2018年7月16日、南アルプス南部赤石岳に登ってきました。
前回の記事からの続きとなる南アルプス南部周回縦走、本日は四日目「赤石岳下山編」となります。
南アルプス南部の盟主赤石岳、その山頂には赤石岳避難小屋と呼ばれる避難小屋にしてはめちゃくちゃ奇麗な有人の運営小屋が存在しています。
前日、30人ほどのキャパシティに対して100人越えの宿泊者を記録していたため赤石小屋に下山していた僕は何としても赤石岳山頂からのご来光を拝むために。
怒りのナイトハイクを行うことを決意しました。
赤石小屋から登る赤石岳、ナイトハイクの末にたどり着いたのは黄金の朝。
そして、赤石岳から椹島へ向かうバカ尾根「大倉尾根」の無限に同じ景色の続く下山でした。
悪沢岳、赤石岳周回縦走について
憤怒のナイトハイク、赤石岳ご来光を求めて。
2018年7月16日午前1時15分、赤石小屋前。
おはようございます……、Redsugarです。
深夜に何をやっているのか、詳しくは前日の記事をご覧になっていただきたい。
この記事でも何度も、そうすでにイントロで2回も書きましたが
「赤石岳避難小屋に3倍以上の人が流れ込んでとてもじゃないけど泊まれねぇ―んだよ」
という百名山によくあるオーバーツーリズム現象が発生したため、赤石小屋に下山してきました。
しかし、神は僕を見捨てなかった。
赤石小屋で出会った青年と意気投合した僕は深夜12時にゾンビのように起き上がり、そして今深夜1時、ご来光を目指して旅立とうとしているのです。
ナイトハイク、それは慣れてなければめちゃくちゃ怖いし、危ない登山。
後ろから何か追いかけてきていないか、怪異に怯える。
ガサガサと音がする、熊とか猪とか、あとはやべー人間じゃなければいいな。
道が細い、足を踏み外さないように、上からの落石に気を付けても無理ゲーだな。
等といった恐怖と戦いながら登ることになります。
ちなみに経験上夏と冬だと冬のほうが装備の攻撃力(主に蹴り)が高いので怖くありません。
はい、冗談はほどほどに、ナイトハイクをする場合は知らない道でやると危険です。
今回は下山時に道の状態を記録し、登れるかを自分的に値踏みしてから登っています。
写真だとかなり暗いのですが、実際はヘッドライトが二灯ある状態でかなり歩きやすい状態で登ることが可能でした。
ただ、明るすぎて虫がめちゃくちゃ寄ってくるのが非常に不快でした。
赤石小屋からの樹林帯は虫が多く非常に精神力をすり減らされました、蛾ファック。
ですが、無事に稜線に出るころには虫もおらず快適な環境に、これだよこれこれ。
午前4時00分、赤石岳山頂。
ご来光30分前ほどの赤石岳山頂、無事予定通りに山頂に到着しました。
赤石小屋に不要な荷物をデポして全力で登ってきたので、時間も余裕がありました。
「せっかくなので小屋の様子を見てみよう」
赤石小屋から同行してくれた青年と共に赤石岳避難小屋に行ってみれば、多くの人が登山準備をしていました、聞けば宿泊者数120人ほど。
寝れましたか?と聞けば何とか寝れたのことでした。すし詰めでお肌とお肌が触れ合う感じで寝ていたとのことで、めちゃくちゃ暑かったそうです。
さて、どこでご来光を見ようか?という話になったのですが、やはり山頂がいいよねということになり赤石岳の山頂に戻ってきました。目の前には富士山が雲から顔を出しております。
中央アルプス方面は静寂に包まれているといっていいような景色。真っ青な空気の中に恵那山と中央アルプスの稜線が浮き上がります。
午前4時25分、ご来光開始。
夏のご来光、7月のご来光は4時半前後。
東の空がオレンジ色に焼け、ここから1時間ほど楽しめる朝焼けタイムが始まります。冬に比べると夏はこういった夜と昼のはざまの時間が長くていいですね。
歓喜の朝焼け、赤石岳ご来光
ゆっくりと空の色が明るくなり、青はペールトーンの水色に向かって白く濁っていきます。
写真を撮るよりも景色を眺めているのが楽しくて、ぼーっと立っていました。身体が太陽を待っている、日差しを浴びた瞬間にあったかくなるその時。あの朝日が照り付けた瞬間に感じる温かさと、湧き出る元気は不思議なものです。
