2023年7月16日から18日にかけて、日本百名山である南アルプス南部の山「光岳」を歩いてきました。その道中では標高2,803mで二百名山の上河内岳、2,604mで三百名山の茶臼岳を歩き、最後に標高2,592mの光岳へとたどり着きました。
今回の記事は畑薙大吊橋から行く光岳ピストン登山の本番ともいえる上河内岳から光岳。
そして最終日の光岳から畑薙大吊橋への下山という二日目と三日目の記録を綴りたいと思います。
畑薙大吊橋をスタートして永遠に続くかと錯覚するような樹林帯と幾多の吊り橋を経てたどり着いた茶臼小屋。
夏山の宿命として晴天は正午付近までということで初日に上河内岳へ向かうことを断念し、二日目の朝日を上河内岳で眺め、その足で光岳を目指すという二日目が最も長いスケジュールを組んで挑むこととなりました。
茶臼小屋から上河内岳までは森林限界を越えた眺望の良い景色が広がりアルプス的な登山を楽しむことが出来ます。
そして、本題である茶臼岳から光岳までは片道約5時間の試練ともいえる樹林帯の尾根歩きが始まるのです……。
辿り着いた南アルプス最後の百名山光岳、静かな頂きに佇む小屋には池口岳から縦走して甲斐駒へ向かうというド変態の方、易老渡から登ってきた山岳会の方等々、濃い面子が揃った不思議な空間が広がっていました。
青空の光岳と光石を写真に収めた僕に待っていたのは、最終日の工程である樹林帯を駆け抜け続ける下山という現実でした。
読むだけでは絶対に伝わることのない圧倒的樹林帯、魔法にかけられたかのように溶ける時間、変わらない景色、発狂しそうになるほど続く森、静高平への登りで感じる空腹と水への渇望、それらが詰まった二日目から三日目を読んでください!!!
上河内岳光岳ピストン登山の概要
前回の神価値岳登山の記事はこちら!
夜明けの上河内岳より光岳を目指して
2023年7月17日午前4時35分、上河内岳山頂。
おはようございます、Redsugarでございます。光岳へと向かう南アルプス南部の夏ですが……、まずは最初の目的地上河内岳にて朝日を拝むことが出来ました。今回の記事は二日目の朝から始まり、光岳を目指す長い長い稜線歩きの一日が始まります。
二日目は快晴の上河内岳からスタート、光岳までここからコースタイムで6時間強、果たして青空の光岳を見ることはできるのだろうか!?
午前6時30分、茶臼小屋分岐。
上河内岳から茶臼岳へ戻るのも一苦労でしたが、ここからが光岳登山の本番です。茶臼小屋から片道5時間ということで、正午付近の到着を目指して歩き始めます。とはいってもすでに起床から4時間くらい経過しているのでちょっと疲れがたまっている状況。
アミノバイタルを入れて気合をチャージして臨みます。
茶臼岳への登りに差し掛かりますが、はるか西側には……光岳小屋と光岳が見えます。樹林におおわれて青々としています。あそこまで行くのかよ……、どうやら石ころとハイマツに覆われた気持ちのいい森林限界からサヨナラのようです。
茶臼岳は上河内岳と比較すると「登りやすくて眺望がよいということでやさしさに溢れた山」です、小屋から30分もかからずに登れるような山頂なのに、聖岳、上河内岳、赤石岳と眺望が抜群。
午前7時00分、茶臼岳。
茶臼岳は抜群の眺望の良さ、上河内岳へと続く大きな登山道の眺め。そして正対する聖岳、その奥へと連なる赤石、悪沢と南アルプス南部の名だたる山々を特等席で楽しむことが出来ます。
茶臼岳と上河内岳を楽しむために畑薙大吊橋から登ってくるというのならば、この登山は凄く楽で贅沢になっただろうなぁ……。
