2022年8月8日から9日にかけて、南アルプスにある百名山「鳳凰三山」を歩いてきました。
最高峰は観音岳の2,841mになりますが、みんなが覚えてるのは象徴となるオベリスクがある地蔵岳な山です。
鳳凰三山は以前青木鉱泉スタート、ドンドコ沢を登って地蔵岳から薬師岳まで歩いて中道登山道を使って青木鉱泉へ戻るという10時間越えの日帰り登山で歩いていますが、日帰りで行くなんてもったいなさすぎる山だった。
今回は定番の夜叉神峠スタートで南御室小屋テント泊、からの鳳凰三山縦走御座石温泉下山という定番中の定番ルートになります。定番ルートには定番になる良さがあります、王道って落ち着くなぁ……という気持ちになれるのがこの南御室小屋利用のテント泊ルートです。
モンベルをメインとしたUL装備を導入して歩いてみた初めてのドームシェルター泊の快適さにも驚きました。
中々情報が転がっていないULドームシェルター、この鳳凰山以降は結構ちゃんと使っていますが雨が少ないときは背負って良し使って良しな自立式ツェルトでした。
今回は自走+電車を利用したちょっとリッチな縦走登山、南アルプス行の夜行バスを逃したときは是非参考にしてほしい。
鳳凰三山テント泊登山の概要
夜叉神峠から登る鳳凰三山
2022年8月8日午前5時15分、談合坂SA。
おはようございます、Redsugarでございます。
鳳凰三山を夜叉神峠から登ろうと思いやってきました韮崎駅。アクセスを色々調べたんですけど、埼玉東京から夜叉神峠行きのバスを利用する場合って意外に難しくて、一番簡単な回答が甲府前泊を利用した始発バス乗車というものでした。何とか快適に縦走登山を楽しみたいなぁと考えた結果、韮崎に車を置いて甲府からバスに乗るのがいいかなーと思って実行したのが今回のプラン。
登山前後の旅感は半減しちゃうけど、登山後に色々ご飯の工夫はできるから公共交通機関にこだわりのない人にはお勧めできるかなぁ。
韮崎駅のタイムスに車を止めて、そこから電車で甲府へと戻るテクニカルプラン。車+電車は実はいろんなところで使える。
午前6時50分、甲府発広河原行きバス乗車。
甲府駅前に到着すると……夏だからか山梨の若者たちが飲んだくれて駅前広場で野宿していたりとハッピーな景色が広がっていました。その傍らにテント用ザックを抱えた登山者たちがバスを待っている。
時間が来ると係員がバスから降りてきて料金を回収し始めます、行き先を伝えてチケットをその場で購入してバスに乗車。ここは現金を使うので財布にちゃんとお金を入れておくのがおすすめ。
午前8時10分、夜叉神峠。
南アルプススーパー林道を駆け上がるバスに揺られて夜叉神峠へ到着。
自走で来た事あるけど、吐き気を催すワインディングと車にいつ石が落ちてくるか冷や冷やするような山間の道を走ることもあり、バスで来るって神経使わなくて本当に楽だなーと改めて思いましたよ私は。
意外に夜叉神峠で降りる人は少なかった。みんな広河原へ向かって行ったよ……。
夜叉神ヒュッテ前の自動販売機で登山前の最後のビタミン補給と思ってトマトジュースをキメました。真夏ということもあり汗もすごい出ることでしょう、スタート前にしっかりと水分補給。
夜叉神ヒュッテ前の登山口から入山し目指すは南御室小屋、というわけでプレイボールです。
最近の日本の気候は真夏は本当に暑いし、冬は暖かくて雪が全く降りませんね。
夏山はどういうことになっているかというと、夏は朝しか晴れないっていうことが増えた気がします。
というわけで鳳凰三山初日の南御室小屋までの道のりですが、全然ガスっても大丈夫な樹林帯を5時間くらい歩き続ける感じになります。
二日目に晴れれば初日は曇っててもいい、そう考えて歩けるのがこのコースの良い所!
