2021年12月19日、埼玉県は奥武蔵エリアにある越上山を歩いてきました。
標高566mの低山ですが、冬から春にかけて気持ち良い里山歩きを楽しむことが出来る場所です。
東西あらゆる場所からアクセスすることが可能できるこのエリアには「歩いて楽しい低山」がたくさん用意されています。
越上山は様々なルートからアクセスすることが出来ますが、今回は奥武蔵の桃源郷「ユガテ」と源義経が何度も振り返ったという「顔振峠」を経由するコースを辿って歩きます。
さらに下山後は名勝「黒山三滝」を観光し、そこでは「真冬だというのに滝行に挑む行者さん」を目撃することとなります。地域の桃源郷を巡る里山巡りだと思っていたら、歴史深い信仰の史跡を巡ることもできてしまった。
埼玉の冬の一日、里山と史跡を巡るハイキングの始まりです。
滝行修行者マジですごかったぁ~!
越上山ハイキングの概要
奥武蔵の山上集落ユガテを目指す
2021年12月19日午前6時35分、秋津駅。
関東の12月は乾燥し切った空気で底冷えしまくり、寒い寒い……おはようございますRedsugarです。
北海道で育った僕でも関東の朝の空気は寒いのです、特に家の中はひどく寒いので朝起きるのも大変だ。
何とか布団から抜け出して準備を済ませ、自転車で駅までやってきてようやくスタート地点に立つことが出来ました。
埼玉の奥武蔵に行くということで西武秩父線に乗り換えます。
早朝の西武秩父線ですが、奥武蔵エリアへ向かう登山客が沢山乗っています。冬ということで日の出も遅く、朝の7時付近になりようやく車内に光が差し込んでくるようになりました。
朝日が差し込む電車の中ってのは……エモい。
一度飯能駅で乗り換えを挟むのですが、朝日が差し込む飯能駅のホームがこれまた何とも言えない景色。
重ねて言うけどエモいな!!!
午前7時35分、東吾野駅。
飯能駅で電車を乗り換え、ゆらゆらと揺られるうちに本日の出発地点である東吾野へ到着しました。
飯能から芦ヶ久保までは各駅何らかの登山口があるのがこの奥武蔵エリア。
駅を降りたらさっそく「ユガテ」と「顔振峠」を目指すことになります。
春の時期は北向地蔵から鎌北湖を目指すのがよいみたい、鎌北湖の桜が奇麗なので、東吾野スタートでユガテ鎌北湖から日和田山と巾着田へ向かって高麗から帰るっていうのがよさそうよ。
東吾野を出発して吾那神社へまずは向かいます。
吾那神社は結構歴史があるらしく、調べてみるとこの付近が西川材という材木で繁栄した場所などがわかります。
入間川・高麗川・越辺川の流域は西川林業地といい。江戸時代からこの地方の木材を筏で江戸へ流送していたので、「江戸の西の方の川から来る材」ということで西川材……ってまんまじゃないか。
つまりこの辺の杉林って江戸時代からずーっと植林地として使われ続けた場所なのかー。鼻水出てきそう……。
神社を越えるとさっそく杉林が始まる、この辺の杉でさ~江戸の大火とかでなくなった家をさ~再建してたんだってぇ~。
12月だというのに野イチゴ……的な何かが実っている。調べたらフユイチゴという品種らしい、味のところ「美味しい」って書いてあるけど本当か??本当に美味いのか??
キイチゴの品種の中では「かなり甘い」らしい。
橋本山見晴台など名所っぽい展望地などが途中現れますが、基本見える景色は奥武蔵の低山です。
1,000m以下の里山が連なる奥武蔵エリア、地図で見てみると意外にも広大な地域なんだな。
木漏れ日が差し込む明るい杉林を進みます。地面はからっからに乾燥しているので、小石がコロコロしていてちょっと滑る。
きのこ園……、キノコ嫌いの自分にとってはかなり行きたくない場所だ。
西川材の話をしましたが、山中には「西川」と書かれた作業場がちゃんと現れます。
薪みたいなものと一緒に、なんかの細工品の原材料を置いてあるような場所だった。
そして、その周辺には発砲注意の張り紙、猟が出来るような動物がいるっていうこと?
