【北海道】羅臼岳、岩尾別温泉から登る7月の知床最高峰の絶景

羅臼岳見出し

2020年7月20日、北海道は最東端にある日本百名山「羅臼岳」に登ってきました。標高は1,661mで世界遺産知床半島の付け根に位置しています。百名山を登っているとアクセスの悪さ、ヒグマの多さから多くの人が「覚悟を持って挑む山」ではないでしょうか?
僕も北海道出身者としては知床方面といえばヒグマ、羅臼岳と斜里岳に登る際はヒグマ対策をしっかりしないとな……というわけで熊スプレーを購入して実家に保管してもらっています。
世界遺産知床、その半島は羅臼岳から硫黄岳まで知床連山と呼ばれる山々が連なる火山と自然の宝庫です。

さて、今回は羅臼岳を登るということで最もメジャーな岩尾別温泉からのルートを選択しました。
日帰りの場合はウトロ側の岩尾別温泉、羅臼側の羅臼温泉の二つの道を選択可能ですが、楽なのは岩尾別温泉側です。
ただ楽とは言うけど、コースタイムは9時間ほどが想定されているロングコースで思いのほか体力が必要となります。
地図を見ても「ヒグマ注意」の文言が踊る羅臼岳、最果ての百名山の一つであり、ヒグマの巣窟を登った先には海の向こうの島々に思いをはせる景色が広がっているのでした。

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羅臼岳登山、それは結論から言うと標高の割にはとても長くて大変な山です!

目次

羅臼岳日帰り登山の概要

概要
羅臼岳を登るためには今回は岩尾別温泉からのコースを選択しました。このコースは9時間ほどのコースタイムがある為、山頂休憩を含むと10時間前後の時間がかかると想定するのが良いでしょう。
道中には2カ所水場がありますがどちらも要煮沸、北海道で湧水を飲む場合はエキノコックス感染症に注意しなくてはいけません、極力浄水器を使うなどの工夫が必要になります。
極楽平迄の前半戦は樹林帯が続き景色は悪いです、大沢付近から展望が良くなり羅臼平でようやくハイマツ帯に入るので、前半の3時間ぐらいは耐える登山が求められます。
とにかく水、心配な人は3リットルのハイドレーションを使用して、それでスタートから下山までを持たせるといいかも。

アクセス
日帰りの場合は車を使いましょう。公共交通だと斜里駅とウトロ温泉から岩尾別温泉までのバスが出ていますが、岩尾別温泉到着が9時半付近となるためトレイルランナーじゃない限りは日帰りは出来ない……かな。
僕は前日十勝岳を登った後、道の駅東藻琴を拠点として早朝岩尾別温泉に向かうという工程でアクセスしました。
道の駅を拠点にする場合、東藻琴か斜里の道の駅を利用するのがおすすめです。

コースタイム
岩尾別温泉登山口6:00→弥三吉水7:35→銀冷水8:45→羅臼平9:55→羅臼岳山頂10:40-12:00→羅臼平13:15→極楽平14:55→岩尾別温泉16:10
合計登山時間 10時間10分 羅臼岳は距離が長いです、標高は1,600mクラスだけどとにかく長い!

今回の北海道登山の他記事はこちら↓

岩尾別温泉から羅臼の森へ

知床から朝日が昇る

2020年7月20日午前4時00分、道の駅東藻琴。
おはようございます、Redsugarでございます。前日の十勝岳登山を終えた後北海道をひた走り網走近郊までやってきました。何時間運転したかは覚えてない。
東藻琴のセイコーマートで北海道限定ビールを購入して就寝したのは覚えているのですが、案の定酒を飲んでしまったので起きる時間が遅れました。もう太陽が上がってきている……。

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東藻琴を選択したのはトイレがとっても奇麗な道の駅があるから。そして斜里岳と羅臼岳両方を射程に収めた位置にあるからです。天候によってこの二つの山どちらかを選択できると考えて道の駅付近で夜を明かすことにしました。

明け方の斜里岳

東藻琴からまずは道の駅斜里を目指します、右手には斜里岳が見えるが雲の下。

午前5時45分、岩尾別温泉。
途中道の駅斜里に寄るなどのイベントがありましたが、無事岩尾別温泉に到着しました。
斜里から知床五胡方面に向かうのが意外に遠いんだよね、さらに岩尾別温泉は山道を走って奥地に向かうので、この登山口に到着するだけで結構な時間がかかります。東藻琴から片道2時間はみたほうがいいと思う。

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片道2時間というと浦和ICから日光男体山くらいの距離ですね。