素晴らしい景色ですが、茶臼岳は光岳へと向かう登山道中の前半戦の一座でしかありません。というかスタート地点に相当します、肝心の光岳は写真中央の青々とした山の右側のピーク……、ということで茶臼岳から一歩踏み出し奥秩父のような樹林が生い茂る山道へ入っていきましょう。
ここからが本番、ここまではウォーミングアップだ。
茶臼岳を降りると最初は木道や池塘的な池が現れ、ある種牧歌的な道が続きます。こんな登山道がずっと続くならとても幸せなんだけども。
木道の途中には仁田池という水場がありますが、こちらは濁りが強く景色を楽しむといった感じではなさそう……。周辺は樹勢が強く眺望は無い。
仁田池から先も木道がある程度続きます、そしてじわじわと体力を奪うアップダウンが始まっていく……。
仁田岳、稜線随一の眺望を誇る絶景スポット
午前7時45分、希望峰。
仁田池からしばらくすると木道は終わり、低木が生い茂る樹林帯を進むことになります。茶臼岳から40分ほど進んだところで希望峰という分岐点に到着しますが、ここはこのコース最強の眺望スポット「仁田岳」へと向かう分岐点になります。畑薙大吊橋から光岳に向かうコースでは青空の元の仁田岳へ行けるかどうかがその満足感にかなり影響するとRedsugarは思いました。なぜなら……このコースで一番景色がいいのはこの仁田岳だから。
茶臼岳を越えた先にある最後の眺望スポット仁田岳、晴れているなら絶対にこのピークは踏みましょう!
午前8時00分、仁田岳。
仁田岳は富士山、光岳、聖岳……特に光岳の蒼い山体を真正面からとらえることが出来る眺望スポットになります。希望峰から片道10分ほどでたどり着けるこの山頂ですが、道中はハイマツの森林限界歩きだから気持ちがいいのよ。
仁田岳から聖岳方面を見ると希望峰から延びる登山道が一直線に聖岳へと向かっていくように見えます、すごく気持ちがいい景色で歩けば満足すること間違いなし。
振り返ったときは本当にエモかった……。しかも聖岳から兎岳に向かう稜線もくっきり見える。登山意欲を掻き立てられる稜線です、あのアップダウンきついんだろうなぁ。
仁田岳からは上河内岳、聖岳、兎岳と南アルプス南部の3,000m級が一直線に並んだ景色を堪能、光岳への道中でも随一の景色ではないでしょうか。
八ヶ岳は権現岳山頂から見る南八ヶ岳オールスターみたいな景色ですよ。聖岳をリーダーにして並ぶ山がかっこよすぎる。
希望峰へと戻り光岳への登山を再開しましょう。希望峰を越えると登山道は緩やかなアップダウンを繰り返しながら徐々に標高を落としていくような感じになります。樹林帯の合間には時折草原地帯があり、マルバダケブキやバイケイソウの自生が見れますが、歩いたタイミングではどれも終わっているようでした。
木々の合間から時折聖岳山頂が見える、これだけが心の癒しだね。
光岳山頂はまだまだ遠く、希望峰からは半分以上の工程が残ります。時折光岳を眺めるスポットが現れますが、光岳小屋が遠すぎて本当に今日到着するのかが不安になります。
真綿で首を締めるように標高を落としていくと針葉樹林帯とシダが生い茂る森の中へ……、鳥の声以外は自分の鳴らす鈴の音が聞こえるだけ。長い、長すぎる……とにかく横に長い。
このコースはマラソンに近い、長くて色々考える余裕があるが、下山したら何考えてたのか何一つ覚えてない。
午前9時35分、易老岳。
茶臼岳を出発して2時間半、気持ち的には中間地点となる易老岳に到着しました。倒木と立ち枯れの木々に覆われた山頂からは眺望なんて言葉は出てきません。こちらを休憩地点として5分ほど給水とアミノバイタル補給を楽しみ再出発、ここから先が本当にきつくなるので覚悟して挑むことにしました。ちなみにこの辺も樹林の中の草原地帯は多く牧歌的な雰囲気がある場所です。