西川材のほったて小屋から少し進むと民家へと向かうための未舗装路へ出ます。
頭上に送電線が走っているこのエリアは「山里」っていう感じが漂ういい場所でした。
時代が数十年くらいここだけ遅れてる感じがする。
午前8時45分、ユガテ。
しばらくすると山の中にいきなり集落が現れます、舗装路なんてどこにも見当たらなかったけど……。
長閑な山村集落のど真ん中には大きな枝垂桜が立っています、これ春になると奇麗に咲くんだとさ。
春の時期のユガテは本当に奇麗だという、春の時期にここは計画したい。
季節外れのこいのぼりがべローンと力なくぶら下がっている、その奥には確かに家が……ある。
こんなところでどうやって生活してるんだろう?
あいにく本日は12月19日という冬真っ盛りなのでもちろん花はない。
ということでユガテで休憩することもなく、素通りの形になってしまった、次なる目的地であるエビガ坂を越えて一本杉峠へと向かう。
雰囲気としては青梅丘陵の途中に出てくる粟平集落に雰囲気は似ている。
奥武蔵の森を抜けて顔振峠へ
ユガテを越えたら越上山を目指します、ここから先の道の困ったところなんですが「分岐がわかりにくい」という部分が現れます。なのでGPS系のアプリがあると間違いないかな。僕はこの日は地図だったのですが、林道合流地点で少し道を間違えてしまいました。
奥武蔵の里山っていう風景の中を進みますが、時折伐採され見通しが良い尾根道が現れます。
尾根からは鉄塔が見えるんですが、家族鉄塔とでもいうのか4本の鉄塔がリズム感良くまとまってこちらを見ています。
与太話なんですけど、ああいう鉄塔を建設する仕事は人里離れた山の中に入るじゃないですか、北海道にいたころ親戚がそういった仕事をしていたんですけど、山菜発生地点にめちゃくちゃ詳しかったんですよね……。
鉄塔整備系の仕事や窓拭きもアウトドア系の人が多いとも聞く。
日差しが強くなり杉林の入り口は強い影が現れます。冬っていうのは大気が澄んでいるので影の形が明瞭に表れると写真の勉強をする中で知りましたが、確かに夏の写真と比較すると冬の影は濃いしシルエットがパッキリしているものが多い。
杉林を歩き続けると一本杉峠の案内板が……、はい、こちらは間違えです。
越上山に行くのであれば一本杉峠方面(鼻曲山)方面は来ないのです、ただまぁ……この杉は立派なので見ていってもいいかなとは思う。
ここで道を間違えてちょっと焦ったわー。
昭和時代の空き缶が丁寧に並べられている、よく見たらこの看板はペプシの!?
不法投棄なのか、それともここに最初からあったのか……。こんな山の中にペプシの看板を設置する理由がわからないので、たぶん不法投棄なんだと思うけど。
山の中の意味が分からない遺構って想像を掻き立てられる。
午前9時55分、一本杉峠。
杉ってこんなに立派に育つんだなと、巨木を見せられるたびに思います。そして人の手が入らなければお化けみたいに育つということも。栃木の日光で見るような杉の巨木ではなく、この一本杉峠の巨木はまさに自由といった感じでした。
さて、一本杉峠から林道まで戻って正規のルートへと急いで合流して越上山へ向かいます。
奥武蔵は道が入り組んでいてわかりにくいよな……。
正規ルートを歩いていればこの分岐にたどり着くはず。
午前10時50分、越上山山頂。
道中がとにかくわかりにくかったが、正規ルートに合流してからほどなくして越上山山頂へ。
山頂の展望は全くございません、本日のピークですが展望は顔振峠側になります。
越上山周辺には一部展望が開けた場所もあって、遠く筑波山を眺めることが出来ます。
越上山の正規ルートは「金毘羅大権現」っていう社側にあります、奥武蔵グリーンラインの三叉路を西に進むと正規ルート。
これが金毘羅大権現の鳥居、この特徴的な鳥居が現れたら道があっているということ。
あとは平たんな道で歩きやすい杉林の回廊を諏訪神社へ向かって進みます。
越上山周辺の道というか、あの奥武蔵グリーンラインの三叉路の分岐だけ少しわかりにくいよな。
午前11時00分、諏訪神社。
登山道を進み続けると開けたところに諏訪神社が見えてきます、一帯が開けた感じになっているので間違えることはないかなと。で、登山道は神社を横切って奥へと進む感じです。
諏訪神社には顔振峠への案内板と……ミニオンズがいた。
陽光降り注ぐ冬の杉林歩きはひんやりとしていて気持ちがいい。関東は冬でも晴れた日の日中は暖かいので吹き抜ける風がちょうどいい涼しさを提供してくれる。まだ杉の花粉も出ていない12月は低山ハイキングを楽しむには最高の季節。
顔振峠まではトレイルランナー歓喜レベルの美しい道が続く、ここは歩いていて「めちゃくちゃ気持ちがいい」道でした。
午前11時20分、顔振峠。
越上山から顔振峠へやってきました、バイカーやチャリダー向けの観光地という側面もあるのか、そういった方々がたくさん休憩している場所。この先は下山になるので、ここで昼食を楽しむのがおすすめです。
顔振峠、由来は源義経が「奥州平泉へと落ち延びる際に何度も景色を見た」という伝説から。
景色の良さに振り返ったという話ですが、鎌倉への未練というかそういうのもあったんじゃないのかなぁ……、と歴史に想像を膨らませるのは楽しい。
奥武蔵は人と山が結びついたような穏やかな景観が続く。これは魅力の一つ。
顔振峠にある平九郎茶屋に入り軽食をいただくことにしました。アルコールはまだ飲めないから「秩父サイダー」と「つくね」をいただきました。登山中に食べる軽食ってなんでこんなにおいしいんでしょう?
