2024年7月22日、前日から白峰三山縦走のために南アルプス北岳山荘へとやってきたRedsugar。絶景を堪能しテントで穏やかな眠りについた彼を待っていたのは……稜線だけ暴風が吹き荒れる悲しき朝だった!!
ということで白峰三山縦走二日目、間ノ岳から農鳥岳を経由して大門沢から奈良田へと向かいます。
日本百名山で日本の標高第三位で約3,190mとなる間ノ岳、日本の標高第15位で約3,051mの農鳥岳を歩いて大門沢降下点から奈良田温泉を目指して歩き続ける二日目です。
白峰三山縦走は北岳から先が長く、特に大門沢ルートを選択した場合は奈良田までかなりの時間がかかります。
公共交通機関を利用した登山の場合、奈良田から甲府へ戻るためには15時後半の身延行バスと、広河原乗り換えで甲府へ向かう16時前半のバスの2本という事になります。
二つのバスの出発時刻は言うほど離れていないため、15時30分を下山目標として歩くことになるのですが、北岳山荘から歩く道のりは本当に遠いものでした。ガスってなければこんなに早く歩けなかったと思えるくらい。
しかし、凶悪なガスを抜けた先……農鳥岳で待っていたのは白峰南嶺のどこまでも続く美しい稜線の景色でした。
それではいってみましょう、白峰三山縦走二日目です!
redsugarテント壊れたの本当にきついなぁ……。
白峰三山公共交通機関縦走の概要
暴風吹き荒れる荒天の目覚め




2024年7月22日午前4時35分、北岳山荘前。
おはようございます、Redsugarです。なぜこんなことになってしまったのでしょうか?
天気予報は快晴予報ですがテントが凄まじい風にたたかれて撤収時に破損してしまったし、明るくなったと思えば雨交じりの虚無が目の前に広がっているし……なんなんだこれは。
いくつもの天気予報サイトを見ても晴れ予報しか出ていない。その中の一つ、ヤマテンの予報からライブカメラを見たとき、すべてを理解しました。



稜線にだけ雲が張り付いているパターンじゃん……、夜叉神峠晴れてるし中央アルプスからみた南アルプスのカメラでも北岳以外は晴れてるじゃん!!ピンポイント荒天じゃん!!


夜叉神峠は晴れているけども北岳の稜線はガスが纏わりついている。昨日と同じならそのうち晴れると思うから……とりあえず間ノ岳に向かおうか?という事で破損したテントをザックに入れて間ノ岳へと出発。
風は収まったものの、小雨交じりの稜線は不快そのもの……、昨日までのほほえましい絶景稜線はどこに行ったのだ?



北岳山荘から先が楽しいのだ、この縦走は。なのにどうしてこんなことになってしまったんだ。


午前5時15分、中白根山。
まったく晴れる気配を見せない北岳稜線、とりあえず百名山間ノ岳を目指しましょうという登山者が列をなして歩いている……。こんなコンディションで間ノ岳に登頂してもうれしいのか?と思いつつも自分もなんで奈良田を目指しているかわからなくなってくる。



ガスの白峰三山縦走よりも晴れの高尾山のほうが楽しい。


歩いていると目の前に薄汚れた鳥が数匹チョロチョロと駆け抜けていきます。なんだこの小汚い鳥は……ライチョウだ。雨に濡れてぼさぼさになっているからか、心が薄汚れているからかライチョウと気が付くまで時間がかかりました。



ライチョウ一家はそのままガスの中に消えていったよ……。




ガスの中では目印だけが頼り……という事も無くて、道は明瞭です。
過去一度歩いた道ではあるけども、ガスのおかげであの時の感動を思い出すことは難しい。
高峰での虚無は辛い、本当につらいんだよ。


中白根山を越えて間ノ岳が近づいてきているはずですが、まーーーったく眺望がないので楽しくないです。
ガスならガスでよく見えるものを撮影すればいいのよ!って思うんですが、撮影とかそういうレベルじゃない時ってあるんです。



ガスの中で見えるものを撮るために知識をつけるのよ、とか今言われたらガンジーでも助走つけてぶん殴るんじゃないか。ガスでもいいじゃないとか登山界のマリーアントワネットみたいなこと言われたら……もう耐えられない。


あたりが明るくなる……、雲頂高度に近づいているのだろうか。明るくなるという事はこの雲はやはり稜線にまとわりついているだけで、その外は快晴のようだ。



良く天国みたいな景色と言われるけど、こんな足元の天国嫌だ。
レッドカーペットみたいな足元が良い。






午前6時30分、間ノ岳。
遅めの間ノ岳山頂到着となりました、ガスです。天国っていうか煉獄っていう感じ?リンボってこういうのが無限に続くのかもぉ、と思えるくらい真っ白。雲頂が近いから明るくて眩しいのが輪をかけてムカつきます。
間ノ岳って滅茶苦茶好きな山なんです、絶対に晴れてほしいなぁと思って予報が快晴のタイミングを狙ったんですが……、いや白峰三山以外は快晴らしいから予報は当たっているのか。



是非に及ばず……ッ!!


