【秀麗富岳】笹子雁ヶ腹摺山、笹一の日本酒を求めて歩く冬枯れの山

笹子雁ヶ腹摺山から見る富士山

2023年12月24日、クリスマスイブの日に冬枯れで誰も歩いていない静かな秀麗富岳十二景四番山頂の笹子雁ヶ腹摺山を歩いてきました。秋であれば錦秋の景色を見れる名山で、標高は1,357mとなり秀麗富嶽という通り富士山の眺めがよい山になります。
12月は里山シーズンなのですが、少し高い山を歩きたいなぁと思い目をつけたのがこの笹雁。冬という季節だと冬枯れしてただ寂しいだけの景色が広がっています。広葉樹の森が広く、冬らしい枯れた木々と落葉の森を楽しみたい時はうってつけの山です。
さらに笹子ということで関東で山登りをしていれば名前は聞いたことはあるでしょう笹一酒造さんの酒蔵が駅から歩ける距離にあります!下山後は笹一さんで日本酒を買って帰るぞ!という楽しみがあるわけです。
冬枯れした哀愁漂う寂しい山と日本酒で味わうクリスマスイブと年末の空気、渋い!
冬の始まり12月に歩く中央線笹子駅から登る秀麗富嶽日帰り登山の始まりです。

目次

笹子雁ヶ腹摺山日帰り登山の概要

■概要
中央線の大月エリアにある標高1,357mの山梨百名山の一つとなります。その名の由来は渡り鳥である雁が腹をするようにして尾根を飛んでいくから。古くは近くの米沢山、お坊山と合わせて笹子嶺と呼ばれていました。山頂からの眺めは良く秀麗富嶽らしい富士山の眺望があります。
笹雁ですが、山頂の真下を中央道笹子トンネルが通っています、八ヶ岳や南アルプスに行くときは毎回この山の下を通ってるんだなぁ……。
コースとしては笹子駅を出発後、笹雁を目指して急峻な山を一気に登ります。その後、米沢山、お坊山と縦走し周回コースの形で滝子山登山口がある道証地蔵へと下山。そのまま笹一酒造へと向かった後帰路に就くという流れです。

■アクセス
大月エリアの山は基本公共交通機関アクセスです。
【電車】南浦和→西国分寺→高尾→笹子:1,700円
さいたま市からは武蔵野線、中央線高尾行、中央本線松本行きを利用して午前7時5分前後の到着です。
往復運賃で3,400円ほどになります。

■コースタイム
笹子駅7:15→登山口7:55→笹子雁ヶ腹摺山9:20→米沢山10:30→お坊山11:05→道証地蔵12:30→笹一酒造13:15
合計登山時間 約6時間、完全な冬枯れだと楽しくないなぁ……笹雁。

クリスマスイブに冬枯れの里山を目指す朝

2023年12月24日午前7時15分、笹子駅。
クリスマスイーヴッ!!!Redsugarです。
冬真っ盛り12月後半、寒くてたまらん笹子駅からおはようございます。今日は秀麗富岳十二景四番山頂の笹子雁ヶ腹摺山を目指します。笹子駅は秀麗富嶽と縁が深く、南側に本社ヶ丸と清八山、北側に笹子雁ヶ腹摺山と滝子山があり、それらの出発点となる駅です。

谷筋を通る高速道路

中央線で高尾を過ぎれば山梨県の郡内地方へと入りますが、国道20号/中央道/中央線が走る山間は日の出が遅く7時を回っても集落に日が差しません。

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山の斜面を照らす朝日を眺めながら登山口を目指します。

馬頭観音の石碑

笹子駅から新中橋の登山口までは40分ほど車道沿いに歩きます。歩いていると時折目に入るのが歴史を感じさせる信仰の痕跡です。笹子駅らへんは甲州街道の白野宿(笹子村)付近となり、馬の供養塔としての意味もある馬頭観音があるのも街道らしさを感じさせます。

国道を歩きながら新中橋というトンネル手前の登り坂地点で県道212号へと入り、写真二枚目の場所から登山口へと入ります。

笹子雁ヶ腹摺山入口

午前7時55分、登山口。
クリスマスイブの日曜日、いまだ光が差し込まない山梨県は笹子の杉林で静かに冬枯れの笹雁歩きが始まろうとしています。紅葉時期なら大変美しい景色が見れると噂される山ですが、俺は年末に冬枯れを歩くあの寂しくも清々しい空気を味わいたいんだッ!!

redsugar

なんなんだろうな、あの年末独特の空気の中で歩く冬枯れの山の感じ。嫌いになれないんだよなぁ……ッ!!

