【北海道】ニペソツ山、幌加温泉コース日帰りで登る幻の百名山

天狗平からのニペソツ山

2022年9月22日、北海道は東大雪エリアにあるニペソツ山を歩いてきました。標高は2,013mとなり、一部の登山好きな人にとっては百名山入りを逃した名山として覚えられている山だったりします。
北海道には大雪山を中心としていろんな山がありますが、ニペソツ山はその中でもダントツで「形がかっこいい山」になるかなとRedsugarは思います、雑誌などでも「この山の形はかっこいい(超意訳)」という記事が多いのでまちがいない。
さて、そんなニペソツ山ですがメジャー登山道は十六ノ沢登山口という場所だったのですが、2016年の台風で林道が崩壊して以降、18年に幌加温泉コースが整備され、そちらがメインのコースとなりました。
幌加温泉コースは片道約12.5キロ、往復で約25キロとかなりのロングコースが特徴となる厳しいものですが、コースが整備されてからはかなり歩きやすくなったため、十分に日帰り登山が可能です。

今回は最も山のコンディションが安定している秋、幌加温泉コースの登山道はぬかるみがきついと言われますが、乾燥している時期はトレランコースみたいに整地された道が整うタイミングがあります。
理想的なコンディションを引き当てた今回の登山、野生動物との出会いあり、東大雪の絶景ありとニペソツ山を思う存分に楽しむことが出来た一日となりました。

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あこがれだったニペソツ山、本当に素晴らしい山だからぜひ登ってみてください。時期はこの記事と同じ秋は登りやすいはず……!

目次

ニペソツ山日帰り登山の概要

■概要
今回歩く幌加温泉コースは総距離約25キロということですが、登山時間としては8時間で終わってしまったのでそんなに長い気がしなかったというのが正直なところ。近年の幌加温泉コースの整備のおかげか、山と高原地図記載のコースタイムよりもかなり早く歩けたのが今回の記録です。
秋に歩くメリットは北海道の場合は登山道整備、狩り払いの時期が夏でも各山比較的遅いというところにあります。秋であればほとんど整備が終わっていて、幌尻岳ですら狩り払いが完了して歩きやすくなっています。
幌加温泉コースも狩り払いが終了してれば、三条池周辺の「迷」マークのところも迷う可能性が全くないような明瞭な道がしっかりと続くような状況になっています。
そういう北海道特有の登山道整備の状況もあるため、秋に歩くのがおすすめかなと……。
ちなみにこのニペソツ山ですが、天狗平前のガレ場から山頂にかけてはナキウサギの生息地となっているため、運が良ければ岩の隙間からナキウサギを見れるかもしれません。

■アクセス
基本自走で訪れる山になります。拓殖バスのノースライナーが幌加温泉前にあるので前後泊を考えるのであれば公共交通機関は選択肢に上がりますが、ニペソツ山は日帰りか天狗平でテント泊が殆どになると思うので自走になるかと。幌加温泉から砂利道の林道に入りますが、林道に入る際の傾斜がかなりきつく車高が低い車だと厳しいかもしれません。Redsugarは実家の軽自動車(FF)で向かいましたが、ちょっと上るのに苦労しました。浮いた砂利が敷き詰められた斜面なので、四駆だからといって油断は禁物、タイヤをのせる場所を選んで走る感じで登る必要があります。

■コースタイム
幌加温泉登山口5:00→三条池6:15→ガレ場7:40→天狗平8:10→ニペソツ山山頂9:35→天狗平10:45→ガレ場11:20→三条池12:20→登山口13:15
合計登山時間 8時間15分、コースが整備された結果滅茶苦茶早く歩けますね…ニペソツ山。

ヒグマが怖い朝の幌加温泉コース

2022年9月22日午前5時00分、幌加温泉登山口。
おはようございますRedsugarでございます。北海道は十勝に帰省したついでにやってきましたニペソツ山。
実家がある音更なんですけど、大雪山や日高山脈の山が実はめちゃくちゃ近いということがありまして、このニペソツ山も家から車で1時間半ほど。家でぐっすりと寝てから深夜の国道273号線をひたすらまっすぐ走ってたどり着きました。