午前6時30分に間ノ岳にいるっていうのは遅すぎます、ガスが悲しくてちんたら歩いていたらこんな時間になってしまった。奈良田への下山を考えると一刻の猶予もありません、ここから先はやけくそです。
白峰三山縦走の後半戦は失敗という事で次回に申し送りを申請する必要があります、受理するに決まっているだろう来年以降の俺。


ノウトリ、楽しみで仕方がなかった間ノ岳の南側を虚無の中で駆け降りなくてはならない、悲しい農鳥小屋への道が始まる……。
白雲の中の縦走路




農鳥小屋までは多種多様なペンキマークが登山者を楽しませてくれます。これを描いたのはかの有名な農鳥おやじなんだろうか?農鳥小屋に関わる方が描いたのは間違いないでしょう。



おかげでこんなガスってるのに退屈しないで歩けます。黄色にマゼンタとかPOPな色使いしやがって……。


写真を見ればわかるようにガスっていても道だけは明瞭にわかるわけです、ペンキマークのおかげで。


間ノ岳の南側の斜面は北岳に比べると異世界感が強い場所でした。それはガスっていてなおのこと強く感じるものがあり、所々で目にする巨岩がそれぞれ何かが降り立つための磐座のように見えてくるのです。


南アルプスは現在でも隆起しています、1年間に約4㎜くらい高くなっているわけです。隆起の原因は主に伊豆半島にあり、伊豆半島は未だに本州にぐいぐい食い込んでいるっていうね。
隆起した山には雨が降り、土は流れて岩だけが稜線に取り残されて行きます。目の前にある巨岩がそういう大きな時間や、長大な時間の産物と考えると背筋を正したくなるのは僕だけでしょうか。


ガスのむこう側に広がる景色、山肌を見れれば良いのですが……。でもガスの間ノ岳の景色の方が僕にとってはレアかもしれないから、これでよいのかもしれない。



どうせまた来ることになるだろうし……。


農鳥小屋までの道のりは北岳よりも僕は好きです。まず地形が北岳側とは全く違うところがいい。岩と石とハイマツで構成されながら、南アルプス特有の大きくなだらかな山肌のおかげで北アルプスのような急峻さがない所、それが良い。


三国平への分岐点が出てきました。
三国平は熊の平小屋方面にある場所で、南アルプス南部へつながるジャンクション地点になります。


午前7時45分、農鳥小屋。
白峰三山縦走で最も癖が強いと誰もが認識する農鳥小屋に到着しました。ですが、農鳥小屋のご主人は引退していて、僕が訪れたタイミングでは大門沢の方々が小屋の運営をしていました。






農鳥小屋でドリンクの補給だけを済ませて農鳥岳へ向かいます。もうここまで来ちゃったから……後はガスでも下山するしかないと心を決めた瞬間でした。ここまで遅めのペースで晴れを祈っていましたが、バス時刻を考えるとここから先は全力で進まないと帰れなくなります。



ウケケケも見れたし……、天空トイレも見れたし、農鳥小屋で見たいものは見た。ちなみにびっくりトイレでいうとやっぱり北海道の白雲岳避難小屋が個人的に最強なんだよなぁ。




農鳥岳方面もペンキはバッチリ。


ガスっていて先が全く見えないおかげでアップダウンにうんざりすることもない。ガスっていると現在地しか見ることが出来ないので、「今、ここ」にだけ集中できるっていう利点がある……。



ガス登山を禅と捉えれば気が楽になる、今この瞬間がすべてだから。


午前8時50分、西農鳥岳。
眺望ゼロの中で上り詰めた西農鳥岳、小屋から約1時間という事でしたが岩場をひたすら歩き続けた記憶以外がない……。やっぱりガスの登山って後から思い出すことが難しいという点でも避けたい登山である。






西農鳥岳から農鳥岳本体へ向かう。雲がようやく取れてきました。特に稜線の下は晴れていて、農鳥小屋を見ることが出来ます……。雲の合間から見える山肌の美しさに涙が出そうです。



やっぱり南アルプス、南アルプスが良いです!!


