【大月】坪山、ヒカゲツツジを愛でる三ッ森北峰日帰り縦走

坪山のヒカゲツツジ

2024年4月20日、山梨県は上野原にあるヒカゲツツジの名所坪山から三ッ森北峰を経由して大月方面へ降りるという縦走を楽しんできました。坪山は標高約1,103mと高さはそこそこですが、道中は岩場が多く縦走路は崩落あり倒木多しと歩いていて中々不安になる道が続きます。
桜前線が関東を通り過ぎて行ったあとはツツジの季節がやってきますが、ヒカゲツツジという花があるということを坪山の情報とともに知りました。今までツツジと言えばアカヤシオ、ヤマツツジ、ミツバツツジ、シロヤシオ、レンゲツツジといった感じで追いかけてきたのですが、初めて名前を聞いたヒカゲツツジを見てみたいと思い坪山へ。

大月駅からほど近い百蔵山や扇山の北、奥多摩と上野原の中間地点にある権現山を筆頭とする山々には多くの登山道が築かれています。今回歩く坪山から鏡の山である三ツ森北峰までは不安になるような道を心行くまで楽しむことが出来る中々ハードな山行でした。

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ヒカゲツツジどころではない、久々にブルっちまう山歩きだったぜ……ッ!!

目次

坪山三ッ森北峰日帰り縦走登山の概要

■概要
上野原駅からバスでびりゅうの里へ向かい、そこから坪山の登山口へと向かいます。中央線の八王子から大月までは駅から登れる山も多く、多くの登山者に親しまれているエリアだと思いますが……不遇の山である権現山を筆頭として扇山の北にある山々はマイナーな場所であり続けています。
ヤマケイで調べていても「不遇の山である」と書かれていてびっくりするのですが、訪れてみれば納得してしまうほどアクセスが悪いです。上野原駅が最寄りだというのに長い事バスに揺られ、登山道は整備はされているものの標高に対して岩場が多く難易度が高いことが要因なのでしょう。
坪山までは比較的優しい道が続きますが、そこから先は作業道、登山道が入り乱れた複雑怪奇な地形が登山者を待ち受けています。さらに崩落した作業用林道、藪を越えてようやく下山となった道も数々の倒木と落葉で覆われ歩くのに難儀する道が続くため、初心者の入山は控えたほうがいいでしょう。
ヒカゲツツジの時期は坪山まではすごい数の登山者の方々がいらっしゃるので、びりゅうの里を起点とした坪山の周回は比較的安全じゃないかなと。

■アクセス
縦走となるため公共交通機関アクセスとなります。びりゅうの里を起点として周回するなら車もあり。
【電車】新宿→上野原:JR中央線or京王線を利用し高尾から上野原へ740円~
【バス】上野原→学校前:富士急バスで小菅の湯方面行で1,020円~
【バス】杉平入口→大月:富士急バスで大月行き820円~
【電車】大月→新宿:JR中央本線と京王線で1,000円~
合計運賃 3,580円~、アクセスは結構お高いです、さらに山も厳しいです……。

■コースタイム
学校前バス停9:10→坪山登山口9:45→坪山11:05→佐野西原分岐12:00→小寺山12:50→鋸尾根分岐13:30→杉平登山口14:45→杉平バス停15:00
合計登山時間 約6時間、濃密な時間だったので8時間くらい歩いた気分です。

ヒカゲツツジが咲く坪山を目指して

2024年4月20日午前8時00分、上野原駅前。
おはようございます、Redsugarでございます。
本日はヒカゲツツジが山中に咲き乱れると噂の上野原の奥地「坪山」を目指してやってきました、が!!駅を降りると凄い数の高校生と登山客です。駅前をのんびり歩こうものならバスに乗ることは不可能、というような人の数だったので、トイレも我慢してバス停に並びます。

redsugar心の声

バスは小菅方面に向かうものになりますが、坪山の人気をなめていた……。バスは立ち乗りも多く満車でした。

午前9時10分、学校前バス停。
上野原駅からバスに揺られること30分以上、坪山の起点となるびりゅうの里がある学校前バス停にやってきました。
バスに乗り続けていれば登山口前まで行けるのですが、登山情報の入手や郷歩きを楽しむならここからスタートがお勧め。

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しかし、このバス停にやってくるまで権現山登山と思われる人が各所で降りて行った……。

びりゅう館で登山情報と産直をチラ見した後は、びりゅうの里の周辺を散策しながら登山口へ向かいます。
この辺りは山奥で標高も高いため4月20日のタイミングで桜が満開です。登山口までは大体1.3kmほど、登山前の軽いウォーミングアップといったところでしょうか。

