2020年7月19日、大雪山系の大人気百名山「十勝岳」を歩いてきました。標高は2,077mで「十勝」の名を持つ活火山です。
私……実家から十勝岳連峰見えますし、高校時代の山岳学習では十勝岳の中腹まで登ったというのを覚えてます。
僕にとっては実は幼いころから縁があった山ということもあり、わくわくしておりました。
さて、十勝岳ですが大雪山系の中でも非常に登りやすく絶景が広がる山と言えます。
主な登山口は望岳台、十勝岳温泉、吹上温泉の3か所で、今回は標高1,270mの十勝岳温泉から登るコースを歩きます。
十勝岳は現在でも活発な活動を続ける活火山で、火山規制の状況によって歩けない場所があります、タイミングによって変わるのでそこは各自確認をしてください。
大雪山系は火山の山々なのですが、十勝岳は旭岳と違い最高峰は天を突くような勇壮な見栄えが特徴的です。
南方には山全体が花に包まれる富良野岳、北峰には厳つい断崖絶壁を携えた美瑛岳が鎮座していますが、特に北側の火山群が作り出した自然風景は北海道ならではのスケール感を感じさせてくれるものがあります。
大雪山系の百名山ではおそらく最も歩きやすい十勝岳ですが、景色は抜群に良く山歩きの満足度は非常に高いです。
下山後にそのまま温泉へ直行できるところも素晴らしく、おもてなし具合で言えば「素晴らしい」の一言しか出てこない山と言えるでしょう。
この十勝岳は北海道の百名山の中でも「楽しさ」「体力的に負担が少ない」「景色がいい」「温泉が良い」という特徴を兼ね備えていて、みんなが楽しめる優しさに満ち溢れた山だと思う。同じ傾向の山として雌阿寒岳と旭岳があるけど、僕は雌阿寒岳と十勝岳が特に素晴らしい山だと思っている。
十勝岳日帰り登山の概要
他の日の北海道登山の記事はこちら!
十勝岳温泉より火山の中へ
2020年7月19日午前4時25分、上富良野近郊。
おはようございます、Redsugarでございます。早朝の上富良野町近郊、雲海の下を凌雲閣へ向かって運転しています。
昨日は後志羊蹄山に登り、その後千歳市内でご飯を食べ占冠近郊で車中泊を行いました。占冠は日高にも大雪にもアクセスがいいので中継地として優秀だと思います。
さて、今頃十勝岳山頂からは雲海のいい景色なんだろうなと思いながら、車を走らせ十勝岳温泉へ向かいましょう。
午前5時20分、十勝岳登山口駐車場。
1時間ほど運転し続け、十勝岳温泉凌雲閣の登山口駐車場へ到着しました。すでに登山客の車がたくさん、朝の5時くらいに満車になっていたので、4時~5時の間には到着していたいところ。
朝ご飯と準備を済ませたら本日の登山開始となります、今回の登山スポットは我が故郷十勝の名を冠する十勝岳です。
スタート地点からすでにゴツゴツとした荒々しい山肌が見える、目の前に見えるのは化物岩かな?
朝日が差し込む登山道を安政火口方面に向かって歩く、舗装路はすぐに終わり火山の腹の中を歩くような道に突入。
島縞模様の地層が目立つ火山地形の底を這うように進む。
雰囲気は安達太良山とかに似ているかもしれない、だが十勝岳の特徴は火山地形の下から上まで歩きまわるところか。
見上げると火山地形が稜線まで続いている模様、本当に今歩いてる場所が火山地形の谷底っていう感じ。
午前6時、安政火口案内板。
道なりに進むと看板がいろいろ出てきますが、今回の目的地は富良野岳じゃなくて十勝岳なので、そちら側にある上富良野岳とか上ホロ山の名前が書かれたほうに進む。とはいってもまず迷うことはないと思うような、明瞭な道が続くよ。
ハイマツの中を振り返ると凌雲閣と雲海、上富良野町とかはまだ雲の下のようだ。
十勝岳連峰の山々を眺めながら木道階段等を登っていく。途中で富良野岳が雄々しい姿を見せてくれるが緑に包まれながらもディテールにあふれたその姿は魅力的。富良野岳は十勝岳と違って草花が豊富で花の百名山に選定されている。
いろんな記録を見るに山頂付近などはエゾハクサンイチゲで覆われて山自体が花畑のようになるらしい。
だがそれ以上に興味があるのが南方の大湿原「原始ヶ原」である、登山地図にもほとんど登山者がいないので原始の静かな湿原が楽しめると書いてある、記録を見てもまさに「ネイチュア」という言葉がぴったりな景色が出てくる。
