2020年5月30日、埼玉県の秩父のさらに西、奥秩父は二瀬ダムの西に位置する白泰山に登ってきました、標高は1,794m。名山指定されているわけでもなく、地図の中でもひっそりと書かれているだけなのでかなりマイナーな山かと思いますが、近隣には入川渓谷や滝川渓谷といった見所もあることから「景色は良さそう」なのがわかります。
調べた当時は原生林も残っているということで、新緑の尾根の尾根道には奥秩父特有のコケにまみれた山深い景色が見れるであろうと期待が膨らんでいました。
実際に歩いてみたところ、尾根道は明るい木漏れ日が降り注ぎ山頂直下では苔むした「美しい奥秩父の森」が広がっていましたし、避難小屋近くの展望地からは甲武信ヶ岳へと連なる山々を一望できる眺めを楽しむことが出来ます。
美しい尾根道と奥秩父の山々を覗き見る白泰山、体力的にも楽に歩ける場所なので、夏山に向けてなまった身体を動かすにはお勧めの場所です。
それではいってみましょう、新緑の木々に彩られた奥秩父の山歩きです!
白泰山登山の概要
栃本集落から登る原生林の山道
2020年5月30日、午前4時50分。
おはようございます、埼玉県秩父の山奥……かつての秩父往還らへんにやってきましたRedsugarです。
秩父の奥地……栃本集落、山深い秩父にひっそりとたたずむこの集落はその昔甲斐、信濃、武蔵の3つの国を結ぶ秩父往還の要衝として栄え関所が置かれていました。地味だけどロマンのある場所なんです。
甲信県境の山々を一望できるこの一帯にあるマイナーだけどいい山、それが今日の目的地白泰山です!
歴史を調べていくと秩父往還ってかなりロマンがある道だなと思えてきます。今日はそんな道沿いにある山を登るよ~!
栃本集落は急峻な谷間に作られた家々が続く山間集落です、奥多摩から山梨にかけてよく見る丹波山や小菅の集落のような谷底に大きな集落があるタイプじゃなくて、本当に斜面に家が建っています。
この栃本集落は秩父往還の要衝で、白泰山から東に延びる尾根の地滑りでできた緩やかな斜面に集落があります。
関所の歴史的には武田信玄の頃までさかのぼり、栃本から白泰山側へ向かえば信州に。雁坂峠を越えれば甲州に向かうという三差路的な場所になっていたそうです。
「白泰山を越えて」ということは十文字峠方面へ向かって毛木平の方へ出るっていう感じなのかな……険しい道だ。
午前5時20分、登山口より登山開始。
白泰山の登山口は栃本広場から先にあります、ちょっと見づらいけど栃本広場へと向かう看板を見つけてそちらに、あとは道沿いに林道を上がっていけば白泰山登山道入り口の看板が出てくるはずです。
ちなみに駐車場らしい駐車場は無いので、路肩に用意された駐車スペースに車を停める感じ。
結構林道を置くまで進みます、グイッと、グイッといっちゃって!
早朝の栃本集落の空気は若干水分が多くひんやりしています、1,500mを超える稜線は寒いのかも……。
というか昔の人ってここから白泰山越えて十文字峠越えて毛木平降りて信州行くとか、ここから雁坂峠越えて甲府に向かうとかをしていた……とか信じられない。
登山道から森に入ってみるとすぐに明るい広葉樹の森が広がります、朝の陽ざしが新緑の森を輝かせてくれる。
午前の傾いた日の光に照らされた森は歩いているだけで気持ちがいい。
原生林の尾根道を歩いていきます、見晴らしのいいところはこの山には期待していなかったんだけど……。
植林地帯の一部が切り開かれていて、パァっと視界が開けた場所が現れました。
視界の向こうに見えるのは……、甲武信ケ岳とかあの辺かな?
眺望が全くない事を予想していたのでこれはサプライズ。
5月後半、標高1,500m以上ではまだ新緑が楽しめます。新緑のもえぎ色が頭上を多い気持ちのいい木漏れ日が降り注ぎます。
何もない山かもしれないと思っていたけど、新緑の尾根に吹く涼しい風が最高に気持ちがいい~!
