2025年5月26日、東京都と埼玉県の県境にある「蕎麦粒山」を歩いてきました。
5月中旬から稜線付近ではシロヤシオツツジやミツバツツジの群生が見られる山で、標高は1,473mとなります。
東日原の天目山登山口から一杯水避難小屋までは奥多摩の中でも新緑が美しい、青々とした緑の森を歩く登山道が続きます。天目山周辺はツツジの群生が素晴らしく、白・ピンク・朱色が萌黄色の新緑と共に登山道を染め上げます。
天目山は奥多摩の深山「酉谷山」へ続く稜線上に位置しており、奥多摩エリアでも奥地といえるような場所故に濃い森が楽しめるのです。
稜線上を川苔山方面へと進めば蕎麦粒山となり、端正な三角形の見た目を持つ山頂から先には広々とした防火帯の道が日向沢ノ峰まで続きます。今回は天目山から蕎麦粒山へ向かい、そこから棒ノ嶺へ向かうという東京都から埼玉県へ下るコースで歩いてみました。
下山後の温泉はどこがいいだろう?考え抜いた挙句、さわらびの湯に入るのが一番手ごろだろうと思いついたこのコース。合計距離は約22㎞、標高差登り1,900m、下り2,300mという大変な道のりが待っているのでした。
日没と私、どちらが早いか……。
redsugar長い一日だった、日向沢ノ峰から棒ノ嶺までの区間を歩けたのが本当に珍しい経験だったと思う。
蕎麦粒山、棒ノ嶺日帰り縦走登山の概要
東日原から一杯水避難小屋を目指して




2025年5月26日午前7時25分、奥多摩駅。
おはようございます、Redsugarでございます。
本日は奥多摩エリアにあるシロヤシオツツジの名所「天目山・蕎麦粒山」を目指し、青梅線に揺られて奥多摩駅にやってきました。奥多摩駅は何度来ても楽しい、登山を始めたころからお世話になっていますが年々立派になっていってるような?






午前8時40分、東日原バス停。
東日原へと向かうバスに乗るのは何年ぶりだろう?川苔山に登るであろう登山客を見送り、天目山の登山口となるバス停で下車します。東日原の集落は谷底の川に向かって落ちてゆく山肌を切って作られた山間集落。濃い緑に中に走る蛇のような道に沿って家々が点々としています。
こちらのバス停で降り立って驚いたのは公衆トイレが大変きれいなことです。奥多摩町さん……登山者はめちゃくちゃ喜んでいますよ!!きれいなトイレをありがとう。



さて、天目山/酉谷山と書かれた看板に従い登山を介しましょう。今回のコースですが都内近郊からだとスタート時間がどうしても9時近くなってしまうんで、20㎞近く歩くとなると日没の危険性を考えないといけません。要注意です。




バス停から登山道まではご丁寧に手すりが用意された道が続きます。石垣があることなどを見ると昔は上に入る用事があったのかな?登山道を登っていくと石垣が崩れた後のような道も続きますが、山肌に切られたつづら折りの道をまずは歩く。


谷を這う雲が多いからか、登山口から苔が旺盛なことが目を引きます。うねうねと枝を伸ばしていた枯れ木は緑に包まれた怪異のような姿で山肌にしがみついていました。


曇り空だからか、しっとりした登山道は柔らかく、登り始めるとリズムよく歩いて行ける。
現れた道しるべは一杯水避難小屋を示しています。スタート地点から避難小屋まで、ヨコスズ尾根は一直線の登りです。


植林地帯ではお化けのようなコブが……どうなったら杉にこんなコブができるんだ。


ツツジを期待して登っているけど花を見ないな……と思っていたら、中腹にヤマツツジを発見。元気がよい朱色の花は当たり年といった様相で、稜線地帯のツツジが満開であることを想像させてくれる。


痩尾根の両脇には短い草と苔。あんまり人慣れしていない雰囲気がある登山道は奥多摩深部を想起させてくれます。



このコース、とにかく歩いている人が少ないため静かな山歩きが楽しめます。バスは満員でしたがほとんどの方が川乗橋で降りまして、天目山は静寂の登山道が続いております。


標高をあげると植林地帯から広葉樹の森へと景色が移り変わります。まだまだ新緑といっていい黄緑の葉が生い茂る奥多摩、今が一番気持ちがいい季節ではないでしょうか?



