2024年6月14日、長野県は志賀高原にある日本二百名山の一つ「岩菅山」を歩いてきました。
標高2,295mで、裏岩菅山から烏帽子岳へ続く長大で美しい稜線を持ち、切明温泉へと続く道を持つ山です。
2023年秋に草黄葉の山を楽しもうと訪れた際、無情なガスに包まれた稜線歩きに大変悔しい思いをした山でもあります。
岩菅山登山は晴れた日に登り、裏岩菅山から烏帽子岳を見てこそ完成する山……と知人から言われたことで心に火が付きました。絶対に晴れた日に、登ってやる!!ということで初夏の6月の晴れ間を狙って歩いてきました。
深山の6月は山菜の時期、タケノコ採りの地元の方々に紛れて山頂を目指します。
裏岩菅山から烏帽子岳を見て、切明温泉方面の登山道をちょっとだけ歩きます。
青空の下の岩菅山は稜線漫歩を楽しむ山で、様々な文献にも書かれる爽快な稜線歩きが楽しめました。
下山後は湯田中温泉を堪能し、信州中野市にある酒蔵「丸世酒造」さんが作る個性的な日本酒「勢正宗」を手に入れます。
稜線世界を楽しむ登山、歴史ある温泉地歩き、地酒と3拍子揃った登山をお楽しみください。
岩菅山日帰り登山の概要
聖平登山口から目指す初夏の岩菅山



2024年6月14日午前7時25分、聖平登山口。
おはようございます、Redsugarでございます。
昨年23年の秋に訪れた岩菅山の記事を覚えてらっしゃる方はいますでしょうか?
稜線漫歩の山で知られる岩菅山をガスの日に歩くという虚無登山……、帰りの渋温泉はよかったなぁ。
稜線漫歩の山なんですよ!なのに雲の中なんてひどすぎる……、Redsugarはリベンジを誓ったのであった。
ということで今回は初夏の岩菅山、晴れている日にやってきました。

初夏の岩菅山は山菜取りの方々に大人気……、登山口には山菜取りの業者と思われる方々が大挙して押しかけていました。


登山客よりも山菜取りの方々が多い登山口から登山開始です。
岩菅山の奥のほうは山菜取りを禁止されているのですが、登山口周辺は許可されているのか色んなところからガサガサガサガサと音が聞こえます。根曲がり竹のタケノコは郷土品として売られることもあるので、一年でこの時期は稼ぎ時なんだろうなぁ。




岩菅山の聖平からの登山道は一本道で明瞭、4つに分割された区間を山頂目指して歩きます。
聖平周辺は道もきれいだし湧き水もあるし、タケノコはいたるところに生えてるし……初夏の岩菅山はすごい魅力的だな。



この山の旬は秋じゃない、初夏だ!!初夏の山!


前回来たときは暗くじめじめとした空気に満ち溢れていた岩菅山ですが、本日は生命力に満ち溢れています。
ただ、岩菅山は僕の中ではちょっと湿った空気の山なんだけど、そこは晴れてもあまり変わらない。


登山道脇には水が登山道を侵食するのを防ぐ目的なのか、側溝が作られているんですね。
これが沢沿いまで続く……人工物が続くと謎の安心感がある。




晴れていても光が届かない谷底の沢、こちらには木の橋がかけられています。
ひんやりとしていてマイナスイオンに溢れていそうな空気があたりを満たしてくれますが、正直湿度が高くじめじめとした感じがする。沢を渡るとすぐにつづら折りの道が続き森の中へ。




結構山奥まで山菜取りの方々が来ていたようです。
置き去りにされていたバックの中をのぞかせていただきました……、凄い量のタケノコが入ってる。
これ買うとすっごい高いんですよね、これだけで結構な稼ぎになりそうです。



東北地方でも根曲がり竹を食べますが、みそ汁に入れると本当に美味しいんです。サラッとゆでてポン酢やマヨネーズで食べるのも美味しい、歯切れのいいアスパラガスを食べてるみたいな感じです。


