2019年2月3日、栃木県北部にある那須岳に朝焼け山岳写真を撮影しに行ってきました。
今回は山岳写真の定番である朝焼けを冬山で撮影するために僕が歩いた実際の工程などを紹介していきたいと思います。
ちなみに今回の登山、那須岳の茶臼岳に早朝のぼり撮影を行いますが、時間帯的にかなり余裕があったためお隣、朝日岳も一緒に登ります。
つまり登山+山岳写真撮影
冬の那須岳の夜明け、茶臼岳から見る朝日岳は標高2,000m以下でありながら鋭く切れ落ちた尾根道が続く急峻な山岳となります。
火山特有の岩山に朝日がさす景色は劇的な景色が広がり、撮影に対しての満足度はかなりのものとなります。
山の写真をたしなむ僕からすると雪山の朝焼けというのは「撮るのに危険が伴う」というのが簡単にわかるので、いつか撮ってみたいなぁと頭の中で考えながら季刊風景写真などをパラ見していました……が、今回は実際に撮影します。
ということで、山岳写真撮影からそのまま那須岳冬山登山へ。
最も寒い大寒の時期に行く那須岳冬山撮影登山の旅の始まりです。
冬の那須岳撮影登山について
積雪した山のナイトハイクからスタートする山岳写真撮影ですが、当然のごとく危険です。
雪山登山の経験はもちろん強風の中で停滞して撮影をするので十分な装備と体力が必要になります。
自信のない方はくれぐれも真似しないように、冬山の朝焼けはそれは確かに素晴らしい現象なども見れるのですが、ヘッドライト以外の明かりがない中、ノートレースの積雪地帯を進むのはとても危険です。
空が明るくなってくる時間からだんだん山の目覚めといった景色が広がりますが、那須岳の黎明はまるで超高所帯を歩いているような気分になります、岩と雪の世界の非日常感を駐車場から2時間ほどで味わうことが出来るという意味では、那須岳は本当に希少な山です。
冬の那須岳撮影登山の概要
ナイトハイクで登る冬の那須岳
2019年2月3日午前6時20分、那須岳山頂直下。
おはようございます、Redsugarです。今日は未明の那須岳からこんにちは、これまでの登山と一変して急に極寒の山中からお届けしております。
今回は山岳写真において展示会とかで見かける朝焼けの冬山を実際に撮影してみようということで、いろいろ考えて駐車場から2時間から3時間くらいで山頂までたどり着ける那須岳を登ることにしました。
それにしても寒い、那須岳って風の通り道なのでこの日の風速は大体15mくらいあったんじゃないでしょうか、ビュービュー音がしていました。那須岳自体風が強すぎて雪が積もらないので雪煙もあんまり上がらないので視覚的には全然伝わらないですね。
そもそも伝えようと思って撮影する余裕がなかったのが手痛いけど。
さあ、朝焼けまでもう少し……。
2019年2月3日午前2時10分、佐野SA。
さかのぼること出発時。
深夜の東北道を走らせて佐野SAでいつもの朝食をいただきやってきました大丸駐車場、この駐車場はトイレがウォシュレット付きで奇麗で温かいという神トイレ併設の神駐車場です。
冬の那須岳登山は車で行けるのがこの大丸駐車場までとなりまして、山岳写真撮影のためのナイトハイクもこの駐車場から始まります。
大丸駐車場で登山準備をした僕は当時の撮影装備を背負ってノートレースの樹林帯を登ることに、ヘッドライトの光以外頼りになるものがない雪山の中って本当に恐ろしい。
高精度GPSを所持していたのでコースに対して自分が何メートルずれてるかが詳細にわかるから登れるものの…、機械がなければ進むことは普通に無理でしょう。
普段から使われているトレースの上は固いので、灯+GPS+足元の感覚で進んでいきます。
大丸駐車場から樹林帯を抜けるまでが積雪もありかなり厳しかったのですが、ここでようやく稜線に出ました。
驚いたのは樹林帯の終わりのところで寝てる人と出会ったこと、死んでる!?と思ったら山岳部の訓練??みたいな感じで、二人組のお兄ちゃんが寝袋だけでワイワイして寝ていました。
