2020年8月1日~2日にかけて、北アルプス西部の薬師岳と黒部五郎岳を歩いてきました。本日は登山二日目の黒部五郎岳。
黒部五郎岳をピークハントするということで、最も難易度の低い太郎平からのピストンで一度黒部五郎岳を登ってみたいと思います。肝心の標高は2,839m、前日の薬師岳の記事を参照してほしいのですが、北側から見ると美しい台形の形をした日本百名山の一角となります。
北アルプスの百名山では薬師岳と同じくちょっと主稜線からずれたところにある黒部五郎岳。常念山脈や穂高連峰、後立山連峰といった山々と比較すると後回しにされることも??
僕がまさしくその感じで、黒部の山賊エリアの雲ノ平周辺の中でも黒部五郎岳には中々登ろうという気になれなかったのです、だって遠いんだもんなぁ……。
歩いてみてわかったのは黒部五郎岳は薬師岳と同じく縦走してこその山だということ、カールの中に飛び込まなければその真価はわからない、そうなれば東西に連なる稜線を歩き切るしかありません。
是非次回は、黒部五郎岳の小屋に泊まろうと思わせてくれる素晴らしい山歩き、その一端を感じ取ることが出来ました。
そして、太郎平からのピストンはその見た目の穏やかさからは計り知れぬ、長大な登山が待ち受けているとは……。
思っていたよりもはるかに疲れた黒部五郎岳登山の始まりです!
黒部五郎岳、太郎平ピストンの概要
前日の記事はこちら
太郎平より北ノ股岳を目指す
午前4時00分、太郎平小屋。
おはようございます、Redsugarでございます。北アルプス薬師岳/黒部五郎岳の二日目がやってまいりました……、黒部五郎岳に登るということで早朝4時に小屋を出発いたします。
地図で見ていてそんなにつらくなさそうだなと思っていたのですが、隣で「おいおいこいつマジかよ」という顔をしていたみやっちさんが印象的です、僕はこの時この黒部五郎ピストンがどれだけ辛いか知らなかったのです……!
数時間後、へとへとに打ちのめされたRedsugarの姿がそこにはあった!
太郎兵衛平を出発して黒部五郎岳へ向かいます、薬師岳と違って黒部五郎岳方面は樹林帯は一切ございません。
山頂まで日陰なしの展望のいい稜線を延々と歩き続ける夢のような登山道が待っています。
屏風のような北アルプスの山々の向こうからゆっくりと太陽が登りつつある、ぜいたくな時間の中歩き続けますがそんなに涼しくはないのが残念なところです。
北ノ股岳を目指して進みますがさっそく黒部五郎岳が姿を現しました。西側から見ると黒部の盟主と謳われる理由がよくわかる雄々しい見た目をしている……。穂高連峰から見たりすると距離感が遠いこともあってそんなにいい山には見えなかったが、ここから見ると山としての格が高いというのがよくわかる。
神秘的なご来光、山を歩いていて最も神聖と思われる時間がやってきた。
この時間だけは足を止めてご来光を眺めてしまう。
山肌に一気に光が差し、黄金色の朝日によって豊かなコントラストで地面が彩られます。同時に黒部五郎岳までの道もやや鮮明に……あれ、アップダウン多くないか……??
黒部五郎岳の直前が随分と落ち込んでいるように見える、いったいどれくらい登らなくてはいけないんだ?