平九郎茶屋の由来は、渋沢平九郎に由来します。大河ドラマでも死に様がちゃんと扱われてた人物。幕府側として飯能戦争で討ち死にしてしまいます。その場所が顔振峠から黒山三滝へと下った側にあるのです。
黒山三滝で真冬の滝行を見る
平九郎茶屋を後にして黒山三滝へ向かいます。山の北側斜面を歩いて降りていくのですが、一気に裏通り感あふれてきた。
静かな、コケとシダに覆われた杉林を降りていくとすぐに集落へ出ることになります。
集落に出てしばらく歩くと平九郎自決の地と書かれた碑が現れます。大河ドラマ「青天を衝け」の前半放映時にはこの辺盛り上がったんじゃないかな……。
午後12時35分、黒山三滝。
黒山バス停に到着したら、そのまま目の前にある黒山三滝へ向かいます。入口の看板を越えて少し歩くけど、ここは行っといて損がない場所です、というか今日のメインといえるくらい良いものが見れる。
お土産屋さんでは甘酒をいただいたりできます。暖かく甘ーい甘酒が身に染みる……!
室町時代に切り開かれた修験の地、山岳信仰の地としていまだに滝行が行われているんだとか。
お堂の中には蠟燭が煌々ときらめいています。薫香があたりに立ち込め、登山後にこんなところを観光することが出来るとは……という気持ちでいっぱい。
こちらが黒山三滝の三つの滝の中の一つ「男滝」です。観光写真の中にもこちらで滝行をする方々の写真が出てくることがありますが、まさかこの日ここで滝行をする人が現れるとは思わなかった。
この滝を撮影していたら、後ろのお堂からぞろぞろと人が出てきました。その中には修行僧のような和装の方が一人、とても気さくなその方は「これから滝に入るんです」と照れ臭そうに話してくれました。
そして、彼はそのままお経を唱えながら滝つぼへ……。
そこからはもう圧巻でした、少しずつ体を水に鳴らすように進んでいた彼は一気に滝へと入り手を合わせて一心不乱に経を唱えています。あまりのことに唖然としてみていたのですが、撮ってくれと言わんばかりにこちらを向くように身体をずらしていただけたので慌てて撮影。
きれいに撮影できたことを確認した瞬間「ありがとうございました!」と声を上げてしまいました。
すごいものを見た一日だった……。
男滝を見た後は岩の奥底にある天狗滝を見てみます、この辺先ほどまで歩いていた越上山とかそういった山々から湧き出た水なんですよね。標高低いながら、奥武蔵には岩と水が生み出した景色が結構見られるのです。
帰ろうと思ったら川岸にアオサギ??とみられる鳥がジーーーーーっとしていてびっくり、こんなこともあるんやね。
あまりにもおいしそうだったイワナの塩焼き、黒山三滝を観光したら絶対食べようと思っていたので帰り道にいただくことにしました。これ絶品だから絶対食べてほしい!ユガテ→越上山→顔振峠と歩いて、その後食べるこのイワナ最高だから!