羅臼温泉登山口

午前6時00分、羅臼岳登山開始。
岩尾別温泉に到着したタイミングが少し遅かったのか、ほとんどの登山者はすでに入山済みでした。
羅臼岳はコースタイムが非常に長い山なので、午前5時くらいにはほとんどの登山者は入山していたらしい。
僕はこの日最後の入山者ということで、最後尾スタート状態でした。

木下小屋

岩尾別温泉の隣をすり抜けていくとすぐに木下小屋に、ここで熊スプレーとかレンタルできるんだっけか。
前泊で利用した場合はこちらで熊スプレーを借りることができるらしいです。

羅臼岳登山口付近の樹林

木下小屋から登山道に入ると早速ご覧のようなうっそうとした樹林帯が始まります。
知床エリアって年中平均して寒いから樹林帯も登山口付近なのにちょっと標高高そうな森が広がってるんですよね。

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羅臼の森は言い方は悪いが「痩せてる」感じが強い。火山性の大地であることや気候が影響しているのかもしれないけど、木々や草の種類などを見ていると他のエリアと比べると種類が少なく感じる。

羅臼岳のこの前半樹林帯はとにかく長い、そしてかなり退屈です。
後何よりも、常にヒグマとの遭遇に対してアンテナを張り続けて登り続ける必要があります。幸いなことに今回の登山ではヒグマのにおいもしなければ痕跡を見ることもなかったのですが……、登っているときはそりゃもうヒヤヒヤよ。

羅臼岳の登山道

登山道は百名山ということでよく整備されています、迷うような部分はナシ。

樹林生い茂る羅臼岳

さすがに雪も多いのか積雪でぐにゃりと曲がった木々に覆われた尾根道をひたすら進む。

午前7時35分、弥三吉水。
最初の給水地点に到着しました、要煮沸の水場なんだけど休憩していたオッサンが飲んでた……僕も飲んじゃおっかな。
というわけでコップ一杯分だけいただきましたが、うーん……あんまりおいしくなかった。

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標高の問題なのか地質の問題なのか、あんまりおいしい印象がなかったです。ヒグマへの緊張感から味覚も鈍っていたのかな?

羅臼岳遠謀

すぐに極楽平が見えてきますが、遠くに山頂が見えますね。

薄暗い羅臼岳登山道

極楽平を越えると再び樹林帯に、次の給水地点銀冷水まではこんな感じの森の中を延々歩き続けます。

遠めに見える知床五胡

標高が上がってくると後方に知床五胡とオホーツク海が見えるようになります。時折樹林が途切れて視界が晴れるんだけど、見えるのは海です。

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海の山だが最果ての海であるオホーツクはなんというか、雰囲気が暗いんだよね。

午前8時45分、銀冷水。
二カ所目の給水地点銀冷水へ到着、ここには携帯トイレブースが設置されています。
コースタイムが長めに設定された羅臼岳ですが、世界遺産知床ということもあり当然トイレなんてありません。
なので催したら唯一のトイレブースがあるこちらで何とかしてください。

羅臼平、ハイマツと知床連山の雄大な景色

大沢入り口

銀冷水を越えると大沢入り口というポイントに来ますが、ここでようやく樹林帯とはおさらば!!
ここから先は楽しい山歩きが待っていますが、ここまで3時間近く歩いてきたから若干疲れがたまっているんじゃないでしょうか?

大沢の登山道

大沢はこんな感じで小さな石が転がった道を登っていきます、ハイマツとお花に覆われたエリアでチングルマとかコケモモとかをよく見ることができます。

羅臼岳山頂を見上げる

大沢を登っていくと右手には乳首のような形をした羅臼岳山頂が現れます。

午前9時55分、羅臼平。
羅臼温泉コースとの合流地点であり、羅臼岳山頂や硫黄岳方面への分岐路でもある羅臼平へ到着しました。
所謂ジャンクション地点で、フードロッカーや整地された場所もあって休憩にはもってこいな地点ではないでしょうか?
ただ、いろいろと記録を見ているとヒグマ目撃記録が一番多い場所でもあるのかなと……。

羅臼岳山頂への道

僕の目的は羅臼岳山頂ということもあり、羅臼平から羅臼岳山頂に向けて出発。以外に羅臼平から山頂まで長いんだよね。

羅臼岳から見るサルシイ山方面

ここまで樹林帯が続き景色に飢えていたのですがここでようやく素晴らしい景色が目の前に現れることに。
硫黄山方面に目を向けると三ツ峰、サルシイ岳とつながる羅臼連山の景色が見えます。