ガサガサと笹を揺らすのが熊なのか山菜取りの方々なのか、多分山菜取りと思って進む。
深山なのに凄い人の気配がする岩菅山の樹林帯、登山道脇に視線を向けると極上のタケノコがすぐ見つかるものですから、山菜取りの方々にとっては天国みたいな場所なんでしょうね。


稜線まではこうした階段が整備され、本当に歩きやすい道が続く岩菅山です……目がタケノコを探して泳いでしまう。


午前8時45分、中間点。
タケノコに意識が集中する山歩きを続けていたら、いつの間にか中間地点へ到着していました。
タケノコは中間地点くらいから姿を消してしまいます。景色に集中するというか山菜に集中する山歩きでした、熊か俺は。



初夏の岩菅山は山菜を見分けれる人間には危険……、いたるところにタケノコがあるから目がそれを追いかけてしまう。山歩きに全く集中できません!!
青空と稜線漫歩の岩菅山


岩菅山の山頂方面を見上げてみると……青空ですね。
前回の岩菅山では希望ゼロな景色がここから見えていましたが、今日は雲一つない青空です。


紅葉時期は足元の楽しみがなかったのですが、初夏の岩菅山は標高が上がれば花が咲いていて見るものに事欠きません。


木々の様相も標高が高い場所らしいものへ。雪の重みで根本が曲がった木々が現れたら稜線部はもう少し。


午前9時40分、ノッキリ分岐。
寺子屋峰と岩菅山方面の分岐地点までやってきました。山頂まではあと1/4となり、ここから先は森林限界な景色を楽しんで歩くことができます。


山頂部を眺めると笹に覆われた見晴らしのいい稜線がどこまでも続いているのがわかります。
前回これを歩きたいと思っていたんだけど……、真っ白でしたね。
岩菅山は過去スキー場建設の計画があったりしたのですが、結果的に今の自然が残る形になったので良かったよなぁとこの景色を見て思います。


稜線部に立つ木々は冬になれば樹氷へと姿を変えてくれそう。


後ろを振り返ってみると志賀山、横手山方面の山深い景色が見えます。
山深く見えるけど開発されていて観光地化されてんだよなぁ……と思ってしまう。



言うても志賀高原の湿原や池塘巡りは楽しそう。草津温泉から切明温泉へ歩きぬけることもできる夢の稜線ルート……歩いてみたいなぁ。


稜線部に出るとツガザクラの花も出現、コケモモをもう一段可憐にしたようなお花が特徴的です。


草と笹の草原上となった稜線部の登山道は岩が露出し、これまでの深山的山歩きから雰囲気がガラッと変わる。この開放感が志賀高原エリアの良さかぁ……。






午前10時10分、岩菅山山頂。
社と五輪塔らしき構造物があるのが岩菅山山頂となります。
縦走を考えた場合はこの避難小屋か、烏帽子岳方面にあるテント適地を使うことになるようです。
岩菅山登山はちょっと変わっていて、山頂に到着してからさらに奥にある裏岩菅山まで歩いてようやく登頂といった感じになります。まるで表ボスを倒しただけではだめで、裏ボスを倒さないと終わらないゲームみたい。


岩菅山からは裏岩菅山が良く見えます。標高的にも裏岩菅山のほうが50mほど高くなっているおり、裏ボスとしての風格がある……。山歩き的に言えばここから先の稜線歩きが岩菅山の真骨頂、前回堪能することができなかった稜線漫歩を心行くまで楽しみたいと思います。


稜線上には信仰の痕跡として岩仏が置かれています。
風化でその姿は鮮明ではないけども……山岳信仰ということも考えると不動明王かな。


地図にも紹介されていた裏岩菅山へ至る稜線漫歩とはこの景色。
開放感抜群で歩きやすい稜線を心行くまで堪能!