ついに幽霊を見たと勘違いしてしまった
夜でも「こんにちわー」とあいさつすると、向こうも「こんにちわー、頑張ってくださいねー」と返してきてくれたのが今日のほっこりポイント。
那須岳の稜線に上がり小屋を過ぎると本格的な強風吹き荒れるエリアとなります、小屋までは風も穏やかといってよいのですが、ここから先は那須岳が本気を出します。
特に西側斜面は風が強くトレースがすぐに消えて行ってしまいます、あたりを見回しながら登れる場所を確かめて確実に上っていくのですが、ここで時間を取られて少し空が明るくなってきてしまいました。
ウェアがバタバタ言ってうるさいし頬を殴る風は冷たいし四面楚歌じゃんよー
茶臼岳の東側斜面に回り込んだころには空は急速に明るくなっていきます、冬の時期って朝焼けの時間短いんですよね……。
あと十数分と立たないうちに夜が明けてしまうのですが、まだ山頂まではコースタイム的に20分はかかる。
焦る気持ちを抱えたまま、薄暗い雪の斜面を登っていきます。
振り返ると暗闇の中に朝日岳と雪をかぶった那須連山が見える、写真はかなり露出を上げているのですが実際はこれよりもかなり暗い景色の中に山々が浮かび上がります。
正直気味が悪い景色です。
午前6時30分、那須茶臼岳稜線。
茶臼岳山頂に出る最後の登り坂を登り切り、円形に作られた茶臼岳の山頂登山道にやってきました。
ちょうど朝日が昇り始めたのか、空の色は明るくヘッドライトが必要ないくらいに。
そして山頂に上がったことにより強烈な風が身体を叩いてくるのです、那須岳は標高的には2,000m以下で気温もマイナス15度付近と比較的優しい環境ではあるのですが……風が結構きつい。
防寒対策をしていても停滞していたら寒くなりそうです。
那須岳のご来光と朝日の山岳写真
冬の山岳写真ということで事前に調査は済ませていました。撮影対象は朝日岳で撮影のためのスポットはここにしようというのを大体決めていて、その場所は山頂の最も朝日岳側の崖の上。
撮影ポイントに到着すると太平洋の向こうから太陽が顔を出し、那須岳を覆いつくす白い雪が赤と青に彩られていきます。
この日装備していた重量級の三脚にカメラをセットしたらさっそく目標の朝日岳方面にカメラをセット、ここからは時間経過とともに那須茶臼岳から撮影できる朝日の景色を見ていきましょう。
三脚とカメラをセットし、撮影体制を整えながらアツアツのお茶で身体を温めながらあたりを見回すと周辺もまた良い景色が広がっています、朝焼けの雪山はどこを見ても非現実的な世界です。
出来ればこの光の状態で数時間歩き回りたい。
この崖の上風がすごい強い、身体持ってかれるんだけど……
今から目の前にいい景色を出すから耐えるのじゃよ……
本当かな……
想像以上の速度で登りゆく太陽、朝日は目の前の那須連山の景色を目まぐるしく変えていきます。
特に山肌の色……、ピンク色だと思っていたら急にオレンジに染まって、その次は白っぽくなり……。
空の色もそれに合わせて美しい紫色からどんどん青が濃くなっていくのです。
目の前に広がる那須連山の朝焼け、これが冬山の朝焼けかと思わされる景色でした。
その変化の速度は非常に早く30分もしてみれば目の前にはすっかり日が昇った山の景色が広がっていました。
雪と風に包まれた広大な那須岳の鞍部にポツンと建てられた避難小屋を見ていると、人の営みなんて自然の前じゃ小さいものだなぁと実感できます。
命を寄せ付けない冬の山の上で見た景色は美しいというよりは恐怖が勝るものでした。
午前7時15分、那須岳山頂。
すっかり朝日が昇り切ったこともあり、撮影機材をしまい込んだ僕は茶臼岳を一周してから朝日岳に向かうことにしました。
朝日岳側の撮影を行うのにすっかり夢中になっていたのですが、あたりを見回してみると夜風で岩が凍り付いていたり、非常に面白い光景が広がっているではありませんか。