ここから三吉ガレまでの下りが結構きついです。三吉平から静高平までの登り返しがこの光岳登山一番の難所になるので、この辺でしっかり休憩と補給を行うことをお勧めします。
午前10時00分、三吉ガレ。
易老岳の先にはシダと立ち枯れがあり、それを越えると写真の三吉ガレというポイントに到着します。眺望はよく目の前に見えるのは加加森山でしょうか?見える山は結構地味。
ガレの最低下部がこのコースでは一番低い部分となり、標高は約2,230m付近になります。スタート地点の茶臼岳が約2,600mなので、長い時間かけて400m降りてきたんだなぁと……。三吉ガレからは兎岳が見えます、聖岳が見えなくて残念。
三吉ガレからは再び登りとなります、光岳の標高は約2,600mということでここで一気に400m近く登り返すことに。深夜2時から活動しているということもあり、脚にはかなり疲れがたまっております。
すでに7時間近く登山しているわけで、普通に疲れました……。というわけで光岳登山はここが正念場です。絶対にカロリー補給しておいたほうがいい場所です。
光岳、三吉平から登り返しを越えて
午前10時30分、三吉平。
三吉ガレを越えて再び樹林に入ると徐々に標高が上がり始めます。シラビソやコメツガといった木々に覆われた、まるで奥秩父のような樹林帯を進んでいくと一気に斜度が上がり、大小さまざまな岩が積みあがる枯れ沢のような登山道へ。光岳を登っていて一番きつかったのがこの地点、最後の最後にこんな急斜面を持ってくるなんて。
一筋縄ではいかぬ光岳、最後の登りはバテバテで登るのが本当につらかった……。
静高平を目指して標高をあげていきますが……つ、つらい。石がゴロゴロと積みあがる谷底のような道から標高をあげるとどんどん景色が変わっていく。気が付けばバイケイソウが咲く草地と小川が流れる森林限界的な場所に到着。
すごい勢いで標高をあげてきたからそりゃ景色も変わるわ、滅茶苦茶息が上がった。
午前11時40分、静高平。
光岳小屋から15分ほど歩いてたどり着ける水場の場所が「静高平」と呼ばれる地点です。三吉平から登ってくる場合は急登を上り詰めた先に現れる水場に安堵感を覚えることでしょう。
名前の由来は旧制静岡高校山岳部がこの付近で野営したからとのこと、光岳手前の草原地帯とかは確かに野営はできそう。
小屋泊の方もテント泊の方も水場はここになります。三吉平から来た場合はここでその日に必要な水を汲んでいくのがおすすめです。小屋からここまで戻ってくると片道10分以上かかるので結構大変です。
水場のある静高平から少し登ると光岳小屋がすぐそこに……、すぐそこという距離なんだけど一日中歩き通したのでこの最後の距離が本当に大変。
午後12時15分、光岳小屋。
ハイマツが生い茂る登山道を進むと一直線に伸びた木道が姿を現します、この木道こそ光岳小屋のランドマーク。
光岳の湿原木道地帯はもっと長い事あるもんだと思っていたのですが、小屋前の数十メートルだけで拍子抜けしてしまった……。
宿泊人数とテント泊の人数に制限をかけていることもあり、小屋の周辺はひと気も無くひっそりと静まり返っていました。
午後12時30分、光岳山頂。
小屋にチェックインし荷物を置いて、すぐに光岳山頂へ出発です。青空の状態で光岳山頂と光石を拝みたいですし。小屋から山頂までは片道15分ということだけど、ほぼ空身で歩けば10分もかからないのではないでしょうか?
雲は多いものの、無事に晴れた光岳にやってくることが出来ましたよ……。
絶対にガスりたくなかった山頂、晴れてて本当に良かった……!