モイスチャーって言葉が口からもれちゃうくらいガス、めっちゃガス。懐かしのミル姉さんの真似をしてテンションを保ちながら歩くRedsugar、はたから見ると不審な人物にしか見えなかったことでしょう。
とっても真っ白な景色だったからつい……
ガスの中の森は逆に光に満ち溢れてます、あたり一面パァッと光が回っているので逆に明るくて歩きやすい。
ただ……ミストサウナだよなこれ?ミストサウナっぽいよ!?という程度に暑い。
神々しいミストサウナの中を進む、夜叉神の小屋まではなかなか涼しくならなくて困った。
道中、闇が濃くなるとなかなかミステリアスというか、ちょっと怖い景色も広がってしまう。
ガスガスの登山道を観察しているとサルオガセモドキのようなものが木々にぶら下がっているのがわかる。
よくガスもかかる場所だから、根じゃなくて大気から水を吸うような植物も元気っていうことですね。
午前9時45分、夜叉神峠小屋。
夜叉神ヒュッテから約1時間ほどで夜叉神峠に到着。ヤマテン契約していると南アルプス北部の予報を見るときにいっつもここから西側を見たライブカメラの画像を目にしますね、夏場になるとみる機会が本当に増えるやつ。
登山前にしっかりと補給をしていたこともあり、このまま杖立峠に向かって進むことにしました。
ガスの森を抜けて南御室小屋へ
夜叉神峠から杖立峠まではコースタイムで2時間ほどになります。
樹林帯のなだらかな登りを延々登り続けるという「最初からつらいことが分かっている道」でもありますので、ゆっくりと歩くのがいいよ、本当にここは急いでもいいことがない。
樹木のトンネルのような道をひたすら歩き続ける。幸いなことにULテント装備ということで装備重量が日帰りと大差ないから体力的には余裕がある状態で進めますけど……、これがクラシックテント装備だったらかなりメンタルがやられそう。
午前11時00分、杖立峠。
夜叉神峠小屋から1時間15分くらいで杖立峠に到着……45分も巻けるんだからこの区間相当歩きやすかった。
あとはコースタイムがテント用の重装備ベースで考えられていたか?
夜叉神峠小屋が約1,800m地点で、杖立峠が約2,200mだから標高差はそんなにあるわけではない、つまり平坦だったのも影響しているんでしょう。
杖立峠からは苺平を目指して再び深い深い樹林帯を進みます。杖立峠を越えると樹木がシラビソコメツガ的なものに変わるのと、足元はコケがメインになってきますね、標高の変化に合わせて植生ががらりと変わるのでこの辺は歩いていて楽しいものがあります。
登山道沿いに時たま現れるエイリアンのような木の根、こういうものにいちいち突っ込みを入れていかないと気力が持たない程度にはこの樹林の牢獄はつらいものがある。
南御室小屋までは歩いているときは楽しいのです、楽しいんだけど……修業的な楽しさなので万人が楽しいかはなかなか疑問。楽に稜線上がっていい景色いぇーい!っていう感じとは無縁の、内省的で森が心の傷をいやしてくれるような時間が流れる。
この道はマラソンに近い。何考えてるのって言われると仕事や家族のことを頭の中で整理してるもんね、体動かしてるとだんだん「十分考えたからもういいや」って感じで解決してないけどすっきりするっていうやつ。
南御室小屋を目指す数名の登山者とあいさつを交わしながらゆっくりと森の音を楽しみながら進む。
時折風が吹くとザーザー波のような風の音がするし、鳥のさえずりと自分の歩く音だけしか聞こえないっていうのは本当に落ち着くものよ。
登山者を招き入れるのはどこまでも静かな森、森の胎内へ潜っていくようだ。
午後12時35分、苺平。
杖立峠から一時間半、苺平までは結構な距離を歩いた気がする。
登山口で補給して以降は水しか飲んでいなかったのだが、さすがに苺平では疲れたので小休憩。
夜叉神峠を利用した鳳凰三山登山は最初の苺平までがやっぱり大変なんだなぁ……と改めて理解できた。
ここからわき道にそれて辻山っていうポイントに行くか迷ったんだけど、空がガスっていることは理解できたのでやめてしまった。意外に疲れちゃってたのよね、苺平まで結構大変だったから。
