2021年8月1日、南アルプスのど真ん中「塩見岳」に登ってきました。標高3,052mの日本百名山の一角です。
どこから登っても遠い塩見岳、塩見岳は普通に歩くと鳥倉登山口より三伏峠小屋か塩見小屋を利用した1泊2日になる山ですが、今回は最もメジャーな鳥倉から日帰りで登ります。
鳥倉からのアクセスの場合はとにかく樹林帯が長く、ひたすら長く続く!
奥秩父の稜線に見られるようなシラビソ等が立ち並ぶ森の中を延々と歩き続ける道が続きますが、これが中々辛い。
その分山頂に立った時の喜び、驚きの景色があるのですが……中々この道は歩くのを躊躇しますよね。
塩見岳は山頂部に立ったりほかの山から見るとわかりますが、北部と南部の中間地点にあるような山。
そこには北部と南部から接続する尾根道が続いています、その中でもとりわけ魅力的なのは蝙蝠尾根。
山頂に立った時、目の前に続く至高の稜線たる蝙蝠尾根を目の当たりにすれば歩きたいという気持ちが絶対に湧き上がることでしょう。
今回の塩見岳、繰り返しますが日帰りです。普通は泊り登山ですが往復のコースタイムが14時間前後に収まることから「日帰りで登る」ことを選択しました。実際に歩いてみると往復でのコースタイムは12時間、三伏峠に登るまでは中々大変ですが、それ以降は緩やかなアップダウンが続くことからそこまで体力的に厳しい勝負を求められるような登山ではありませんでした。
家庭の都合上泊り登山が出来ないという身分故に、日帰りを選択しましたがそれでもいい景色がたくさん見れるは流石百名山といったところか……。
深夜時間から登り始めた塩見岳、朝日が差し込む稜線は幻想的な世界が広がります。
朝の神がかった光と、山頂から望む悪沢岳の素晴らしい天望を楽しむ南アルプス登山の始まりです!
久々にがっつり歩く登山旅がやってきた!楽しく歩くぞ!!
塩見岳日帰り登山の概要
三伏峠、深夜の山歩きをキメろ!
2021年8月1日午前0時45分、道の駅大鹿。
こんばんわ、さすがにこんばんわな時間、Redsugarです。
いつも始まりはおはようございますなんですけど、まだ深夜ドラマやアニメの時間帯と言える夜の12時になぜか長野県のかなり奥地、大鹿の道の駅にやってきました。
凄い立派なんですよこの道の駅、トイレもきれいだし……、寝るには最高な椅子も用意されているし危うく寝るかと思った。
遥々東京と埼玉から塩見岳を登るということで南アルプスの西側までやってきましたが本当に遠い、個人的に南アルプスの西側へのアクセスは北アルプスの折立アクセスくらいしんどい。
大鹿からさらに1時間程度運転が待っていたのがきつかった……。
2021年8月1日午前2時5分、鳥倉登山口駐車場出発。
暗くてなんも見えねぇよ!!!SAKUさぁん!!!!
夜のテンションで笑いながら準備を進める我々塩見岳日帰り登山者、今回は先輩ブロガーであるSAKUさんにご登場していただき、一緒にこの地獄の長丁場を味わっていただくこととなりました。
いやー、暗くて本当に何も見えない。手元の時計は午前2時4分を示していますがこんな時間に登山開始とか冬の朝焼け撮影以来だわ。
鳥倉駐車場を出発するとひたすら鳥倉登山口を目指して歩き続ける、目標は三伏峠小屋。
同行しているSAKUさんは21年の6月にニペソツ山や幌尻岳を日帰りで歩き切るという健脚の持ち主、僕もこの年幌尻岳日帰りを目指していたのでそれらの話を聞きながらの出だしとなりました。
幌尻岳を日帰りで歩いたSAKUさんはさすがの健脚でホイホイ三伏峠の標高を上げていく。
ここでありがたかったのはこの標識、まるで深夜歩くことを想定しているかの如く、10回にもわたって今何処かを教えてくれるのである。
こいつが10回も出てきてくれるから全然辛くなかった、昼間だったら怒ってたけど夜はこういう看板とても助かります!
午前4時25分、三伏峠到着。
登山口出発から2時間半ほどで三伏峠に到着、おぼろげながら空が明るくなってきた。
小屋周辺ではあわただしく歩き回る人々が、今日は晴天ということもあり塩見岳をみんな目指すのかな?