振り返っても「良い……」としか言えない。写真で見ると地味だけど、歩いてみると気持ちがいい道が続きます。
足元の土が柔らかくて、歩く時の反発が気持ちいいんだよねこの道。


この日であった登山客は皆さん「今日は最高の晴れですね」と笑顔。
晴れの日に登山に行くとみんな同じことを言うけども、晴れた日に山に来るための努力もあっての言葉なんだろう。
平日なら仕事を調整しないといけない、家族がいればいろいろと気を使う、その努力の果てにこんな空の下を歩ければ自然と「今日は最高ですね」と口から出てしまうもの。






午前10時55分、裏岩菅山。
稜線の先にあるピークへ到着すると、眼下に焼額山を見下ろすことができます。
ここまでの稜線歩きは気分がいいモノでした……、癒しの登山道を延々と歩きたい。
ロングトレイルでこういう道をひたすら歩き続けたいなぁと思わされる登山道でした。
烏帽子岳の眺望と湯田中温泉の下山


ある人が僕に言いました「え、裏岩菅山から烏帽子岳を見たことがないんですか?」と。
普通の会話ですが、ガス登山の後で心がささくれ立っていた僕の心は護摩祈祷くらい燃え上ってしまいました。
煩悩だとは思うけど……あの時の気持ちが烏帽子岳の眺望で浄化されていきます。



うん、確かに烏帽子岳は登りたくなるわ。


午前11時15分、ちょっとだけ奥に進む。
裏岩菅山から切明温泉までは玄人向けな道に思えます。
前後日の休みをしっかりとれるような余裕がある人に許されるような、そんな縦走路。
地図を開いてみれば池塘や草原上の山頂など魅力的な言葉が躍ります。
いつものごとく、裏岩菅山からちょっとだけ先に進んでみて登山道の様子をうかがってみましたが、歩く人が少ないその登山道は野趣を感じさせました。



烏帽子岳の眺望だけは素晴らしく、道中常にシンボリックな姿が視界に入ります。


裏岩菅山から烏帽子岳へと向かう道は踏み固められてないところも多く、歩きごたえはありそう。道端にはショウジョウバカマの花が群生していたりと、こちらも初夏に歩けば花に恵まれます。






裏岩菅山まで戻ってきたら、稜線漫歩を再び楽しんで下山となります。初夏の6月は正午付近になると昇温で雲が多くなってきますので、岩菅山には雲の影がかかってしまいました。


裏岩菅山側の登山道から岩菅山を見ると美しい三角形に整った山が見えます。岩菅山は裏岩菅山から見るものなのかも。






午後12時50分、ノッキリ分岐。
稜線漫歩の道は下山となれば快適に歩ける……というか凄い速度で下山できるのが岩菅山のいいところです。
あっという間にノッキリへ、ここから登山口までも難所は無いのですんなり下山できそう。






午後1時35分、中間地点。
山菜あるかな?タケノコあるかな!?とあたりを眺めながらのんびりと下山。
タケノコ採取の方々は撤収していて、朝の活気はどこへ行ったのか……、静かな空気が漂う森をひたすら降ります。







そういえば……、岩菅山の水って飲んだことない。登山口の近くにあった石清水は飲めるみたいだからいただいてみようか?



雪が豊富な山ということもあり、普通に美味しい。
でも個人的には新潟の守門岳や岩手の焼石岳の水のほうが好きだな。


午後2時50分、登山口。
あれだけたくさんあった車はいったいどこに……と思えるようなほど寂しい空気が漂う登山口へ戻ってきました。
しかし、見回すと数台軽トラが残っていて、下のほうからガサガサ音が……山菜取りは日が出ているうちはやるもんなのかな?



