2021年10月24日、奥秩父山域にある二百名山「和名倉山」を歩いてきました。
標高は2,036mで奥秩父主脈から少し離れたところにあるのが特徴、東京都最高峰の雲取山の山頂から西側を見ると対面に見える山です。
この和名倉山、以前笠取山に上った際に西御殿岩からみた山肌が「カラマツ黄葉が素晴らしく美しい」というのが記憶に残る山でした。以来登るならカラマツ黄葉の時期が良いだろいうと考えていました。
というわけで今回はカラマツ黄葉全盛期の秋の和名倉山登山、いざ歩いてみると将監峠から中々歩き応えがあるコースをピストンすることとなり、足がくたくたになってしまいました。
森深い奥秩父のマイナー二百名山を歩く静かな休日、一ノ瀬高原からピストンで歩く和名倉山登山の始まりです。

奥秩父が好きな人にはお勧めできますが、ここは本当に渋い山だった……。
和名倉山日帰り登山に関して
将監峠を目指す秋の朝






2021年10月24日、将監峠登山口付近。
おはようございます、Redsugarです……寒いです。
本日は奥秩父山域の二百名山だけどマイナーな山、和名倉山を歩きたいと思います。民宿みはらしさんの有料駐車場に止めさせていただきましたが、この時期あと少し車を走らせれば笠取山登山口の作場平があるだけに、登山者のほとんどはそちらへ向かったようでした。



秋の奥秩父の大人気スポットといえば笠取山というわけね……。




寒い寒いと思ってたんですが、雨水が凍ってる……。
まださいたま市内はぽかぽか陽気の日もあるんですけど、ここ奥秩父は一ノ瀬高原ではすでに冬が目前のようです。




午前6時45分
将監峠登山口から和名倉山登山スタートです、寒い。
スタート直後に年代物の放置自動車が鎮座するささやぶが現れます、いわゆる草ヒロだけど私有地っぽいしナンバーも外されてるから「合法草ヒロ」と言ってよさそうです。


将監峠登山口からは日当たりが全くない谷筋の道を尾根に向かって歩くことになります。秋口はすでに寒い……身体が温まってない時間帯にこの道はなかなかしんどいものがある。


林道を頑張って進んでいくと空が明るくなってきて、朝日が森に差し込むように。
ここでようやく気分も盛り上がってきたというものです。


東から差し込む朝日、林道を登りきったところくらいで全体が明るくなります。
それとこの辺から樹林帯が終わりカラマツの植林が目立つようになる。




早速黄金のカラマツ林を歩く秋の黄葉トレッキング地帯が現れました、これが足元もふかふかしていて将監峠までは気持ちよく歩けるコースなんですわここ。


広葉樹はまだなところもあるんですけど、ここは黄葉きれいな道なので秋の笠取山までの縦走で使うにもおすすめ。


和名倉山ですが、カラマツ黄葉以外では富士山を眺めるというのが登山全編を通しての楽しみとなります。


カラマツ黄葉の道を進むのですが、一本道の左右に若いカラマツがすっと伸びる将監峠手前は絵になる景色が広がってます。


カラマツ樹林を抜けるといったん開けた草原地帯へ突入。見晴らしがよいこのエリアが将監峠一帯となります。



西御殿岩から見下ろしたときに開けた草原地帯があったけど、それがここか……。歩いていてなんとも気持ちがいいところだ。






午前8時5分、将監峠分岐。
将監峠からほどなくして和名倉山方面への分岐が現れます。和名倉山方面は最初はビビるくらいの笹藪に覆われてて、本当にこの道大丈夫か?と心配になりますが、10分ほど我慢すると風光明媚な紅葉の登山道に戻ります。



分岐直後の笹薮が本当にびっくりする、この山大丈夫か?って勘ぐっちゃう。


将監峠から笹薮を越えて歩き続けると西仙波へと連なるリンノ峰のピークが姿を現します。
和名倉山への登山道で最も見晴らしがいいのはこのリンノ峰周辺と東仙波周辺の稜線歩行、奥秩父を広く見渡せますし富士山の眺望もよいです。



和名倉山のいいところはこのリンノ峰~東仙波に詰まっている。
いやマジで。


開けた稜線からは大菩薩嶺と富士山の眺め。北側からいると大菩薩嶺って結構ちゃんとした三角形なんですよね。






リンノ峰を越えると一時的にすっごい薄暗い斜面を通された登山道を進むことになります、なんでこんな薄暗くて雰囲気悪い道を歩かないといけないんだと思うくらい雰囲気暗い道。それを過ぎると西仙波に到着です。