バスからのアクセスを考えるといい位置にある小屋なんだなぁというのがわかる。
とはいっても塩見岳まではここからかなりの距離があるから、行って戻っては結構疲れること間違いなし。
午前4時40分、三伏岳。
三伏峠小屋で特に休憩を取ることなく稜線に上がる我々、三伏岳に到着したタイミングで夜明けが始まっていることを確認する。南アルプスの西側にあるこの位置は太陽が顔を出す時間が遅いため空は明るいけども日が差さない。
ヘッデンもそろそろいいだろう、ザックを降ろしてアミノバイタルの補給や装備の整理を行う。
ちなみに分岐の逆方向、小河内岳は展望が良い山なので避難小屋に泊まってみたい。
夜明けの稜線は夜露なのか夜雨なのか、芳醇な水気を携えている。
梅雨明けしてから間もないが大気が不安定なのが夏、夜になれば露が降りるし正午には積乱雲が発達する。
だから夏山はいかに午前中に山頂に立てるか、そこが大事になってくる。
南側を見渡せば巨大な積乱雲が海上にあるんだろうなというのがわかる景色が広がっている。
その手前で山の鞍部に現れた草原地帯、あれ気になるなぁ……。
ハイマツが生い茂る登山道は道幅も広く傾斜も穏やかで山歩きが非常に捗る。この日のためにスポルティバのウルトララプターIIMIDを購入したんだけど、それがばっちりと聞いていて小走りで登山道を駆けても全く問題が無い。
南アルプスの稜線とは思えないような苔と森の道だけど、整備具合は素晴らしい。本当に奇麗で歩きやすい登山道がこの先もずっと続いてゆく、トレイルランニングの人とかはこういう道を気持ちよく走っていくんだろうな。
三伏岳を越えて本谷山を目指す道中で日差しが差し込んでくる、この瞬間がとても神秘的で見たことのない稜線の風景を僕に見せてくれることとなりました。今まで乾燥した朝の稜線ばかり見ていたんだけど、今日は湿度が高いから陽光が空気中で拡散して稜線なのに薄明光線が至る所に出現するというハッピーな現象がここから続きます。
塩見小屋、ご来光と黄金色の樹林帯
ご来光の光が差し込む尾根道の森は何とも神秘的な、黄金色の光に覆われて木々が生き生きとしながらも神々しい世界を形成してゆくではありませんか。ここまで駆け足で歩いてきた僕もさすがにこれには足を止めてしまう。
ここでSAKUさんに前を譲り、しばらくは景色を見て撮影するのを楽しもうと決意しました。
いやー、しかし夜明けの樹林帯稜線ってこんな素晴らしい景色も見れるんだなぁ……。
奇麗な光が差し込み続ける樹林帯、正直登山どころではなくいい景色を眺めていたい。
神々しい、仏様が降臨なさった~とでもいうような光線をキョロキョロと探しながら進む。
朝の黄金色の光は徐々に白く色を失っていきました。
午前5時25分、本谷山到着。
三伏峠から次の目的地である本谷山へ、ここで水とエナジージェルを吸って塩見小屋までの体調を整えます。
ここまでスタートから3時間半、普通だったらもう山頂についていてもおかしくはないがここは塩見岳。
大体往路の半分くらいと思ったほうが良い。
本当に長い塩見岳、道が歩きやすいことと気温が低いことでかなり歩くのは楽でした。
体力的にはかなり温存できているから、まだまだ元気は残っています。
朝焼けに照らされたピンクテープを頼りに塩見小屋に向けて出発!
