2022年12月29日、師走だというのに登山客でにぎわう丹沢の観光スポット大山を歩いてきました。標高は1,252mで丹沢では優しさに溢れた山です。ケーブルカーを利用して中腹の阿夫利神社に参拝をする方々で賑わう12月末。朝早く訪れてみれば、「登り収めは海の見える山」といった登山客の方々が大勢いました。
関東在住の登山者にとって丹沢大山は登りやすい、アクセスしやすい、下山後の楽しみも多いという3拍子が揃った「おすすめハイキングスポット」かなとRedsugarは思います。2000年以上の歴史を持つ阿夫利神社、大山講や大山詣りといった歴史もある古くから親しまれた丹沢の名峰です。
現代の登山対象としてはケーブルカー含めてコースが開拓されたこともあり、ピストンでさらっと歩いてしまって記憶に残ってない、なんてこともあるのではないでしょうか?
ですが今回のコースは観光地を抜けて山頂にたどり着いた後は老舗の温泉旅館へ下山。温泉を含めて強烈に記憶に残る登山を堪能できる道程になっています。大山を120%楽しみつくすために男坂を登り、広沢寺温泉へ降る登山&温泉の一日をお楽しみください。
下山後は昭和初期の風情が残る名湯「玉翠楼」で極上露天風呂を味わい、味噌田楽と缶ビールで至福のひと時を味わいます。
丹沢大山温泉日帰り登山の概要
男坂を駆けあがる師走の登山者たち
2022年12月29日午前8時10分、伊勢原駅。
おはようございます、Redsugarです。12月29日という師走の中の師走ですが登山にやってきました。ピリリッとした空気が肌に触ると「あぁ、冬だ生きてるぅ」という気分になりますね、十勝で育った身としては寒ければ寒いほど好き。
関東の冬は乾燥して底冷えする感じで、登山の日の早朝は澄んだ空気と都市に浮かび上がる太陽がノスタルジーを呼び覚ましてくれて、それもまたいいんだよなぁと。
さて、浦和を出発してもやはり新宿から小田急線で伊勢原です。丹沢方面はやっぱり小田急、朝の小田急線ってなんかすげぇ気持ちがいいんだよなぁ。
伊勢原で下車後、登山客で満員になったバスに乗車し大山ケーブルへ向かいます。
午前9時00分、ケーブル駅バス停。
バスに揺られて本日のスタート地点である大山ケーブルのバス停に到着。関東って暖かいから12月末だとまだ紅葉が残っているんですよね、房総南部や三浦半島は紅葉の時期がながーーーい。
それはそうと師走だというのに登山客はすごい多い、登り納め、今年の垢は今年のうちにみたいな感じかしら。
冬の登山ってRedsugar的には雪山と里山っていう二つのジャンルがあるなーと思っているんですが、僕が好きなのは里山です。懐かしさを感じさせる世界の入り口っていうか、自分が知らない「時間」を感じさせてくれるのが好きなのです。
民家の軒先に置かれたミカンを購入して、ザックに入れて山頂で食べたり。新鮮野菜を家で食べて山を想ったり、登山というレジャーに含まれる「田舎旅感」が好きなんですよね~。
軒先ミカンはめちゃくちゃ冷えてて美味しい、冬場に見かけたら絶対にゲットしてほしい。
ケーブルカーの駅へと続くお土産売り場を抜けて大山登山道を目指します。このお土産屋さん朝早くからやっててすごいよなぁ……。
午前7時近くなってようやくご来光となるような12月末、午前9時台の横に寝た光が切り株や枯れ木を風景の主役に引き立てていました。
お土産屋さんには七福神、フクロウ、達磨と木彫りの民芸品が所狭しと……もちろん修学旅行の名物「木刀」もあります。
あの木刀って誰が買うんだ……、買っているやつを見たことがない。
今回は男坂を歩いて山頂を目指します。山頂からは右上の広沢寺温泉方面目指して地図の右側へ、右側へと下山していきますよ。
午前9時20分、女坂分岐。
ケーブルカー乗り場を過ぎるとすぐに登山道スタート。ちなみに女坂と男坂ですが……Redsugar的なおすすめは女坂です。男坂は登っている感が確かに強いんだけど、景色を楽しもうとか風光明媚みたいな感じが薄い、カメラ片手に歩くなら女坂。
女坂のほうがいいよと言っておいてあれなんだが……Redsugarは男坂をチョイスしました。
この階段の前に来ると選んじまうんだよなぁ、男坂。歴史を刻んだ急な石段を汗水たらして歩きたくなってしまったので男道、じゃなくて男坂を登ります。
男坂を登り始めて早々「あ、よかったかも」と思えるスポットが現れました。ケーブルカーを真下に見るポイントがあるのですが、ここは良い撮影スポットで大変エモい。新緑の季節とかに撮影しに来てもいいかも~と思える場所でした。
以降は杉と雑木林の急な石段をひたすら歩く、秋の名残が木漏れ日に揺れるのを眺めながら無心で歩く。
中腹にある阿夫利神社の境内ともいえる登山道は大変よく整備されており、杉の木も林業的な厭らしさがない。
不揃いながら端正に積み上げられた石造りの階段、急なそれを歩く中でちょうど顔をあげるような場所で特徴的な木が登山者を見下ろしていたりします。
長い歴史を持つ大山ですが、その登山道は不思議な魅力があるのは間違いなく。関東の1,000mくらいの山によくあるような「単調さ」が薄く、楽しく歩けてしまう。
