガラ周辺で山菜とっていると聞いていたが、もしかしてこのあたりのことか??
コシアブラ天国の三角山を越えていくと早速出てきました、ジャガラモガラです。
この辺りでコシアブラを採取しながらゆっくり登山を開始、どんどんコースタイムが遅れてゆく……。
ジャガラモガラっていうのは地元の人にとっては姥捨て山とか心霊スポットとかいろいろ言われる場所。実際は岳沢の風穴みたいなもので、窪地上の土地に地面から冷たい風が吹きあがるという場所。植物分布が面白くて底のほうに、標高が下がった場所に高山植物が生える。
天台宗の立石寺、若松寺を結ぶ奥山駆けの中間地点にある場所なので、ジャガラモガラも信仰の場所だったんだろうねぇ。
ジャガラモガラ方面の登山道は整備が行き届いていましたが、雨呼山へ向かう道は相変わらず荒れ気味、ピンテが頼りです。
コース全体を通してアップダウンが結構激しい、鞍部の湿った場所にはこごみがびっしり。もう少し早く来ればこの辺のこごみ採取もできたのかもしれない。
雨呼山の登りに差し掛かるとロープが張られている個所も出現。若松寺から立石寺まで奥山駆けをしていた人々の歩いた道は想像以上に厳しい……。
雨呼山山頂の手前で龍神の池が現れます。名前に対して池といった雰囲気はなく窪地に湿った土が堆積した沼地のような様相。ここが雨呼山の名前の元になった祈祷の場所ということらしい、空模様が曇りということもあるが薄暗い雰囲気は居心地が悪く、怖い気分が襲ってくる場所だったので足早に立ち去ってしまった。
確かに背筋が冷えるような雰囲気がありましたね。実際雨を呼ぶためにこの山の龍神を「怒らせて」雨を降らせていたらしい、挑発系儀式なんだ……。
午後1時15分、雨呼山。
龍神の池を越えると立派な石柱が供えられた雨呼山山頂へ到着します。ここまでの登山道と比較すると立派すぎるような山頂碑。周辺はブナの木が生い茂り新緑カラーで彩られていました。
道中山菜を探しながら牛歩で歩いてきたからずいぶんと時間がかかってしまいました。
雨呼山からは垂水遺跡に下るだけですが、その道中にもコシアブラの木があるので少し分けていただきながら下山。
こっちのほうは虎ロープもピンテもかなり量が多くて整備されている、やっぱり山寺パワーなのか。
尾根を歩き続けるコース故に途中展望が開ける場所も。雨呼山から東へと延びる尾根を辿っていけば山形と宮城を隔てる二口山塊の姿が。手軽に登れて眺望の良い面白山、美しいブナ林と二口渓谷を有する大東岳と名のある山が待ち構えています。
大東岳にめちゃくちゃ登りたいんだよなぁ……、面白山から見た大東岳の素晴らしさが忘れられない。
垂水遺跡、人外の気配を感じる驚異の場
垂水遺跡に近づいてくると杉林が現れるんだけど、関東の杉林とはちょっと様相が違う。寺社仏閣周辺の杉林特有の雰囲気があり、木々は茶色く色づき幹は太い。足元にはざらざらとした凝灰岩の石が増えてきた。
コース上に立てかけられた案内板も最後、垂水遺跡にたどり着けば山寺はすぐそこです。
午後2時10分、垂水遺跡。
山寺には何度も訪れていましたが、その隣にある垂水遺跡に来たのは初めてだったのですがギョッとしました。ハチの巣状に穴が開いた岩場の異形、龍神の池と同じく背筋にゾゾゾと寒気が走るような遺跡がそこにはあったのです。
山中とは一変し湿度を保ちひんやりとした空気が体にまとわりつきます。
円仁が立石寺を東北の拠点と定めた理由の一つがこの垂水遺跡といわれているが、確かにここは聖地としての格がある……、すごい場所だ。
これは人が彫ったのだろうか?天然なんだろうか?気が付けば壁に菩薩のようなシルエット、そしてハチの巣状にボコボコと穴が開いた石壁。スピリチュアルとは無縁なRedsugarですが、垂水遺跡の持つ異様な雰囲気に圧倒されてしまいました。山寺観光で訪れるべきは立石寺ではなくこちらの垂水遺跡では?
むき出し神秘がこの場所には横たわっている、怖ろしいと思える空気にぜひ触れてほしい。
垂水遺跡の観光写真でも使われる社は遺跡中央付近にありますが、厳かな雰囲気に中てられて冷や汗が停まりませんでした。これ以外にもご神木や行場跡等見所は本当にたくさん……。登山とは別で、機会を改めて訪れようと思うのでした。
垂水遺跡の入り口である千住院まで戻ってきました。立石寺は観光客であふれかえっているのにこちらは人影もなく静かな空気が流れています。垂水遺跡も歩いていたのは数人だけ、本当に静かな場所ですが真の山寺ということではこちら側なんだろうなぁ……。
千住院の面白い所は仙山線の線路を渡ると境内という作りです。むき出しの線路がちょっと怖い。
午後2時40分、山寺。
早朝から歩き始めた雨呼山ですが、山菜を取りながら牛歩で歩いていたらずいぶんと下山まで時間がかかってしまいました。GWの山寺は大勢の観光客で賑わっており、その中で登山の格好をした自分は結構どころではなく浮いた感じに……。
奥さんに連絡すると迎えに行くまで時間がかかるから駅で待っとれと。到着までの間は朝ご飯兼昼ごはん兼3時のおやつということで、本場の玉こんにゃく、山寺の美味しいおせんべい、ずんだあんこソフトを頂きます。
山寺に来たらおせんべい結構お勧めだなぁ……、本当においしいのでだまされたと思って食べてみてほしい。
そして、ずんだあんこソフトは鉄板なので絶対に食べるように。
山寺の駅で家族を待つ間、歩いてきた道を振り返ってみると……あのハチの巣状に穴の開いた岩肌と新緑の森、宿坊であったろう宿の織り成す山寺の景色が目を引きました。この景色の向こう側に異界のような山が眠っているなんて……、登山をしてみて本当の山寺の姿の一端を見ることが出来たと思える一日でした。
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