十勝岳は前後に美瑛岳、富良野岳と素晴らしい山があるので何回も歩きたいエリアなんですよ。
早朝見上げた化物岩……かな?山が半分崩れてしまったような形をしている。
富良野岳は本当に素晴らしい、ハイマツ帯に入ると常に見える状態になる。右手に富良野岳を眺めつつ稜線へと登り続ける。
一方、左手側は三段山の山肌が見える。カラフルな地層となだらかな稜線が楽しそうな三段山コースだが、三段山から大砲岩までの区間は落石と滑落が多いため通行禁止となっていた。
階段を歩き続けて稜線へと向かう、爽やかな風が吹きつけてきているが稜線を前にして素晴らしい景色が目の前に広がることになる。
上富良野岳、大地の息吹を感じる景色
ハイマツ帯が途切れ三段山が目の前に見える稜線に上がってくると、複雑な地層のはるか向こうに天を指さすような形状のピークが見えるようになります。あれが本日の目的地十勝岳山頂、かっこよすぎんだろー。
ここはすごく景色が美しいなと思って何枚も似たような写真を撮影してしまいました……。
白茶色の地層がミルフィーユみたいになっているんだけど、奥には噴気を上げる山肌もあり火山好きには堪らない景色でした。
三段山の下を見下ろすと安達太良山をスケールアップさせたような景色が広がる、でかいな十勝岳……。
森林限界を超え荒涼とし始めた登山道を登って上富良野岳を目指す。
ちらちらと十勝岳を見直すたびに目に飛び込んでくるこの景色、圧倒的な大自然のパワーを感じます。
北アルプスや南アルプスに負けない魅力があると思うんだよなぁ、大雪山系は。
十勝岳方面と正反対にある富良野岳、全然山の雰囲気が違ってびっくりする。
十勝岳は火山として樹林などは一切ないような世界が広がっているけど、富良野岳方面は火山らしさがあんまり感じられない上に緑で覆いつくされている。
何度見ても素晴らしい景色を横目にゆっくりと登ることにします。
十勝岳に目が釘付けだが三段山の山肌もヤバい。
凄い形をした山肌だなと思う、生物の肌というか筋肉のような形状となった崖。まるでガイアという生き物を見るようです。
稜線に向けてある程度標高を上げるとチングルマが姿を現し始めました。前日の羊蹄山ではチングルマを見ることはほとんどなかったこともあり、チングルマを見れたというのは非常にうれしい展開でした。
D尾根上部からお花畑がスタートします。
三段山の奥に見えていた噴気孔は前十勝付近にあるグランド噴火口と62-Ⅱ噴火口かな?あの二つの噴火活動が活発化していて、場合によっては望岳台から直登するコースにガスがかかるらしい。火山性ガスだから生命の危険があるんだとか。
望岳台スタートで美瑛岳、十勝岳と周回したいなと思うとあのコース通らないと駄目なんだよなぁ……。
午前7時55分、上富良野岳。
十勝岳の素晴らしい眺望に目を取られながらも上富良野岳に到着しました。ここから先は天空の稜線歩きといった感じですが、北海道の山はスケールが大きくなだらかな道が特徴的であるため歩きやすさは上々となります。
上富良野岳から富良野岳方面を見てみましょう、はい遠いですね!向こうの山頂まではコースタイムで3時間くらいある。
地図上ではヒグマ注意の表記もあって、この縦走稜線は十勝岳に比べたら歩く人が少ないらしい。
ただ……、この稜線は絶対に楽しい稜線だと思うからいつか歩いてみたいんだよな。
上富良野岳からは目の前にある上ホロカメットク山に向かいます。ぬぼーっと頭を見せたお化けみたいな山なんですけど、山頂を経由して十勝岳に向かうルートと、画面右のハイマツ帯を抜けて小屋へと向かうルートの二つがあります。
ここはピストンする場合は両方のルートを通ると楽しいと思う。
上ホロに向かう途中の景色は東側に広がる原野的景色の境山、西側に三段山や前十勝の荒々しく削り取られた山肌とひどく対照的なものになっています。
上富良野岳から見る富良野岳方面の稜線は本当に魅力的です、アップダウンとしては3回かな?山頂手前で一気に標高を起こしてるけどあの辺が辛そうだなぁ……。
登る時は凌雲閣から富良野岳へ向かって、上富良野岳から下山する周回ルートがいいな。そうすると今回の道とつながるし。
上ホロカメットク山は帰りに登ることとします、写真じゃほぼ伝わらないけどお花畑になっているこの草原地帯を抜けて上ホロ小屋に向かうことにしましょう。
