2023年9月17日、長野県北部に位置する風光明媚な稜線漫歩を堪能できる二百名山「岩菅山」を登ってきました。岩菅山の最高地点である裏岩菅山の標高は2,341mとなり、そこからは北の焼額山、東側には切明温泉へと続く巨大な稜線上のピーク「烏帽子岳」をよく見ることが出来ます。
登りやすくて眺望が良い、9月から10月にかけて良い山と聞いていたこともあり、紅葉シーズンに向けた一発目として草紅葉でも見れればいいなぁという気持ちで訪れることとなりました。
しかし、地球さんがほほを赤らめる令和の世。最近ちょっと暖かいおかげで気象も荒ぶるなぁなんて思えるじゃないですか。23年も梅雨が明け10日以降は天気の凹凸は激しく、8月を過ぎて9月に入ってからも空気がもみくちゃにかき混ぜられて山の天気は目まぐるしく変わっていました……。
ヤマテンの周辺天気は晴れ、SCWは一応晴れだが午後から曇り、windyの雲頂高度別で調べると低層雲が多そう、2,000m台の山で低層雲は危険かもしれない。でもどうしても今日岩菅に行きたいんだも~ん!
というわけでさいたま市から深夜、クルコンがついていない古いヴォクシーを走らせて登山口へ到着したRedsugarを待ち受けていたのは……。
絶望の登山の始まりです!!!
なんで虚無なんだよぉおおおおおッ!!!
岩菅山日帰り登山の概要
青空を信じて向かう志賀の奥地
2023年9月17日午前3時50分、横川SA。
おはようございます、Redsugarでございます。久々の深夜の横川SAですが、改修工事をしていますね。今日は長らく登りたいと思っていながら、後回しにし続けていた魅惑の稜線岩菅山を歩きたいと思います。
埼玉を出発して上信越道を通って長野県へ向かう……、深夜の食事ならこの横川SAが程よい場所なのです。
登山に行くときの夜食はカレーが多いです、なんたって登山口まで急いでますから。すぐに出てくるご飯を食べたい。
午前6時5分、登山口。
志賀高原に到着してから岩菅山の聖平の登山口までやってきたのですが、ちょっと迷いました。スキー場ホテルが連なる高原リゾート地帯、そこを走る県道471からどこで聖平の登山口に入るんだ???というのが古いナビだとわからなかったんですね。プリンスホテル手前の分岐で曲がればよかったらしいのですが、行き過ぎてスポーツハイム奥志賀側からきてしまいました。
登山口に到着すると……雨上がりっていう感じがしますね。空は若干白いけど晴れ予報だし何とかなるか??車結構止まってるけど登山客が全くいない、どうなってんだ??
登山口駐車場は満員御礼なのですが、なんか登山客の数が足りないような……?秋に差し掛かろうという時期ですがまだキノコとかには早いような気もする。登山開始後は階段を上って小三郎小屋跡の分岐点へ向かいます。
午前6時15分、小三郎小屋跡。
聖平の登山口からすぐに表れる分岐点、9月という季節柄人気は無い。翌年の春に登った際はこの付近ではタケノコ採りの方々が沢山いて、そこらじゅうでガサガサと音がしていました。立派なタケノコ採れるんだねぇ……。
さて、ここからはノッキリを経由して岩菅山山頂を目指します。
西側斜面を登っていく形となり、光が差し込まない、薄暗い登山道ですがびっくりするくらい綺麗に整備されています。登山道の脇には側溝みたいなものもあり、小さな水の流れがチョロチョロしていたり。
アライタ沢?フクイ沢?名前が上流と下流で変わるような沢沿いを進んでいきます。ここは平たんで斜度がほとんどなく、ハイキング気分で歩けます。足元は写真でもわかるけど石畳で随分ときれいに整備されてる……。
清流のアライタ沢。橋を渡った先から尾根に向かってシラビソやコメツガっぽい高山的な木々が生える樹林帯を登っていくことになります。
階段アンド階段、志賀高原って西武が開発にかかわっていると地元の人に聞いたことがあります。岩菅山って二百名山だけどそこまでメジャーな山とは思っていませんでしたが、歩いてみるとびっくりするくらい道がきれいに整備されてるの。開発の際に目をつけれられて登山道もきれいに整備されたんかなぁ??