木漏れ日差し込む杉木

笹子雁ヶ腹摺山は登山口からはコースタイムで2時間一気に登り山頂へ到着というハイスピードコースになります。
道中目立った見どころも無く、ただひたすら杉林の中を上り詰めます。

redsugar

ようやく朝日が差し込み始めた、身体もあったまって来たぜ……ッ!

山中の境界標

前回の官ノ倉山で境界杭の話をしましたが、大月周辺の山にもこうして境界杭が残されています。人が作った境目はこうして自然の中に残されていくのです。

枯葉が積もる冬の道

足元はかっさかさの落葉で覆われ、歩くたびにサクサクという音がします。この日は軽い気持ちで歩くつもりだったので、靴はウルトララプターIIにしてきました、結果は正解で軽快に山を駆けることが出来ました。

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この山は岩場よりは土が多いので、トレラン系のシューズで気持ちよく流すのが楽しかったですわ。

山中に立つ反射板

標高をあげていくと何やら巨大な鉄塔に看板のようなものが……、看板というか電波反射板ですね。
この電波反射板付近は急登ですが、杉林も終わり冬枯れの木々に覆われていて景色は抜けています。

秀麗富岳から見る富士山

電波塔直下からは富士山が綺麗に見えるが……、木の枝が邪魔くさい。

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秀麗富嶽の山は富士山が綺麗に見えるとは言うけど、実際は気が邪魔なところが多い。本当に抜けた景色で富士山を楽しめる山は少ないと思う。清八山とかはいい景色だなーと思えたけど。

午前9時20分、笹子雁ヶ腹摺山。
登山口から登り続けて1時間半で山頂に到着。道中に見どころは無かったとおもう……電波反射板まで無心で登り続ける時間が続きましたが、マラソンみたいな感じで思考が整理される時間で嫌いじゃない。富士山の景色は山頂よりは少し降った位置からが良いですかね、反射板あたりが一番良かったと思います。

赤富士君

山頂からは……富士山全然綺麗に見えないんですけどーーーー??

お坊山、冗談みたいな山を目指して

急峻な下り坂

笹子雁ヶ腹摺山から先はいくつかの選択肢があります。笹子峠へと向かい甲斐大和へ下山、大鹿山へ向かい甲斐大和に下山、大鹿峠から道証地蔵経由で笹子に戻るというものです。甲斐大和って駅周辺が割と虚無なので、笹一酒造がある笹子がバチクソお勧めです。

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Redsugarももちろん笹子を目指して、お坊山というギャグみたいな名前の山を目指します。

笹子雁ヶ腹摺山の山形

まずは米沢山を目指して進路を東に取りますが、道中笹子雁ヶ腹摺山の姿が良く見えるスポットがあります。多くのメディアで笹子雁ヶ腹摺山を紹介する際、この位置から撮影された素材が使われている定番スポットみたい。

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冬枯れして全く魅力がない感じの山になってる。

笹子雁ヶ腹摺山から見下ろす集落

笹子雁ヶ腹摺山の稜線からは郡内地方の山間の集落が見えます。中央線沿線の山の特徴は送電線かなと思う、他のエリアに比べて送電線が多いよね。

米沢山へ

大月市と刻印された、中央線沿線の山でよく見る看板を頼りに米沢山を目指します。展望台って丁寧に書かれていますが、そこまで良い景色は無かったです。

笹子雁ヶ腹摺山から次のピークである米沢山に移動しますが、痩せ尾根を通過した後は足場が悪く鎖場が続く急峻な坂を登ることに。乾燥し切った冬ということもあり、足元はボロボロと崩れやすくちょっと歩きにくい場所でした。

米沢山山頂

午前10時30分、米沢山。
鎖やロープが付けられた坂を登りきると米沢山です。こちら山頂の眺望はあんまり良くない。ひと気が少ないのは間違いなく、見た目と雰囲気が圧倒的に玄人な青年がこちらでラーメンを静かに啜っていました。

redsugar

わざわざここを選んで飯を食うっていう時点で圧倒的な玄人なんよ。

山梨県の山々をまたぐ送電線

米沢山からはまた送電線がよく見えます。多分東京電力の東山梨変電所に電気を送る超高圧送電線の西群馬幹線じゃないかと。発電所で作られた電気を各地に届ける血管はこのような姿をしているんですね。