サクラやつつじが咲く桃源郷のような景色を彩る水車、こういうの良いなぁ……1時間くらい見てられるなぁ。

登山口までは片側1車線といった山道を歩いていくことになります。この車道がなかったころのことを考えると、東京と直線距離は近いながら、隔絶された山里だったのだろう……。

坪山登山口へ向かう道中、一宮神社という立派な神社が現れます。地図で見るとわかるのですが、びりゅうの里から少し北には三頭山の麓の斜面を切り開いてできた集落がいくつか存在しています。それらの集落のおかげか道祖神や庚申塔、神社が道沿いに多いなと感じました。

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随分と奇麗に人の手が入っている神社でした。

コンクリで固められた斜面にできた巨大な凹み

登山口に向かっていくと舗装がだんだんしっかりしてきて、周囲はコンクリで舗装された場所も多くなったり。
コンクリで固めたけどなんかすごい穴というかへこみが……。

登山者でごった返す登山口

午前9時45分、坪山登山口。
びりゅうの里から楽しく郷歩きを30分ほど楽しんで登山口に到着すると……、めちゃくちゃ人がいます。
山岳会か何かの集まりなのでしょうか?登山愛好家の壮年の方々がトイレ前で登山の準備をしていました。

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ヒカゲツツジはそんなに人気なの??

登山口脇の農家が使う軽トラ

登山口の周辺は地元の農家さんの畑でもあり、畑の脇を通らせていただく感じ。

杉が切り倒された斜面を登る道

進んでいくと大規模な杉の伐採地が現れます。この斜面を登った先が坪山のお花コースに繋がっている。

坪山西尾根花コースの案内板

ヒカゲツツジが咲いているのは坪山西尾根の花コースとなります、入口はちょっと藪い……。春を過ぎれば草が生い茂って歩きにくくなるだろうなと……。

トラロープがかけられた登山道

坪山ですが、スタートからトラロープが張られたトラバースが用意されていたり、全体的に岩っぽいなど結構いかつい道が続きます。初心者向けとは言えない、結構ハードな低山。

谷底を磨く清流

序盤は谷底から尾根に上がるので、谷底を流れるこうした渓流を拝むことができます。本当に一瞬だけども。

坪山を登る登山者たち

尾根に上がると全体的に道は細く両端が切れ落ちているような状況、ロープが張られている場所も多いです。

数少ないヒカゲツツジ

ヒカゲツツジはどこだろう?と思って探していたのですが、ありました。事前に調べていた限り今年は当たり年ではないが裏年でもないということでしたが、訪れたタイミングが少し遅くほとんどの花が落ちている状況でした。
残っている数少ないヒカゲツツジを眺めて歩くことに、とほほ……。

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クリーム色のヒカゲツツジですが、シロヤシオと違って本当に地味……、これは玄人向けなつつじに思える。

花をたわわに実らせた馬酔木

なんて玄人向けなつつじなんだと思って山を進むと馬酔木が現れました。こちらは花満開で、特有の香りを振りまいています……。漢字で書くとなんで馬が酔うの?と思う人もいるでしょう、馬酔木は葉に有毒成分を含む植物で、馬が食べると毒に当たってふらついてしまうといわれています。昔はこの有毒成分を利用して殺虫剤を作ったりしていたんだとか。

鬱蒼とした道が続く坪山

坪山の道中は奥多摩や中央線沿線の山々と同じような環境なんだけど全体的にきつい……。木の根ではなく転がっている石ころや岩肌の影響なんだろうなと思う。

山肌に咲くイワカガミ

標高を上げていくとイワカガミの花が現れました。春の高所や初夏の高山地帯で楽しむ花という認識ですが、坪山に来れば4月から愛でることができます。こちらもヒカゲツツジと同じく花の数が非常に少なく残念でしたが……。

花が残ったヒカゲツツジ

時折姿を見せる数少ないヒカゲツツジを追いかけながら山頂を目指します。残念ながら大量の花を携えたヒカゲツツジの株を見つけることは今回の登山ではできませんでした。

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ヒカゲツツジの魅力を僕はまだ知らない。

ロープが渡された荒れた道

山頂手前にやってくると本日の後半を予言するような、地面を覆いつくす落ち葉に覆われた登山道が現れます。倒木も多いしロープもあるし……なんか歩くの大変そうだぞ??