ご来光のタイミング、みんなが一斉に歓声を上げます。
脇を見れば避難小屋の先にある展望台的な場所にも人が。あちらは人もまばらで空いてて良いですね、今度行くときはあそこから見たいな。
午前4時40分、ご来光。
地平線の向こうから黄金の太陽が姿を表しました。この4日間、稜線にいる間は毎日ご来光を拝むことができました、ありがてえ。
赤石岳からのご来光は目の前の富士山と悪沢岳方面を明るく照らします。
地形的にはそんなに南ア南部が見えるわけではないので、山頂からの展望ということで言えば悪沢岳のほうがいいかもしれない。
空が金色に染まります、あたり一面黄金に輝く朝です。
明け方から午前の陽光は金色らしいです、そういったことを意識してカメラの設定をいじるといいかもしれませんね。
ご来光を眺めながら食べるパンは格別です。
別に美味しいわけではないんだけれども。何というか、思い出すとエモいのです。
重ねて言っておきますが決して美味しいわけではございません、温かいコーヒーがあれば美味しいかもしれないけど。
朝日に照らされて、登山者たちが悪沢岳に向かって行きます。
赤石岳避難小屋に宿泊していた殆どの方は時計回りで周回する方々だったようで、これから悪沢岳とおっしゃっていました。
後光指す赤石岳山頂、太陽の光の輪が神々しい景色を演出していました。
太陽が上がりきると今度は全体的な色が薄れて穏やかな景色が広がります。
すべてが美しいタイミングなのですが、やっぱり色の強い時間に目が惹かれる……。
けれども、こういう時間をいいなと思えるのは一息ついたこういう景色のときかもしれません。
劇的なドラマは興奮を与えてくれるけども、落ち着きのあるドラマはずっと見ていたいと思わせてくれる。
午前5時15分、下山開始。
さて、あらかた撮影は終了したので下山することにしましょう。
山の上の天気は下り坂と聞いていたので、午前のうちに標高を下げることにしました。
さようなら、赤石岳。
下山、名残惜しさに後ろ髪を引かれて
さて、赤石岳からの下山はなんと二回目です。
なんで連日赤石岳を登ったり降りたりしているんだ僕は。ガレ場が本当にキツいなと思いながら、せっせと下山していきます。
夜露の影響で道が大変滑りやすくなっておりますお客様!お客様、あっあーーー!
ということが発生しないように慎重に降りましょう。
午前5時30分、祝杯。
「あれ、勝どきあげてませんよね?!」
一緒に登ってくれた青年がここで思い出したかのように山頂で朝日を見ながら開けようと約束していた炭酸に手を付けていないことに気が付きます。無事ご来光を眺めることができたということで、祝の微炭酸をいただきました。
谷のそこは真っ暗、きっと椹島はまだ暗いのでしょう。
一部こういう道がありますが、怖くはない。
濡れててファックだなとは思いましたが。
昨日歩いているから知ってはいる、ここは赤石小屋まで基本的にはつまらない。
富士見平付近で最後の見晴らしです。
空にはいつの間にか雲がたくさん、柔らかい光が差し込んできます。
悪沢岳には本当にお世話になりました、ありがとうございます。
午前6時35分、富士見平。
富士見平で富士山を確認し、少しばかりの休憩をとったら下山再開です。
ここで赤石岳ともお別れですね。南アルプスの盟主、今度は聖岳側から歩いてみたいです。
樹林帯を下り小屋まで降りてきました、小屋は下山準備をする方々で賑わっている状況。
余裕のある工程です、そういうのいいなぁ……。
午前7時15分、赤石小屋。
小屋にデポしていた寝具などを回収しパッキング。そして朝ごはんを食べて補給を完了させたら下山開始です。
世にも奇妙な物語、景色かわらぬ大倉尾根
赤石岳の下りは東尾根(大倉尾根)と呼ばれる「コースタイムがすごく長い坂」を下ります。
降って思ったのが「すごいバカ尾根」だということです。
もう本当に、本当に雰囲気がずーっと変わりません、実際には植生は変わってるんですけどね。普通に歩くとかなり辛いのではないでしょうか?