このリンノ峰の直後の暗い登山道がかなり雰囲気暗かった、まさに奥秩父……。
西仙波より始まる稜線歩き


午前9時5分、西仙波。
西側斜面の暗い登山道を抜けて西仙波に到着しましたがここから東仙波までは素敵な稜線歩きのスタートです。



和名倉山将監峠ピストンにおける最も楽しい区間がここから始まる


開けた稜線は山肌に露出した大きな岩を踏んで登っていくような感じになっている。
稜線の向こうには素っ裸になった木々の姿が見えるがあの辺が東仙波ということになる。


稜線へと登り切って振り返ると、リンノ峰から西仙波の東側斜面が黄色く染まっていることに気が付きます。
カラマツ黄葉が素晴らしい~、しかしこんな急斜面によくこんなに大量のカラマツを植えたなと感心してしまう。


稜線上には枯れ木が転がっている。カラマツ黄葉の山肌、奥秩父の山々、そして富士山と景色を楽しむことができる。
笠取山界隈もカラマツ黄葉はきれいだったけどこの辺も悪くはない。



将監峠の民宿のおばちゃん曰く、このエリアのカラマツはもう年数がたっているから色はそんなに良くない。
昔はもっときれいだったんだけどねと……、でもこんだけ染まれば十分な気もするなぁ。
記事制作時に調べてみれば50年~60年代の森林伐採とその後の植樹でこの辺のカラマツ林は形成されてるそうな。
それが一番大きな形で形成されたのが和名倉山や仙波尾根ってことらしい。


北側を見ると秩父の向こうに深谷や群馬な景色が広がる。その手前にはカラマツ黄葉で黄色く染まった山肌が横たわっている。この黄葉を楽しみに来たんだよなとテンションが上がるも、この時点ではあの中に入ると黄葉全く見えません状態になることに気が付かなかった。



あの黄葉は1950年~1960年代にかけて戦後復旧の資材調達を目的として進められた大規模な森林伐採と、その後の山火事で出来た荒廃地への植林の結果生まれたもの。絶景じゃないかと思ってやってきたが、その景色の裏側には戦争の影響でつくりかえられた自然という事実が横たわっている。
震災写真や災害写真でも良く問われるカタストロフとエステティック(美的観点)の問題のようなものがここにもあったと思った。
でもまぁ今回はそんなシリアスな視点で記事を書いても楽しくないから、いかにこの道が渋く辛いかを話す。


富士山とリンノ峰方面を眺めつつ東仙波へ、東仙波周辺は笹に覆われた山肌が広がり見晴らしがいい。


午前9時25分、東仙波。
葉を落とした木々と足元の笹に覆われ、ちょっと荒廃した雰囲気があるのが東仙波です。
和名倉山まで行く途中でいうとこの辺りが一番眺望が良い地点になります。
早朝スタートの場合でもこの辺で一度休憩をはさむと、後半戦の和名倉山山頂までスタミナが持つと思う。






富士山プリンでボケなくてはならない、その使命感がいまだあった21年。
ビックプッチンプリンだが昔と違って柔らかくなってしまった結果、なんか歩いてる途中でカラメルが全体に染み渡っちゃうんだよなぁ……ということでなかなかきれいな形のまま最近は食べれてません。
固めのプリンがあると嬉しいなぁ。



プリンと一緒に秋山冬山の友である山頂ミカンを楽しみました。いやー、やっぱり秋からはミカンだわ。


この日使用していたザックですがノードカム、アマゾンでしか取り扱ってない怪しいメーカーだが悪くない。
色々と考えこまれててなんか使いやすいんだよな……、腰ポケットのジッパーがその他のメーカーと違って逆なのも使いやすいし。



カラビナとスリングがあると地面にザックを降りして汚さなくても済むということを聞いて実践、確かにこれは良い。
枝がある場所なら雨上がりとかですごく重宝しそう。


東仙波と富士山の景色を眺めたら和名倉山へ、ここから先が長い。


雲取山方面といいますか、東側の眺めはよいのです。開けた斜面には裸になった木々が林立していて見晴らしがいい。
雰囲気的には大台ケ原に近い、関東にいながらプチ大台ケ原を楽しめる。



この一帯も戦後伐採からの山火事の影響でこうなったんかね?いい景色と思って眺めているその理由がネガティブであるとき、何とも複雑な気持ちが湧き上がる。


見晴らし台的な場所から眺める和名倉山。どんだけカラマツ植樹したんだよと突っ込みを入れたくなるくらいまっ黄色な山肌。戦後……1950年代付近の環境問題なんてものを一切考えなかった時代が生んだ景色の一つがこれかと思うと複雑。
人の手によって生み出された均一的な黄葉なんだけど、航空写真で見るニュータウン的な規則性が良く見てると怖くなる。



紅葉を楽しむ分にはいいんだけど、背景を知るとなかなか手放しではしゃげないなぁ


見晴らしの露岩はこんな感じになってる、みやっちさんが立っている地点あたりからズームレンズで見てみると良い。



ちなみに和名倉山は各方面に深い谷を持ちという説明文がある。実際に西側斜面は切り立った深い谷があるからなのか当時の村の地権的なものなのか、東側と比較すると全然植樹が見えなかった、無いのか?