岩菅山について調べてみると長野オリンピック開催に向けて岩菅山にスキー場を建築する計画があったそうな。コースは岩菅山山頂と裏岩菅山頂から西側の斜面に向けて滑るようなものだったとか。自然保護の観点や地元と揉めたことで結局は白紙撤回になったけど。昨今のウィンタースポーツ需要からすると撤回して正解だったとは思う。
ていうか高度経済成長期はマジで滅茶苦茶なことを全国でやってたんだな……。
ようやく日差しが差し込んできたのですが、ガス成分が強く拡散した優しい光が森に差し込みます。
ちょっと待って、天気図的にも晴れると見込んでたんだけど……もしかして岩菅山曇ってるんじゃないこれ?と思ったのがこの瞬間。
山頂を見渡せる箇所まで来てみれば……群馬県側というか野反湖方面から湧き上がる低層雲が岩菅山を覆いつくしている。それ以外は快晴の青空なんだけど、岩菅山だけが雲に攻め立てられている!!
な、なんてこったぁーーー!!!ここまで来た以上登るしかない、登るしかないがッ!!
まだあきらめてはいけない、あきらめたらそこで試合終了になる。稜線にたどり着くころには雲が下がるのではないか?そんな甘い希望を抱きながら登山を続けます。いや、山をやっていればわかるけど雲が低いこの時間に低層雲があそこにあるっていうことはたぶん一日中ダメな可能性が高いんだが……西から高気圧が来るわけでもないし。
写真を見返すと無意識的に足元を採り始めていました、歩いていた当時は希望を胸に持っていたけど、身体は無慈悲な現実を理解して切り替えていたのかもしれない……。
小さいスギタケが生えてるわーとかそんな感じで歩いていた思い出。志賀高原はキノコもたくさん採れるんだろうねぇ……。
午前7時10分、岩菅山中間地点。
スタートから1時間ほどで中間地点へやってきました、早い……早すぎるよ!
岩菅山は翌年の春にも登り、その際に改めて確認するのですが聖平のコースは非常に短く高速コースであることが特徴です。とにかく登りやすいのよこの登山道、斜度のメリハリ的にも早く歩けるところがすっごい早く歩けるからね。
ガスに覆われた虚無の稜線漫歩
中間地点を越えると岩菅山山頂に向かって草原上の稜線漫歩が始まります。晴れてさえいれば圧倒的に気持ちが良かろう景色、だが目の前に広がっていたのは涅槃ッ!!と思わず叫びそうな真っ白な世界。虚無なのか極楽なのかよくわかんねーよ、とりあえず登山的には外れだよこれ……。
ガスの槍ヶ岳よりも晴れの高尾山という名言をかつて僕の先輩が口にしていた。その通りだと思う……、太陽と青空に勝るものはないよ。
午前8時15分、山頂。
曇りとはいっても晴れたり曇ったりしてくれたり、雲模様が見えればまだ楽しいのですが目の前の景色はただただ白い。山頂には岩を彫り込んで作られたお堂がありまして、一応信仰の跡があるのですが……、岩菅山周辺の信仰形態は全くわからないし、ガスの悔しさから調べる気も起きません、くーやーしーいー……。
ガスの稜線、岩菅山最高地点である裏岩菅山山頂まではここから片道30分ほど、行くか迷うでしょ?