新緑の原生林にはところどころツツジが咲いていました、見た感じヤマツツジのようです。
色々種類がある中で個人的には一番地味な部類だとは思うが、この地味な山には一番よく似合っている……一言で言えば渋い。
控えめな色の山ツツジ、白泰山では所々に数本のツツジが咲いているという状況でした。
今回の白泰山はほぼ花を見ることがなく……、5月末の白泰山は花を期待して登るような山ではないようでした。
続く渋い尾根道、奥秩父の森
白泰山の尾根道を歩き続けます、全体的に歩きやすい道が続く。雰囲気としては大マテイ山とか大菩薩嶺周辺に似てるかな、道幅が広くて安心感がありました。
所々に広葉樹の苗木というか、若い木が地面から目を出しているのが目につく白泰山。ほかのエリアの山を歩いた時よりもこういう苗のようなものをいたるところで見ることが出来ました。
苔に覆われた倒木も多いためか、梅雨入り前にして小さなキノコがかわいらしい景色を作っています、気分はシルバニアファミリーか。
森のミニチュア撮影を楽しみながら歩いているとどんどん時間が過ぎていく。
明るい広葉樹の道は気持ちがいいのですが、北国育ちの人からすれば近所の雑木林を散策するのに近い感覚かもしれません。現に僕は「北海道の森を思い出すね」などと思いながら歩いていました。
行く先々には苔に覆われた木々が倒れている……、林業で切り倒された木だと思うんですけど、どれも登山道沿いに切り倒されていました。つまり、この山の道はよく整備されている。
苔に覆われた木々も多い事ながら、キノコに覆われた木もたくさん……これはカワラタケかな?
尾根道を歩き続けていると紫の奇麗なツツジが、ヤマツツジだけかと思っていたのですがいいものが見れました。
午前7時40分、白泰山分岐路。
広葉樹の尾根道を延々歩き続けていると分岐路に差し掛かります、そのころには植生も随分と変わってきて、大木の姿はまばらとなり痩せた木々と苔に覆われた山肌が目立つようになってきます。つまり……奥秩父っぽい景色になる。
白泰山山頂直下は不思議と奥秩父らしい雰囲気に包まれていた、いつもの針葉樹の森じゃないのに……不思議。
午前8時00分、白泰山山頂到着。
登山口を出発して約3時間で山頂に到着しました、正確には2時間40分らしいが……そんなに歩いたか??
山頂は大菩薩嶺を彷彿とさせる展望のなさに驚きます。樹林の中で全く展望はないし、山頂も「ここが本当に山頂か?」と思わせてくれるほど地味でした。
午前8時40分、白泰山避難小屋到着。
山頂からさらに十文字峠側に進みます、目的地は見晴らしの良い岩場があるという白泰山避難小屋。
小屋自体は頑丈そうなログハウスで、地味な山故にその筋の人が結構使ってそうな雰囲気があるものでした。
ちなみに山頂から稜線沿いに歩いても到着しますが、ピンテを追うのが結構心細いので不安な人は分岐まで戻るのが良いです。
小屋の中身はこんな感じでストーブがしっかりと設置されてます、薪も用意されてたから秋口あたりの小屋泊は楽しそうですね。
奥秩父主脈を眺める抜群の展望地
陽も高くなり、じりじりと気温も上がり始めてきた……。
5月末の奥秩父といっても、快晴の環境では結構暑いのです。
避難小屋のすぐそばにある岩場に行ってみると、腰掛用に作られた木にこんな文字が……どれどれどんな景色が無料なのか見てやろうじゃないか。
前を向くとびっくり、奥秩父の山奥が目の前にドーンと表れます。人工物の姿など一切ない、山深い奥秩父の景色が広がっていました。画面正面が破風山で稜線沿いに木賊山や甲武信ヶ岳かなと……。
見渡す限りの森、見渡す限りの樹林帯……これぞ奥秩父、景色も渋かった……!
甲武信ヶ岳っていい山だよな~とのんきなことを考えながら自撮りを一枚、午前9時を越えて徐々に雲が出てきま……雲出るの早くないか??