見晴らしの良い露岩を越えて一本道を歩き続けるが、東仙波から川又分岐までは奥秩父的なコメツガ林やコケの森を少し楽しめる。途中一か所開けた場所があるんだけど、道を見失いやすい場所(八百平)でもあるので注意。川又分岐の手前くらいにある。



川又分岐の看板を見るとかわいい字で山頂って書いてある、川又はMヌにしか見えない。
樹海の和名倉山山頂へ


川又分岐を越えると和名倉山本体を山頂へ向かって歩くことになります。最初は奥秩父的な道なんだけど、和名倉山の紹介にもある通りカラマツの植樹しすぎたエリアがすぐに出てくる。


カラマツ植樹大ブームエリアに差し掛かると青空に向かって黄色く染めた身体を延ばすカラマツが……、本当にカラマツしかない。そして標高2,000m付近を歩いているはずなんだが、全くそんなことを感じさせない足元の景色。





鮮やかではない秋の輝き……、が足元を覆いつくしている。


二瀬分岐で和名倉山山頂側に、山頂まで眺望が開けるところはほぼないのだが次の個所が唯一の見どころになる。
それが、THE カラマツ幼木黄金樹。





すごーい、黄金樹の苗木みたいだ
と言っていいのか悪いのか、カラマツの幼木植樹エリアは唯一眺望が良い。


幼木エリアはトトロの小道的に道が続いてゆく、ここは歩いていて楽しい場所になる。






午前11時5分、和名倉山。
幼木トトロの小道を越えて日が差し込まない暗い森の中を進むと山頂が現れる。そこはびっくりする程暗い山頂でした。
うーん、この山がなぜ人気ないというか、あんまり登る人がいないかよくわかった気がする……。
標高2,036mという中々な山なんだけど、ダイナミックな眺望の変化や高度感が全くない。
そして何よりも植樹のおかげでカラマツは奇麗だけど……その後の山中は原生林なのだが何だろう、居心地は良くない。



この山頂は雰囲気があまり良くなかったので、すぐに下山することにした。おかしいな……コメツガ林で倒木や苔が美しいんだがなんか居心地が悪かったんだよなここ。


山頂から踵を返し森の中を引き返すが、視線が変わり逆行気味な光景の中を進むとなると足元の世界が少しだけ明るく見えた。


すぐに幼木エリアに差し掛かるが、山頂から引き返してきた際にここの眺望の良さが際立つ。
小道をまっすぐ歩いてもいいのだけど、この斜面一帯は植樹の際に使われた道が何本か走っていて、少し斜面を登ってもそれらの道を利用して登山道復帰が出来る。




というわけで青空に向かって斜面を登って、幼木エリアの上まで登ってみると中々良い景色を堪能することが出来た。
一応はるか向こうに大菩薩嶺と富士山が見える。画面右には唐松尾山とかの稜線が連なっているけども、圧倒的に地味!地味!地味ーーーー!!!!


幼木エリアを楽しんだ後はピンクテープが指し示す道をひたすら歩き続けて下山となる。
山頂の眺望がない事は知っていたけど、思ったよりも「嬉しくない場所」だったこともあり気持ちがいまいち弾まない下山。
こうなると下山後の温泉や食事の事だけを考え続けて歩かざるを得なくなる。


川又分岐付近の八百平だが、下山時はだだっ広いこの広場はちょっと道を見失いやすい。
広場のど真ん中には広場のヌシ的な木が偉そうな顔をして空に手を伸ばしている。


東仙波へ向かって歩く頃には日の位置も高くなり、木漏れ日が気持ちよい時間帯に差し掛かる。
ふかふかのコケと枯葉で彩られた地面がまさに奥秩父、こういう森は大歓迎。



東仙波周辺までが和名倉山の良い所、奥秩父的な良さを感じれるもんね。






東仙波が近づくにつれ眺望が良くなる……いわゆる荒廃地なんだが、やはりこの辺が将監峠ルートのハイライト。
一本松が立つ稜線の向こうに見えるカバアノ頭と呼ばれるピークを眺めながらのんびりと笹の稜線を楽しむのが良い。
ここで気が付いたけどカバアノ頭方面の北側斜面は枯れ木が奇麗な縞模様を形成している、冬場になればキラキラとした霧氷が見れそうな場所。