ちなみに光岳山頂は眺望ゼロで楽しい場所ではないので、景色を楽しむなら光石方面に行くのがおすすめです。
途中の展望台からは池口岳や加加森山といった山々を眺めることが出来ます。
ちなみに名前がわかるのは池口岳まで……、それ以外の深南部の青々とした山々はどれがどれだかさっぱりわからない。方角的には三百名山の黒法師岳、二百名山の大無限山などがあるらしい。
午後12時45分、光石。
山頂から15分ほどで光石に到着、山頂から「えぇ!?マジで結構下るじゃん!」と思わず文句が出る程度には降りました、帰りの登りは絶対しんどい。
光岳は山頂直下にあるこの石灰質の白い光石を持つことから明治期の陸地測量部が光岳と名付けた、ということで光岳に登ったのならば絶対に訪れたい場所でした。
確かに光岳の西側斜面には山肌から白い石灰岩の石塔がいくつも飛び出している変わった形をしてましたね……。
小屋で購入したポカリを飲みながら光石までやってきたんですが、小屋から片道30分も歩いてるから半分以上飲んでしましました、帰りの登り返しが不安です。光石に登ってみると深南部方面の青々とした山々がどこまでも続くような景色が広がっています。
グーグルアースで写真と地形を見比べて調べてみると……、不動岳、中ノ尾根山といった山々が見えていたようだ。
斜面から突き出た光石は太陽の光の下、眩しいくらい真っ白に輝いていました。
ボロボロと崩れやすい光石ですが、ひびの隙間には小さな花も咲いていたり。高山植物とは無縁の登山でしたが、ここでようやく夏山らしい花を見ることが出来たかな。
夏山一発目が光岳往復、体力をつけるために走り込みはしておいたけどやっぱりつらかった……。
午後1時10分、光石出発。
青空の元、眩いくらい白く輝く光石をしっかり楽しむことが出来ました。光岳登山でやりたいことは完了……、あとは帰るだけです。
午後1時20分、光岳。
光石から登り返すこと10分程度で光岳山頂に戻ってきました。なんかすごい晴れてて山頂も暑いです。
往路では気が付かなかったのですが、光岳山頂から東側を見ると歩いてきた稜線が見えるんですね。
あの稜線を歩いてきたのか……、ていうか約10時間前は上河内岳を目指して森林限界を歩いていたなんて信じられないな。
先ほど静高平で「水は先に汲んでおきましょう」と書きました、なぜなら僕は水を汲まずに小屋に行ったから。光石から戻り、ごはんの準備や翌日の準備をしていたら水がない事に気が付きます。宿泊客に聞いてみれば、水場は小屋の近くの崩落地を10分ほど降りるor静高平の2択だけど圧倒的に静高平がおすすめとのこと。
崩落地を降りるのは怖かったので、ビビりなRedsugarは静高平へ行くことにしました。道中イザルヶ岳分岐に差し掛かったのでついでに登頂。
イザルヶ岳ですが、光岳、小屋、聖岳方面すべてを見渡す展望台となっている場所です。山頂は石ころが転がるだけの森林限界的な様相で、光岳山頂はこっちでもいいんじゃないですかね!?と思うくらい良い場所です。
光岳で一番眺望が良いのはここに間違いない。茶臼岳からの道中だと仁田岳という圧倒的眺望強者が居るので若干霞むけど……。
翌日分併せて3リットルほど水を汲んで小屋に戻ってくる頃には15時をまわっていました、晩御飯の時間です。
なんと光岳小屋では軽食のカレーが食べれるということで、カレーとごはんを注文させて頂くことにしました。疲れた体に炭水化物+炭水化物は最高です、ごはんに梅がついてくるのもすごく良い。
カレーのごはんじゃ足りなければ白米を追加しますか?大きな梅干しもついてますよ?