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十勝の道でヌカビラ方面に向かう道は下手したら数十キロくらいひたすらまっすぐな道が続く。道中には士幌や上士幌の道の駅があって、休憩には事欠かない。

登山口ですが、幌加温泉到着後にどっから林道に入るのかすげぇわかりにくかったんですけど。道東あるあるな「道のわきにあるすげぇ急な林道入り口」を登ってしばらく進んだらたどり着けました。実家の軽自動車で来たんだけど入り口の斜面の具合が悪くて一瞬スタックしてめっちゃ焦りました。道外からチャレンジする方はSUVで来たほうがいいです、北海道の林道は南アルプス南部をより過激にした感じの道なので。

二ペソツ山山頂へ続く林道

早朝のニペソツ山駐車場ですが、一言で表すと「滅茶苦茶怖かった」です。秋の5時とか光は弱いし、駐車場は背の高いトドマツ林のど真ん中で薄暗すぎて……いつヒグマがやってくるかびくびくでした。
幌加温泉コースは片道12.5キロの25キロ近いロングコースになりますが、最初の2キロは歩きやすい林道なので走るような速度で歩くことが出来ます。

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今回コースタイムをかなり巻いて歩くことが出来ました。登山道整備以降であればかなり快適に歩くことが出来るのがニペソツ山の特徴かなと。

朝日が差し込む二ペソツの森

林道を駆け抜けた後、登山道に入ると朝日がようやく差し込んできました……。野生動物は明け方活動する、暗いうちにと聞いて育ったからか凄い怖かったんだけど、ここでようやく気持ちが幾分か落ち着きました。

朝日が差し込む東大雪の森

ただ、クマが怖いなっていうのはなかなか払拭することはできません。
熊スプレーをザックに差してますけど、やっぱり怖いもんよ。幌加温泉コースが整備されたといっても、ここでは人間は来訪者でしかありません。

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北海道の山を歩いていて思うけど、アルプスとかに比べるとはるかに自然の威圧感が強い。メジャーな百名山以外は安心感が全く湧いてこない。

目の前に現れたエゾシカの雄

ガサガサ!という音、そして駆ける様に歩いていた自分の目の前に現れた黒い塊、ついに出会っちまったぁ!!!と思い、ビタァッ!!と足を停めたら……鹿でした。
すげぇ立派な角を付けた巨大なエゾシカでした。本州の鹿の1.5倍くらいあるでしょうか?角でつつかれたら死ねるな、という感じで鹿も怖い。

このエゾシカですが、まるでこっちにこいよという感じで登山道を先導していってくれました。
しばらく歩いたところで斜面を駆け上がっていったのですが、鹿がいるってことはクマはこの辺にはいないと言わんばかりの立派な風格を漂わせていました。

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やっぱりエゾシカかっこいいわ……、生まれ故郷の動物は何でも贔屓しちゃう。

針葉樹が林立する二ペソツの森

朝日が差し込むニペソツ山幌加温泉コースの樹林ですが、どこに動物が隠れてるかなんてわかりません。
ストックに鈴をつけ錫杖のようにシャンシャン音を鳴らしながらひたすら進むしかない。

林道合流地点からさらに2キロ近く進むと三条沼が近づいてきます。
ニペソツ山は標高約2,000mの山ですが、登山口の標高が670mということなので標高差でいうと1,300mくらい。
百名山だと日光男体山くらいでしょうか?それを片道12キロの長さでこなします。後半まではかなり緩やかに上っていく関係上、中盤までは道がかなり穏やかで本当に歩きやすいと感じました。

三条沼に差し込む朝日

午前6時15分、三条池。
朝日が差し込むタイミングで三条池に到着しました。水草が踊るように水面に並ぶ独特な雰囲気の池です。
地図上ではここが全体の1/3の地点くらいになります、ここから先も北海道特有のエゾマツトドマツ林が続きますが、そちらも非常に穏やかな道が続くので小走りで駆け抜けていくことが出来ます。

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ちなみに景色は……まったくもって無い。雰囲気も特段いいわけではなく、笹と松がひたすら続く。杉林の足元が笹になっているような森が延々と続く感じをイメージしてほしい。