あれも植樹かぁ……?マジでよく植えたな。


目の前にある東仙波へ向けて笹草原の道を降りますが、カバアノ頭を眺めながら歩ける程度に眺望が良い。


カバアノ頭の向こうに見えるのは雲取山から飛竜山への稜線、飛竜山と聞くと1992年発売のFF5だよなー。
歩いて飛竜草食べるネタでもやってみたいなと思いつつも、ずーっと樹林帯というのを聞いているので歩く気にならないのよね。



奥秩父縦走路はどこかで歩き通したい、いったい何時が楽しい時期なんだろう。


午後12時40分、東仙波。
山頂を出発して1時間半ほどで東仙波へ戻ってきました。途中見晴らしの良い所を味わうのにゆっくり歩いたけども、やはり和名倉山エリアはこの付近が見所。



カバアノ頭方面は仙波尾根という道がある、ブラックデビル小屋というイカした名前の小屋(落書きが施されている)を通過して鹿の楽園や昭和時代の林業遺構を辿り登る道らしい。歴史を辿る調査的な登山や、バリエーションルートとして楽しまれている道なんだね。


大菩薩の向こうに見える富士山までグラデーションで連なる尾根と空を眺める。
和名倉山は最後まで東仙波付近からの富士山を楽しんだりと、そういうことに集中していた。



山全体に言えるんだけど、奥秩父は人とのかかわりが深い山域だから歴史や人文に詳しくないと地味な景色を楽しむだけになりがちかもしれない。






東仙波からはリンノ峰に向かって笹の中に一本スラリと通された登山道を引き返してゆく。
地味に登山開始から6時間以上が経過しており、体力が中々削られていた。



和名倉山は山頂まで片道4時間ほどかかる上に、地形的に往路登り/復路下りという毛色が弱い。
復路もそれ相応に平行移動かつアップダウンが続くので、気が付けば「結構疲れた」という状況になりがち。


将監峠手前の笹藪へ戻ってきたが帰りのほうがこの藪はきつかった……。
場所によっては背丈ほどの笹藪が覆いかぶさってくるし足元は倒れた笹の幹の影響で滑ってしまう。


将監峠へと戻ってくるころには日が傾き始め、カラマツ植樹の影が地面に奇麗な縞模様を映し出していましたよ。
歩きやすくて助かるんだけど、登山口まではここからまだ結構歩くんだよなぁ……と思うとぐったり。


見晴らしのいい将監峠をひたすら降る。






午後2時50分、将監峠登山口到着。
将監峠から登山口までは木漏れ日が美しい林道めいた登山道をひたすら降り続けます。登山開始から結構時間が経ってる上に、思いのほか疲労が蓄積していることからも二人とも無言で下山し続けるような状況でした。
和名倉山って地味だけど結構キツイ、何かしら目的をもって歩かないと中々難しい山だなと思ったわけよ。


下山して駐車場のお金を民宿の方に支払うと、そのままテーブルに広げられたお茶菓子的なものをいただいた。
何でもコロナで人も疎らで、駐車場を使ってくれた登山客とこうして話すのが気晴らしになるんだとか。
僕も在宅続きだったし、ネットを介さない人とのふれあいやコミュニケーションが久々だったから思わず長居させてもらってしまった。



民宿のおばあちゃん手製のかぼちゃの煮物や、菊の花の酢漬けが美味しくて……。山間部の集落の生活ってこういう感じなのかなっていう片鱗を感じた。開拓地の平野部で陸っ子として育った身としては一般的な郷愁の念みたいなものを楽しんでいた。


民宿みはらしさんは星空が美しく見える宿らしい、街の光害の影響を受けにくいこの場所は星空撮影を趣味にしている方々が泊まりに来るんだとか。居心地がよさそうで、登山後にこういう所で平穏な時間を過ごしてみたいなって思う。
あとなんだろう……、地元の生き字引的なところもあるから山の歴史とかを聞くには宿泊してゆっくり話を聞いてみたいもんだと思う。






将監峠登山口を後にし、まずは温泉に入ろうということでやってきたのは丹波山村の道の駅。
一ノ瀬高原から最短の温泉はここ、あと帰り道的にも奥多摩を抜けて圏央道を利用するのが一番ということでやってきた。
柳沢峠を経由して中央道を通るルートもあるが、圧倒的に遠回りになる。(しかも休日は渋滞する)
丹波山村の道の駅の良い所は奥多摩エリアの中ではお土産が充実しているところ。
丹波山ビールもいいんだけど、一番のおすすめは写真に写っている柚子胡椒、これは本当に香りが良くおいしい。
スプーンですくってザバッとかけて食べるのが良いんだけど、炒め物や鍋ものを食べるのには本当に重宝します。
というわけで温泉で汗を流して調味料と酒を手にし、埼玉への帰路へ着くのでした。


コメント