あ、ありがてぇ……、おねがいします。
光岳小屋には地元の山岳会の方や、池口岳から縦走し広河原を目指す変態の方などが山談議に花を咲かせていました。山岳会の方が小屋番さんのために肉を担ぎ上げて焼肉していたのが印象的。
本当に遠かった光岳、バッジ以外にもほしいものはいろいろあったのですが手ぬぐいを購入。光石のように真っ白な手ぬぐいです。
ご飯を食べ終わり、翌日のバス時刻に合わせて帰路の確認をしていたら小屋番さんが登頂記念切符を切ってくれるというイベントが、こういう記念品ってうれしいなぁ……。光岳の小屋番さんがすごくいい人で、魅力的な小屋だなぁと思える一幕でした。
真夜中を越えて茶臼小屋を目指す
午前3時00分、光岳小屋。
おはようございます、Redsugarでございます……。光岳登山最後の一日がやってきました、畑薙大吊橋からのピストンコースではこの三日目が「一番長く歩く」わけで、初日7時間登り、二日目11時間超行動と結構歩き回ったはずだけど、今日が距離的には最強です。
忘れてはならないのが、今回の帰り道は「しずてつジャストラインのバス」を使います、バス時刻に間に合うためには光岳から畑薙ダムまで全力で歩かなければいけません、というわけで覚悟の三日目は午前3時スタートとなりました。
小屋を出てから三吉平までは凄い速度で下ってきました……、登りで苦労したということは降りは早いんだよな。
三吉ガレに来てみると夜明けを待つ南アルプス西部の山々がぼんやりと浮かび上がってきました。
森林限界の稜線であればここから楽しくいご来光タイムが始まるのですが……。
ご来光のタイミングは絶賛樹林帯の中なんだよなぁ俺。
ヘッドライトの明かりを頼りに森の中を進んでいきます、空が明るくなってきて森も目覚めてきた。明け方は不思議なことに虫や動物の声もなく、静かな森の中を進む自分の足音だけが耳に響きます。
静寂の森を歩くっていうのは凄く癒されるなぁ。
午前4時50分、易老岳。
気温も低く歩きやすい登山道をナイトハイクで軽快に進むことが出来ました。ご来光が始まったのか空は明るく、森も夜露の湿った空気が残りつつも朝の表情へと変わっていきます。
易老岳周辺は立ち枯れの木々が多く、明け方に歩いていると樹林の奥に真っ白な骨のような木々がひときわ目立ってました。
暫くするとようやく陽光が森に差し込んできます、黄金色に輝く光が水気を帯びた森を朝しか見られない美しい世界へと染め上げていきます。
草地が金色に染まっていく瞬間は本当にきれいです。樹林帯だから特に期待せずに歩いていましたが、夜明けの木漏れ日は凄い奇麗でした……。
森に差し込む黄金色の光があまりにも奇麗で、しゃがみこんで草地を観察してみると小さな苔や若芽が光を受けて黄緑色に透ける身体を目いっぱい空に向けています。きれいな光のおかげでどこを見ても美しく見える、光の中をひたすら進むこの時間はちょっと気持ちが良かったのです。
午前6時25分、希望峰。
朝焼けの中を歩き続けて1時間ほどで希望峰に到着しました、道中数枚写真は撮ったんだけど……代り映えのない樹林帯で特に語る内容が無い。きれいな光の中を歩き続けましたが1時間も歩いているとさすがに飽きるというのは間違いない。
希望峰に到着したらやっぱり仁田岳でこの登山最後の絶景を拝みたい、というか富士山が見たくなりました。バスの出発時刻まではまだ余裕があるので、仁田岳に行ってみます。
午前6時40分、仁田岳。