まだ6時前ですら、平日であれば僕はまだ寝ています。南アルプスの稜線から見下ろすと雲海があたり一面……、つまり町は雲の下っていうことですかね。はるか向こうに中央アルプスがかろうじて見える。
朝日が差し込む稜線、標高は2,500m前後くらいだとは思うのだが南アルプスなのでシャクナゲとか色々な草木が青々と茂っている。
時折開けるとシャーッと薄明光線が差し込む、芝生みたいな草付きに尻もちついて一休みしたい。
二人で黙って尾根道を進んでいきますが、この道中一切人とすれ違うことはありませんでした。三伏峠に泊まっていた人たちも全然来ないのが不思議。ある程度進むと塩見岳のシルエットが大分間近になってきた。
近づいては来たけど、山頂がずいぶんと上だ……ここからまだ500m近く登らないと駄目なんじゃないの?という気持ちにさせられる。
塩見小屋までの道のりは長い、緩やかなアップダウンとは言っても何度も繰り返していればそりゃ体力は削られる。
小さな枝を気にするような登山は今回はできないと思ってはいたが不思議とこういう写真が多く残っていた。
差し込んだ日に照らされる木肌、朝露を纏った若芽。確かに撮影した覚えはあるんだけど、すごい急いで歩いていた記憶が強くて、よくあんな速度で歩きながら写真を撮る気になれたなと思う。
往復で500枚以上の写真が残っていて、そのほとんどが別のものを撮っているので、登山中は良くシャッター押すもんだと感心する。
塩見小屋の手前付近までやってきているのだけど、あたりは相変わらずの深い森。
南アルプス感が弱く奥秩父の稜線を歩いているような気持ちにさせてくれる道が延々続く。
奥秩父というか、北八ヶ岳というか……、俺のイメージする南アルプスというか、ほかの山の稜線で見たものとは全く違う稜線が続いているのが塩見岳。
「これなんて書いてあんの……?」
「小屋までもう少しといっているのはわかるが読めん」
愛嬌なんだろうけど、そんな愛嬌に反応している余裕がない程度の二人。
小屋が近いということで少し緊張感がほぐれます、朝露でまだ湿っている苔の森を少し速度を落として進む。
塩見小屋までは緩やかに登ってゆく、ここの登りは穏やかだけど……ここに来るまでで結構体力を使っているから少し辛いかもしれない。
ハイマツ帯に再び入るあたりで分岐表示が現れる。
塩見新道との分岐なんだけどこのタイミングでは新道側は未整備で使用不可。
ハイマツ帯に出ると再び視界が広がる、仙丈ヶ岳方面が良く見えるようになった。
夏場特有の霞んだ空気でちょっとおぼろげだけども。
ハイマツ帯を登り続けるんだけど、振り返るとさっきまで歩いてきた樹林帯の山がどうなっていたかとかが大体見えるようになる。緩やかなアップダウンと思っていたら結構キツイ上り下りをこなしてきていたらしい。
でも日陰がメインだったおかげで汗もそんなに流していない、体力的には全然楽だよねこの山。
気温と直射日光、これが穏やかなのが塩見岳でした。おかげで塩見小屋に着いたタイミングでもあんまり疲れてない、行動食を補給したらすぐに塩見岳に登ることが出来ました。
午前6時40分、塩見小屋到着。
塩見小屋は一度宿泊したい小屋だったんだけど、今回はタイミングが色々合わなかった……。
ただまぁチャンスが無いわけじゃない、縦走の際にはお世話になってみたいなという気持ちがある。
小屋を見回すと携帯トイレを使うブースの前に傘が干されていた、山の上で傘なんて使うときあるんだ??
気が付けばこの傘がずいぶんとフォトジェニックな景色を作り出していた、奥には仙丈ヶ岳が写っている。
中景にあるのがトイレというのがいかんせん気になるところではあるが、この差し込んだ日差しに浮かぶ傘と南アルプスの遠景は撮らざるを得ないだろう。ただ本当に、本当にトイレが邪魔であることは間違いないのである。
塩見岳山頂へ、頂から見る蝙蝠尾根と南アルプス
塩見小屋からは塩見岳山頂に向けてハイマツ帯から岩場とこれまでとは打って変わって雰囲気の違う道を登ることになります。塩見小屋から見上げる塩見岳の勇壮なことよ。