岩菅山/裏岩菅山稜線漫歩登山終了ということで、長野県北部の温泉と酒を満喫するために車を走らせることにしました。




岩菅山と言えば道中には発哺温泉があります。前回は渋温泉だったので今回は発哺温泉に行ってみようかなぁと思い車を走らせたのですが……残念ながら本日はお休みということで入れず。
全国でも珍しい岩盤から噴出する蒸気を利用した蒸気温泉を楽しんでみたかったなぁ。






という事でやってきたのは渋温泉のさらに下にある湯田中温泉です。
渋温泉と湯田中温泉は歩いても30分かからないくらいの距離しか離れてませんが、それぞれ歴史が違うらしい。
湯田中温泉の開湯は1350年前で発見したのは僧侶の智由さん。
渋温泉の開湯は1300年前で発見したのは行基菩薩だそうです。
この辺は地面を掘るとすぐに温泉が出てきてしまう、というくらい温泉に恵まれているらしい。



湯田中温泉の駅前にある楓の湯は露天風呂の居心地が良い、地元の人が通うタイプの温泉に思える。町民割だと500円以下だから、住んでたら頻繁に通っていただろうなぁ。


入浴後は失った水分を補うために……果汁1%の牛乳を二本もいただいてしまいました。
風呂上がりの乳製品は大概なんでもうまい。




湯田中温泉をふらふら~と歩いてみると、雰囲気の良い街並みが渋温泉まで続くようです。
歴史を感じさせる物がたくさん見られる温泉街は歩くだけで結構楽しい。






湯田中温泉を出発した後は道の駅でお土産の購入。いつもの乾麺そばに追加して「間違いないお土産」であるリンゴジュースを購入していきました。小さなお子さんがいる方には超お勧めのリンゴジュースです。
蕎麦も癖がなくて、冷たいお蕎麦で食べればうまい……長野のそばもはずれが少なくていいよなぁ。



乾麺そばに当たりはずれがあるのか?と思った方、あるんです……!味はめんつゆの影響が大きいけど、食感は繋ぎに使っている素材で全然変わります。芋系を使っている蕎麦はやっぱりモサモサしたりするんです。小麦を使っているともちもちしていたり。
そういう処で、自分が好きな乾麺そばを探したいところですね。


さて、お土産と言えばもう一品……。下山後に最寄りの酒蔵を探すというイベントがあるのですが、岩菅山の麓には嬉しいことに酒蔵が数件あるのです。営業時間的に訪れることができたのは丸世酒造さんで、新酒「勢正宗」を購入することができました。
店番のおじいちゃんと岩菅山の話をしながら酒の話を聞いてみたけど、購入した酒は超個性的なガス系。シャンパンのように吹き出ることもあるから注意しろとのことでした。





という事でこちらが購入した勢正宗、二つ購入してしまいました。
緑色がお祭りカープという名前のお酒、爆発の危険があるという事で期待が膨らむ!


という事でそれからしばらくはこちらのお酒を楽しませていただきました、以下感想。



お祭りカープはおりがらみという事で生きた乳酸菌と酵母が詰まったお酒。4月に瓶に詰めた後も瓶の中で酵母たちが活動し続けている……。という事で開けるときに炭酸のように爆発する可能性があるから気を付けてというお酒でした。実際開けてみると確かにすごい勢いで炭酸が吹き出てきまして、慌ててふたを閉めながらなんとか開封。少し濁った酒からは小さな気泡が沸き上がっていてシャンパンのよう。一口飲んでみるとシュワっと広がるビールのようなくちどけ……これは超個性的。甘味はほどほどで炭酸に程よくマッチしたさわやかなサイダーのような飲みやすさ、香りも嫌みがない。
正統派なガス系だと思うのですが、これめっちゃうまいわー!!日本酒ってこんなお酒もあるんだ!と世界を広げてくれた一品でした。「シャンパンのような」という売り文句の日本酒をいくつか飲んできましたが、このお祭りカープが今のところ一番美味しかったです。奥志賀の山に行った際は強くお勧めしたい!



勢正宗はですね、お祭りカープと同じように米の甘みを感じつつも後味がかなりすっきりです。生酒という事で舌先にぱちぱちとした、生きた酒を感じることができます。癖が少なく甘みが強いけどフルーツ系ではなく感じる。食事によく合うところでいうと浅間酒造さんの浅間山を思い出させる。だけどこっちのほうがアルコール感が少なくて飲みやすいお酒でした。
あれだなぁ、僕はお祭りカープ激推しですね。


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