空が明るくなり、眩しいくらいの白が眼前を覆います。ガスが晴れ行く瞬間の眩しさったらありゃしない。


何か動くものがいる?と思ってよく目を凝らしたら……なんとサルです。標高3,000m地点にニホンザルがいます。
ライチョウ保護のニュースの中でニホンザルがライチョウを捕食するというものを見たことがあります。温暖化の影響でニホンザルが本当に上まで登ってくるようになっちゃったんですよね。



こんなところまで来ても食べ物なんてないと思うんだけどな……。
下にいても夏は食べ物少ないのはわかるけど。


午前9時40分、農鳥岳。
青空が垣間見える……農鳥岳に到着すると同時に急速に空の雲が消えていきます。
長かった、午前5時から数えても約5時間ガスの中を歩いていたのです、最後の最後に青空が見れて心底嬉しい。
そして農鳥岳の山頂では青空を楽しむ登山者たちの姿がありました。
どこまでも続く白峰南嶺の景色


青空のむこうに白い稜線の山が見える、鳳凰三山ですね。鳳凰三山が随分と北に見えるくらい歩いてきたんですね……、ガスの中を歩いていたので全くわからなかった。


甲府方面から湧き上がる雲のむこう側に富士山が見えます。見た感じ富士山は快晴そのものと言っていいようです。
というか周囲の山々を見渡す限り、僕が雲の中を歩いていた時間はずっと晴れていたみたい。



富士山を眺めるトレイルランナーが最高に気持ちよさそうにしていました。これから北岳山荘に戻るそうです。


西農鳥岳方面も雲が取れ始めましたが、快晴というわけではなさそう。
景色がなくて全くわからなかったけど、素晴らしい場所を歩いてきたんだなという事はわかる。山肌の雰囲気がすごい好きですね北岳から農鳥岳は。




本日はバスでの帰還という事になりますが、北岳山荘から奈良田へ行く場合余裕が全くありません。
せっかくの快晴を心行くまで楽しみたいのですが、中々そうもいかない……、農鳥岳山頂からの景色を楽しんだら大門沢を目指します。



南アルプスと言えばこの団子みたいな山頂。静岡県の方々が制作しているらしい。一応南アルプス以外の地域にもある場所はあるんだけど、印象的には南アルプスっていう感じ。


改めて見回すと南アルプスの森林限界の高さには驚きます。北アルプスに比べると山が本当に青々としている……。


西農鳥岳から間ノ岳へと続く道のりは岩稜の道。南岳から槍ヶ岳、野口五郎、白馬岳といった山々も岩の道を楽しめますが、間ノ岳から農鳥岳は北アルプスに全然負けてない、滅茶苦茶いい道ですよ。


大門沢と白峰南嶺方面を眺めてみれば蛇の身体のように蛇行する稜線がはるか先まで続いています。あれを歩いていいのか!?と思わず誰かに聞いてしまいそうなくらい歩くのが楽しそうな景色じゃないか……。



歩けるなら歩いてみて良いのじゃよ、身体が持つかのぅ……?



歩きたいけど、確かに身体というか尻の持病が悪化しそう。


南側には塩見岳の姿も確認できます。以前塩見岳日帰りピストンで登りましたが、北側から見る塩見岳は本当にかっこいい……、塩見岳の正しい登り方は仙塩尾根を歩くことなのではないか?!と思えてしまう。



小屋の人に聞くと蝙蝠尾根からが一番いいですよって言われて、悩むところですね……。両方そそられる長大な尾根なんだよなぁ。


青空が広がる農鳥岳~大門沢区間は楽園と言っていい、歩いていて気持ちよすぎる道が続きます。


ジャリジャリと音を立てて歩みを進めるたびに心が浄化されていくようです。先ほどまでのガスの中で歩くたびに身体が鉛に包まれるように重たくなっていったのとは真逆。青空は心と体に翼を与えてくれるんだ。



いやー、あの稜線の森林限界が続くところを延々と歩きたい!笹山からダイレクト尾根で降ってみたいなぁ……!