日陰で寒いんですけどね、12月だし。でもこの炎があったけーのよ……。
イワナ食べながら炎に最高に癒されました。
午後1時20分、黒山三滝バス停。
1時間ほどの滞在でここまで楽しめるとは思っていなかった黒山三滝。
バス停に戻り、この日の最後の目的地である「風呂」へ向かいます。
午後1時50分、ニューサンピア埼玉おごせ。
バスに揺られて15分ほどでニューサンピア埼玉おごせに到着します。ここは風呂と食事がセットで楽しめる施設。
今回のルートは中々風呂に入るのが難しい奥武蔵エリアでは貴重な「山&観光&風呂&飯」とすべてがそろった自慢のコースなのです。
汗を流したらすかさずもつ煮定食を頼む、出てくるのは普通のもつ煮定食だがそこにビールを組み合わせると……。
下山後に楽しむ最高の定食が完成する。
「母ちゃんのおすすめ定食」という越生の名物的な食もある。だがこのRedsugarはどうしても、どうしても!
もつ煮とビールという組み合わせを楽しみたかったのだ!!
越生といえば日本酒「越生梅林」だが、それはこの後越生駅周辺で購入するつもり、ここは琥珀色のビール一択である。
見よ、この透き通った美しい輝きを放つビールを……おいしそうだ。
アツアツのもつ煮がこれまたうまい、一口頬張ればすぐにコメが欲しくなる。
もつ煮→ごはん→ビールの3コンボを繰り返すうちにあっという間に食器の中は空っぽになってしまう。
思い出してもよだれが出そう、地元感……!この圧倒的地元感の程よさがいい。すべてが程よい埼玉県の良さがこんなところにも染み出ているなんて!!
登山と観光を楽しみつくし、汗を流しアルコールも楽しんで……もう何も言うことはない。パーフェクトハーモニーを完成させた僕はバスに乗り、越生駅へとゆらゆら揺られていくのでした。
越生駅についてみると駅前には太田道灌像が立てられている。
文武両道の名の通り武将としても学者としても一流と評判。
越生駅に到着したら駅前のお土産屋さんですかさず「ゆずこしょう」と「クラフトチューハイ」と日本酒の「越生梅林」を購入しました。埼玉にいると越生梅林は割とどこでも手に入るけど、こういう登山の際に手に入れたお酒は思い出補正もあってなおの事おいしくなるのです。
お土産っていうのは思い出という情報がスパイスになっているのです。
電車に乗るころには日も傾き始め、車内はノスタルジー溢れる景色が広がっていました。人もまばらな越生駅からはしばらくがら空きの電車を楽しめましたとさ。
浦和へと帰るころには日も傾き、エモい景色を眺めながら今日一日の余韻に浸りながら家路へ。
東吾野からスタートした登山はユガテ、越上山、顔振峠、黒山三滝といくつものスポットを巡る充実登山となりました。この冬の奥武蔵観光登山はめちゃくちゃおすすめです!
さて、帰宅後にお土産として購入したお酒を味わってみました。
まずは越生うめから、梅酒ソーダに近いんだけど梅の味わいがとても濃い、アルコールを全く感じさせない口溶けは危険……!スパークリングワインのような、梅なんだけどそんな味わいと華やかさがある。
梅酒よりも爽やかなんですけども、若干の酸味があるけど炭酸がそれをかき消してくれるので飲み心地が良い。
これは買ってよかった……、プロシュートで頂いたけども白ワインのような感じで楽しむことができました!
そして次は「越生梅林」です、定番の日本酒ですね。
爽快かつ辛口、鱈鍋に合わせて柚子胡椒、ゆず七味唐辛子を合わせていただいたのですが……これも美味い。
というかご飯で飲んだのがちょっと後悔、晩酌としてアテと一緒に優雅な時間を過ごすのに飲みたかった。
水みたいな日本酒というよりはしっかりと味が残りつつ後味が爽やか、フルーティーな甘さよりもカラッとした味だなと思いました。
地酒買ってくると毎週幸せになれてしまうなぁ……。
本当に辛口で飲んだあとにカッという熱い喉越しを感じる、美味い。
そして、もう一つのお土産である「ゆずこしょう」これ絶品でした、味はかなり良い。
辛すぎずしびれがそんなに強くない、タラ鍋とかあっさりとしたタイプのお鍋に着ける調味料としては最適ですね。
スーッと香る柑橘の香りと舌触りのいい塩分のおかげでご飯が進みます、というかこれ本当に魚に合う調味料でした。
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