記事を読んでいる側だと「もうここで降りても良くない?」と思うかもしれない。でも登山をしている当時は恐ろしいもので、遭難する人の心理に似ている確証バイアスがかかっていて、雲が薄くなった際に見える太陽のシルエットや光の変化で勝手に「もう少しで張れるかもしれないから先に進んでみよう」という感じでどんどん進んじゃうんです。
遭難していなくても確証バイアスで進むって結構あるのよ。きっと晴れるっていう根拠のない願いなんだけど、周りの状況から勝手に晴れそうな根拠を探して進んじゃうんだよね。
というわけで張れることを信じて裏岩菅山山頂を目指して稜線漫歩を楽しむのですが、晴れてさえいれば絶対に楽しい稜線だと思うの……晴れてさえいれば。真っ白にガスっちゃってるからさー、本当にただの草原と丘みたいなところを登って降ってと歩くだけでまったく楽しくない。
そして山頂手前、ほんのちょっとだけ青空が見える瞬間が到来……、やった晴れる!?と思ったがこれが限界でした、Ω\ζ°)チーン。
午前9時5分、裏岩菅山山頂。
長い時の流れで文字がはがれ落書きすら形を失った白い看板が残されている場所に到着しました。えーと、裏岩菅山山頂ってここ??と疑いたくなるような場所が山頂になります。ガスっていると本当に山頂がどこすらも怪しくなるから恐ろしい。
裏岩菅山山頂ではアマチュア無線を楽しむ方や先行していた登山者が虚無の中でラーメンをすすっていました。
みんなこの場所で晴れ待ちしてたってことか。
岩菅山に吹き付ける野反湖からやってくる雲は見た感じ低層雲、雲頂高度は大体2,000mくらいまでと言われていることもあり、2,300mの山頂で粘っていれば晴れるかもしれない!ということをみんな考えていたんでしょうか、待っていたら焼額山方面の晴れ間が見えます。うーん、岩菅山で雲をせき止めた結果焼額山は快晴のようです、泣きそう。
焼額山はもちろん北アルプス方面も快晴の模様、曇っているのは……岩菅山だけのようだ。
ちょっとした晴れ間は希望ではなく、岩菅山以外全部晴れ的な絶望を植え付ける悪魔の晴れ間でした。おかげで思い残すことなく再訪に気持ちを切り替えて下山することができます。ほら見てみぃ、きれいなガスの稜線だろ……。
地図を見直すたびに「素晴らしい景色の稜線漫歩を楽しめる」っていう文字が見えて辛い。
岩菅山稜線へと差し掛かる笹が広がる斜面には次々と登山客が登ってきます、人気の登山スポットなんだなぁ……。
複数人で登っていれば、ガスだけど会話が楽しいからよかったという休日になるのかもしれない。ソロってそういう楽しみ方が欠落しているのが辛いんですよね。
下山を進めると青空がブワーっと広がり始めます、下山したら晴れるあるあるかよぉーと思ってましたが、山頂は依然としてガスに包まれているようです……。岩菅山を登るときは群馬県側からのガスに気を付けないといけないんだなぁと思わされた一日でした。
午後12時30分、登山口。
その後、登山口までは一直線に下山……。心が折れてるとかじゃなくて、コースが短いからあっという間に下山してしまいました。気を取り直して渋温泉を観光して一日を取り戻す!と心に決めます。
ちなみに志賀高原、観光資源が多いですね。渋温泉へと向かう道中の澗満滝展望台で滝を見れたり、自然を楽しめるスポットがたくさんあるんだなぁと感心しました。
渋温泉、全てを取り戻す温泉観光へ
澗満滝展望台からは長野方面がよく見下ろせます。志賀高原は広大な山地で、どれか一つを水分の山と扱うことは難しいような場所だなと思えますね。ここから高速道路へ向かう道中に本日のお風呂である渋温泉があります。
午後1時35分、渋温泉駐車場。
えーと、今日は渋温泉に来たんだっけ??岩菅山に登ったような気もするが、はるばる長野に温泉観光をしに来たような気がする、そうに違いない。渋温泉ですが、湯田中温泉のからさらに山側へ登ったところにある温泉郷です。
駐車場で駐車料金を払うと同時に、日帰り入浴券を購入しましょう。
日帰り客が入れる共同浴場は一か所しかありません。九番湯になるのですが、その入り口を開けてもらうためには近くの温泉旅館の店員さんにお願いする必要があります。
あと、駐車場で温泉の入浴券を買おうね!!