僕たち二人はもはや無言で、ひたすら下山していきます、下山はスポーツ。
この長大な尾根をひたすら、ノンストップで下山すれば人によっては膝を壊してしまうかもしれません。
斜度はそこまで急ではなく、なだらかな尾根道。
それ故に全然先に勧めている気がしません。奥秩父のようなシラビソ林を抜けたなーと思っても、森深い場所が続きます。まるで瞑想状態かのように、歩く音がリズムを刻みトランスしていきます。
8ビートを刻む下山の足音、木漏れ日と踏み鳴らされた山道が永遠と続く。
「なん……だと……」
心をへし折る標識です、こんなに降りたのにまだまだじゃないか!下山で心がベキンッと音を立ててへし折られるってなかなかありません。
樺段……、地図で確認したけどまだまだ椹島まで距離がある……。
ついに1/5までやってきました、僕の膝はすっかり温まっていてトランス状態。
このまま静岡市まで歩けそうな気持ちよさです。
「くそ、静岡県だそ!なんでこんな奥多摩みたいな景色が広がってんだ!」
奥多摩はとてもいいところです。いいところなんですけどだいたい南アルプスの植林地帯に来ると、この言葉が出るのではないでしょうか、辛い。
そしてついに現れた林道。人間の営みのしっぽを掴むということはこの下山において希望に満ち溢れた報せです。
神社を過ぎて椹島が見えてきました、ついに、ついにやったぞ!!
俺は文明に帰ってきたんだ!文明が好きなわけではありませんが、お風呂は大好きです。
早く俺にお湯を浴びさせてくれ!
午前9時20分、椹島。
無事に下山です、椹島には多くの下山者が集い、バスを待っているようでした。
この日、赤石小屋を出て赤石岳に行ってから下山してきたのは僕たち二人だけでした。
本当に、頑張りました。
下山、帰ってきた下界の空気
下山したらまず風呂に入りたい、当たり前です。
すでに四日目に入ろうというこの日、僕の身体は大丈夫なのか、臭くないのか本当に不安になりました。
でももう大丈夫、お風呂がすぐそばにあるからね。
椹島でバスの受付を済ませてシャワーへと急ぎます、早くシャワーを浴びないとバスに乗れなくなってしまいます。
シャワーはこちらの宿泊用の施設。
施設の中はこんな感じ、町内会館っていう感じですね。待ちにまったお風呂、こちらでしっかりと汗を洗い流します。
シャワーを浴びて最初に言う言葉はいつも決まっています。
「しょっぱッ!!!!!」
四日間の僕の濃縮された塩水の味でした。
シャワーを浴びて生まれ変わったように、まるで解脱した僧侶のような気持で、フワフワと浮ついた足取りで風呂から帰ってくると自販機が目に入りました。どれどれと商品を見てみて驚愕です、め……めちゃくちゃ安いやんか……!!
鳳凰山の登山口にあった自販機よりも安いのは間違いない、いったいどうなっているんだ?!
気が付けばコーラを一本飲み干していました。
椹島に戻り、バスが来るまでレストハウスを見学します。
レストハウスのお土産やグッズはどちらかというと赤石岳推しのようですね。
個人的には悪沢岳が山としては好きです、なんたって赤石岳をめちゃくちゃ奇麗に拝めるから。
下山後、風呂上りと来たらもちろんソフトクリームですね。
下山後にソフトクリームを食べる人といえば割と僕のことだと思うのですが、最近誰でもソフトクリームを食べているのでオレオレ!おれだよ!といいにくくなりました。地味に悲しい。
バスが来るまでの椹島はアウトドアマンの楽園の様相です。
標高1000mと少しでクッソ暑いんですけど、木陰はまだマシなので寝てる人もいます。南アルプスの登山スタート地点が軒並み標高低いの本当につらい。
午前11時30分、下山完了。
驚異的な振動のバスでしたが、無事に駐車場へと戻れました。
復路はちゃんとした席だったので、補助席のようなクッションゼロの席で
お尻が破壊されることもなかったのが救いでした……。
「いつかまた、どこかの山で!」
夜の登山から朝の下山まで、短い時間を一緒に過ごした青年と分かれて各々の帰路につきます。
僕も同じくらいの年から登山やっていたかったなとしみじみとしながら車のエンジンを回します。
駐車場を出発したらあとは温泉まで一直線。
南アルプス赤石温泉 白樺荘までやってきました。
椹島では風呂といっても軽く汗を流しただけ、本格的な温泉に入りたい。駐車場から帰る途中にあるこの温泉には南アルプス登山帰りの登山者が集まります。風呂に入ればほとんどが登山者、皆さん自分たちのルートがどうだったかの話で盛り上がっていました。
この温泉の良い所は風呂上りにそのままご飯が食べれるところ。
お魚の乗った美味しい定食でおなかを満たして、この後にやってくる渋滞と戦う準備をしましょう。
グッバイ南アルプス南部!
という気持ちで最後に撮影した写真がこちら、ブルゾン……。2018年らしい景色となった一枚でした。
この後無事東名高速の渋滞に巻き込まれ、海老名まで数時間の渋滞。
そこから圏央道で何とか家にたどり着いたころにはすでに夜中となっていました。
3泊4日、戦い切った僕は無事に家に帰れたことを喜び、翌週の登山に備えるのでした。
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