本日の装備紹介だが、ついに赤くないザックを使ってしまった。Redsugarではとても珍しい赤じゃないザックである。UL装備を始めようと思っていろいろ探したんだけどさ、ガレージブランドって基本高いじゃないですか全部。
最初は山と道のMINIやONEを買おうかなと思ったんですけど、値段、重さ、普及率を考えるとどうも手が出ない。
どうせなら赤いのが欲しいのでオーダーメイドが良かったんだけど時期が合わないなぁ……ということでバランスを考えるとモンベルだろうということで22年からモデルチェンジしたバーサライトパック40を購入した。
以前のバーサライトに比べると背中のパットが改良されたこともあり背負い心地が超改善された。重量が400g台になったこと以上にこの背中のパットの改善は大きかったと思う。
モンベルのULシリーズはガチなUL装備に比べると若干重いけど、素人が手を出しても壊れにくかったり使い勝手の部分で気を使う必要性がそこまでないことがいい部分だと思う。バーサライトパックの新調と共にテントもULドームシェルター2型を導入したが、これは後程使い心地をレポートする。
南御室小屋が近づいてくると周囲はトリックアートのような景色が広がってくる。
人間の目は二つあって遠近感を理解できるので、歩いていると普通なんだけど……絞りに絞ったカメラで撮影するとあら不思議、模様に還元された風景が現れる。
それくらい木々が密集してひしめき合っているのよこの辺……。
南御室小屋に使づくころには地面はふかふかのコケに覆われており、高所感が抜群の森となるためだいぶ涼しい。
それを証明するかのように、夜はすっげー寒かった……真夏だけどここは夜寒いわ。
午後1時15分、南御室小屋。
苺平から小一時間ほどで南御室小屋へと到着。広いテント場が特徴的な鳳凰三山のオアシスともいえる場所。
テント場は空が開けたポイントと森の中があるんだけど、今回はシングルウォールのツェルトになるから森の中に設営。このモンベルのULドームシェルターは総重量770gの自立式ツェルトで、晴れている登山であれば心強い味方になってくれるナイスな道具だ。一人用に特化しているんだけど、ULザックと組み合わせて使えば全然使える広さだと思う。
難点はシングルウォールゆえの結露と、耐水圧の関係で雨が怖い所かなぁ……。でも、こういう夏場で晴れ前提、夕立が来ても森の中でダメージが抑えられる条件がそろってるならとてもいい道具かなと思う。
Redsugarはモンベルを重用している、だって大体何でもそろうし安いし、赤が置いてあるし。
ベーコントマトクリームのリゾッタは美味しいし、というわけで大量のベーコントマトクリームリゾッタを持ってきた。リゾッタは全種類食べたがこれが一番おいしい、これ以外はぶっちゃけ買わなくていいっていうくらいおすすな味だ。
コーラと合わせて腹いっぱいにご飯を食べて午後3時くらいなんだけど、なんか急に寒くなってきたし夕立が降ってきた……テントに戻る。
お隣さんのステラリッジテントが様になってるなぁと思いながら、私はシングルウォールのシェルターへと戻ります。うう、シングルウォールって寒いんだなぁ……。
ULドームシェルター1の内部ですがこんな感じです。Redsugarは身長175㎝で体重は65㎏くらいですが全然余裕がある状況でした。広さは問題ないんだけど……やっぱり温度調整が難しいね。
換気は問題ないんだけど、熱がこもりやすく冷めやすいのは驚いた。気温が下がると急速にその影響を受けるので夜は寒くなるだろうなぁ。
昼にベーコントマトクリームリゾッタを食べたんだけど、おなかがすいたから夜寝る前ももう一食分ベーコントマトクリームリゾッタをキメました。夕方になって気温も下がってきたことですし、夏用に新調したダウンハガー#7に潜り込んで寝ることにしました。
が、夜中に寒くて目を覚ますことになってしまいます、今回UL装備新調ということで用意したバーサライトパック40、ULドームシェルター1、ダウンハガー#7という組み合わせですが……寝袋はさすがに寒かったので、ダウン量がもう少し多いモデルにしたほうがいいかなーというのが反省点でした。
白亜の鳳凰三山を歩く
午前2時45分、南御室小屋テント場。