大門沢下降地点まで続く景色は穏やかで……歩きやすくて、降りたくないなという気持ちにさせられますね。


岩稜とハイマツに彩られた農鳥岳とももうすぐお別れです。次回は間ノ岳から農鳥岳まで必ず青空で歩く……と強く願うのでした。




午前10時30分、大門沢下降点。
本来であればもっと早く到着しているはずの大門沢下降点ですが、少し遅めの到着となりました。
この青空を楽しみたいんだもの、ゆっくり歩いたって仕方がないじゃないの。
……とはいってもここから先、奈良田までのコースタイムを考えるともはやぎりぎりというか、普通に考えたらバスに乗車することはできないと考えることでしょう。だって下りで約6時間、広河原行きの最終バスに間に合うかぎりぎりです。



広河原行きの最終バスでもいいんだけど、僕は下山後に下部温泉で風呂に入ってローカル線でのんびりと甲府へと帰る。そんな夏の一幕を味わいたいのです。それこそが僕の望んだ白峰三山縦走のエンディングなのです。


下部温泉に絶対に入りたい、下部温泉にはいりたいんだぁあああ!!という強い気持ちを胸に大門沢を降ることにしました。目標は15時台のバスです、これまでの実績から考えれば下りは巻けるはず。



この大門沢からの下山、驚異の速度を誇る少年とのダウンヒルデッドヒートが繰り広げられるとは思いもよらなかった……。
豊かな樹林帯を歩く大門沢コース






大門沢コースですが、下降地点からしばらくは超が付くほど急坂が続きます。これ転んだらゴロンゴロンと落ちていくのでは?と思えるくらい斜度がきつい。逆工程で、もし稜線にたどり着く前の最後にこの坂道が来たら……辛いだろうな。


上部は沢沿いに開けた部分もあるので眺望はよいのですが、荒れた谷筋から樹林の中へと道は向かっていきます。


道中NTTドコモの電波が使えるという場所がやってきましたが……、電波は入りませんでした。
2025年になってから、登山においてはドコモ一強という時代ではなくなったと思います。特に格安プランのahamoとかは登山では使い物にならないし、街でも不便です。



携帯端末を考えることがいつの間にかクレジットカードやインターネット回線の業者を考えることにもつながり、気軽に考えれるような時代ではなくなった結果、移行するのが面倒過ぎて何もしたくないという状況になりましたよ僕は。


大門沢を降っていると、早朝に農鳥小屋を出たという家族連れの方々が休んでいる場所に出くわしました。
小学生の子供たちと数日かけて白峰三山縦走をしているという事でしたが、この道を歩ける小学生ってすごい……。
山肌を潤す冷たい水で顔を洗いながら談笑する一家に無尽蔵のパワーを感じる。


大門沢小屋へ近づくにつれて山肌を流れる沢の数も増えてきました……。大門沢下降点から小屋まではコースタイムで2時間40分もありますが、昨今の軽量化された装備ベースで考えると2時間くらいでたどり着けるのではないでしょうか?



それでも下り2時間かかるってヤバい。しかも大門沢小屋はこの下り道の半分ですらないのです。






午後12時20分、大門沢小屋。
森の中を降り続け約1時間50分で大門沢小屋に到着しました、結構早く歩けましたね。
SLソロを筆頭に軽量化された装備。テント泊装備でも水を含めて10㎏を切る重量、身体の負担が軽いから出来た速度だと思う。それでも大門沢小屋に到着した時点でやや脱水気味、水分補給と大きなゼリーで気分転換です。



大門沢から奈良田温泉まではコースタイムで3時間30分ほどとなる。油断せずにここでしっかりと補給をしておきましょう。後半のシャリバテほど悲しいものはない。


大門沢小屋での休憩を満喫したら下山再開です。前述のとおりここから奈良田の駐車場まで3時間以上かかるらしい……冗談でしょう!?と言いたくなる。



道中の丸太橋など、小屋の方々が整備してくれたであろう登山道は非常に歩きやすかったですよ。






小屋から下部は所々ファンキーな道もある。特に人工物の破損が激しい所もあって足元が凄く不安。
足元が自然の産物か、人工物かでこうも安心感が変わるのか……と思う瞬間である。黄色のペンキマークを追って沢と一体化した登山道を降っていく。



この辺りで大門沢を同じタイミングで出発した中学生くらいの男の子とお父さんのペアと抜いたり抜かれたりな感じで歩くことになる。ちょ……ちょっと気まずい!!


大門沢コースの核心部というか、深淵の森を楽しめる場所としては大門沢小屋から下部にあると思う。
地図にある八丁坂から大門沢小屋にかけての区間は森がとにかく美しい。落葉広葉樹が頭上を埋め尽くす緑の世界を歩くことになるが、朽木に苔と様々なものが存在感を放っているのだ。



中学生くらいの男の子、大型のザックを背負っているのにすごい速度で歩いてくる……。何度もすれ違うのはちょっと気まずいと思ってかなり速度を上げたのに追従してくる。彼は実在しているのか?俺は幻覚を見ているんじゃないか!?と思えるような歩きっぷりに戦慄。


緑の絨毯を着込んだ岩が山肌を埋め尽くす大門沢下部は奥秩父や富士山の村山古道が好きな人にはたまらないだろう。



時折お父さんを待つために止まるから追い越されることは無いんだけど。すぐに後ろまで迫ってくるあの加速力は何なのだろう。Redsugarは30代後半なわけで、そんな速度で歩いたら膝が壊れちゃうよ。




八丁坂を降りきって森山橋近くまで来ると堰堤にかけられた吊橋が見えてきます。この吊り橋ですが、畑薙ダムの大吊橋を思い起こさせるレベルでデスブリッジしていました。これ大人でもスルっと落ちそうで滅茶苦茶怖いんですけど!?



