2024年7月21日から22日にかけて、南アルプス北部にある日本第二位と三位の標高を誇る北岳、間ノ岳を経由し農鳥岳から奈良田へ下山する白峰三山縦走を楽しんできました。
南アルプスの北岳と間ノ岳までは歩いたことがあるのですが、その先の農鳥岳と大門沢まではいつか行かなければと思っていたこともあり、念願の白峰三山縦走となりました。
さて、縦走の工程はスタンダードに広河原を出発し初日に北岳山荘テント泊、二日目に奈良田までという工程ですが、自走ではなく公共交通を使っていることと天候の問題で二日目は間ノ岳をほぼスルーする速度での登山となりました。
バスで行き来するなら初日に農鳥小屋まで行くか、素直に3日で歩くのがいいのかなぁ……と思います。
大門沢下降点から先の登山道は上部は斜度もきつく大変ですが、中腹からは生命力を感じさせる深い森の中を歩く興味深いコースへと変化していきます。
森の雰囲気がすごくいいので、長い時間がかかってもいいからこちらから登ってもいいかも?と思わせてくれるような道のりでした。
7月中旬の登山最盛期、夏の山の天気とはどういうものかを久々に叩き込まれた南アルプス縦走ハイキングの始まりです。

この稜線を歩くために、必ずまた戻ってくる!!
白峰三山公共交通機関縦走の概要
公共交通機関で行く白峰三山縦走






2024年7月21日午前2時50分、甲府駅前野宿。
おはようございます、Redsugarです。
甲府駅前に降り立ったのは正直おはようどころではない深夜だったんですけども。
毎日あるぺん号で甲府駅までって滅茶苦茶コスパ悪い、でも11時から2時半まで寝て移動できるし……と思って今回甲府駅前1時間だけ野宿を満喫するためにやってきました。
感想はですね、7月のど真ん中の甲府駅前は尋常ではない湿度で登山開始前から汗にまみれて大変疲弊いたしました……という感じです。



駅のベンチにマット引いて寝ようにも寝れるわけがない、結局広河原行きのバスが来るまで起きてました。


早朝第一便の広河原行きのバスに乗車することになるのですが、皆さん準備の仕方が凄いんです。
バスの時間になると前泊組がどんどん駅前にやってきます、野宿してたのは数人なんですけど気が付けばバスはほぼ満員でした。



ほぼ寝てない状態でバスに揺られて……気持ちが悪い。




午前6時50分、広河原。
広河原行きのバスの中でいつの間にか寝落ちしてまして、気が付いたら広河原に立っていました。
正直このコンディションで北岳に挑むとボコボコにされてしまう、そう思った僕は真新しい広河原山荘へ向かい、朝のレッドブルをキメて一気に目を覚ますことにしました。



未だに毎日エナドリを1本飲んでる気がする……。


エナドリはプラシーボ……なことも無く、カフェインと糖分を一気に入れるのでちょっぴり目が覚めます。
この時はかなり体調が良くなり、北岳も登れそう!という状態に。



小屋の前にあったこのモニュメントは何だろう?


広河原から稜線を見上げると……ガスの中ですね!夏山で恐ろしいのはこの稜線だけ雲が張り付くパターンです。
これどの予報でも出ないんです。Redsugarは幾つかの予報サイトを比較しながら登山をしていますが、この山頂にだけ雲が張り付くパターンは「晴れ」扱いなことが多いんだよね。


稜線に雲が張り付いている、僕が登った時は晴れていてほしいと願いながら広河原の橋を渡り登山をスタートさせます。



白峰三山縦走、プレイボール!!


広河原から北岳までは明るい広葉樹の森を登ってゆく優しいコースとなっています。日本第二位の高峰という事で歩く方も多く、道は非常に歩きやすいです。


苔むした岩の上にそっと置かれたシカの頭骨、誰が置いたんでしょうかね??
綺麗な形を保った頭骨が独特な雰囲気を放っていました。


最初の小屋である白根御池小屋までは広葉樹の森をただひたすらに上り詰める作業が待ち受けています。
約2時間ほどの工程となるのですが、テント装備を背負って歩く道は長く感じるものです……。
それでも令和の時代は技術が進み、装備重量が全体的に軽くなったので本当に楽になりました。



始めてきただけに来た時に比べると、比較にならないほどの速さで上り詰めていけます。私のテント泊の装備重量は9キロくらい、身体への負担が少ないため本当に楽に歩けます。