坪山山頂

午前11時5分、坪山。
残念ながらヒカゲツツジを心行くまで楽しんで坪山に!という訳にはいきませんでしたが、山頂に到着しました。事前のバスの乗客を思い出してもわかるように、山頂は人でごった返しておりまして……、山頂の様子を撮影するどころじゃないぞといった状況。山頂の標識を撮影してそそくさと三ッ森北峰を目指して山の奥地へと向かうことにしました。

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ここまでは人もたくさんいたし、道も歩きやすかったんだ……。まさかここから先がちょっとした魔境になるなんて。

坪山から山深い峰々を渡る

坪山から見た景色

坪山山頂からの景色ですが、春霞の影響でそこまで遠望は利きませんが周囲の山をよく見渡せます。
東側がよく開けているのだけど……、上野原って高尾からほど近い印象があるのにすごい山の中に思える。

山頂のミツバツツジ

山頂にはアカヤシオ、ミツバツツジが咲いていました。ヒカゲツツジの株は見つけられず。
ミツバツツジはいつも安定して咲いていてくれますね。

午後12時00分、佐野西原分岐。
坪山山頂から西に向かって進みますが、疲労感が凄いたまるアップダウンを繰り返します。道の状態が坪山から先は一気に悪くなる印象がありました。鶴寝山方面へ縦走することもできるため、そちらから歩いてきた登山者の方が1名居ただけで他に登山者は無い。佐野峠方面へ進みますが、看板は朽ち果てて転がっている有様です。

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ここで佐野峠方面の標識に従い登山道を降りると林道わきの崩落地点へと導かれます、かなり足場が悪く歩くのが危険な道が続きました……。

進むと大昔に作られたであろう林道に出るのですが、崩落が激しく歩いていて安心できません。
崩れ去った地面からは木製の足場というか、骨組みが露出しています。

上野原の山奥の林道を進む登山者

不安になるような林道をひたすら進み続け、林道のわきから小寺山への入り口へ入るのですがこれがまたわかりにくい。地図だけではかなり厳しいと思うのでGPSを利用するのをお勧めします。ひどい道でぐったりとしていたこともあり、ここで後ろから来た登山客の方に先行してもらうことにしました。

登山道わきのカタクリ

唯一良かった点は道中にカタクリが咲いていることでしょうか、気がまぎれました。

林道からは小寺山へ向かって尾根に上がるのですが、尾根筋にも森林軌道でも入っていたかのような大きな道の跡が残っていて、登山道というにはかなり横幅が広い道を進みます。道が広いから安心というわけではなく、足元は落葉に覆われていて踏み跡が見づらい……。ボケーっとしてると簡単に道を見失いそうです。

小寺山山頂

午後12時50分、小寺山。
坪山から2時間ほどで小寺山に到着しましたが、空は曇ってきたし足元は落葉がかなり降り積もり不安定で気疲れが半端ありません。坪山から先はかなり厳しい道が続くな……というのが正直なところ。
小寺山もマイナー山ということで簡素な看板が掛けられているだけでした。

小寺山の先には大寺山があるのですが、そちらも似たような落葉に覆われたピークでしたのでそのまま先を急ぎます。三ッ森北峰に向かって尾根を歩きますが、細く岩に覆われた尾根は落葉に覆われていて足元が信用ならない。そして、この辺りから倒木の数がかなり多くなってきます。

倒木と落葉に覆われた鋸尾根の必死下山

鋸尾根分岐

午後1時30分、鋸尾根分岐。
大寺山を越えて杉平バス停へと続く鋸尾根の分岐点へ来ました。この看板のある場所から少し登れば三ッ森北峰ということなのですが、ここまでの崩落や足元が不安定な登山道で気持ちが結構萎んでいたこともあり、下山を選択。

山中に咲くツツジ

鮮やかな紫色を見せてくれるツツジが「まぁこういう日もあるよね」と元気づけてくれるようでした。上野原の奥山の予想外の路には本当に驚かされました。

落葉で足元が見えなくなった恐ろしい道

ツツジの花を愛でて気持ちを奮い立たせた直後待っていたのは、これまで以上に荒れた登山道でした。ブログで書くと中々辛い道なのですが、実際歩いている際は、目の前の現実に精神のすべてをかけて集中するため独特の高揚感に包まれています。

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山を歩いていると頭に湧き上がる存在しない未来に対しての不安、そういったものは目の前の今ここに集中することで消えていく、仏教みたいな「今ここ」に集中できるから登山は良いよね、芥川賞のバリ山行でもそういう話が書かれていて感激した覚えがある。が、この落葉の路はちょっときつかったな。

白黒のカメムシ

足元に集中していたら珍しい模様のカメムシを発見。調べたら笑顔を背中に持つカメムシということでよく見てみると……確かにめっちゃ口開けて笑ってるように見える。これはアカスジキンカメムシといいまして、落葉広葉樹の森に棲んでいるそうです。

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これは終齢幼虫という形態らしく、成虫は歩く宝石と言われるくらい綺麗なんだとか。キンカメムシの仲間は臭くない代わりに派手な色をしているとのことで、調べると確かに美しい色の虫が出てきました。

杉平バス停へ

落葉は深くハイカットの登山靴が埋まって靴の中に細かいゴミが入って不快な気持ちになります。鋸尾根は一切の手を抜くことなく、落葉でふかふかな道が続くッ!