奥多摩の5月から6月は本当に気持ちがいいですよ。


一杯水避難小屋が近づいてくると同時に山中にはつつじの花の気配が。
道中にはミツバツツジの花が落ち、道の奥にはヤマツツジが顔をのぞかせてくれます。


萌黄色の新緑と朱色がまぶしいヤマツツジの群落がまずは現れ、この先のシロヤシオへの期待を膨らませてくれる。
ミツバツツジ、シロヤシオ、ヤマツツジは咲く時期が微妙に近い結果、垂直の植生の中では順番に花を見られる所が素敵です。


森がだんだん野性的になってきました。



不思議な形の木が増えてきたなあ……。ああいう穴から何か出てくるんじゃないかと、ビクビクすることもあるわけです。


一杯水避難小屋周辺はドラム缶などの人工物が目印になります。その周囲ではヤマツツジ、ミツバツツジが群生。
それぞれ花を咲かせて森を彩っていました。



ここまで無言で登り続けたけど、結構な距離でした。登りで1時間半は見ておきたいところです。
ツツジ満開の天目山を歩く




午前11時00分、一杯水避難小屋。
登り一辺倒でお腹がすきました……、最初のチェックポイントとなる避難小屋ですが居心地がよさそう。
掃除も行き届いていて、奥多摩外輪縦走をする人々などが丁寧に使っているんだろうなぁという想像が浮かぶ。




一杯水避難小屋からは天目山を目指しますが、ツツジを見るなら巻道から酉谷山方面の分岐路へ向かうのがお勧めです。避難小屋から山頂にかけて、いたるところに花が咲いています。時間が許すならぐるりと一周してみましょう。


巻き道から山頂に行くのでもいいし、山頂に直接登ってから酉谷山方面に下ってもいい。小屋と山頂の往復はちょっと味気ない気がする。というわけで「ぐるり」と回るコースで山頂へ。


ツツジの根が山肌を覆う道は花と新緑の色です。


午前11時30分、天目山。
山頂が開けていると聞いていた天目山ですが、若い木々が育ってきているためその眺望は徐々に狭まっているようでした。眼下から湧き上がるような萌黄色の向こうに乳白色の雲と奥多摩の山々が広がります。



そういえば珍しく快晴ではないコンディションで登っていますね私。


マゼンタというかピンクというか紫というか……、目にまぶしい色のツツジの向こう側にひときわ目立つピークがあります。稜線上にピョコンと頭を出しているのは鷹ノ巣山です。
標高1,732mの山で東京都では二番目に高い山になります。



東京都最高峰である雲取山から鷹ノ巣山まで繋ぐ登山は楽しいです。ただ……冬にやって地獄を見たので、春や秋の雪がない時期に三峰から奥多摩まで歩いてみたいですね。


鷹ノ巣山からぐるりと東に首を回してみると稜線の向こうに一塊の山が見えます、川苔山です。
ここから見ると稜線をどれほど歩けばたどり着くのかと思える距離。



川苔山まではいかないけど、その手前にある日向沢ノ峰までは歩くことになります。つまり川苔山手前の稜線を全部歩くということです。


天目山から一杯水避難小屋まではつつじの数が多くなります。酉谷山方面、つまり西からの道はピンク色のつつじがメインでしたが、東側の道はシロヤシオも咲いていました。


新緑の緑にこの紫ともピンクとも言えない鮮やかな色は合いますね。古来日本の伝統色はこういった鮮やかな色が多いのですが、ぱっと思い浮かべると浮世絵などが頭に浮かんで日本の色=ちょっとくすんだ色になりがちです。



平安時代の十二単にも使われた重ね色を見てみると、蛍光色かと思うような鮮やかさに驚くことがあります。


天目山山頂から避難小屋までは想像していたのとはちょっと雰囲気が違う道が続きます。どう違うかというと……アップダウンがある。道中、苔むした白肌の岩にしがみつくようにして這う根を前にするとちょっと慄きます。



地図をよく見るとピーク鞍部ピークという形に確かになってます。登っていた当時は「下りがあるのかよ!」という気持ちになりました。


歩いていて、不思議と水を感じる道だったなと思います。足元を縦横無尽に這いまわる木の根と、日光と湿度を求める手のように伸びる数多の若芽がそう思わせたのかもしれません。



水はないのに潤いを感じる登山道でした。


登山道には所々、キラキラと輝く素材で出来たテープが張られています。


二つ目のピークを過ぎて小屋へ降り立つ斜面が。一番ツツジの元気が良い場所でもありました。花に関しては当たりと言って良い株が幾つも連なり、新緑の森の中で一塊の色を形作っていました。