朝日が差し情緒的な光に包まれるお花畑、北ノ股岳周辺のお花畑は終わりを迎えようとしていますが、まだちらほらと咲いていた花にスポットを当ててみると何とも美しい朝の景色を撮影することができました。
ハクサンイチゲの多くはすでに花びらを散らしてしまいました。花を見ることはかなわなかったが、朝日で黄金色に染まる草原が見れただけで満足です。
黒部五郎岳を目指して続々と太郎平から歩いてくる人々も逆光で神々しく見える。
さて、我々の目的地黒部五郎岳が良く見えてきました。ちょっと思ったよりもかなり遠くて身震いしそうです。
ここから先赤木岳などを越えて歩き続けて黒部五郎岳を目指します。アップダウンが激しいのに樹林帯は存在せず、草原とハイマツ林だけが続く素晴らしい稜線が続きます。
気が付いた人もいるかもしれませんが、猛暑の日にはあまり歩きたくないタイプの登山道です。
8月の頭といえども、たまたま涼しい日だったので何とかなりましたが水はかなりの量を消費しました。
黒部五郎岳ピストンでは途中に水を補給できるポイントが存在しません、太郎平小屋で3リットルほどの水を補給しておくのが安全。
途中木道が出てくるんだけど、この木道が最後まで続いていればいいのにと何度思ったことか。
午前5時55分、北ノ股岳。
木道を越えてさらに標高を上げると最初のピークである北ノ股岳に到着です。このピークは素晴らしく展望が良い場所で、ここまでの道もつらいところは一切なく、お花畑の中を歩き続ける楽しい登山道が続きます。
黒部五郎岳に行かずともここでも結構満足できる景色を堪能できてしまいます。
この北ノ股岳周辺の登山道は北アルプスなのに東北の山々が持っている湿原地帯の穏やかさを兼ね備えている。本当に歩いていて楽しい道でした。
北ノ股岳の目の前に見える黒部五郎岳、その巨大さから近くのように錯覚してしまう。
ここからが黒部五郎岳ピストンの本領発揮です、ここから先が本当に長かった……!
天国の稜線地帯を歩く
北ノ股岳から先は赤木岳と中俣乗越を越えて黒部五郎の肩へ行くんだけど、北ノ股岳からみると黒部五郎岳の直前でずいぶんと標高を落としていることがわかる。直前の鞍部は2,555mらしいので約300mくらい登り返すようだ。
これを言うと悪いなって思うけど、この位置からだと笠ヶ岳が凄い気になる。
北ノ股岳から赤木岳までは平和な道のりが続く、穏やかな下り坂でハイキング気分。
朝霞というか光が拡散している黒部五郎岳の午前、南側を見渡すと黒々とした山々が波打つように地平の向こうに向かって広がっている。北アルプスのよくわからない山奥のエリアだ。東側には赤木平っぽい池塘地帯が見える。薬師岳は相変わらずお奇麗です。
徐々に近づいてくる黒部五郎岳、野口五郎方面から太陽が差していて画面左が飛び気味で見づらいけど、台形の山の形はここからでもわかる。そしてその前後2回の登り降りも。
午前6時35分、赤木岳山頂。
ここが赤木岳の道しるべのある地点、写真の右側に小さく写っているのが赤木岳の道しるべ。2,622mの赤木岳からいったん降りて行ってまた登る。
あんまり黒部五郎岳が近くなった気がしないな……、もしかして富士山と同じで大きすぎて距離感がバグってるのか?
薬師岳は終始いい眺めです、どこから見てもなだらかな二等辺三角形で穏やかな見た目をしている。
午前7時35分、池塘地帯。
無心で降り続けて2,555m地点に差し掛かろうという所で池塘地帯に差し掛かりました、お花畑が広がっているキュ系地帯なんですが、ここが黒部五郎岳の入り口といっていいでしょう。ここから300mくらい登って黒部五郎岳の山頂です。
この辺お花畑と聞いていたけど、僕らが歩いたときは不作でお花よりも笹が目立ってしまった。
黒部五郎岳の最後の登りは思ったよりもしんどくない、何故ならアスレチックな雰囲気が満載だから。