朝日を受けるトドマツの幹

木肌に傷があるとそれが野生動物の付けたものではないかとドッキリしてしまいますが、その上に巻かれたピンテを見て人の手が入ってるぅ……と安心してしまう。

幌加温泉コースの樹林帯を緩やかに登る道の奥には背丈ほどの笹が生い茂った原野が姿を現します。
ここら辺までくると二ペソツ山の展望台と呼ばれるポイントが近づいてきている状況。
トドマツやエゾマツと思われる針葉樹林を抜けると、カバノキが目立つ明るい森へ。

マカバの木が茂る登山道

笹が狩り払いされて明瞭になった登山道はかなり歩きやすく、天狗平前のガレ場まではスムーズに登っていける。

登山道から見上げる二ペソツ山山頂

山と高原地図でいう二ペソツ山の展望台と呼ばれるスポット付近に到着すると、目の前に二ペソツ山と思わしき巨大な山が現れます。展望台地点からはぐるりと回りこむように尾根を伝っていくコースになっているのですが……、めちゃくちゃ遠く見える。

二ペソツ山と天狗岳

二ペソツ山とその手前にある前天狗岳、双子の山みたいに見えます。
そしてこの写真からわかるのが、今から前天狗岳に向かってすごい登るということと、天狗平から降って登り返すという状況……。片道12.5kmの二ペソツ山ですが、そう簡単に登らせてくれそうにありません。

二ペソツ山登山道から見るウペペサンケ山

二ペソツ山の展望スポットからは、音更からも良く見える名峰「ウペペサンケ山」が見えます。北海道百名山に記載される山ですが、ここから見てもわかる長大な稜線が特徴的な山です。
ウペペサンケとはアイヌ語で「雪解け水をどっと押し出す」という意味らしく、十勝平野を流れる音更川や然別川の水源の一つということですかね。山行距離は18キロ近く、ヌカビラ湖湖畔からのスタートになる……ということで家から近いけどウペペサンケは本当にきつそうな山だ。

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校歌が音更川だった俺にとっては音更山と合わせて、いつか歩かなくてはならない宿命の山な気がする。

前天狗岳を目指して標高が上がり始めました。森林限界に向かって坂道を登っていくと見えてくるのが十勝三股カルデラの全景です。十勝北部にあるこの十勝三股と呼ばれる一帯はその昔林業が栄えたと聞いています。
今は喫茶店が一個あるくらいにさびれているし、人も住んでいないような……?上から見るとすごい奇麗なカルデラ地形だなと感心してしまいました。

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十勝三股カルデラを見下ろすように、二ペソツ山、石狩岳、音更山といった山々が連なるその景色は圧巻です。底に広がる原野に北海道スケールを感じる。

登山道中の紅葉

標高を上げていくと紅葉が進んできていました。周辺の山も見渡すと、中腹に紅葉のベルトが出来ています。

16ノ沢林道コースを眺める

十六ノ沢から入山するコースが見える、向こうは最初に標高を上げた後は天狗平に向かって伸びる緩やかな稜線を漫遊しながら歩けるようです。林道さえつながっていれば向こうが人気になるのも理解できます。

二ペソツ山の山肌を眺めて登る

前天狗岳直前までやってきました、ここからはガレ場を登って一気に標高を上げていきます。下から見上げる二ペソツ山が城のような立派な形をしているのが良くわかる……。

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確かにその風格は百名山であったとしても何ら違和感がない。

百名山の風格を持つニペソツ山

ナキウサギの巣へ

前天狗岳の直前で一気に登ることになるのですが、その入り口がこちら。
これまでとは様相が変わり森林限界風な草原と、大きな石が積み重なったガレ場が出現します。

がれ場を降りる登山者

午前7時40分、ガレ場。
三条池から1時間半くらいでガレ場まで歩けたので、距離の割にはかなり早く歩けたなと……。普段のマラソンの成果+超軽量装備のなせる業か、相変わらずこういう地面が土で歩きやすいタイプの山ではスポルティバのウルトララプターIIはすごい力を発揮します。普段使っているLOWAのチベットに比べると1.5倍くらいの速度で歩けてしまう。