シロヤシオも満開です。爽やかなシロヤシオの緑の葉が一番きれいに見えるのは、光に透かしたときじゃないでしょうか。


シロヤシオといえば栃木の高原山を思い浮かべますが、奥多摩でもしっかりと花を楽しむことができるのだなということを教えていただきました。ありがとう天目山。



登山道も静かだし、結構好きだな天目山!
新緑に包まれた蕎麦粒山


午前11時55分、一杯水避難小屋。
1時間くらい前に到着した一杯水避難小屋に戻ってきました。天目山までを周回すると大体1時間を目安にするといいようです。さて、予想以上に時間がかかってしまいましたね……焦ってきました。さわらびの湯までは先が長いので、のんびり歩いていては日没になってしまいます。






午後1時00分、蕎麦粒山。
一杯水避難小屋からコースタイムで約一時間半の場所に蕎麦粒山はあるのですが、稜線上のアップダウンが穏やかなこともあり気が付けば山頂だった、みたいな感じで到着。



一杯水避難小屋から蕎麦粒山まではあまり記憶に残らない道が続いていました。天目山のツツジが素晴らしかったこともあり、この区間は新緑が中心の穏やかな登山道でスペクタクルにはかける感じ。


蕎麦粒山は特徴的な景色が楽しめます。目の前に川苔山が見えるのですが、稜線を境にして自然林と植林地帯が対峙しており、その間には防火帯となる広い道が続くのです。
山の上に人工的に一本線を引いたような景色の先に広がる広々とした空は見ものです。
ただ、よく考えてみれば植林地帯があるということは……山頂まで続くはげ山の姿がかつてはあったということです。



昭和の写真資料で見ると、植林が行われている蕎麦粒山ははげ山といっていいような姿をしていました。標高1,473mの山の稜線地帯の皮膚を引きはがした光景はトボグラフィックだったことでしょう。この杉植林森をそういう産業遺産として見ることもできるのではないか?


山頂で三脚を立てて自撮りをしている方がいらっしゃったのですが、よく見ると同業の登山ブロガーさんで驚きました。どちらのコースから?と簡単な会話を交わした後、僕は防火帯にもなっている広々とした山肌へ飛び込むように降りていきました。人見知りなもので。



森がない、草地となった斜面を歩くと山ってめちゃくちゃ急じゃん!と思わされます。とてもじゃないけどまっすぐ下っていくのは無理です、無駄に踏ん張ることで体力を消耗するか、転んで怪我しそう。


蕎麦粒山から伸びていた広々とした道ですが、そこにたどり着くと急激な登り返しが待っています。
V字回復する標高ですが、登っている側としてはさっきの降りは何だったんだよと悪態をつきたくなる。



日向沢ノ峰側から見る蕎麦粒山はきれいな三角形、非常に美しい山頂部です。


広々とした道の両脇には横へ横へと枝を伸ばす木々が茂っていることもあり、開けている割には暗い道が続きます。


登り返しから先は落ち葉が降り積もった尾根筋を歩くことになりますが、平坦に感じる緩やかな道のおかげで快適なハイキングを楽しめる。



今回のコースで一番気持ちよく歩けたのはこの蕎麦粒山・日向沢ノ峰分岐の区間です。歩くことに何ら苦がない、自然と足が前に出るような心地よい道が続きます。


視界の端に何か巨大な生き物のような像が……、一瞬体がびくっと反応します。目を向けると巨大なナナフシのような枝が斜面に転がっていました。生き物を見たような驚きは一瞬だけで、凝視する間に驚きや「として見た」感覚は消えて行ってしまうんですよね。


午後1時35分、日向沢ノ峰分岐。
本日の中間地点となる日向沢ノ峰の手前までやってきました。ここから川苔山へ向かえば川乗橋のバス停まですぐに降りれることでしょう。本仁田山をたどってもそんな遅くなることはなく、奥多摩駅に降りれるはず……。
しかし、本日の目的地は埼玉県飯能市名栗「さわらびの湯」、ここを棒ノ嶺に向かって進むことになります。



ちなみに午後一時半というこの時間、さわらびの湯を目指すのであればタイムリミットの時間となります。これ以降は日没の危険がある。


周囲を見渡すと、幹に大きな空洞を持つ巨木が。分岐地点のランドマークとしては覚えやすい。



アメリカ絵画に名を遺すアンドリュー・ワイエスが描いた作品の中にこういう木の空洞に妖精が立っているものがあります(Dryad,2000-2007年)、それを思い出しました……。日本の昔の人も、こういうものを見かけた中にヤマノケとかが潜んでいると想像したかもしれませんね。
あ、そうそう。ワイエスは木肌が顔に見えるとか、そういうのも描いてるんですよ。景色を見立てるっていうのは考えてみると不思議です、そこにはないものを人は頭の中で認識しているのですから。