足元を拡大するとこんな感じでお花がたくさん咲いてます、チングルマ天国。
十勝岳、天を指し示す雄峰
上ホロカメットク小屋が見えてくるとその後ろにでっかい十勝岳がドーンと座ってます、雄大な景色だ……。
上ホロカメットク山の裏側、砕けた岩が積み重なる草原地帯の奥にはまだ雪渓が残っていて、そこから水が流れている。
上ホロカメットク小屋周辺は火山岩が転がる草原地帯、所々水が流れる場所もあって雰囲気が良いのです。
ここは写真撮るにしても楽しい場所だったなと、小屋に泊まってゆっくりと過ごしたいですね。
午前8時20分、上ホロカメットク小屋。
こちらが上ホロカメットク小屋になるのですが、そんなにきれいな小屋ではないです。あとトイレが北海道名物の地獄トイレです。飯豊山の御西小屋でも見たなこのタイプ……、正直あまりお世話になりたくない。
上ホロカメットク小屋を越えて十勝岳方面へ、上ホロカメットク山の崩落側もすごい見た目。
北海道っぽいというか、十勝岳っぽい景色だなと思ったのはこの一枚。なだらかで巨大な山である十勝岳ですが、ポツンとある小屋と山肌の姿がとても情緒があっていい景色でした。
十勝岳を見上げると結構標高差があるようにみえますけど、そんなに時間はかからないです、見た目よりもここから先は楽でした。
山頂直下は急なんだけどそれ以外は緩やかに登っていく、足元も非常に歩きやすい道が続くので景色を楽しみながら歩ける十勝岳。
何枚も写真を撮ってしまいますが、この区間は本当に短い。
振り返るとものすごい勢いで噴気が上がる噴気孔が見える、旭岳の比じゃないレベルで噴気が舞い上がっているのやばいなぁ……。確かにあちら側から登るかといわれると、あんまり登りたくないという気分。
十勝岳山頂直下まで歩いてくると、マリモのような草玉に覆われた大地が姿を現します。火山に来るとよく見る景色です、岩手山とかでも似たような景色見た覚えがある。ここから山頂までは急ではあるけど大した距離ではないのでゆっくりと登りましょう。
十勝岳の山頂直下から見た景色は360度素晴らしいんですけど、南側のこの富良野岳方面は満足度高い景色だと思う。
歩く人々と一緒にこの景色を撮影できたのは本当に幸せでしたわ。
午前9時45分、十勝岳山頂。
火山性の砂地を登り続けて山頂到着、ゆっくり歩いたけど上ホロカメットク小屋から1時間半くらいでした。十勝岳の山頂は広いし眺望がいいので長居しちゃいそうだね。
北側を見ると現れるのが美瑛岳です、あちらもすごい山の形をしています。さらにその奥に見えるかな、王冠の形をした山があるんだけど、それがトムラウシ山です。画面左側の奥にあるのは東大雪の山ではないだろうか。
十勝岳から美瑛岳までは月面歩きのような景色が続くらしい、ここ滅茶苦茶気になったんだよなぁ……。美瑛岳を歩くときは絶対ここ歩きたいなと思った。
十勝岳は天望よし、コースタイムよしで満足度がめちゃくちゃ高い山だと思います。山頂まで歩くだけでこんなにいい景色がたくさん見えちゃう、前後の富良野岳や美瑛岳を加えると何度も登って楽しめちゃうなと。
山頂でサムネイルに使えそうな自撮りを何枚か撮影、ダッフィーも撮影してやるべきことをやる!
後は景色を楽しみましょう、美瑛岳の奥にはオプタテシケ山の山頂部分が見えますね。遥か東側に見える王冠の山がトムラウシ、雲に隠れてるほうが旭岳方面だと思う。つまり美瑛岳山頂稜線の奥に見える平らな稜線、あれは高根ヶ原だと思われます。
十勝岳はマジで展望がいい山だわ……。
望岳台方面を見下ろすと噴火口の間を縫うように登山道が整備されていました、上から見ると怖すぎんだろあの道!!
いや、でも噴気孔を間近みられると思うと……それは楽しそうな感じがするな。
画像三枚目、この真っ平な火山性の大地は「平ヶ岳」と言うらしいです、ややこしい。
旭岳には雲ノ平がありますし、十勝岳には平ヶ岳があります。百名山と同名の地名が北海道はいくつかあってややこしいのです。
湧き上がる雲、絶景の稜線を降りる
午前11時00分、下山開始。
なんだかんだで1時間くらい山頂で写真を撮ったり登山者の方と雑談して過ごしてしまいました。気が付けば雲がぽつぽつとわいてきたではありませんか。そろそろ下山かな……?