朝起きたら滅茶苦茶寒くてびっくりしました、Redsugarです。
真夏だよな今??滅茶苦茶寒くないか!?とビビっています。なんでこんなに寒いのか考えたらシングルウォール+ダウンハガー#7という2,000m以下対応のシュラフだったからというのが一番理由としては納得ができるかなと……。
この時、フリース一枚着た程度で足元は寝巻として使っていたモンベルのジオライン一枚だったので、本当にえらい寒い思いをしました。
すぐにお湯を沸かしてリゾッタを食べて体を温めましたね……、登山服を着たらすぐに暖かくなったからよかったけども。南御室小屋のテント場って寒いんだなぁと思いました。
午前4時00分、南御室小屋出発。
朝食を食べ、テントを片付けて登山準備を整えたらすぐに出発です。テントの中でもぞもぞと起きてから出発まで1時間以上かけてしまいました……、だって眠いし寒いんだもんな。
午後6時くらいには寝てたと思うんだけど、歩いた日の睡眠が8時間強だとちょっと眠いんだよね。
ヘッデンをつけて稜線に向かって歩くのですが、道中の視界は写真のような感じ。
高山地帯は逆に怖くない。低い場所の夜のほうがよっぽど怖いのがナイトハイクの特徴だと思う。
夜が明けてくる頃には稜線へとたどり着きました。
南御室小屋から稜線へ上がるとまず薬師岳の稜線へと出ます。花崗岩が風化した白砂の稜線への入り口。
鳳凰三山の稜線に上がると白砂のビーチのような地面がお迎えしてくれました。
どうやら夜明け前に稜線へ上がることが出来たらしい。
東の空を見ると丸い太陽が水平線から顔を出したタイミングだったようです。ご来光はいつ見ても神々しい。
鳳凰三山の稜線で見るご来光は渋い……稜線を見渡すと点在する花崗岩がどれもシンボリックに見えるが、それがなおのこと印象的に見えてきます。
岩の隙間から垣間見える稜線の針葉樹たちは朝露の影響もありみんなキラキラしていました。
午前5時35分、薬師岳。
鳳凰三山で宿泊してみたい宿No.1である薬師岳小屋なんですが、予約競争に勝つことが出来ません。
今回も元々はこちらのお宿にお世話になってみたかったんだけど……予約取れなくてテントを背負うことに。
がらりと小屋の中をのぞかせていただきましたが、繁盛しているらしく朝ごはんで小屋番さんが忙しそうに駆け回っていました。
立地的にすごくいい場所にあるから、いつかここには泊まってみたいなと思う。
薬師岳はハイマツが生える砂地の上に特徴的な花崗岩が点在するスピリチュアルな景色が広がっています。
大地の力を感じるというか、神秘的な雰囲気を多分に感じることが出来るところだなぁと感じる。
薬師岳からは白亜の稜線を歩いて最高峰観音岳を目指します。道のり的には登り45分ほどですが……正直大した距離ではないです。御覧の通り薬師岳到着時点では結構ガスが多かったこともあり、観音岳まではゆっくりと歩くことにしました。
ガス取れて晴れろガス取れて晴れろ……!!
薬師岳の稜線には小さなオベリスクのような岩も点在しています。朝焼けとうっすらとかかる靄の中に浮かび上がるそれらを見ていると稜線は確かに天上の世界、須弥山と昔の人が例えたりしたんじゃないか?と思えるような幻想的な景色が広がります。
鳳凰三山はほかの南アルプスの山とちょっと雰囲気が違う。自然への畏れがただの「大自然的」ではなく「宗教的」な側面を持って現れる感じがある。山の名前にも納得できるような世界が稜線に広がっているなぁ……。
砂地は花崗岩がボロボロと崩れて出来たもので、わずかな栄養素を吸い上げるようにトウヤクリンドウが点在して咲いている。
稜線上には花崗岩が風化してできた砂地と、そこで生きるわずかな草花がある。
歩きながらあたりを見回してみると、どれもお地蔵さんのような佇まいで登山者を眺めているよう。
流れていくガスが中々取れない。目の前の観音岳まで普通に歩いたら曇り空のまま山頂に到着かぁ……それは嫌だなぁと考えていたけど。そういった思いは杞憂に終わることになる。
ハッピーなパンツをはいたおじさんハイカーがさっそうと観音岳に向かうと同時に晴れていく空。
南国めいた服装に高気圧めいたにこやかな顔がガスを吹き飛ばしたとしか思えない……!