岩の隙間に雪が積もって非常に歩きにくい那須岳の稜線、雪の中に足を埋めながらゆっくりと回っていきます。
那須神社の祠にたどり着いてみると岩に刻まれた文字が雪文字になって浮かび上がっていました。
凍り付いた社、冬っぽさがあってよいですね。
冬の那須朝日岳登山へ
午前7時30分、那須朝日岳に向かうため茶臼岳の下山開始。
朝日から午前の光へと移り変わってゆくタイミング、茶臼岳から下山しようとすると最初の登山者とすれ違います。
挨拶をしてすれ違う人はみんな笑顔、景色が良いので笑っちゃうのもわかります。
冬の那須岳でかなり好きだったのは茶臼岳から避難小屋へと向かうこの道。
目の前に岩の平地が広がってその奥に那須朝日岳がある、登山道が朝日岳に向かって伸びていくように見えるこの場所はかなり好きです。
途中に現れるこの岩の壁も、冬場に見ると別の惑星を歩いているような感覚にさせてくれてとても好きです。
登山はやっぱりこういう冒険してる感を手軽に楽しめるのがいいよなぁ……
小屋が見えてきました、小屋の西側から吹き付ける風は相変わらず強いものの明け方に比べれば幾分かましな状況。
小屋でヘッドライトをしまい装備を登山様に整えたら朝日岳へと向かいます。
さて、この日の朝日岳登山はトラバースを利用するのではなく冬場ルートとされる剣ヶ峰を登ることにしました……が、この剣ヶ峰の登りがちょっと怖かったので、あんまり人にはお勧めできないですね。
ここは明確なルートがあるわけではないので、場所によっては崩れやすくなっていることもあり結構神経を使いました。
急な剣ヶ峰を登りながら振り返ると茶臼岳と避難小屋が奇麗に見えます。
剣ヶ峰の登りは結構苦戦しましたが稜線に出てしまえば快適な道が広がります、何より景色がいい、これには救われました。
午前8時35分、那須岳剣ヶ峰山頂。
剣ヶ峰の山頂部にあるお地蔵さんの前まで来たところで、空腹感に襲われ休憩をとることにしました。
チョコバーを食べながら数分ほどぼーっとしていると下から声が……、何事?と思ったらトラバースルートに道を作ってる強い登山者の方でした。
剣ヶ峰から降りて登山道に合流、トラバースルートを作った方々と軽く挨拶を交わして登山を再開します。
ここから先は基本トレースが残っているというか登山道が明確なので迷うこともないかという状況でした。
ここ数年の小雪と那須岳の風が相まって稜線上の雪が少ないのです、そのため登山道がほぼ露出している状況。
朝日岳直下の鎖場が一部ヒヤッとするような見た目をしていますが、実際に歩いてみると足場がかなりしっかりしていることと、アイゼンがちゃんとグリップするので気持ちよく歩くことができます。
開けた稜線に上がると凍り付いた木々の向こうに朝日岳の山頂が待っていました。
朝日岳山頂へ向かう前に南側の茶臼岳を見るとご覧のような景色が広がっています、浅間山にも似ている景色ですね。
すごいきれいな円錐形の白い火山が目の前に鎮座していました。
この景色見れただけで今日来てよかった……、本当にありがとうございました。
午前9時45分、那須朝日岳山頂。
茶臼岳に登山を開始してから約5時間、朝日岳に到着しました。
エビのしっぽが中々のサイズまで成長していますね、朝日岳の山頂は夜間かなり風が強いのか、雪の形状が冬の安達太良山のようになっていました。
朝日岳山頂は茶臼岳と三本槍岳の中間地点にある山ですが展望がとても良いのが特徴的です、特に茶臼岳方面をこんなにきれいに見れるスポットはここだけです。
茶臼岳からは那須連山の「山々」らしい景色を見ることができますが、成層火山らしい体系の特徴的な山を見るなら朝日岳のほうが良いでしょう。
また、朝日岳から北側は雪深い尾根が続く三本槍方面もよく見えます。
厳冬を惜しむ下山路
午前11時00分、朝日岳下山開始。
茶臼岳での早朝撮影ですっかり満足していた僕でしたが朝日岳の景色がよく普通に長居してしまいました。