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ちょうど向かい側から登山者が降りてきました。天狗平に宿泊していたとのことでとてもうらやましい……。

がれ場に現れたナキウサギ

ガレ場を登り始め、降りてくる登山者の方とのすれ違いの瞬間でした。キッキッと声が聞こえたので耳を澄ませてガレ場を見てみると……いました、ナキウサギです。北海道の山を歩く中でこんなに鮮明に姿を見かけたのは初めてでした。残念ながらこの日の装備はZ5+Nikkor Z24-70mmf4だったのでその姿を克明に写すことはできませんでしたが、ナキウサギのかわいらしいことよ。

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画面の真ん中に写っているから、写真をクリックして拡大してみてね

がれ場から見下ろす十勝三股

ガレ場はカール状の窪地になっていて、遠く十勝三股のカルデラの中にできた「幌加温泉近くの台地」が見えます。

がれ場から天狗岳へ

ガレ場を見上げると草原に岩が転がる典型的な森林限界的景色が続きます。しかも結構急で、これがかなり上まで続く。

キッツい坂を上り切ると現れる二ペソツ山山頂まであと3キロの看板、ていうかここからまだ3キロもあるのかよ……。という感想と、登山口を出発して4時間ほどで9.5キロも歩いてきたという驚きが入り混じる。

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4時間で9.5キロは早すぎやしないか……ともおもえたが、道がほぼ平坦で木の根すら少ない土の道だから本当に早かったんだろう。

隆起する小天狗

前天狗の稜線に上がると見える小さなピークは地図上でいう小天狗かなと思う、写真を拡大すると……けもの道のようなか細い道が刻まれていた。地図上では道が無いことになっているけど、昔は登られていたらしい。
検索すると直近でも歩いている人がおり、一応ハイマツに鋸が入っている程度には整備されているとのことだ。

東大雪の山々を眺める

稜線から眺める石狩山地方面には中腹が黄色く染まりつつある石狩岳、音更山の姿がばっちり。
写真でいうと左側の少し尖った山が石狩岳で、右側の台形の形をしているのが音更山、森林限界を超えた稜線がどちらも美しく、花崗岩が積み重なった坂道が続く音更山は次に歩こうと思っている山だ。

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ちなみに石狩岳からさらに画面左へ進むと沼ノ原へ辿り着き、そこから五色岳、化雲岳、トムラウシまで続いていく、つまり石狩山地入山の富良野岳原始ヶ原下山とかも理論上可能になってしまう。何日風呂に入らないで歩くんだろう……。

二ペソツ山から眺めるトムラウシ山

西側には稜線上にひときわ巨大な山が見える……トムラウシですね。向こうも中腹が色づいているけども、東側から見る大雪山トムラウシ稜線はスケールが巨大すぎてずっと見ていられます。

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あの稜線はすべてが雲上の楽園、正真正銘の日本最後の秘境はまさにあの稜線の事だと思う。

天狗岳山頂へ

前天狗岳へと登ると……前天狗自体の稜線も結構長いようだ。
稜線入り口からテント適地まで十数分くらい歩かないといけない。しかもこの山頂、ちょっとしたアップダウンがあって中々足を削りに来る。

姿を現す二ペソツ山
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ニペドーーーーン!!!

前天狗に登った登山者の前に二ペソツ山がその真の姿を現してくれました、これこそ二ペソツ山を登る登山者の多くが感嘆の声を上げる景色じゃないでしょうか、ニペドンっていう人が多いと思う。
稜線の向こう側に見えるその威容は百名山の中でも中々居ない、すさまじく整った端正な顔立ちの山でした。

午前8時10分、天狗平。
前天狗岳を進んでテント適地へやってきました、携帯トイレブースが目印になっている個所です。
トイレの裏手から岩場を登っていくと天狗平の山頂ということらしいが、まずは目の前に居座る隠れ百名山こと二ペソツ山へ向かいましょうか。

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前を向くと素晴らしい、素晴らしすぎる景色が目に飛び込んでくるんだぜ?