え……あの男の子これ大丈夫かな??






吊橋を渡り森山橋へたどり着きました。ようやく山歩きが終わり、あとは安全な道をひたすら歩くだけです。



こんな山奥で何の工事をしているんだ……と思うような景色が南アルプスは本当に多い。


森山橋から見える巨大な防砂堰堤ですが、柴田敏雄大好きなRedsugarとしてはもう涎が出るような景色が広がっています。第17回木村伊兵衛賞を受賞した「日本典型」はもちろん、それ以降のシリーズも山で撮影をする人間なら一度は目を通しておいて損はないと思います。



僕は柴田敏雄や畠山直哉が好きなんです。自然の中にある文明の跡を通して社会や歴史を見つめなおす。
絶景という美しくて当たり前で、感動して当たり前なものを受容/消費するんじゃなくて、人と自然とのかかわりを面白がったり、反省する視点を持つことも大切なんじゃないかなと。


コンクリートで舗装された道の歩きやすさ……素晴らしい。道のない山肌に足を踏み入れた時の違和感、踏み固められた登山道、脚に残る感触が訴えかけます「どうだ?文明が作った道は素晴らしいだろ?」と。
道路に感動しながら歩いていると、堰堤の下で小鹿が右往左往していました。あの子……山に帰れないのかな?



ただ道路を歩くだけで自分がいかに日本の高度な文明に慣れ親しんでいるかを思い知らされる程度には辛い道でした大門沢コース。いやぁ……本当に舗装路最高。






午後2時50分、大門沢登山口。
発電所が見えてきたら奈良田の駐車場までは30分ほどとなります、もうここがゴールでもいいんじゃない!?
ダム管理の人が住み込みで働いているであろう施設を見るだけで「街に戻ってきた!」感が出る程度には大門沢コースは山深かったです。


午後3時20分、奈良田。
奈良田のバス停が見えてきました……久々に口からエクトプラズムが出るかと思えるような道でした。
歩いてる途中は集中しているので過ぎ去る時間に鈍感だけど、下山した瞬間に堰き止められていた流れが一気に解放され、ものすごい疲れが襲ってくるんです。



バス停に到着して数分後、中学生くらいの男の子とお父さんが降りてきました。軽く挨拶を交わして談笑、滅茶苦茶足が速くてスタミナがある少年には賞賛しかありませんでした。




バスの運転手さんに発車時刻を確認するとまだ30分ほど時間があります。お風呂には入れないけど、下山の喜びビールを味わいたいので白根館へ向かいました。



君は言葉にできない味というものを知っているかね?






奈良田温泉を出発し、とんでもない山奥をバスが走り抜けます。過去自走で来たこともあるけど……バスだと本当に気が楽でいいなぁ、寝そう。



というわけで気が付いたら下部温泉駅についてました。やっぱり公共交通機関登山が良いよ、下山後の運転がないっていうだけで最高に気が楽だもん。






下部温泉では駅前にサンロードという日帰り入浴施設がありますので、こちらで白峰三山縦走の汗をしっかりと流しましょう。この施設はご飯処完備で、入浴後にとても美味しい蕎麦と爆弾丼が食べれます。



下山後の炭水化物&炭水化物は幸福度が凄い、頭の中で光がパチパチする。身体が栄養を吸収している実感がある、これが生きる喜び。


入浴後は見延線で甲府へ向かいます。ここまで来たらもう家に帰ったと言えるでしょう。電車に乗っていれば埼玉まで帰れるのだから、運転しなくていい幸せを噛み締めながら熟睡電車の帰路につくのでした。





人生最高の山は続きます。









コメント
コメント一覧 (2件)
素晴らしいレポートありがとうございます!
前泊してから向かう途中の列車で読み、下部温泉側に降りることにしました!
ばるせろにゃん様
コメントありがとうございます。山行記録が参考になったのであればとても幸いです。
下部温泉で汗を流して、山の思い出が良いものになっていれば幸いです。