塩見岳は最後のこの登りがかなり急なんだけど、南アルプスの中ではちょっと嫌な感じに急なんだよなぁ……。
北部は白峰三山、真ん中の巨大な山は間ノ岳であっているのだろうか。
画像右下に黄色、中央に赤いペンキマークがあるのがお判りでしょうか、ペンキの指示に従って登っていくけど結構急。
ただグリップがいい、風化してなくて砂も少ないので登山靴の摩擦が最大化される感じ。
急登でもこういう安定感のある質感の岩だと楽しい。
風化して砂と岩のミックスとかになると滑りやすくなって本当に嫌だなって思うけど、塩見岳はそんなことなくてとても良かった。
そそり立つ壁のような塩見岳山頂部方面、画像で見返すとどうやって登ったんだこれと疑問が生じる見た目。
鞍部には巨大な岩が落ちてるんだけど、画面右側の遥か奥にいる登山者と比較すると結構巨大な岩であることがわかる。
さっき岩の質が良いなと言いましたね、でもここから先はちょっと足元が悪くなります。
なので、ここから先はコンディションが悪い時は注意して登ってね。
南側を眺めてみると悪沢岳とその奥にあるギザギザ……兎岳とか聖岳に向かう稜線のようなものが見える。
塩見岳の位置からだと赤石岳は悪沢岳の向こう側で、あの巨体は見えないようだった。
南ア南部を見るたびにまた悪沢岳から赤石岳の周回登山をしてみたいと思ってしまう。南アルプスでは最もスケールが大きな場所なんじゃないかと思うんだよね。
塩見岳の山頂直下から辿ってきた道を見返すと……道がどこにあるのかよくわからないよね。
目の前の急峻な山の左側斜面に沿っている道を歩いてきたのです。
よく見たらほら登山者が歩いてる。
山頂の稜線部まであと少し、この辺浮石も多くて落石の危険性があるので上方は注意。先行する登山者や下山する人によってはパラパラと小石が落ちてくることもある。
塩見小屋からは岩場を1時間ほどと聞いていたが確かにここは長い。
塩見小屋を見下ろせる場所まで来たけど距離的にも結構なものがある。朝焼けが見たいからと言ってホイホイとナイトハイクでたどり着けるような頂ではないということが骨身にしみてわかる。
稜線部に出ると南ア北部の山々には徐々に雲がかかり始めていた、8月頭とはいってもちょっと気が早すぎやしないかい雲さんよ。
塩見岳山頂では間違いなく快晴がゲットできそうだけど、帰り道は予想通り積乱雲からの土砂降りにあいそうで怖い。
塩見岳稜線部にたどり着きました、岩場を越えると待っているのはこんな感じの山頂稜線。
山頂部が広い山が多い南アルプスという山域においては比較的狭い山頂部分だと思う。
悪沢岳や赤石岳みたいな山頂部が広い山が好き。
先行している登山者の方々が休んでいるのを発見、蝙蝠尾根側の分岐点は見晴らしがよさそうです。
午前8時00分、塩見岳西峰到着。
というわけでやってきました日帰り塩見岳、天候はばっちり晴れ!南アルプス名物の富士山も霞の奥にシルエットとして浮かび上がるように見える。ちょうど出発から6時間での山頂到着となりましたとさ。
ここでしっかりと休憩を取ってから、下山にとりかかるのだが……塩見岳とかめったに来れるもんじゃないからじっくりと休むとする。
塩見岳は山頂が東西に延びているような感じ、展望が良いのは東峰なのでそちら側で休憩することとします。
短いけどこの稜線は志向の稜線。
塩見岳山頂部から眺める南ア南部悪沢岳、非常に巨大な山であることがわかる……。
赤石岳から見るのとは全く印象が違う、こちらから見ると赤石岳のような重量級のファイターともとれるような安定感のある巨大な山容でした。(赤石岳から見るとギザギザが特徴的に見えたがこっちからはその印象が無い)
雄たけびを上げながら山頂部を目指す我々、静かな南アルプスの空に蛮勇の歓喜の声が響き渡る。
塩見岳山頂、遂に来た……。南アルプスの中でもどうやって歩こうかと頭を捻っていた山ですが意外にあっさりとやってきてしまいました。人間は日帰りでこんな距離を歩けるんだ!