山頂から降りてくるのは早いのなんのって……、歩きやすい道だけあって下山の速度は非常に速い。
十勝岳のいいところは下山が早いところだよなと思う、山頂で何かあっても凌雲閣までそんなに時間がかからない。
上ホロカメットク山までの稜線歩きは楽しい、往路では十勝岳ばかり見ていたけど復路でこの道の雰囲気の良さに気が付いた。
黙々と湧き上がる雲があっという間に十勝岳の空を覆いつくしていく。そうか十勝岳って標高でいえば2,000m前後しかないから、低層雲の影響をすぐに受けちゃうんだよなと思いながら歩き続ける。
低層雲は朝は雲海だけど、正午付近から昇温に伴い湧き上がってきてしまう雲でもある。2,000mくらいが上限高度のものが多くて北海道の山とか、東北の飯豊山とかは影響を受けやすいのか午後になるとすぐにガスっちゃう……。
十勝岳の雄姿、空にはばたく鷲のような素晴らしい見た目を目に焼き付けて下山を続けましょうね。
境山方面の草原地帯が往路に比べるとよく見えるようになったなぁ、あちらは一応道がないことになっているけど歩いたら楽しそう。
午前11時55分、上ホロカメットク山。
往路では登らなかった上ホロカメットク山に登ってみました、ここから見る十勝岳はシンメトリー構図の景色になってて面白い。柴田敏雄的な画面を数色の色に分けて抽象化しようぜといった写真を撮るにはすごくいい場所だなと思いました。
十勝岳を真ん中に置くと安定感が抜群だなぁ……。
こういう景色で畠山直哉みたいな写真撮りたい。
境山の向こうは雲海になってるけど、十勝平野方面です。あの雲の向こうのどこかに僕の実家がある……。
午後12時25分、上富良野岳降下点。
ホロカメットク山を下りれて上富良野岳までやってきたら後は下山するだけ。
ここでどうしても気になってしまったので、富良野岳側に少しだけ歩いてみることにしました。
ほんの数分だけ富良野岳側の稜線に向かってみたんですけど、どんどん吸い込まれるように歩いていきたくなる……そんな道が続いてました。ここは絶対に歩きたいところだな。
上富良野岳へ戻り、雲に包まれゆく富良野岳を眺めながら下山を続けます。
下山していて気が付きましたが、チングルマとかここ結構たくさん咲いてたんだな……。往路では十勝岳方面の景観が素晴らしすぎて足元まで意識が回らなかったのが悔やまれる。
復路で見る富良野岳の景色もまた良し、このハイマツ帯から眺める富良野岳の安定感……いいね。
すんなり降りてきてしまった十勝岳、この山本当に下山は早い。
谷底から稜線方面を見上げると本当に火山の腹の中を登ってきたんだなということがわかる。
えぐれた大地の中を下山する登山者たち。
午後2時15分、下山完了。
素晴らしい景色を堪能できたのに午後2時には下山できて疲れもほどほど、十勝岳は本当に素晴らしい山です。
苦労と報酬の対価のバランスが個人的には本当に程よい塩梅なんだよなぁ……。
そして下山後はすぐに凌雲閣に入浴し、北海道の美味しい牛乳で下山後の水分不足を解消するというわけです。
北海道の温泉はどれもレベルが高いというか、変わった温泉が多いので満足できると思う。山形や大分に負けないくらいいろんな温泉があるのよ、北海道は。
下山後の食事は山頭火にしました。今や全国に広がった山頭火さんなんだけど道端に唐突に表れるんだよね……。美瑛店は十勝岳からほど近く、さらにそんなに混んでないナイスなお店です。
大盛をさらりと食べて次の目的地に向かうことにしました。あ、ちなみにやっぱり北海道のラーメンは最高です、卵麺ってやっぱり至高の麺だと思う。
遠軽町……、十勝岳を下山した僕は大雪山をぐるりと回りむように旭川、上川を越えて遠軽にやってきていました。今日の目的地は東藻琴となります。今回の登山は初日に羊蹄山を登り、二日目に十勝岳を登り、三日目以降は知床の山々を目指すという移動距離が中々激しいものとなるのですが、この十勝岳が終わった後の東藻琴へと向かう道中が一番眠かった気がします。
下道しかないからさぁ……、本当に長いんだよね富良野から網走まで行くのって。
北海道登山三日目は最も東の百名山であり、ヒグマの巣ともいえる知床半島の付け根に立つ「羅臼岳」です。
この十勝岳を下山した時点で、まさかこの後羅臼岳、斜里岳、利尻岳を登ることになるとは……。
というわけで次回は最果ての一座、羅臼岳登山をお送りいたします。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは。
僕の中では北海道の山と言えば大雪山やトムラウシ山でしたが、十勝岳半端ないですね・・・。
十勝岳なめててごめんなさいと土下座して言える絶景のオンパレードですね。
これはラーメンとセットで登りたくなります。
十勝岳素晴らしいです、というか大雪山はいいところが多くて困ります。
美瑛岳も富良野岳も登りたい気持ちでいっぱいです……、十勝岳は気軽に登れるのに魅力的な景色が存分に転がっているので、ひと夏を大雪山周辺で過ごしたいです。