日向沢ノ峰からピンクテープを頼りに長尾ノ丸を目指します。薄くなった登山道をピンクテープを頼りに進むと、驚くほど急で、滑りやすい道を降ることになりました(写真一枚目)。踏み跡が薄く急な下り坂に肝を冷やしながら何とか降りきると、写真二枚目の「有間峠方面」を案内する手作りの板が姿を現します。
奥多摩エリアから秩父奥武蔵エリアに入ったのだと気持ちが切り替わります。ここからさわらびの湯までまだコースタイムにして4時間ほど、普通に歩いていては日が沈んでしまいます。



日向沢ノ峰分岐を境に植生が変わったんじゃないかというくらい、目に映る景色が変わって見えました。植林地帯と常緑樹、標高は明らかに落ちてきている。果たして日没前に温泉にたどり着くことはできるのか!?
長尾ノ丸、県境の尾根の苦行




日向沢ノ峰から長尾ノ丸までの区間は地味です、圧倒的に地味に見える。そういう天候のコンディションと、時間帯に通過してしまったという要因を差し引いても、地味。



まずは鉄塔がある尾根を通過し、ひたすらに東へと進みます。平坦なため非常に早く進みますが、感覚的にはいつまで歩くんだと焦りが先立つ道でした。


植林ではなさそうな、野性的な杉が尾根にしがみつく様に根を伸ばします。脈打つような根は適度な段差を作るため歩く側としてはありがたい……、見た目は怖いけど。


しかし、登ってもすぐに下り坂が待っています。実は……棒ノ嶺までは標高差がないというかちょっと登ることになる。そのため、天目山から歩いてきた身体に疲労のサインが現れるのはこの付近となることでしょう。



ちょっと空腹が激しくなってきた。20㎞程のコースを歩くと12km~17㎞地点がつらく感じます。


天目山や蕎麦粒山に比べると明らかに植林地帯が濃い。奥武蔵の山々や青梅方面の森が想起されます。


植林地帯の上部にはうねる木々がぶら下げる緑が視界を覆い、心地よいという感覚からは遠い道が続く。



メジャーな山域だけどちょっとマイナーな道だよなぁ……。よく整備されてるけど。


午後2時50分、長尾ノ丸。
日向沢ノ峰から1時間半ほどかけて長尾ノ丸へ到着……実際コースタイムより15分早く歩いているのですが、予想される下山時刻から考えるともっと早く歩きたいところです。ここからさわらびの湯までコースタイムで約3時間あるのですから。ランナーズハイになりたい……。



長尾ノ丸は長尾丸山と書かれた看板が掛けられており。その背後には薄暗い杉の植林地帯が谷底まで続いています。


疲れを忘れて一心不乱に歩きたいところですが、細かなアップダウンがそれを許しません。40分ほど東に歩くと現れる槙ノ尾山までの標高差は13mしかなく、その間には本当に微妙に……だらだらーっと登ったり下ったりする間延びした道が続くのです。




曇り空で午後3時くらいになると森の中は……結構薄暗く、視界の端でカモシカみたいな動物が動いたら悲鳴をあげちゃう、そんな空間がどこまでも続く槙ノ尾山にやってきました。樹林帯で眺望はない山頂ですが、木の根元にできた穴の上に置かれた「立入禁止」の看板が不思議の国のアリスのような、穴の先の別の世界を想像させてくれます。



そう、木の穴を見てシュヴァンクマイエルのアリス(オテサーネク)を思い出すくらいには疲れてます。不思議の国のアリスの映像作品の中では非常に特徴的で、「いかにも美大に行く人が好きそう」な作品です、興味があれば検索してみて……。


午前中に歩いていた天目山の森に比べると随分と親しみのある雰囲気になってきました。
長尾ノ丸の標高は958m、槙ノ尾山が945m、棒ノ嶺が969mで基本くだ……ってない、登ってるじゃないか!!
歩いているときは「下山している」ということで下っている気持でしたが、辛かった理由がこれでわかりましたね。



日向沢ノ峰から400mほど標高を落としてから先は、ほぼ標高が変わらない道を、あんなに昇り降りさせられていたのか……ぐぬぬぬっ!