天狗岳から眺める二ペソツ山

天狗平から前を向くと目に飛び込んでくるのは、緩やかな弧を描く天狗平の向こうに見える二ペソツ山。それはきれいな二等辺三角形を描いていて、ひときわ尖った山頂が城の天守のようになっている。
二ペソツ山の説明で「深田久弥が百名山出版後に登り『二ペソツ山には申し訳なかったが~』と書いた」という記述を見ることがあるが、この景色を目の当たりにするとそう書いた理由も想像できてしまう、そういう力を持つ光景が目の前にあった。これぞまさにニペドン。

東大雪のシンボル「ニペソツ山」

こんもりとした天狗岳山頂

二ペソツ山に向かう前に天狗平から前天狗岳を見返してみましょう、結構距離がある上に緩やかなアップダウンが存在するのがわかるでしょうか。

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この道は結構岩や石が転がっていて歩きにくかった覚えがある。

二ペソツ山へつながる稜線

二ペソツ山本体へ向かって歩き始めますが、まずはググッと下ってからの登りになります。

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天狗平からまだ2キロくらいあるんだよね山頂まで。下ってから一気に数百メートル登るのが本当に厳しいわけです。

天を指す天狗岩

天狗平から降る途中にとても特徴的な岩が視界に入ります。特に名がある岩ではないようだが……すごい目を惹く。

紅葉した樹林とはるか遠い十勝連峰

道中気になる山、それは大雪本体ではなく十勝連峰の姿でした。画面右端の天を指さす名峰オプタテシケ。
そこから美瑛富士、美瑛岳、十勝岳、富良野岳へと続く稜線が見事です。

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二ペソツ山側から見ると十勝岳よりもオプタテシケのほうがかっこよく見えるんだなぁ……。

悪魔城のような二ペソツ山

降下点付近から眺める二ペソツ山は迫力満点です。目の前の急峻な坂に刻まれたあの道を今から登っていくんだと考えると……ワクワクで身震いが止まりません。

然別湖方面の樹林

南側に目を向けるとヌカビラ湖とウペペサンケ山の尾根が見えました。そして二ペソツ山の裾野には東大雪の深い森が続きます。黒々とした針葉樹の森は北海道でしか見れない亜寒帯の景色です。

二ペソツ山から天狗岳を見返す

二ペソツ山本体に取り付き登っていく中で見えてきたのは前天狗岳と天狗平の特徴的な姿。歩いているときはこんな姿だとは想像できなかったけど、いい感じの森林限界と岩場を兼ね備えたイケメンな山ね。

天狗岳の天狗岩

二ペソツから見るとやっぱりこの岩がチャームポイントですね。

二ペソツ山の谷

積雪で削られた急峻な山肌は深い谷となって一直線に裾野へと降りていきます。急なカーブを描く向こうにはずっしりとしたウペペサンケ山と、東大雪の山々を好きなだけ楽しめる素敵な稜線に眼福。

二ペソツ山の山肌

二ペソツ山本体中盤までくると、白く削れた山肌に岩が張り付くように転がった斜面が現れます。この辺が歩いていて一番きついなぁと感じた場所、これを越えると山頂まではあと僅か。

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二ペソツ山を歩く9月後半、本体に差し掛かるとめちゃくちゃ風が強くなってきました……。二ペソツ山自体はほぼ独立峰なので強風が色々な方角から登山者に襲い掛かります。ここに来るまでぽかぽか陽気の中を歩いていたけど、急に下がった気温を前に慌ててウインドブレーカーを着用しました。

山頂までの急な登りですが、その道中では疲れを癒す景色をたくさん目にすることが出来ます。
十勝連峰はもちろんの事、印象的なのは五色岳の下部にある沼ノ原が良く見えることでしょう。

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北海道で一番気持ちのいい湿原はどこかといわれたら沼ノ原を推します。あそこは本当に天国が広がっています。

二ペソツ山山頂直下

山頂が見えてきました。山肌に刻まれた登山道を進みますが、冷たい向かい風が吹き付けて中々前に進めない。

二ペソツ山足元の紅葉

足元に目をやると紅葉を通り越して枯れ葉になろうかという飴色の葉や、乾ききった苔が敷き詰められています。
登山道はシャリシャリを音を立てていて、よく見たら早朝の霜柱がまだカチカチに残っていました。

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明け方の二ペソツ山は氷点下だったということか……、登山口はすごい暖かかったんだけどな。