Redsugarも人間高気圧のはしくれだと思っているが、この時ばかりはおじさんがうらやましくなりました。
流れていく雲の向こうから現れる青空。上下を雲に挟まれるこの景色は登山じゃないとみることが出来ない珍しい景色なんじゃないかなと。なんというか、天と地の狭間にいる感覚が最高に気持ちがいいのですよ。
晴れてきた空の下、気分も明るく晴れ上がってきました。
観音岳まで駆け上がると荷物を下ろし、雲がかかるほかの南アルプスの山を眺めながら朝食タイムを楽しむことにしました。
午前6時45分、観音岳。
行動食を口にしながらあたりを見回すと、鳳凰三山で最も特徴的な地蔵岳が稜線の向こうにはっきりと見えました。
最高峰は観音岳だけど、鳳凰三山といえば地蔵岳。稜線歩きにおいては薬師岳から観音岳は快適で優しさに満ち溢れていましたが、観音岳から地蔵岳は中々アップダウンもあり歯応えのある道が続きます。
地蔵岳のオベリスクを目指して
8月9日のコンディションは奇跡的でした。鳳凰三山の稜線は晴れてますが、南アルプス本体の稜線には分厚い雲がかかってしまっていたのです。朝早い時間帯は鳳凰三山にも雲がかかっていて強いコントラストが稜線に現れていました。
おかげでかっけぇ鳳凰三山の稜線を見ることが出来たんだけども
観音岳は良い山でした……、鳳凰三山の中では歩きやすさと楽しさで考えるとやはり薬師岳と観音岳です。
歩きやすいし、景色はきれいだし、歩いていて気持ちがいい道が続くのがここです。
地蔵岳までの道のりは少し険しくなります、アップダウンも薬師岳から観音岳に比べると激しく長い。
白砂と花崗岩が作り出す急な坂を降ったり登ったりしながら地蔵岳を目指します。
鳳凰小屋から歩いてくる人々とすれ違いながら、見晴らしのいい場所で真正面にとらえた地蔵岳。
ここしか無いだろと思い三脚を立てて自撮りをしてみる。やはり……青いザックは新鮮な感じがする。
地蔵岳手前でぐっと降りてから登り返す感じになっていますが、見た目通りあそこは結構つらい。
鳳凰三山の稜線はビーチです。日向山や甲斐駒ヶ岳もビーチみたいな稜線を楽しめますが、一番ビーチっぽい雰囲気を長いこと楽しむことが出来るのは鳳凰三山でしょう。このビーチですが、場所によっては一歩進んでも半歩くらいずり落ちるので辛いんだなこれが。
一番つらいのが鳳凰小屋から地蔵岳への登り……。砂地に殺意を感じる。
あの区間が下りになるというのが夜叉神峠からの縦走の良い所だなぁ……って思います。
風光明媚な白亜の稜線を歩く登山者はみなにこやかな顔をしていました。この山稜線は本当にきれいだし、歩いていて稜線だけ世界観が違う感じがして本当に良いんですよね。
観音岳から地蔵岳の間の区間にある特徴的な松。風雨の影響を長年受けてきたんでしょうけど、見事な盆栽みたいになっています。似たような松として吾妻五葉松というものがありまして、一切経山に生えてる松なんですけど風雨で根あがりしている状況になっています。盆栽ではそれを人工的に再現しようとするのですが、天然でそれを思う存分見れるのが登山の良い所。
地蔵岳に近づいてくるとオベリスクがより鮮明に見えてくる。
地蔵岳前の分岐点、赤抜沢ノ頭付近に来ると周辺にはオベリスクや高嶺といったピークを見ることが出来ます。