午後3時30分、棒ノ嶺。
こんなに人がいない棒ノ嶺に来たのははじめてです。到着時に喜びのあまり大きな声をあげてしまいましたが、その響きは山頂にある山桜の木の葉に吸い込まれるように消えていきました。数週間前、棒ノ嶺を訪れたときに登山客が昼食を食べていた東屋は薄暗く、何か別のものが居ついているような気配を感じる、羅城門のおばあさんが居そうな空気だよぉ……。



夕方付近の人の気配がない山って滅茶苦茶怖いわけですよ。……そう考えるとテントってすごい、布一枚で隔てられた空間にあんなにも安心するのだから。
白谷沢よりさわらびの湯へ、薄暮の下山


棒ノ嶺山頂からは白谷沢を降りて有間ダムへ向かうことになります。午後4時付近になると棒ノ嶺といえども登山者の姿はなく、薄暗い樹林帯を歩く自分の足音だけが耳に響く。


数週間前に訪れた時と比較して、木々の緑は色濃く、登山道から見える山肌は刷毛で絵の具を塗ったように緑一色です。華やかだった登山道の面影はない。


午前中に歩いた白谷沢は、その空気が身体を内側から洗ってくれるような気持ちよさがありました。
しかし、蕎麦粒山から縦走し薄暮に迫ろうという時間帯では、ひんやりと湿った粘土のような空気が肌に纏わりつくのです。


ジャリジャリと地面を確かめる靴の裏から沢筋の湿った土が擦れ合うような感触がむせ返るような勢いで立ち上がります。「とっとと下山してぇ~」と独り言を呟きながら歩く登山道、肩を自分で抱かないと景色が寒く感じる程度には不安がわいてきました。


あんなに奇麗だったのに、景色はもう違う色です。谷底を流れる沢を歩く白谷沢は元々暗いのですが、午後4時以降は「夜が迫ってる!」と身体が慄く空気に包まれています。



思ったよりも下山が遅くなってしまったという状況で見る景色はやっぱり怖いよなぁ~。


白谷沢渓流の出口にやってくると、巨大な二つの岩が渓流を境に対峙した光景が現れます。影が濃く、登山者を押し込めてしまうような圧迫感がある。


沢沿いを抜け出し杉の植林地帯までやってくれば一安心です。夕方の森の中では不思議と鳥も虫も、木々のせせらぎもなく、音のない世界に足音だけが響いています。






登山口が見えた瞬間に口元には笑みが浮かびました。天目山から棒ノ嶺まで長かった……。
思っていたよりも歩くのに時間がかかってしまい、下山時刻が遅くなってしまいましたね。



40代に突入して、ここからはコースタイムを計算するときは0.9~1.0でちゃんと計算ですかねぇ。30代のころは0.8だったけど、トレーニングしてないとちゃんと遅くなっていくんだなと。


午後4時55分、有間ダム。
曇り空で人の気配もない有間ダムに到着しました。地元の方の軽トラックが走り去って言った瞬間、緊張の糸がほぐれたのかドっと疲れが噴き出してきたのを覚えています。




午後5時5分、さわらびの湯。
とにかく温泉に入りたい、気持ちをパッと変えたい。その一心でさわらびの湯へ向かい入浴。
風呂上がりのジンジャーエールとロング缶のビールを飲みほします。
「あぁ、奥多摩の登山ってなんか、こんな感じだよな」という感想が心の底から湧き上がる。



なんていうか、奥多摩の登山ってちょっと湿っているというか。すっきりさわやかっていうよりもジワッと染みるようなイメージがあるんですよ私。今回それがすごい強かった、曇ってたからかな?




バス停で一人で飯能行きのバスを待っていると、ヤマノススメラッピングバスがやってきました。飯能と秩父のアニメコラボ戦略って本当にすごいよなぁ……、車内もキャラクターの絵で満たされている。
「ヤマノススメのあおいです♪」というアナウンスが流れるバスに揺られながら飯能駅へ。




飯能駅に到着後、さすがに今日はご飯を食べていかないともう無理、無理無理無理無理かたつむりという身体の状況でした。飯能駅前でラーメンが食べたい、あるのか、飯能にラーメンが?
ありました、飯能駅前に。



というわけでやってきたのは飯能駅前のつけそば丸永さん。つるんとしたさわやかなのど越しの面が特徴的なつけ麺屋さんで、辛味噌味があるのが最高です。私、味噌ラーメンの中でも辛味噌が好きなんです。天目山登山口から歩くこと20㎞、消費カロリーを考えたら大盛りを食べたところで焼け石に水、気持ちよく食べさせていただきました。
駅から数分で辿り着けるという立地の良さが電車登山の身にはありがたいお店でした。











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