気持ちの良い青空、東の地平線に浮かび上がる端正な富士山のシルエット、やはり仁田岳は最高です。このルートを歩くなら仁田岳は絶対に外せない、記事を読んで光岳を目指す方は是非仁田岳を目指してほしい。
南アルプスや奥多摩奥秩父の山に登り、山頂からこの均整取れた富士山の形を見たときって……なんかすごい安心するよな。
仁田岳から聖岳を眺めるのも文句なしの後継、見たいものは見れたので思い残すことなく下山することができる。希望峰から数人の登山者が登ってきて、この仁田岳の思いもよらぬ絶景に雄たけびを上げていたのが印象的でした。
ここは景色がいいから、僕も昨日歩いたときは思わず言葉が漏れちゃったもんね。
仁田岳は本当に最高です。光岳山頂までの道中がすべて希望峰から仁田岳道中のような気分爽快な稜線であればどれほど楽しいことでしょう、茶臼小屋ピストンコースを歩く登山者には茶臼岳と仁田岳を味わい尽くしてほしいものです。
聖岳から赤石岳への縦走がやりたくてたまりません、聖岳の山頂から稜線を心行くまで歩き回りたい。
仁田岳から周囲を見渡して気が付いたのですが……はるか西に見えるのはもしかして木曾御嶽でしょうか?聖岳の眺望に気を取られていて全く気が付きませんでした。
午前7時00分、希望峰。
仁田岳を存分に堪能して希望峰に戻ってきました、ここから先は茶臼岳まで聖岳と兎岳の姿を心行くまで堪能することができます。茶臼岳に登った先は……再び長い長い樹林帯の下り道になっちゃうので、景色を目に焼き付けて歩きますよ。
茶臼小屋から歩いてくるときはそこまで眺望がいいとは思いませんでしたが、希望峰から茶臼岳への登りとなると意外に景色が良く、道も登りだと楽しくなるのだというのがわかりました。希望峰側から見る茶臼岳は登りたいという気持ちを掻き立ててくれます。
木道が現れたら茶臼岳までもう少し、この付近は歩いていてとにかく楽しく心が躍るエリアでした。
ハイマツに覆われた茶臼岳山頂に向かう道中、北側には朝を迎えた上河内岳のずっしりとした姿が現れます。茶臼小屋分岐路から続く登山道の先に聳え立つ三角形のその姿はとてもかっこいい!
やはり上河内岳は午前の時間帯に登れるといい山でしょう、午前7時から11時の登山のゴールデンタイムに歩いてみたいですね。
午前7時50分、茶臼岳。
光岳茶臼小屋ピストン登山の最後のピークである茶臼岳に到着しました。前日も素晴らしい景色を楽しませてくれた茶臼岳ですが、最終日も快晴の空と山々の景色を魅せてくれました。
茶臼岳山頂から眺める富士山は格別でした。青と白に溶ける尾根の向こうに浮かび上がるシルエット、いい景色が見れましたわ。
畑薙大吊橋を目指す根性の下山
茶臼岳を過ぎれば下り道の区間に入ります、上河内岳と聖岳の姿も見納めです。TJARの選手たちはここを走り抜けてるんだなぁ等色々想像しながら、南アルプス南部の巨大な山々の景色を撮影していきます。
午前8時20分、茶臼小屋。
宿泊客が山登りに出かけ、静かな時間が流れる茶臼小屋に戻ってきました。小屋番さんたちは憩いの時間、富士山を見ながら窓際でお茶菓子を食べているところにお邪魔して飲料水を購入させていただきました。
話が盛り上がり「窓からの景色、素敵ですね」という話題になると出てきたのが茶臼小屋の手拭いでした。なんと手拭いのデザインは茶臼小屋の窓から見た富士山、気が付いたらバッヂと共に手拭いを購入していました。なんて商売上手な小屋だ、また泊まりたい!!