ですが、それ以上に稜線の花崗岩がギザギザとした姿に驚くのではないでしょうか。
量産型エヴァの歯茎みたいな稜線なんだよなぁ……。
赤抜沢ノ頭からオベリスクを見下ろす。人が2人画面下に写っていますが、比較するとオベリスクの岩のスケールを少しでも感じてもらえますでしょうか?オベリスクは本当にでかいです。
午前8時30分、地蔵岳。
初めて見たときは登ってみようなんて思うことがなかったオベリスクですが、今日は気持ちの余裕があるから結構上まで登ってみようかな。
オベリスクと私、みたいな写真を撮影したら早速オベリスクに取り付いていけるところまで登ってみたいと思います。
結構オベリスク登るの怖いからね、最初にお地蔵さんに手を合わせて安全祈願してから行くよ。
オベリスク直下ですが、積み重なる岩のサイズが巨大です。これに比肩するサイズの岩が連なるところってあんまり見たことがないです。(大雪山白雲岳とか岩のサイズ感が似ている気がする)
もう本当に岩がでかい、登るのに結構苦労します。ざらついてはいるけど一枚岩が多いから、登るときはルートに気を付けてね。
登っていくと鳳凰山大神と書かれた石柱や60年代70年代に上った人々が打ち付けていったであろう文字盤をいたるところで発見することが出来ました。文字盤は登山ブーム時代の人々が自然をどう扱っていたかをうかがい知る資料の一つといえるでしょう。こういうのを見ていると人によって作り替えられた自然を議題にするニュートポグラフィーが生まれたのもわかる、という気持ちになります。
風雨で削られ丸くなった岩々は危ういバランスで積み重なっている、場所によっては押したら崩れるのでは?と思うようなものもあって怖いよ。
鳳凰三山のシンボル地蔵岳のオベリスクに登ってみて思いましたが……、結構登るの時間かかるし怖いな!!
一番上の巨大な岩の周りをぐるぐる回るように登ったり歩いたりしましたが、麓に戻ってくるまで結構時間がかかりました。じっくりと楽しむのであれば1時間くらい時間見といてもいいと思いますね。
鳳凰三山のすべてのピークを歩いたら後は下山するだけです。地蔵岳山頂から鳳凰小屋までの区間に広がる蟻地獄のようなビーチ登山道を降りで使えるなんてマジで最高~といった感じで意気揚々と降りていきます。
ここを登りで使うのは本当にしんどい、メンタルがゴリゴリに削られますので歩くときは覚悟が必要。
登っていく登山者はみなつらそうな顔をしていますが、降りる僕はアルカイックスマイルを浮かべていました。だってめっちゃ楽なんだもん。
ちなみにこういう場所を降るとき、ハーフパンツだと靴にめっちゃ砂が入りやすいです。朝露でも苦労するから、登山では長ズボンをお勧めするなぁーというのがRedsugarです。
御座石温泉への下山
午前10時10分、鳳凰小屋。
ビーチを駆け降りるように降るとほどなくして鳳凰小屋が見えてきます。一度は宿泊してみたい山小屋なんですけど、今日は夜叉神峠から来ちゃったし、前回は日帰りだったしでなかなか機会が無い。
親父さんが現役のうちに一度お邪魔したいです。
こちら、つめたーい南アルプスの天然水を思う存分楽しむことが出来ます。
ジャバジャバと湧き出る南アルプスの天然水を思う存分楽しんでから下山できます。
いや、ここはコーラとかも補給したいんだけど!?