この日、帰り道は土砂降りとなる天気の不安定さだったのですが、その片鱗がすでにこの写真に現れています。
この白泰山登山、コースタイムも短めだし道中も楽だろうということで、D850のほかにK-1を持ってきていたんですね。帰り道はカメラを1台K-1に換装して歩くことにしました。
当時としては広角から200㎜までレンズ交換なくいろいろ撮れて楽だということでこういうスタイルでしたが、今となっては、35㎜だけしか持ってなくてもそれはそれで何とかなることもあり、最近はカメラ複数台持つというのはやらなくなってしました。
この時代はまだカメラを3台持っていても楽しく登ることが出来たんだなぁ……(しみじみ
午前9時20分、下山開始。
白泰山の下山はピストンになります、あんまり楽しくないイメージのピストンだけどこの日は別。
早い時間帯に日を背負って歩いていたため景色の多くが順光でしたが、帰り道は逆光となるのでいろいろと景色の雰囲気が変わっているので見た目新線。
稜線を辿って避難小屋まで歩いていたから、メジャールート側の景色は見れてなかったのでちょうどいい感じにもなりました。歩いてみた感じメジャールートのほうが森が明るくて好きだなぁ……。
稜線沿いは逆に針葉樹が続く道で、ちょっと暗かったんだよね。
白泰山山頂分岐まで戻る間、苔に覆われた地面や倒木をこれでもかというくらい楽しむことが出来ました。
道中の倒木を見るたびに思うんだけど……これって山岳会の方々がチェーンソーで手を入れてるんだろうか?
たまに林業の方が仕事をしているのは見るんだけど、登山道沿いの本格的な整備っていうのはだれがやっているんだろうね?
往路では見逃していた木々をしみじみと楽しみながら帰り道を進む。
このころはK-1の絵作りを楽しんでいたけど……、独特な画が出るカメラだった……、向き不向きはすごくあるだろう。
木漏れ日の山を降りて武甲温泉へ向かう
往路でさんざん見た苗木も、正午が近づきコントラストが高まる木漏れ日の中でまた変わった表情を見せてくれるようになっていました。光が真上から差すようになるから、スポットライトみたいになるんだよね。
「おや?セミの抜け殻……」
近づいてみると小さな抜け殻であることがわかります、あたりにこだまする声から察するにハルゼミかな?
登山をしていると夏になる前からセミの声を楽しむことが出来るんだよね……。
虫たちが奏でる音が重ね重ね響き渡る森の中をひたすら降る、白泰山は尾根を一直線に登る山だった。すなわち下山は、一直線に降る。
下山が凄い速度だったのはこのコースの設計によるものが大きいと思う。下山は本当に早かった……。
スタート直後に歩いた開けた山肌地点、しばらく空を見ないうちにずいぶんと雲が多くなってきています。
奥秩父の稜線にはもう雲が纏わりつき始めているし……正午まで天気が持たないとは思いもよらなかった。
午前11時30分、白泰山登山口到着。
約6時間ほどもかけてしまった白泰山登山が終了。長いと思われるかもしれませんが、僕がずいぶんとゆっくりと歩くだけで普通の人であればもっと早く歩けるかなと思います。(Redsugarは写真をとりながら歩く関係でコースタイムが遅い)
降りてきてみれば本当に玄人向けな、渋い山だったと思う……、スペクタクルな景色は全くなかった。
そして、下山後に車に乗った着後にすごい雨が……。天気が不安定だったらしく山間部だけ雨に降られるという天気の一日でした。
下山後は大滝振興会館にやってきたのだが……、残念ながら大滝温泉はこの日休館となっていたのです。
世間的に温泉などは軒並み休館になっていた時期なので、仕方が無いのですが風呂には入りたい……。
ということでそのまま営業中の秩父武甲温泉へ向かい汗を流すことにするのでした。
登山始めてから実は初めて入った武甲温泉、温泉が気持ちよくて風呂上がりの牛乳を二つも飲んじゃったよ……。
奥秩父の静かな稜線から見える景色は渋かった……!
渋いだろうなと、そしてスペクタクルはないだろうなということは理解したうえで訪れた白泰山。
本当に静かな山歩きを楽しむ玄人にはとっても楽しいことは間違いない山でしょう。奥秩父の主稜線ではなく、そこから少し離れた場所にあるこの山は奥秩父主脈を眺める、山深い景色を堪能するための山といってもいい山でした。主役か脇役かで言うと脇役なんだけど、光るところでしっかりと仕事をしてくれる、そんな味がする山だったのでした。
埼玉県の山ということで新緑を考えるのであれば、ここは考えてみてもいいのかも?
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