広葉樹の森が終わるとダケカンバやシラビソ、コメツガといった高山帯の植物が顔を見せるようになります。
森が水を携え潤った空気が漂う南アルプスですが、北部はまだ森が明るく歩きやすいです。



南部に行くと森が濃くなって暗くなるんだよね。


白根御池小屋が近づいてくると目の前に屏風というか、壁みたいな感じの鳳凰三山が現れます。
見晴らしが良い所で一服する方々の脇を通り先を急ぎます、今日は北岳山荘へ行くので。


白根御池小屋の手間では南アルプスの天然水が山肌を流れ落ちていきます。キンキンに冷えているので、手ぬぐいを濡らして顔を洗ったり、とにかく気持ちがいい。真夏のランニング後の洗顔と同等レベルの気持ちよさ、脳天を突き抜ける爽快感を味わえます。






午前8時45分、白根御池小屋。
広河原から約1時間半ほどで白根御池小屋へ到着しました。夏の時期は本当に大盛況な小屋で、ソフトクリームからコーラまで何でもそろっています。トイレもきれいだし~、休憩するならここは絶好のスポットです。



ここから草滑りという無慈悲な急登が始まるので、ここで最後の甘味を補給するのがお勧めです。




ここから肩の小屋まではただひたすら急な上り坂を歩くことになります。行動食とコーラでしっかりとカロリーと水分を補給しておきましょう。晴れた日の白根御池小屋で飲むコーラ……夏山っていう感じがするぜ。
北岳山荘を目指してひたすら歩く


白根御池小屋を出発したら草滑りを目指します、ほかのコースも歩いてみたいけど八本歯のコル方面が使えなかった記憶が……。安全安心の草滑りコースですがちょっと長めなコースになっています。



ちなみに白根御池小屋は北岳を明治時代に登った修験者の名取さんが残した中宮などは無いのだろうか?白根御池を経由して登ったと聞くが……。


白根御池小屋のテント場は居心地がよさそう……、こういう場所に泊まる余裕が欲しい。






草滑りコースは樹林帯の道をひたすら上り詰めるというものでして、崖のような場所がない代わりに単調で、ただひたすら登り続ける感じで、そして長いというものになります。スペクタクルはないんだこのコース。



前回訪れたときに比べると装備重量が10キロほど軽いこともあり、身体的な負荷はかなり軽減されていました。おかげで驚異の速度で上り詰めることができたと思う。


足元を眺めながらひたすら草滑りを登り詰めて、ハイマツ帯へたどり着くと小太郎山のむこう側に甲斐駒ヶ岳の白い山肌が見えるようになります。


そのお隣には阿吽のように甲斐駒ヶ岳と並び立つ仙丈ヶ岳。大きな山体が特徴的です……、久しぶりに訪れてみたい山で、さらにいつかは仙塩尾根を歩きたいなと思わせてくれます。



仙丈ヶ岳は大仙丈ヶ岳まで行くといいんですよ、山頂より静かで花は山頂よりも多くて……穴場なんですよ。


草滑りから来た場合は肩の小屋を目指して開放感あふれる稜線を歩くことになります。
北岳って延々と歩くイメージがあるけど、実際歩くと結構岩場が多い。


所々ストックが邪魔になるような岩場も出てきます、稜線に出てからはストックを一度しまってしまうのも手です。


甲斐駒ヶ岳を見守られながら肩の小屋へ。肩の小屋のテント場はかなりの広さがあり、繁忙期でもそう簡単に埋まりそうもないように見える。






午前11時15分、肩の小屋。
北岳に来ただけ……じゃなくて、私の目的は白峰三山縦走なんです、北岳は通過点なんです。前回宿泊地として選んだ肩の小屋ですが、本日は北岳山荘のテント場を予約しているのでコーラ休憩のみになります。コーラに描かれたデッドプールが若干腹立つ絵柄。




小屋の周辺を見渡してみると、シオガマの花やチョウノスケソウがまだ残っていました。チョウノスケソウが見れたのはとてもラッキー。チングルマに似てるけど……これチョウノスケソウだよね?