売店にはご覧のようにドリンクもしっかりと並んでいます。鳳凰小屋で販売している手拭いがなかなかデザインが良くて思わず購入。山小屋手拭いは何個あってもいいなーと思って購入していたら結構な数がたまってきました。
鳳凰小屋を過ぎたあたりからガスの中の樹林帯へと突入していきます。
ピンクテープと苔が行き先をかわいらしく教えてくれます。
もうやることやりきって樹林帯楽しんで帰るだけなんですけども、鳳凰三山はここから先も長い。
ガスに覆われまして、鬱屈としたりモイスチャーだったりする樹林帯を下山していきましょう。
木々のこぶとか、ベニテングダケとか時々「おっ!」と思う森の仲間たちが姿を現します。
そういうので気分を紛らわしながら進んでいくんですが、鳳凰小屋から1時間半くらいでそれも飽きてくる。
午前11時40分、燕頭山。
樹林帯の下山を1時間半ほど続けてようやく燕頭山に到着……、サルオガセに覆われた木々とガスがあたりを覆いつくす真夏の樹林帯。歩いても歩いても延々と同じような景色が繰り返されるので飽きてくるね……。
この燕頭山の後が問題なんだよな、結構下ってから一回登るんだよ。
崩落地のキワを歩いて下山を進めたり、ガスで周囲も薄暗くびくびくしながら進む。
森の中ですれ違う登山者もいなくて、すごい静かな山歩きを満喫。
道中にはご覧のようなコケに覆われた岩とか……切り株とか、カモシカが突如現れたりします。
う、うわぁああああ!クマか!!??……カモシカだ。
登山道のカーブを曲がっった瞬間に視界の端に現れたのはカモシカでした。盲点近くに入ってきたので脳がバグってクマと勘違いしてしまいました。おかげで吹き出しのような気の抜けた悲鳴を上げてしまった。
人間マジで驚くとふぁあああッ!みたいな声が出るんだなぁと思ったよ。
燕頭山を越えて旭岳への登り返しを終えると急な坂を降る途中に柴田敏雄の日本典型で撮影されてそうなコンクリ舗装斜面が現れる。ここまで来たら御座石温泉はすぐそこになります。
ここまで本当に長かった……、というか登り返しがめちゃくちゃ心にダメージを与えてくれた。
午後1時30分、御座石温泉(看板は鉱泉だけど地図だと温泉だな……)
ようやく下山してきた鉱泉、オーナーのおばちゃんが外で景色を見ていたのでめっちゃ笑顔で「お風呂入れますか!?」と聞いたら、悲しそうな顔で「今日コロナで休みなのよ!山梨県の規制すごいんだから!」と。
その情報知らんかった、嘘だろ……夜叉神峠からめちゃくちゃ汗をかいてやってきた鳳凰三山縦走、そのエンディングはノー風呂で終わろうとしている。
売店でジュースを買って、先に下山していたおじさんと「これネットでは情報わからんかったね……」と会話しながら風呂を惜しむ。……俺はあきらめきれなかった、どうしても身体を洗いたかった!!!
おばちゃん、そこの川で行水出来る?
そんなに水量多くはないけどできると思うよ、気を付けてね。
というわけでRedsugar、御座石温泉の脇を流れる清流で体を清めることにしました。
幸いなことに気温は平然と30度近いので、川に浸かっても全然寒くなんなかった……。温泉には入れなかったけど、鳳凰三山から湧き出る水で体を洗って一応さっぱりできたので良しとします。
行水後はコーラで乾杯、バスが来るまでのわずかな時間をほかの登山者とのんびり過ごすことにしました。
午後3時15分、韮崎行バス乗車。
バス時刻前には下山してきた方々がバス停に15名ほど。僕の後ろに結構歩いてた人がいたんだなぁ……。
幸いなことに行水タイミングではほぼ人がいなかったのが本当に良かったです。
バス車内は一瞬で寝てしまったため記憶がない、本当に覚えてない……。寝て起きたら韮崎の駅にいた。
韮崎駅到着後、駅近のタイムズに駐車していたマイカーを回収し帰路につきます。
今回御座石温泉が休業中ということもあり、自走でここまで来ていたのが本当に良かったなと思える瞬間でした。
帰りに入浴施設「湯めみの丘」でしっかりと温泉を楽しむことが出来たので……。
後は埼玉まで車を運転するだけ……、どうせ帰りの中央道は渋滞です。
ゆっくり帰ろうと思い甲斐市の麺屋「しん道」でちょっと高級な見た目のつけ麺をいただきました。
おしゃれなタイプの、和風料理的な盛りつけた美しいラーメン屋でした。
味はしっかりしているんだけど登山後だともっと油やニンニクが欲しかった……、仕事帰りに食べるのであれば満点な感じがします。女性がすごい入りやすいタイプのお店だと思うので、夫婦で下山してきた後とかはおすすめじゃないでしょうか?
その後、思いのほか渋滞してなかった中央道を駆け抜け埼玉のお家へと帰りました。これにて鳳凰三山縦走、おしまい!!
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