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この景色が羅臼岳の一番注目すべき部分ではないのかなと。

サルシイ岳

三ツ峰から向こう側はなんか雲が流れてる、羅臼側からウトロに向かって低い雲が流れています。
途中で追い抜いた登山者の方々も続々と羅臼岳山頂に向かって登ってきてる。

羅臼岳山頂に向かって標高を上げていくと、羅臼平と羅臼連山の生み出す素晴らしい景色を堪能できるようになってきます。
この景色がすごいのは左右は海で、見渡すと地球が丸いというのが実感できるんじゃないかというくらい広大な景色が広がっている事でしょうか。

羅臼岳山頂直下はこれまでに比べると雰囲気が一変し岩場の山になります、さすが火山系の山だぜ。
山頂部に向けて大きな岩を何個も越えて登っていくんだけどここがちょっと時間かかるかな。

羅臼岳、知床を見渡す最高峰へ

羅臼岳山頂で写真を撮る人

午前10時40分、羅臼岳山頂。
岩場を登り続けてようやく山頂が見えてきました、山頂は本当に岩場の先端って感じ。
羅臼岳山頂は先行していた登山者たちでにぎわっていていますね。

羅臼岳山頂から見るサルシイ岳

羅臼岳山頂からは硫黄山までの知床連山がくっきりと見えます、標高は丹沢とおんなじくらいなんだぜあれ……。

羅臼岳山頂から見る羅臼湖方面

こちらは羅臼湖方面、ちょっと霞が強い日だったので視界はそこまで澄んでないけど羅臼湖くらいまではしっかり見えます。

羅臼岳山頂

ダッフィーもついに最果ての山にやってきましたね……。

羅臼岳山頂なんてそうそう来れる場所ではありません、昼飯を食べながらしばらく山頂を満喫することにしました。
羅臼岳の山頂は結構広いんだけど、足元不安定な岩場で出来ているので落ち着いて座れるところはそんなになかった。

ご飯を食べながらオホーツク海側を見ていると、どうやらウトロ方面は海から低い雲が上がってきているらしい。海沿いの街は雲の下になっているのかもしれない。なんかここまで地面を這うような雲はみたことがない、不思議な景色。

硫黄岳方面を眺めるRedsugar

知床連山のその突端は……、僕はいいかな。羅臼岳に登れただけで大満足でした。
ガイドさんか誰かが連れて行ってくれるという機会でもあれば、知床半島の尾根を硫黄山まで歩いてみたいなと思います。

redsugar

羅臼岳はいい山だと思うのだが、ここから先は恐ろしくておいそれと行く気にはならなかった。

羅臼岳山頂から見る知床の付け根

羅臼岳山頂から羅臼湖をもう一度。羅臼横断国道が山々を縫うように走っているのが見えますかね?
あれは夏から秋までしか走ることができないウトロから羅臼を横断する峠道です、めちゃくちゃ展望が良い道なので北海道旅行の時は走ってみるのがいいと思う。

ウトロ方面の雲がいつの間にかなくなっていました、一瞬だけ沸いた雲でしたね……。
そういえば羅臼側を見ていなかったけど羅臼の港町も羅臼岳からちゃんと見えます。
斜里/ウトロと羅臼って近いように見えて夏秋しか行き来できないし、峠越えて1時間だから結構遠い隣町。
そして羅臼側の画面左上、北方領土もしっかりと見えてますね。

redsugar

北方領土を見たときに毎回思うのは、「これしか距離ないの!?」ということ。距離にして25キロほどしか離れてないんだよね。

羅臼岳岩稜帯

午後12時10分、下山開始。
国後島も見れたし山頂から見れるものは全部見たかなということで、下山することにしました。
山頂から羅臼平方面を見下ろすと結構な高度感です、この岩場を下っていくんだけど段差が膝に来るぜ……。

下山、海を眺め岩尾別温泉へ帰る

羅臼岳から見る連山

羅臼岳の下りは緊張の糸がほぐれたのか、登りで焦っていた気持ちが和らぎリラックスして降りることができたと思います。
それまで風景を心の底から楽しめた気がしなかったんだけど、下山はその辺いろいろなものに目を光らせる余裕ができた。

足元に花が咲いているのは気が付いていたけど、下山のタイミングでようやくそれらに目が向くようになりました。
羅臼のチングルマは華が小さくいかにも北国に咲く花といった感じ、厳しい環境の山なんだなということがよくわかります。