渋温泉ですが歴史を感じさせる温泉街っていう感じ。学校帰りの子供たちが温泉街を走っていくけど、遠く離れた場所の生活を見るっていいよなぁ。細い路地の合間に薬師堂や神社があって、雰囲気は抜群です。
小路は温泉宿が立ち並び、こういうところで一度はお泊りしてみたいという気持ちが沸き上がります。今日は渋温泉を堪能してるなぁ……、午前中になんかすごい悔しい思いをした気がするが……気のせいだよね。
というわけでやってきました九番湯「渋大湯」です、入口にコインロッカーあり。
入口は施錠されていて、使用する場合は近くの温泉宿にお願いする必要があります。
お勧めはですね、大湯の目の前にある斉月楼さんだと思います。昭和11年に建てられた木造四階建て建築、有形文化財にも指定される宮大工が立てた温泉宿となっているんですが、これが千と千尋の湯屋の元ネタの一つと言う話もある程度には似てます。
泊まれないけど、ロビーを見ることはできる……!ということで斉月楼さんの扉をたたき大湯の入り口を開けてもらったRedsugarでした。
渋大湯ですが雰囲気はですね……最高です。最高ですかぁ~~?最高でぇ~~す!という感じです。
蔵王や草津温泉の共同浴場に雰囲気が非常に似ていますが、泉質は違うかな……蔵王や草津はすっごい酸性強いけどこちらは少し弱めなのと鉄の香りが強い。そして……時期的な問題もあるけどとにかく熱い!!お湯が熱いよ!!
渋温泉のほかの共同浴場と比較しても九番湯は泉質がちょっと変わっているらしい。ほかの湯は弱アルカリ性や中性といった感じで色も透き通っているものがほとんどなのだとか。
大湯に入る際は飲料水を用意しておくことをお勧めします。暑いんだけど体温を下げるものがないのよここ、水風呂とかないし……。脱衣所にたどり着いてびっくりしたのはサウナがあること。汗かき放題じゃないかとびっくりしたのですが、水風呂がないサウナってただの拷問に近い気がするのでパスしました。
九月の全然暑い時にサウナは熱中症になっちゃうよ。
暑い!!灼熱だよ!!と言いながら汗をぬぐって大湯を出たら外気で汗が……いや外も暑いわ。
このままでは脱水すると思い駆け込んだのが大湯のそばにある若葉屋さんです。甘味を補給するならここがお勧め、コーラもアイスもあるよ!
キンキンに冷えた瓶コーラでのどを潤した後は、イチゴジェラートでしっかりと糖分を補給していきます。今日は温泉で汗を流したからね、足もなんかちょっとだるいけどそれは気のせいでしょ!!
午前中に登山をしたような気が……いや俺は今日渋温泉に来たんだったな。
風呂と甘味をキメた後はご飯を食べるだけです。幸いにして今夜は車中泊予定ということで、ご飯を食べる余裕がありますが……次の登山ターゲットをまだ決めてない状態で動き出すとご飯が食べれなくなる可能性があります。
ということで渋温泉のそば処「やり屋」さんで蕎麦を腹いっぱい食べることにしました。
こちらのお店、店内に凄まじい数の人形があって圧巻。蕎麦はもちろんおいしいのですが、漬物が合わせで出てくるタイプのお店です。Redsugar的には漬物が出てくる山形田舎蕎麦系統のお店は大好きなので、自分的には当たりなお店でした。野沢菜のシャキシャキした漬物美味しぃ~~。
午後3時30分、渋温泉出発。
渋温泉観光を終了し次の目的地に向けて出発することにいたします。今日は渋温泉の九番大湯に入れたし、おいしいアイスや蕎麦も食べれてよかったよなぁ……!!午前に登った岩菅山の記憶はなかったことにしたい。
奥志賀方面は雲が沸き上がり、長野の盆地側は青空が広がっている午後3時、絶対に稜線漫歩を堪能するために帰ってくるかな……次の春に待ってろよと啖呵を切ってこの日の登山を終了するのでした。
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