ちなみに午前3時に光岳小屋を出発し5時間が経過、朝ご飯なしで5時間も歩いてようやく空腹になりました。クリフバーとコーラで朝食を楽しんでからの下山です。
茶臼小屋は本当にいい小屋でした、聖岳に行くときに茶臼小屋を経由して登って行っても楽しいと思う。下山口に書かれた言葉のようにまたお逢いできることを願います。
さて、ついにやってきた下山です、ここからが超絶長かったのよ……。
午前9時55分、横窪沢小屋。
茶臼小屋からの下りは一直線かよというくらい清々しい道でした、登りの時に斜度がつらいということは降りの速度が速いということ……三吉平への下りに合わせて本日二回目ですねこういう道。
コースタイム的にも茶臼小屋から横窪沢までは登り3時間半、下り1時間半、降り早すぎ……。九十九折の道を歩いている間は魔法にかけられたように足が進みました。
横窪沢からは若干ペースダウン、登山道の斜度は弱まり荒れた道を進むことになるので慎重に……。人工物の下りも多くなるのでこの辺りは歩いていて中々緊張感があります。
登りでは気にならなかったひしゃげた階段が、下りだと結構怖かったり。
午前10時55分、ウソッコ沢小屋。
横窪沢から先は下り道でも中々の難路ということでウソッコ沢には午前11時付近の到着となりました。ここまでくるとちょっとしたアップダウンもありますし、3日分の疲れもあって元気も品切れです。
茶臼小屋を出発するときに水を補給したのですが、予想を上回る速度でそれを消費しているのに気が付いたのはこのタイミングでした。なぜならば……思ってたより全然暑いし道が全然下ってくれない。
ウソッコ沢からヤレヤレ峠までは沢沿いをトラバースしながらいくつかの橋を渡る道、斜度はそれほどでもなく平坦な道を歩くのですが……ここで恐れていた事態が発生。
渇水!!渇水じゃぁーーーー!村の水がなくなってしまったんじゃぁああ!!(ハイドレーションの水を使い果たした)
歩きながら必死で考えましたが、少し戻って沢水をコーラのペットボトルに汲むことにしました。写真三枚目の地点(三号橋付近)で沢に降りて補給。沼平までは500mlあれば自分は大丈夫……なはずだ。
ちなみに水を汲みに三号橋まで戻ったら、写真1枚目の地点で後ろを歩いていた登山者の方が水浴びをしていました、ここは確かに水浴びしたくなる沢なんですよ。
給水後はボロボロの二号橋を渡ってヤレヤレ峠を目指します、思いのほかアップダウンがあるし……ヤレヤレ峠手前はがっつり登るんだよなぁと思いながら灼熱の森を歩きます。
山中にかかる最後の橋を越えたらヤレヤレ峠への登り区間へ、大した登りじゃないけどしんどいんだわ。
午前11時55分、ヤレヤレ峠。
心の底から「ヤレヤレだぜ……」と言いたくなりました、光岳手前の三吉平~静高平の登りといい、ヤレヤレ峠といい最後の最後に登りが待っているのは本当に辛いですね。登り終わった後の爽快感は最高に気持ちいいんだけど、登ってる最中は苦虫を噛み潰したような顔になります。
ヤレヤレ峠を越えたら崩落したトラバースを越えて畑薙大吊橋へ、最後の最後まで気が抜けねぇ……。
午後12時15分、畑薙大吊橋。
ついに登山口に戻ってきたんだ……、ヤレヤレ峠を越え辿り着いた畑薙大吊橋。あとはこの恐怖のデスブリッジを渡り切れば……沼平までは舗装路が続いています。午前3時から歩き続けて足に疲れが溜まった状態で歩く吊り橋はどんなもんだろうか。
ちょっと待って、結構びゅうびゅう吹いてるし、なんなら来た時より揺れてんだけど!?下みるとめちゃくちゃ怖くて足が震えてるんだけど!?
生きた心地がしない帰りの畑薙大吊橋でした。
午後12時50分、沼平登山口。
畑薙大吊橋を渡り切り沼平までは舗装路歩き、半分ほど歩いたところで子熊を目撃。この林道熊野出没が多いらしく、先ほど水浴びをしていた登山者は後ろからやってきた巡視員さんの車に乗せてもらって沼平まで戻ってきていました。
僕は子熊を見送った後徒歩で沼平まで戻ったのですが……、あのジムニー俺も乗せてくれよ!!!と思った。
沼平から畑薙ダムを目指すための準備をしていると、先ほどの水浴びの方が「白樺荘まで乗ってきますか?」と神の一声をかけてくれました。これには思わず「ぜひお願いいたします、神」とすぐに返答。
しかし……、白樺荘にたどり着いた我々を待っていたのは……、待っていたのは悲劇としか言いようのない現実だったんだよッ!!!
え!?休み!!??ドウイウコト!!??ナンデ!?ナンデ!?