羅臼平
redsugar

羅臼平へと向かうこの景色だけは超一級品だわ……。

下山する登山者

オホーツク海へ向かって流れ込むような知床の森、下山は画面中央の登山者のように海へと吸い込まれるように消えていくんだね。

北方領土

下山中に国後島が良く見えました、国後島後方の爺爺岳かな……?北方領土でなければあの山は百名山になっていた可能性が高いでしょうね。標高は1,822mと高さも十分だし。

羅臼平から見るサルシイ岳

午後1時15分、羅臼平近郊。
羅臼平付近まではスムーズに下りてくることができましたが、ここから先が長いです。
知床連山の景色に別れを告げてあの長い長い樹林帯へ向かいます。

大沢くだり

大沢の降り道で分かったけどこの道ウトロ方面の眺望が非常にいいですね、下りはなんか気分良く歩けるな……!

補修された登山道

大沢付近は登山道整備がかなりちゃんと入っていて、道の歩きにくさはほとんどないといっていい。自治体の人々には本当に感謝ですね。

チシマノキンバイソウ

道中たくさん咲いてるお花の一つにチシマノキンバイソウがあります。大きな花びらを持つ黄色い花で、羅臼岳で一番目立つのはこの花じゃないかな。

極楽平

午後2時55分、極楽平。
羅臼岳は所謂横に長い山の雰囲気が強い、下りも必死に歩くんだけど長いことに変わりはない。
羅臼平を出て一時間半以上かけて極楽平へ到着……、ここから先はもう展望が回復することはありません。

森に差し込む木漏れ日とササ

笹とカバノキに覆われた森の中をひたすら歩き続ける下山路、木漏れ日だけは美しく差し込む西日に照らされた笹の葉などで目を潤しながらとにかく歩く、歩く……!

歩き続けてへとへとになったころにようやく木下小屋に、時計の針も16時近くを指していて下山に4時間ほどの時間を費やすことになってしまいました。しかしこの木下小屋に到着したときは本当に安心しました、もうヒグマの恐怖におびえることはないのだと……。

午後4時10分、岩尾別温泉下山完了。
木下小屋から岩尾別温泉に戻ってくると登山者の車がまばらな状態になってました、登山者よりも観光客が多い岩尾別温泉で汗を流そうと風呂にやってくると……とても立派な露天風呂が広がっているじゃありませんか。
しかも貸し切り状態だし、下山後にこんなご褒美が待っているとか最高だね。

風呂上がりのジュース

羅臼岳の大地の力を感じ取れる温泉にたっぷりと使った後はジュースでのどを潤します。残念ながら牛乳が売ってなかったのよね……、興部牛乳とか飲めるかなと思ったんだけども。

redsugar

オホーツク方面といえば興部牛乳です、北海道随一の牛乳のメッカ興部の牛乳が飲みたかった……!

知床連山

岩尾別温泉を後にし、とりあえず道の駅斜里へと戻ることにしました。夕日に照らされる知床連山……さっきまであの一番右側の山にいたんだなぁと思うと不思議な感じがする。

海に沈む太陽

道の駅へと向かって走る道中、斜里の海岸道路からオホーツクに沈む太陽が奇麗に見えました……。
ちなみにこの写真を撮影する数分前、国道をヒグマの親子がのっしのっしと歩いていまして、登山中にクマに出会わなくて本当に良かったなと心の底から思ったよね……。

下山後は道の駅斜里へと戻り、道の駅斜里の隣にある「知床くまうし」山で夕食をいただくことにしました。
ゲソのから揚げと斜里丼と呼ばれるステーキ丼を頼んだんだけど、これがまさか翌日の伏線になるとは思いもよらなかった……、後方羊蹄山、十勝岳、羅臼岳と3日連続で登山を行いもうそろそろ満足かなと思っていた北海道帰省登山。
建てられたフラグは4日目斜里岳登山で回収されることとなるのでした……。

硫黄岳方面を眺めるRedsugar

最果ての百名山の一つ羅臼岳は日本の東端を感じる山
世界遺産知床の尾根となる羅臼岳、標高に対してのコースタイムが非常に長い山ですがその山頂からはやや日本離れした景色を見ることができます。千島列島の火山群へと通じるようなちょっと異質な眺めです。
日本の東端を垣間見るこの山の景色は内地では見ることができないような、日本だけでも広いんだなということを実感できるような景色だと思います。
海の向こうに見える島々、大自然あふれる千島からカムチャッカまでの火山群へと想像が膨らむ、そのきっかけとなるような山でした。
いやぁ……、人生最高の山は続きますね。

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