冬枯れした木々の回廊

米沢山からは稜線沿いにひたすら歩くだけ。風が少し強く、木々の枝が風に揺れる音だけが響きます、自然音セラピーだよなぁ……。

お坊山山頂

午前11時5分、お坊山。
本日最後のピークであるおぼうやまに到着ですが……おぼうさん!?と二度見するような名前ですね。
でもお坊山ですが、由来を紐解くと親鸞上人がこの地で身投げした娘の怨霊を鎮めたという伝説が元だとか。
嘉禄年間の時代に僧侶に恋したよしという女性が失恋から入水したような話でして、池に大蛇が出るようになったとか。東北巡教に赴いた浄土真宗の親鸞がこの地に立ち寄った際に南無阿弥陀仏と名号を書いて鎮めると大蛇は成仏したらしい。笹子の吉久保という地名はこの伝説が揺らいで、よしが池があった場所をよしが窪(吉久保)というそうです。親鸞の業績をたたえ、吉久保の最高峰をお坊山と呼ぶようになったとか。

redsugar

お坊山だから僧侶関係あるのかなと思ったらガッツリ関りがあってびっくりだよ。

山頂から見る富士山

お坊山からは富士山がよく見えまして、正直笹子雁ヶ腹摺山よりもこちらの方が富士山が綺麗です……。

山頂から見る冬の南アルプス

そして南アルプス方面の眺望もよい。全体的に笹子雁ヶ腹摺山よりも景色が良い場所が見受けられたのがお坊山の良い所でした。

お坊山を過ぎた後は大鹿峠へと向かいます。甲斐大和に降りることもできるけど、やっぱり笹一っしょ、ということで日本酒をゲットするために枯葉が降り積もったマイナー登山道をガサガサと音を立てて降る。

冬枯れの迷宮

冬山の良い所はこういった冬枯れした木々と枯葉が作り上げる錯覚を生むような眺め。生命力にみなぎる新緑時期の山もいいけど、シュールな景色が広がる冬も捨てたもんじゃない。

真っ白な崩落地

お坊山から大鹿峠へと降る際中大きな崩落や痩せ尾根がいくつかあるのでちょっと注意かもしれない。ウォータースライダーみたいな崩落地は落ちるとどこまでも転がっていきそうな恐ろしさがある。

大月を歩くなら笹一酒造を目指せ!

大鹿峠まではピンテを頼りに歩きます。北側斜面だけど光が綺麗な場所を歩けるから良いですね。

冬の低山の登山道

落葉が降り積もった道だけど登山道はしっかりと踏み固められていて歩きやすい。

redsugar

普段からこういう道を歩いているからマヒしてるけど、これって道幅30センチも無くて踏み外すと滑落する道だったりするのよね。

登山道から今は廃道とかした林道へと降り立ちます。コンクリートの舗装路の上に土砂があふれ出て、薄暗い場所故に霜柱が大量にみられます。この舗装路も遺跡みたいな感じで未来へ封印されるのかな。
日本の道路って全盛期はもう過ぎていて、現代は都市部以外はどんどん衰退しているというか老朽化が進んでいます。関東でも少し山に入ると道はボロボロだもんね。

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数千年後に発掘されるガードレールとか普通にありそう。

巻木の跡が痛々しい杉

歩いていると藤の木か何かが巻き付いていたような杉が……、締め付けの跡ってこんなに残るんだ。

午後12時30分、道証地蔵。
お坊山を出発して1時間半程度で滝子山の登山口である道証地蔵に到着しました。ここから笹子駅までは砂利道と舗装路が入り混じる杉林の林道歩きが続きます。こういう道で恐ろしいのはクマかな……。

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山の中よりもこういう道で野生動物を見る機会が多かったので、歩くのがちょっと怖い。

滝子山への入り口

林道を抜けるとゲートがあり、歩行者は扉を開け閉めして国道へと降りることになります。このゲートの手前が滝子山登山者の駐車場みたいなもので、駐車されている白い車も山登りの人っぽい。

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新緑のシーズンに滝子山を訪れた際は駐車場は満杯でしたね。

年末の中央道

笹子駅へ向かうために中央道にかかる歩道橋を渡り国道を目指します。年末のお昼時、中央道は帰省客も少なくガラガラで寂しい雰囲気が漂ってました。

笹一酒造入口

午後1時15分、笹一酒造。
はい、今日の登山はここまで!終わり終わり!!笹子雁ヶ腹摺山じゃなくて今日のメインは笹一です、山は笹一を楽しむための準備体操だったんだよ!と言わんばかりに期待で胸が膨らみます。笹一の店舗は良いですよ……、ここでしか買えないお酒もありますし、お店の中のディスプレイを見るだけで楽しい。