日本語が崩壊するレベルでショックでした、休憩はできるということで中に入ってみるも……メンテナンスでお湯を抜いてて今日はお風呂に入れないんだとか。さすがに真夏の南アルプス南部を3日間歩き通して風呂キャンセルは……街では人権が無い。
白樺荘ではバスを待つ登山者が僕以外に2人ほど、全員温泉のために茶臼小屋から死に物狂いで下山してきたということでした。そんな我々を見かねて、職員の方が
シャワーで汗を流すだけなら大丈夫ですけどいかがですか?
え??あなた神か仏なんです??マジで?ドウシテ??
ルールが厳しい令和の世ですが、人情ってまだ生きてたんだ……と思う出来事でした。「白樺荘 is 神」と鼻水と涙を流しながらシャワーで三日分の垢を流したRedsugarは風呂上がりのスーパードライをキメて満面の笑みを浮かべていたとさ。
ちなみにですが、畑薙ダムから白樺荘までは4キロほどあり、徒歩で行くと50分はかかります。今回は沼平で車に乗せてくれた方のおかげで辿り着くことが出来ましたが、この記事の登山工程では本来到着することは不可能でした……。(当初予定ではダムでバス乗車、静岡駅から徒歩15分の桜湯を目指していました)
午後2時35分出発のしずてつジャストライン静岡駅行きに乗車し帰路につきます。当初予定ではこのバスに乗るのは畑薙第一ダムで汗まみれだったはずだが……風呂上がりでさっぱりした状態なのが本当にうれしい限り。
乗車時間は2時間強、静岡駅には18時前に到着といったところです。
風呂に入る時間が削れたおかげでご飯を食べる時間が出来ました。事前に調べていた静岡駅前のマグロ丼の名店「清水港みなみ」さんへ向かいます。
ちなみに縦走下山後にバカでかいザックを背負ってお店に入るのがなんか申し訳ないなと思っていたのですが、UL装備を頑張るとザックサイズが40リットル程度に収まるので、気兼ねなく突撃できるようになりました。
海鮮丼で有名な清水港みなみさんですが、ランチ営業は終了して夜の居酒屋メニューになっていました。マグロ丼を食べようと思っていたのでこれはショック!!ですが、海鮮丼の名店となれば夜のメニューは最高なはず……、ネギとろ巻、マグロ照り焼き、生ビールを注文し光岳晴天祝いを楽しみます。
まずはネギトロ、マグロの味がすっげぇしっかりしててびっくりした。ちょっと普段行く回転ずしとは比較にならない、本当に美味しいよこれ。
次にやってきたのはマグロ照り焼き、結構なボリュームで満足感があります。ホロホロとした身をほぐすと湯気が立ち上がり食欲をそそります。口に入れるとマグロの油がじわっと下に広がり、食べ応え抜群なマグロの肉を噛めば噛むほど味が染みてくる……!!
もう一度食べたい逸品、次回も南アルプス南部に行くことがあれば帰りは清水港みなみさんで豪遊したい。他にも食べたいメニューは沢山、ここは超おすすめですよ!
清水港みなみさんを後にした僕は静岡駅へ向かい新幹線を待つのですが……、おかしいな?ご飯を食べた直後なのに腹が減る。ということで駅のテナントで気が付けばラーメンを食べていました、登山って怖ろしいですね。
登山がやせるっていうのは間違いだと思うんだ。確かに当日の消費カロリーは多いが、その分下山後数日はドカ食いするし登山中の行動食は高カロリーだったりする、だから週1回程度の登山じゃ全然痩せない。
静岡駅でおなか一杯ご飯を食べた後は新幹線で東京駅に帰るだけです。自走だったら間違いなく高速渋滞に巻き込まれていたと思うけど、渋滞とは無縁かつ1時間半ほどで到着なんて……新幹線はやっぱり最高です。
こうして2泊3日にわたる南アルプス南部光岳ピストン登山は終了となり、これにて日本百名山のアルプスエリアをすべて快晴の元登り切ることが出来ました。長かったぁ!!!!
全山頂快晴に拘って登ってきたけど、15年から23年まで8年もかかっちゃいましたね……。光岳が晴れてくれて本当に良かったです。
コメント