塩見岳山頂からの景色で一番の魅力は間違いなくこの蝙蝠尾根の景色だと思う。めちゃくちゃいい尾根が塩見岳から先には広がっている。核心部はどこだと言われたらこの蝙蝠尾根なんじゃないだろうか。
ここから蝙蝠岳までは天国が広がっているというか、南アルプスらしい天空回廊歩きを満喫できるに違いない。
山頂記念写真を久々に二人で撮影、三脚をこの時のために持ってきてよかった。正直重石でしかないのだけどこの一瞬のためには必要不可欠。三脚とは思い出のために背負われるものなのです。
雲が躍りあわただしくなってきた空と南アルプス南部の眺め、塩見岳からは本当に悪沢岳が良く見えるぜ……。
車が無ければこのまま蝙蝠尾根から二軒小屋へと降りたいくらいです。
バスで塩見岳にきて、二軒小屋に降りて椹島へ向かい静岡から新幹線で帰る登山とか楽しそうだなぁ……。
蝙蝠尾根と分岐点から北へと延びる仙塩尾根、遥か北は間ノ岳、農鳥岳へと接続する稜線も塩見岳側は見晴らしのいい稜線が続くようだ。
ちなみに農鳥岳から南へと連なる白峰南嶺、これもまたすごい長大。
白河内岳や黒河内岳を越えて笊ヶ岳へつながるというなんともマニアックな稜線……。
塩見岳山頂部にはほんの少しだけチシマギキョウも咲いていて、アルプスの高山植物もちゃんと堪能することが出来ました。
塩見岳はその道中のほとんどが樹林帯ということもあって高山帯の花とはほぼ無縁だったんだよね……。
いつか歩いてみたいこの蝙蝠尾根、憧れの道の一つですが今回は歩けそうにない。
なんたって我々日帰りでやってきてしまっているものだから、引き返さないといけない。
でも今思うと10分くらい進んで稜線を歩いても良かったんじゃないかなと思う。
すっかり油断した我々は山頂でのんびりとご飯を食べて撮影を楽しんでしまったのだから。
いや、ここは無理してでも少し先に進むんだったぁ~!!
塩見岳からの下山、積乱雲タイムリミット
塩見岳山頂を気が付けば1時間ほど堪能していた我々、モクモクと雲が上がってきていることもあり下山に取り掛からなくては土砂降りを喰らう可能性が出てきました。名残惜しいけど下山したほうがいいようです。
しかし今日この日のために靴を新調した甲斐がありました。普段はLOWAの重登山靴を履いていますが、岩稜地帯が少ないタイプの山ならこのスポルティバのウルトララプターIIは凄い歩きやすい。塩見岳はかなり相性が良く、ここまで気持ちよく歩けたのはこの靴のおかげといっていい。
北岳方面も雲がかぶってしまいました、塩見岳に雲がかかる前におさらばしましょう。
午前9時00分、塩見岳山頂出発。
まだ午前9時、普通この時間に下山開始するってないんだけどこの日は別、帰り道もどえらい長いのでおそらく下山完了が14時近くなるはず。ということで急いで下山に取り掛かるが、塩見岳から下山する際まず飛び込んでくるのがこの景色、高度感が凄い……。
岩場得意じゃないからゆっくりと降りることを意識して進む。同行しているSAKUさんは逆に岩稜帯のほうがすいすい進めるタイプなのでここでどんどん距離が……まってくれー!
結局小屋までその差が縮まることなく、岩稜帯が得意な人というか度胸がある人は良いなぁとここで改めて思ったよね。
昔に比べると足元の安定感というか、滑ることに対して極端に恐怖が沸くようになったのか、確保をしっかりしないと降りれなくなっちゃったんですね。
午前9時25分、塩見小屋休憩。
塩見岳の下山は言うても30分以内には終わっていて、塩見岳に駆け込んで我々が最初にやったことはバッジの購入とファンタによる勝鬨でした。快晴の山頂を堪能することに成功したのでこれは間違いなく会心の登山。
無事に登れたことを祝いますが、長居は出来ない……。これからまた来た道を戻るんだよな……という事実を前に先のことを話してしまう。
くよくよしていても仕方がない、雨が降る前に下山するんだ!という固い決意を胸に塩見岳を後にした我々。
振り返れば塩見岳にも雲がかかり始めていましたし、北部の山々を見てみれば山梨県側からモクモクと湧き上がった雲で稜線が制圧されてしまっています。
これは午後には絶対に土砂降りになる……その前に帰りたい……。
樹林帯を駆けるように下山を進めますが、本当に長い、長すぎるのよこの山。
見る見るうちに太陽光は遮られて樹林帯の中はご覧のような曇り空の下の暗ーい雰囲気へと様変わりしていきます。
時折見通しの良い場所から塩見岳を覗いてみると……ガスで隠れちゃった。
アップダウンの数を最初に入念に数えていた我々は下山で何度登って降りるかをちゃんと覚悟していました、覚悟すると不思議と耐えれるもんなんですね。本谷山までちゃんと体力を温存してたどり着けました。