午前9時35分、山頂。
冬の気配を感じさせる道をゆっくりと上り詰め、ようやく二ペソツ山山頂へ辿り着きました。山頂に躍り出た瞬間襲い来る突風、天を指すように突き出た山頂は風の巣窟になっていて気温も一段と低く、ここだけ季節が少し先に進んでいるようでした。

二ペソツ山山頂

二ペソツ山の山頂標識はしゃもじのような形をしていてかわいい……。
ダッフィーもついにこんなところまで連れてこられて、さぞかし喜んでくれていることでしょう。

登ってくる間にも見ることが出来た景色ですが、山頂から見直すと一段といい景色に見える。
遠く十勝連峰は前富良野岳含めバッチリ、ヌカビラ湖もその全景を見ることが出来ます。ウペペサンケはなおの事その山容を克明に眺めることが出来ました。

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氷河地形というか、雪に削られた山肌の起伏がありありとわかる。

遠く見えるのは日高連峰、北海道でも最も難易度の高いエリアはどこかといわれたら日高かなぁ……。
天塩とかもすごそうだけど、やっぱり悪魔の二百名山がたくさん眠る日高は一味違う。
沼ノ原方面は遠く大雪山旭岳や、白雲岳といった大雪山本体からトムラウシまでの稜線一帯を眺めることが出来ました。

山頂から眺める天狗岳

目の前に見下ろすのは前天狗岳と天狗平、複雑な地形の山ですが折り重なった山頂の形状がいつまでも目を楽しませてくれました。不思議とこの山、二ペソツ山の山頂から見てると見飽きないんですよね。
山頂からの景色を楽しむのも束の間、吹き付ける冷たい風が容赦なく体温を奪っていきます。行動食を食べながらぼんやりとした時間を過ごしたところで、二ペソツ山を下りることにしました。

急峻な二ペソツ山の山肌

登りは本当に急だった二ペソツ山ですが、下りとなればその分早い。
山頂に別れを告げてから中腹へ、鞍部へと降りるのはそう時間がかかりませんでした。

天狗岳から繋がる釣り尾根の先の二ペソツ山

瞬く間に鞍部を越えて天狗平の手前まで戻ってきてしまいました。振り返ると本当に素晴らしい山容の山だなと、何度も振り返り別れを惜しみたくなる。

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北海道版顔振峠ともいえるくらいここでは二ペソツ山を振り返って眺めましたね。

枯れた樺の木々と十勝連峰

天狗平への登りに入ったところで足がストップ、登りはやっぱり速度が落ちてしまいます。
そんな時には景色を眺めて小休止、十勝連峰側を見ると、前天狗岳へと連なる尾根沿いに立つ白い木々や、紅葉した森がとてもきれいです。

紅葉終わりの東大雪の山肌

冬へと向かって葉を落とす白い木々の眺めを楽しみながら、天狗平への登りをゆっくりと進んでいきました。

走って降れる幌加温泉コース

北海道っぽいハイマツ
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あ、北海道の形してる!

道中北海道の形に見えなくもないハイマツを発見、こういうのを見つけると嬉しいですね。

天狗岳からの二ペソツ山見納め

午前10時45分、天狗平。
ニペソツ山の山頂から約一時間で天狗平へ戻ってきました。山頂の往復は大体2時間から3時間くらいを見ておけばよさそうです。陽も高くなってニペソツ山に山肌にはくっきりとした陰影が刻まれます。

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天狗平からみるニペソツ山という特異な景色はいろいろな山を歩いてきたけど……これに勝るインパクトは覚えがない。

二ペソツ山を眺める登山者

気が付けば、天狗平でテントを張るであろう登山者が数名天狗平でニペソツ山を眺めていました。誰でもこの景色は眺めていたくなると思うよ。

前天狗岳からガレ場を降っていきます、登りはかなり苦労したガレ場ですが降りは一瞬でした。ニペソツ山幌加温泉コースは前天狗岳を越えると緩やかに下降する樹林帯をひたすら進むだけなので、下山のコースタイムがかなり速い。