雰囲気としては常念乗越から常念岳に行くときの道や、白馬杓子に似ている。なんというか歩くことに集中することが出来るガレ場だから、そんなに疲れを感じずにどんどん標高を上げることが出来た。
何よりも景色がいい、長大な稜線の向こうにある薬師岳がまるでミニチュア模型みたいに見える。
黒部五郎の肩直前はこんな感じ、浮石を踏まないように神経を研ぎ澄ませて歩くのが楽しい。
黒部源流から続く奥の廊下が一直線に薬師岳に向かっている谷間、その奥に薬師岳。薬師岳麓の分岐点にちょうど薬師沢小屋があるのかな。
午前8時10分、黒部五郎岳の肩。
景色を楽しみながら登り続けていると黒部五郎の肩に到着、目新しい看板が目を引きます。カールコースを歩いて黒部五郎小舎に行ってお泊りしたい……。我々はピストンなので黒部五郎岳にたどり着いたらこの長い道のりを戻らなくてはいけないんですけどね。
黒部五郎岳、盟主から眺める北アルプス
黒部五郎の肩から山頂を見上げるとこんな感じ、山頂までは10分くらい。
黒部五郎岳の山頂はとても鋭角な見た目をしていてかっこいいなと感じる。山頂からは黒部五郎小舎に泊まっていただろう登山客がわらわらと降りてくる。
黒部五郎の肩を振り返るといい景色だ、直線状に立山方面がスコーンと抜けて見える。画面右側の大きな稜線は水晶岳からさらに先にあるレッドブルマウンテン赤牛とかその辺だろう、かっこいい山肌……。
黒部五郎岳の山頂にたどり着くと目の前には前日の薬師岳のカールを遥かに凌駕するクレーターのような景色が広がっていた。これはカールの底から見上げたら絶景だろうよ。
となりでみやっちさんがあの下から見上げる黒部はすごくきれいだから次回は是非三股から歩いてみて、と話してくれた。
無言でうなづくしかない景色が確かに目の前に広がっている。
午前8時30分、黒部五郎岳山頂。
山頂には小さな仏像と三角点が置かれている、登頂記念的にそれらを撮影したり触ったりしてみるが、景色が気になって仕方がない。
山頂から降りてゆく登山者を見ていると薬師岳と対峙しているようだ、景色が強いよここは、素晴らしい。
薬師岳と黒部五郎をピストンせざるを得なかったことが悔やまれる。できれば折立スタートで薬師岳→雲ノ平→三俣蓮華→黒部五郎→折立と周回して歩きたかったくらい。
黒部五郎のカールを見下ろして黒部五郎小舎を探してみるも随分と遠くにあることに気が付いた。
下りコースで2時間近く、ここから先の道のりも長い……やはり北アルプスの奥地は一筋縄ではいかない。
このカールの中を歩きたいなぁ……、行くなら新穂高からかなぁ?折立行のバスに乗れる気がしないよ。
黒部五郎岳山頂から見えるもう一つのいい山、それは笠ヶ岳。北アルプスで悪名高い笠新道のイメージが先行しがちだけど一級品の稜線を携えた名峰だと思う。黒部五郎岳の翌年双六を経由して稜線沿いに山頂を目指したけどその工程は素晴らしかった……あの山頂は本当に美しい。
黒部五郎岳から見る笠ヶ岳の美しさよ、東側から見た時よりもそそり立つような姿がかっこいい。
黒部五郎岳から太郎平方面を見渡すと本当に恵まれた稜線が続いてるんだなと思う。アップダウンは大分きつかったけど、ほかの稜線を見るとまだマシだなと……。
午前9時10分、黒部五郎岳下山開始。
自撮りをしたりダッフィーを撮影したり、山頂の景色を楽しんだら下山開始。まだ10時前なんだけど折立まで降りることを考えるとここから下山を開始してもたどり着くのは午後3時とかその辺になってしまう。
黒部五郎岳ピストンというのは聞こえは優しそうだが、実際はかなり道のりが厳しく長い……!
稜線との別れ、太郎平から折立へ
黒部五郎岳から太郎平までの良い所は本当に樹林帯がない事、木々が多いのはこのハイマツ帯くらいのもの。
みやっちさんの遥か奥に北ノ股岳が見える、ここから見るとアレも随分と図体がデカい山だ。
標高をどんどん下げていく、このアップダウンが本当にキツイ。水ってあとどれくらい残ってる?大丈夫そう?