山頂でボーっとしてたら崖から人が這いあがってきてびっくりしたけど、クライマールートもあるんですねこの山。
クライマーの方々でにぎわう時間帯になったので下山を開始したのですが、朝日岳からの下山で写真の位置からの下りはちょっと嫌でした、地面が中途半端に露出していて、氷と岩のミックスなので気を付けないとアイゼンをつけていても転びそうです。
太陽が上がり切った那須岳の景色はそれはそれでよいものです、やはり火山は夏でも冬でも美しい。
日が昇る午前、ぐんぐん気温が上昇し道中の雪が解けていくのがわかります。ここ数年の暖冬化には驚かされますが、那須岳に至っては昼になれば地面が露出してしまいます。
帰りはせっかく作ってもらったトラバース道を使うことにしました、剣ヶ峰の最後の下りは急すぎて歩きたくないなという気持ちもあるので……。
トラバース路はすでに踏み固められていて、昇温により若干雪が重さを感じさせるような状態でした。
午前11時45分、那須岳避難小屋。
すっかり正午付近になってしまった那須岳撮影登山、この時間ともなれば多くの登山客が避難小屋で休憩中。
冬山の中ではアクセスがよく、駐車場から山頂までのコースタイムが短いため人気のスポットなんだろうなと思いましたが、その予測は正しくこの日は結構な登山者の方々が那須岳登山を楽しんでいました。
避難小屋まで戻ってきて茶臼岳を見上げると雲が茶臼岳を覆っていきます、角型を利用すれば絵になるかなと思い撮影したりして下山も遊んでみることに、雲が流れるような景色が取れて面白いなという感想。
撮影機材をしまい込んで駐車場を目指して下山していきますが、真夜中に歩いた道ってこんな風になってたんだなぁと再確認。
なんてことはない、一部滑落しそうな場所はあるがしっかりした登山道だったわ。
下山路の注意点は一部地面が露出していて、アイゼンが結構傷みます……、チェーンスパイクが欲しかったです。
午後1時20分、大丸温泉駐車場着。
下山を続けて県営駐車場に着いたとき、「あ、まだ下るんだ……」という切ない気持ちを覚えます、無雪期ならここで終わりなんだけど冬はまだ降りるんだよね。
湿って足にまとわりつく雪の中を歩き続けてようやくついた大丸温泉、下山するころには空模様は曇り空になっていました。
山の景色がよすぎて下山が切なすぎました……、また来たいと思います。
下山後は大丸温泉でお風呂を頂いてもいいのかなと思ったのですが、個人的には那須岳といえば鹿の湯かなという気持ちなんですよね。
大丸温泉からの帰路の途中にあるこの温泉は温度別に湯が分かれている有名な温泉で、シャワーとかはないんですけど「秘湯に入った!」という満足感を得ることができるいい温泉です。
野趣あふれる温泉が僕は好きなので一直線に鹿の湯を目指しました、唯一の欠点は牛乳がないので風呂上りはジュースになるところかな。
入浴後は奥さんや家族のために餃子のお土産を購入して帰宅……、この日山岳写真撮影ということで早出した結果夕方には家に到着し、子供をお風呂に入れたりご飯をみんなで食べたり家族団欒の時間を得ることができました、那須岳って近くて上りやすくて景色がよいのでいい山だなと家に帰ってから再確認をするのでした。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは。
那須岳の雪景色はやはり凄いですね。
僕は何年か前の初冬に行きましたが、その雪景色に圧倒されたことを思い出しました。
そんな那須に朝焼けを狙って暗いうちから登るのさすがです。
ろっぴ様
コメントありがとうございます。
冬の那須岳ですが登りやすいのに景色が良い山として、関東南東北ではかなり重宝される山なのではないかと思います。
今回は暗いうちからの登山ということでしたが、やはりかなり怖いですし大変でした。
いや、本当に寒かったです……!