北岳肩の小屋を出発すると北岳山頂までは岩場を登り詰めることになります、ストックはしまっておいても大丈夫です。ここから山頂まで思いのほか時間がかかるんだよね……。


肩の小屋を見下ろしてみるとまだテントの数はそんなに多くない。


真っ白な空へ向かって積みあがる岩、ペンキマークに従ってゆっくりと登る。幸いなことに日本二位の山のメジャールートは多くの人に歩かれていることからも、足元は明瞭かつ安定している。


頂上が見えてくると同時に北岳と言えばこの景色という感じで間ノ岳方面へ続く稜線と、鞍部に建つ北岳山荘が見えてきました。


山頂はもうすぐそこ、多くの人々でにぎわう山頂からは談笑の声が聞こえる。




午後12時15分、北岳山頂。
北岳山頂に到着すると同時に、白い雲に覆われていた空が青空へと変わっていきます。なんという事でしょう……山頂についたと同時に晴れてしまいました、幸運です。せっかく晴れたのだから、荷物を降ろして暫く休憩することにしました。



本日の目的地は北岳山荘なので出来た休憩です。正午に山頂に到着できたという事は、農鳥小屋まで全然歩けたなぁ……と思えました。
快晴の北岳稜線漫遊


山頂でのんびりとバットレス側を眺めたり、甲斐駒や仙丈ヶ岳を見ていたのですが……晴れてるけどガスが昇ってきているよ?という事で北岳山荘へ降りることにしました。この北岳山荘への下り道が北岳登山のハイライトです。



ここまで同じようなペースで歩いてきた登山者の方は農鳥小屋まで歩くとのこと。今回の登山で分かったのは行けるなら農鳥小屋まで行ってしまったほうが楽だという事でした。二日目の朝がさぁ……無慈悲なんだわ。


北面を見てみると甲斐駒や仙丈ヶ岳に雲が覆いかぶさっています、この日は幸いにして北岳稜線は曇ることなく、快晴が続きました。山の神よありがとう。


歩いてみるととてもなだらかな北岳の稜線、間ノ岳まで続く道を歩きたくなる眺めが続きます。






写真を一枚一枚楽しんでもらいたくなるくらい良い眺めが続きます。白峰三山が良く見えるこの道は歩いていて心地よい。ちなみに白峰三山というのは「白い雪の山」という意味で、平安時代から認識されているそうです。
登山史では明治時代に修験者の方が登頂を果たし、里宮、中宮、奥宮を作り開山に至ったとか。



明治に修験の名取さんが甲斐ヶ根神社を設け登山道を開きましたが、その道は歩く人が少なく廃道になってしまったといいます。その後、明治8年から登山道開拓や国の森林調査が始まり北岳の道は切り開かれていくことになりました。


北岳山荘に予約をとっているのだから……とのんびりと歩きます。北岳から北岳山荘は見た目よりも道が穏やかです。


一直線に伸びる登山道は見るだけで満足感があります。どこまでも続くかに見える登山道ですが、一応白峰南嶺まで続いていて果ては山伏まで行けるらしい。行くかどうかはさておき、笹山まではいい道が続くと聞いています。



地図によっては山伏まで、ヤマケイとかだと青薙山までで畑薙ダムへ下山する感じのコース取りになっています。紹介記事を見ても笹山から南はアドベンチャー過ぎて歩ける気がしません。


南アルプスの特徴ですが……長いです。ゆっくり味わうように歩いていると思ったでしょう?違うんです長いんです、山が一つ一つ大きなことが特徴な南アルプス、見えているけど中々到着しないなぁ?っていうことが多いのです。


北岳の稜線は様々な岩が積みあがっていますが、白いのは花崗岩ではなく変成岩系の石灰岩らしい。石灰岩というと沖縄の山や秩父の二子山を思い出すけど、それとはずいぶんと違う質感を持っている。



地下で高熱と圧力を受けて変質した岩はぱっと見花崗岩のような白さだ。


北岳山荘近くまで降りてきました。改めて振り返ってみると、とても穏やかには見えない北岳の山容に驚かされます。
降ってくる際はとても穏やかだったのに、それはつまり山自体が大きいからという事なんでしょう。






午後2時00分、北岳山荘。
北岳山荘でチェックインを済ませ、テント場で本日の宿を設営しました。今年から導入したSLソロのデビュー戦という事で北岳山荘を選んだのですが、場所が悪かった……。翌日強風を受けて早速テントにダメージを与えてしまうことになりました。稜線でテントを張る経験があまりなかったことから、風を受けやすい形でテントを張ってしまったのが大失敗です。ハイマツに守られた場所にテントを張るなど工夫しないとだめですね。
ちなみにSLソロですが、居住性はよく軽量なのでとても良いテントです。