標高を下げる中でさらにダメ押しにもう一つという感じで……次々と倒木が現れます。これが見事に登山道をふさいでまして、跨ぐのも大変な倒木を何回も越えて麓を目指します。

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場所によっては登山道が完全に見えない、足元も見えない。そこに倒木が倒れているので「これ道か??」となってもしょうがない。ここは慣れてない人は危ないと思う。

落葉で足が埋まる

落葉の中にズブズブと埋まらないように、斜面の中で少しだけ平たんな場所が続く部分(それが道)を探して降りる作業が続きます。

標高を下げ杉や常緑樹が生い茂る場所までくれば道は明瞭になりますが、倒木は一向に減らず……。道も結構あれていて実に不安になります。

杉平入口へ下山

午後2時45分、杉平登山口。
最後まで倒木が続き気が抜けない森を抜け、農家の裏手に降り立った時の安堵感はすごいものがありました。今ここに集中し続けることで得ていた高揚感がスッと途切れ、身体が少しだけ気だるくなってしまいました。

上野原の恐ろしい山々を見返す

山々を振り返れば萌黄色の新緑が中腹を覆い春を感じさせる景色です。あの中マジで落葉と倒木ヤバかったんだよなぁ……と、振り返るとそれはそれで楽しかったと思えるから不思議です。

葛野川にかかる橋

鋸尾根の登山口から杉平のバス停までは車道歩きとなります。橋を越えればバス停はもうすぐ。

葛野川の清流

橋の下を流れるのは葛野川という川になります。大マテイ山など牛の寝通りの山々と長峰の山々に源流を持ち、松姫湖とふかしろ湖の二つのダム湖を上流に持つ川です。

午後3時00分、杉平バス停着大月へ。
バスが来たのは3時10分頃、大月に到着したのは3時50分頃となりました。登山時間としては約6時間ほどでしたが、坪山から先が非常に濃密だったおかげで、すごい一日を長く感じることが出来ました……ありがたいことだね。
大月に到着するとさすがに空腹だったこともあり、以前から大月下山でやってみたい街中華デビューをしてみたいと思います。

というわけでやってきたのは大月駅前の街中華「正華」さんです。THE街中華といった感じのお店ですが、30代になってわかるこの魅力……!ビールとハイボールを飲みながらレバニラ、中華そば、もつ煮!!と酒&つまみ代わりのご飯、これが良いのよ本当に。

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特にレバニラ、これ最高においしいよ。大月下山後に街中華で酒を飲むは超アリだよ、孤独のグルメみたいな感じで楽しいんですもの。

街中華の後は帰るだけですが、駅前のお土産屋さんで大月エリア名物「激辛唐辛子ラー油」を購入。さらに駅の中に笹一のお酒が売っているのですが、今回は青ラベルを購入。私は笹一のお酒が好きということもあり、大変おいしくいただきました……。使っているお水の良さを喉で感じるいいお酒です、大月エリアを歩いた時は是非買ってみてください。

わずかに咲いたヒカゲツツジ

坪山を登るときはヒカゲツツジの当たり年に。そして坪山から先へ行くなら万全の準備をしよう。
久々に心が辛い登山でした……、花を外した後に歩いた道が結構きついということでダブルパンチの影響が大きかったのでしょう。ただ思い返せば崩落した林道を歩いているときの緊張感、落葉と倒木に覆われた道を「どうすっかな」と考えているあの瞬間が楽しくも思えるから不思議です。
下山してきてからしばらくは普段の生活の不安なんてどこかに消え去り、別に失敗したって死ぬわけじゃあるまいしと思えるのは山中で目の前に現れる色々な景色や体験のおかげともいえるのでしょう。
さて、坪山は大変面白い山でしたが皆さんが訪れるときはヒカゲツツジが当たり年を狙ってみてください。
そしてコースはびりゅうの里を起点に周回コースを辿るのがよいでしょう、縦走はお勧めしな~~い!!

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