塩見岳はまだ頑張っているけど結構灰色の雲がかかり始めてたから、きっと山頂に今いる人は肌寒い事でしょう。
本谷山と三伏山の中間地点にある唯一のお花畑、マルバダケブキやバイケイソウがあったけど花はほぼなかった。
そしてこれ以外にお花畑があった記憶が無い、というかなかった。
ここ以外は景色が悪い樹林が続く、樹林を余程愛してないと頭がおかしくなるかもしれない。
僕らはあらかじめこういう道だというのを覚悟していたので耐えれたけど、一泊二日予定でここを歩いていたら結構つまんないなっていう気持ちになっていた気がする……。
三伏山付近で「日帰りで逆に良かったなこの山……」とだんだん思い始めてきた。
午前11時55分、三伏山到着。
午前の段階で三伏山まで戻ってこれた、素晴らしいペース配分で歩けたと感動しちゃう。
SAKUさんがこの辺で「トイレに行きたい」という状況になり、三伏峠小屋まで猛烈な速度で歩き始めることとなる。
一緒に歩いたときは高確率でトイレによる高速移動が発生するんだけど、今回も後半でちゃんとそれが見れてよかったよね。
ここから先の速度は本当に早かった……、トイレは人を早くする。
三伏山付近でガスに覆われたんですが、三伏峠小屋のキャンプ場付近に降り立つと景色は霧の中、モイスチャーな状況に。
こうなるといつ雨が降ってもおかしくないという状況です、夏場の正午付近ってこれだよなぁ……。
午後12時5分、三伏峠小屋。
三伏峠小屋で一回休憩をはさみます。
ブログだと時間経過の感覚があまり伝わらないんだけど、あの塩見岳ファンタ以降は樹林帯のアップダウンを3時間近く繰り返してここにきています。
ポカリを飲み干して最後の水分補給を行います。あとは駐車場まで一気に歩き切るよ。
三伏峠小屋からの下りは初めて見る景色です、初めて!!
だって登りではここ真っ暗で景色もくそもなかったから……。景色が見える状況だと苔が奇麗な登山道だったんだと、のんきに歩くことが出来ました。
後なんだろう、下山していて思ったけどやっぱりナイトハイクは時間経過早く感じるんだなと……。
降りても降りても登山口になかなか到着しない、登りの時の感覚だとそんなに長くないように思えたが……。
午後1時30分、鳥倉登山口バス停到着。
小屋から1時間半で登山口に到着……、1時間以内に降りれるんじゃないかと舐めてたけどそんなに優しくはなかった……。
登山口でバスの時刻を確認すると微妙に歩いたほうが早そうな感じだったのよね。
空は雨が降りそうな状態で、SAKUさんと協議した結果「最後まで歩き切る」ことを決めました。
登山口から見た駐車場、完全に対面の山の中腹にある……。
つまり今から山の斜面を大きく迂回してあそこまで行く、30分くらいかかるんだけど歩き始めて十数分で雨が降り始めてきた。
微妙なところで雨が!雨が――――!
午後2時00分、鳥倉登山口駐車場到着。
駐車場に到着するころには二人とも雨で全身が濡れているという状況に陥っていた。
だが無事に最後まで歩けたことは誇らしいですわ……、そして積乱雲からの豪雨も予想通りということで、全てが計画通りに進んでしまったことに安堵感を覚える。
下山後は最寄りの温泉でもある清流苑へ。
こちらは鳥倉登山口を利用する場合は皆さん寄ってくところなんじゃないだろうか。
とはいっても塩見岳日帰りとかそんなにやる人が居ないこともあり、あたりを見回しても登山客っぽい人はおらず。
七夕で盛り上がるファミリーに交じって温泉を堪能し、安曇野牛乳で潤いを得るのでした……。
清流苑の良い所は食事処も完備していることです。
さすがにこの日帰り登山をやった後にご飯どころを探す気力はなかった。
お腹もすごい空いてるし、何よりも塩分が欲しかったのですぐさま食堂に飛び込んで「一番肉が多い丼もの」を頼みました。
塩見岳の充足感はすさまじく、2杯くらいどんぶりを食べたい気持ちになりました。
清流苑を出た後は道の駅で記念品を買っていくのですが、21年からの流行である「乾麺買って帰る」の中では珍しい「山うどん」なるものを購入しました。見た目はどう見ても蕎麦です、原材料を見ても結構蕎麦な気がしますが「うどん」らしい。
こちらが調理した後の信州山うどん。うどん……というかそば?うどんといわれているけど食感は完璧にそばでした。
味はなんか香ばしい、木の実でも入っているのかな?なんというかそんな感じの味がする。ちょっと変わった味がする蕎麦みたいな麺でした。
いや、これは蕎麦だと思うんだよな……??
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