やっぱり樹林帯のテント場が一番だよぉ……。


テント場に到着し油断しきったRedsugar、雲に覆われてゆく北岳山頂を眺めながら「ビールでも飲むかぁ~!」と余裕をかましています。いや、お前が今すぐやることはそのテントをハイマツ帯の中に持っていくか、北岳山荘のトイレの裏に張りなおすことだ。




売店でカップヌードルとキンキンに冷えた十六茶でまずは北岳登頂のねぎらい……。その次に生ビールとビーフジャーキー、そしてFM.FUJIを聞きながらご機嫌な休憩時間を満喫します。山頂で聞く地元FMってねぇ、めっちゃ情緒があるんだよぉ~~超お勧めです。



冬場に地元の山を登って、だれもいないピークで地元のFM聞いてごらんなさいよ。癒されるよ?埼玉県民なら十文字峠でもFM79.5入りますから。


夕方になれば北岳山荘に宿泊する方々が思い思いの時間を過ごし始めました。7月は日が長く、日没の19時近くまでのんびりとした時間が流れます。徐々に気温も下がり、下界では考えられないような肌寒さ、防寒具を着て稜線を散歩します。


翌日痛感するのですが、こんなに安定した天気であれば農鳥小屋まで行ってしまえばよかったなぁ……と、重ねて思う。



湧き上がる雲をはねのけ続ける北岳山頂を眺めながら至福の稜線漫歩を楽しめたからいいけどさ、でも次は間ノ岳から先でこれを楽しみたいんだよな。


日本で二番目に高い北岳を思う存分歩きました……、19時になれば寝なければいけません。
テントに帰って早めの夕食と行きましょう。


という訳でテントで夕食なんですが、見た目が悪い!!非常に見た目が悪いご飯です。これは何かというとジップロックに入れたカレーメシです。SNSで見かけてこれはいいと思って導入したのですが、カレーメシには弱点があるんです……。それは見た目が悪いこととカレーの香りが強烈すぎる事。
何重の袋に入れても香りが外に漏れ出てザックがカレーになります、カレーザック!!



総合的に考えると、快適性の面からカレーメシノーマルは俺的に無い、無しだ!カレーメシの代わりにカップヌードルのごはんとか匂いが少ない奴を使ったほうがいい、それくらいカレーメシの香りは強力だ!!……ただ、味はカレーメシが一番良い。


テントの中がカレー臭に占拠されてしまった……。カレーテントから顔を出してみると日没前の幻想的な景色を楽しめそうな雰囲気が漂います。テントの中にいてもカレーだから、外に出て大自然の空気で鼻を洗浄することにしました。



もうカレーはこりごりだよぉ……。


稜線の目の前で雲が躍るように形を変えていきます、ぼんやりとそれを眺めながら写真を撮影し、太陽を眺める……。吹き抜ける風は冷たく、山に来たんだなぁという心細い実感にようやく襲われました。



ある種の心細さや恐れがあって初めて山っぽい感じがする。レジャーから少しだけはみ出たところが魅力なのかもしれない。


西側から湧き上がる雲が北岳の山頂だけを覆い隠していきます。明日もいい天気だといいなぁ……この時はそんなことを考えていました。まさか翌日、恐怖の天候の中で歩くことになるなんて。


西へと沈む太陽を見送り、テントへと戻ることにしましょう。


全てが青くなる時間、北岳から遥か向こう側に富士山のシルエットが浮かび上がります。
一日の終わりに、本当にいいものが見れましたね。


テントに戻りシュラフに潜り込む前に明日の準備を済ませます。そこでお勧めしたいのがこちらのアイテムで、モンベルのクラッシャブルランタンシェードです!ヘッドライトを入れる袋にもなるのですが、ライトにかぶせるとランタンが完成してしまうという優れものです。これ軽いし明るくていいし、めちゃくちゃお勧めです!



というわけで一日目終了、翌日は間ノ岳から農鳥岳を経由して大門沢から奈良田温泉を目指します。先に宣言しておきますが、久々の超ガス絶望稜線登山が待ってるぜ!!!虚無の3,000mの先に待っていたのは白峰南嶺の美しすぎる稜線でした!?


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