買い物をする前に小腹を見たそうということで、軽食コーナーでソフトクリームとアイスコーヒーを注文。真冬にこの選択は正直ミスってしまった……ぶるぶる寒いぞ!ということで気が付いたら山梨県名物ほうとうを注文していました、お隣にはお店で購入したキンキンに冷えた笹一の生酒。

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ほうとうをたべる→酒を飲む→ほうとうをたべる→酒を飲むのループが強い。ほうとうって味が薄いうどんみたいなもんだけど、酒と交互に食べることで優しい味を楽しめる優しい気持ちになれる。この酒のために笹子雁ヶ腹摺山はあったのだ。

笹一のお酒

お腹いっぱい食べた後は笹一のお酒を2本ほど購入。この槽っていうのがお店じゃないと買えない奴。
槽っていうのは発酵を終えた醪を絞って酒と酒粕に分けるために使うための道具で、船の形に似ているので槽と名前が付けられました。もう一つは生原酒、時期的に10月から春にかけては新酒を飲み続けるのだ……。

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注目は写真一番右の「お水」です。笹一は酒造りに使う水が美味しいという特徴があります。てっきり大月周辺の山々や富士外輪の山から染み出た水と思っていたら、富士山からの地下水らしい。甲州街道の最難関笹子峠の宿場町、現在では辺鄙なところにある笹一ですが、その理由は富士山の地下の不透水層の間で何十年も歳月をかけて濾過されて澄み切った水にあるんだって。

日本最高の銘水という笹一のお水。江戸時代は水飛脚の足で江戸城でお茶会をする際に運ばれたり、明治天皇の京都行幸に携行する御前水となった由緒正しい仕込み水という歴史があるそう。笹一を出るころには酔いでぽかぽかしてましたが、カチカチに冷えた水を飲むと背筋が伸びますね……、おかげで帰りの電車は寝ないで済みました。

登山の終わりに歩く日暮れの駅

日曜日のクリスマスイブの夕方の駅は少し寂しい雰囲気。年末に向かう乾いた空気と眩しい黄金色の光で笹子雁ヶ腹摺山&笹一の休日登山は終わるのでした……。

笹一のお酒

はい、というわけで笹一のお酒感想コーナーです。ちょうど実家や親戚から色々と送られてくる時期でもあり、酒にはぴったりのズワイガニ。カニの甲羅に身を詰める食べ方は北陸っぽい……、これはまぁ日本酒に合わないわけがない。

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まずは槽(ふね)ですが、デイリー日本酒といった感じでクセがなくすっきりして飲みやすいお酒でした。前述のとおり笹一の水の良さに納得。口に含むとカッと熱が来ますが、飲んだあとに抜ける香は爽やかで嫌味がない。黒子系で料理のお供に好きだなーと思いました。

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次は笹一(生原酒)ですが、微発泡なような舌触りに菌が生きてる感じがしますね。甘酒のような芳醇な風味、角があって味がわかりやすくて好き、これぞ生原酒といった感じ。日本酒は農作物ですというくらいコメの甘みを感じる。
新酒のシーズンが楽しくなるお酒です、搾りたて生原酒でもスッキリ、果物みたいなあまーい味わいがあるがクセが少ない。ご飯のお供よりもおつまみと一緒にお酒の味を楽しむ感じで飲むのが僕は好きです、カニとの組み合わせは最高ッ!!

秀麗富岳から見る富士山

冬に歩く笹子雁ヶ腹摺山は笹一と組み合わせればよい一日になる。
秀麗富嶽の山々のお勧めの時期は圧倒的に紅葉なのでしょうけど、酒蔵がある山は冬でも楽しかった……!下山してからも楽しみがあるというのは一日全体で見ると十分に満足が出来ます。笹子駅から登り一辺倒で山頂に到着したときは不安でしたが、お坊山の伝説や笹一の日本酒がそれらを帳消しにしてくれました。
稜線から見える富士山も美しいけど、甲府方面の青空も見ていて気持ちよくなりました。年末へと向かう少し寂しい12月末、冬枯れの山を歩き、熱々のご飯と日本酒で身体を整える……良い一日になること間違いなしです。
人生最高の山は続く。

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