といった会話を交わしながら延々と歩いていくが、徐々に修行のような気分になってきた。
縦走と思われる登山者が黒部五郎岳に向かって歩みを進めていく、天空を歩くハイカーだ。
もはやゾーン、完全な集中状態に入った我々は会話もなくただひたすらに歩き続ける。
この日は薬師岳は終始晴れていた、黒部五郎岳はというと我々が山頂を後にした直後くらいから雲行きが怪しくなってきたのに。
薬師岳に向かって急なカーブを描くのは左俣かな?赤木平から流れてゆく渓流、上部は牧歌的な湿原が形成されてる。
ズームしてみると気持ちがよさそうな草原が広がっている、沢登りの人くらいしかあの辺歩くことはないんだろうけど……。
無心で歩き続けた黒部五郎岳復路、最後は3リットル持っていた水が尽きてしまった……。太郎平小屋の直前だったから良かったものの、このコースの恐ろしさを十二分に体に仕込まれた気分だった。なんたって日影が無い道を6時間以上近く歩き続けるのに水を補給できるところが無いんだから。
午後12時50分、太郎兵衛平。
太郎平小屋に戻ってきたときには黒部五郎岳はガスに包まれようとしていた、さすが真夏。天気が持つのは午前10時くらいまで、それ以降の山頂はガスに包まれてしまう。
午後1時20分、太郎平小屋。
流石に疲れ果てた……ということで太郎ラーメンをいただきました。キリンレモンで喜びを分かち合い、太郎ラーメンで下山の英気を養います。食事と休憩を30分で済ませて小屋を出るころにはあたりはガスに包まれてました。
黒部五郎岳から戻ってきたら正午を回っていた……、ここから折立に降りるとやっぱり一日の行動時間凄く長いなぁ……。
折立に向けて下山開始、ここから先は無心で下山。
午後3時35分、折立登山口。
びっくりするくらい無心で、そして凄い速度で下山しました。下山の写真がろくに残ってない、それくらい二人で急いで下山したのを覚えています、もうとにかく早く折立に帰りたい、この最後の帰り道がめんどくさい……と。
2時間くらいで折立まで戻ってきたらすぐに自販機に向かって炭酸を購入したよね。
僕はこの後さらに運転が残っています、なのでコーラではなくデカビタでチャージ。
下山して炭酸を飲みながらしばらく放心状態でした、いやー……疲れた。
みやっちさんに聞いてみても「よく今の体力で黒部五郎をピストンできたなと思った、達成感ある」と、確かに無駄に達成感はあったよ……。
折立に下山後は最寄りの国民宿舎で入浴し二日分の汗を流しました、もう富山駅まで行って汗を流す気力なんてなかったよ……。
ここから長い帰り道、最後に富山で何か食べますか?ということになり回転ずしに。富山の回転寿司はよくわからなかったのだが、登山後でおなかが空いていることもあり何でも美味いという状態で十分に楽しめてしまった。ただせっかくの富山、北海道的なネタのサイズを期待したけどそこは普通だったかな……、ただ東京埼玉で食べる寿司よりは美味しかったです。
この後、富山駅で宮っちさんを降ろした僕は単身車で埼玉へ帰るんだけど、やっぱり途中で力尽きてしまいました。
妙高高原付近で眠気を抑えられなくなり寝ていたらいつの間にか深夜に、結局家に帰ったのは翌日の明け方になったとさ。
そんなわけで折立はめちゃくちゃ遠いという記憶だけを僕に刻み込んでくれた薬師岳と黒部五郎岳でした。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは、薬師岳編と合わせて楽しませていただきました。
僕も数年前に薬師や黒部五郎には登ったことがありますが(2泊3日で折立~雲ノ平~水晶~鷲羽~三俣蓮華~黒部五郎~折立)、太郎平~黒部五郎間がめちゃくちゃ辛かったのは今でもよく覚えています、本当にお疲れ様でした。
次はぜひ三俣方面からカールも歩いてみてください、最高の景色が待っていますよ!
ろっぴさま
ありがとうございます、ろっぴさんの工程うらやましいですね~。僕もその工程で歩いてみたいです。
2泊3日でそれはすごく早い気がしますが笑
三俣方面からのカールは絶対に歩こうと思うのですが、どんな足取りで楽しもうかなと今から予定が膨らんでいます。
鷲羽岳に行きたくなっちゃいますね。