帰りはナキウサギと出会うことはできず。明瞭に整備された登山道を駆け抜けるように進む。

二ペソツ山を見返す

正午近くなってやや紅葉の色もきれいになったでしょうか?ニペソツ山と前天狗岳を見納めたら、登山口までの残り8キロをひたすら歩くという修行のような道へ突入していきます。

修行……下山の8キロは瞑想に近いような気持ちで歩くことが出来ました。小走りに駆けるように歩ける快適な登山道、ひたすら変わらぬ景色、錫杖のように鳴り響く鈴の音……、耳に響く自身の吐息に耳を傾けながら、とにかく目の前の道を蹴って進む。
写真も撮りたいのですが、木漏れ日が迷彩のような模様を作り出した樹林の中で、その気力もだんだんと失せてきます。

三条池へ戻る

午後12時20分、三条池。
天狗平を出発して約2時間で三条池に到着、コースタイムを20分~30分くらい巻いて歩けていたこの瞬間……もはや歩くのが楽しくなっていました。完全にゾーンに入っていた。

早朝歩いた道は昼間になると様相がまるっきり変わり、登山道を横切る渓流がいい感じの雰囲気だったりといろいろな発見がありました。朝は薄暗い中歩いていたから、この辺の事情は全く見えなかった。

数度の渡渉めいた小川渡りを過ぎて、林道合流地点付近まで戻ってきました。コースタイムを確認しても、下山側は往路に比べて2時間が1時間20分になっていたりと、そもそもかなり早く歩ける計算が可能な道だったようです。

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自分もかなりの速度で降りてきた自信があるが、そもそもニペソツ山は下山が早い山ということらしい。

登山口駐車場

午後1時15分、幌加温泉登山口。
あれ、こんなに入山者いたっけ??と思う程度には車が止まっていてびっくり。登山中にすれ違った人ってこんなにいたかしら?自分を除くと7台の車が止まっていましたが、どう考えてもそんなに人はいなかった気がする……。
これにてニペソツ山下山ということですが、約25キロと聞いていたその道のりはかなりの速度で歩ける良コースということもあり、時間にして約8時間の登山となりました。

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本当に驚くほど速く歩けたニペソツ山だった。こんなに早く歩けるのならもう少し山頂でゆっくりしていてもよかったんじゃないかと思いました。

北海道で食べれる美味しいジンギスカン

幌加温泉を出発し、実家のある音更に戻ってくると時計はまだ午後3時前……。実家にいた奥さんと両親から「こんなに早く帰ってきてどうしたの?」と、ニペソツ山はかなり長いと話していたけど、早く降りれちゃったんだもん。
時間が空いたから晩御飯の調達などを手伝い、帯広は美味しいといわれる肉ノ五右衛門の肉を買ってきてその日は炭火焼きを楽しむことにしました。
これにてニペソツ山日帰り登山の一日、終わり!!!

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実家帰省の合間に上ることが出来たニペソツ山、本当に登れてよかった……。そして実家帰省中に北海道のご飯をこれでもかというくらい食べれたのは幸せ、皆さんも北海道に行ったら肉ノ五右衛門に行ってみてください。

天狗岳からの二ペソツ山見納め

幻の百名山ニペソツ山、北海道の山では絶対に登ってほしい一座
天狗平から眺めるニペソツ山をニペドンという人もいるようです。きれいな弧を描く天狗平の向こう側に見えるニペソツ山の姿はあまりにも格好良いため、その姿を見て一目惚れしてしまう気持ちもわかります。
深田久弥が百名山編纂前に登っていたら確実に北海道の一座として登録されていたことでしょう。山容、高さ、景観の豊かさにおいて本当に素晴らしい山だと思います。

幌加温泉コースですが、整備が進んだ現在は本当に歩きやすい道になったのだな、というのが歩いてみての感想でした。岩場が少なく土の道が長く続くコースですから、重登山靴よりは軽量かつハイカットのトレランもこなせる登山靴だと快適に歩けるかなと思います。十六ノ沢コースが整備されたらまたそちらから歩いてみたいと思います。ニペソツは東大雪の名峰、北海道の山を歩くなら大雪山の次にでもぜひ歩いてみてください、めっちゃ良い山です!
人生最高の山は続く。

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