午前10時00分、阿夫利神社。
男坂を登り始めて一時間もしないうちに中腹にある阿夫利神社へ到着、一気に現代へ引き戻された感覚が面白い。
境内には多くの建物がひしめき、参道はこれでもかというくらい立派な石が敷き詰められています。
参拝客と登山客がごちゃ混ぜになったその場所は高尾山や御岳山みたいです。
朝早くから営業中の出店ではまだ10時だというのに日本酒片手に語らうおじさんたち、1年を振り返って世間話に花を咲かせています。なんだかそれを見ていると無性に腹が減ってきたので「もつ煮」を注文して朝の至福のひと時を過ごしてみました。
年末の29日、午前10時の阿夫利神社で食べるもつ煮。暖かいお茶をすすりもつ煮の塩気を楽しむ、五臓六腑に染み渡るで……。
大山境内は茅の輪などがあって年末年始は大賑わいなんだろうなという雰囲気に満ち溢れています。初詣に阿夫利神社とかは良いだろうなぁ、地元に大きな神社があるというのは幸せなことのように思う。ハレの場として魅力を感じちゃう。
もくもくと燃える護摩木から湧き上がる煙と香りに、身体が「名のある神社へとやってきたのだ」という反応を示してしまった。
大山名水と師走の山頂
どんな人が奉納してるのかなぁと思って境内を眺めながら歩いていると川越と書かれた大きな樽を発見、遠く武州は埼玉からも奉納されてるんですねぇ…武蔵って書くとかっこいいな。
阿夫利神社の下社から地下に入ると大山名水という湧き水を見ることが出来ます。これは大山に来るなら絶対見ておいたほうがいい場所、神妙な空気が漂う場所で背筋がピシッとします。
大山唯一の水源から引き入れている大山名水ですが飲用できます。大山登りの際はここで水を汲んでいく人もいるらしい。冬場に飲む大山名水は冷たくて美味しかったです、おすすめ!
阿夫利神社から山頂を目指して再出発、石段の道は姿を消しゴロゴロとした岩が転がる道を一直線に山頂へ向かいます。地元の小中学生がたくさん歩いていて、登山道中は賑やかなんだなぁ。
所々に昔の人が頑張って積み上げたであろう岩作りの石段、徐々に崩れているのか転がる石を避けながら上に向かう。
山肌をグワっとえぐったような形で作られた登山道には木道がしっかり整備されていて、昔も今も人が頑張って整備してんのよっていう雰囲気が伝わってくる。登山道というよりも参道っていう感じがするよね。
午前11時10分、富士見台。
丹沢の東側に位置する大山からはもちろん富士山がよく見えます。登山道に建てられた石柱をたどっていくと富士見台と呼ばれるスポットが現れますが、木々の間から富士山がよく見える場所になります。
木々のフレームがいい感じな富士見台、紅葉時期や新緑時期も風情がある富士山が見れそうです。冠雪した冬の富士山はかっこいいので、冬枯れした景色だとしても全然満足感があるのが良し。
関東の山は富士山が見えればそれでもう十分ですよ。
富士見台で富士山眺望を得た後は、冬枯れし黄土色に染まった登山道をひたすら歩いて山頂を目指すのみ。
山頂近くまでやってくると景色が一気に開け、山々の稜線の向こうに立派な冬の富士が浮かび上がります。冬はやっぱり空気が澄んでいて良いよね、富士山の奥には南アルプスまで見渡せました。
富士山を見ていると風が強いのか雲の形がひっきりなしに変わります。雲を見ていると冬場の富士山の爆風っぷりが想像できるぜ……。
冬場は風速30m/sを越えるからね、爆風よ。
午前11時35分、大山山頂。
山頂に到着すると人々の憩う声が、道中も賑やかでしたが山頂はもっと賑やか。
あたりを見回すと綺麗なお姉さんが石で文字を組んでいたり、思い思いの時間を過ごしていました。
大山の山頂は一休みするには良い所ですよぉ。ただ……僕は富士山の景色をすでに楽しんでいたから、早く広沢寺温泉の露天風呂を楽しみたい気分になってしまっていた。
あれ、靴の忘れ物か??
以前来た時も「靴の忘れ物がある?」と思って近づいたのを思い出しました、山頂にはよくできた石造りの靴と石碑があるんですけども、本当によくできています。本当に一瞬本物と見間違えるから!
広々とした山頂には大きな休憩所、大山登りを楽しんだ人々が景色を眺めながら少し早い昼食を楽しんでいます。バーナーの音、カップ麺の香り、アウトドアだなぁ……という空気に満ち溢れている。
山頂からは富士山も見えますが関東平野方面もいい景色、あの地平線の果て位に埼玉のわが家が……ある?
丹沢表尾根から塔ノ岳へと続く稜線の奥には富士山。その他、丹沢の山々を眺めて「あれ登ったなぁ」とか思い出しながら師走の大山山頂を練り歩きます。
東側から眺める丹沢の山々は中々に筋肉質な見た目をしています。モリモリとした山肌、確かにアレを登ると考えると塔ノ岳登山が意外に疲れる理由がわかるぜ……。
阿夫利神社奥社から富士山展望地点までぐるりと歩き回ったら本日の目的地「広沢寺温泉の玉翠楼」を目指して不動尻方面へと下山することにしましょう。木々のトンネルに作られた木道を辿って不動尻方面の分岐へGO。
広沢寺温泉の極上露天風呂を目指して歩く
午後12時5分、不動尻分岐。
山頂から少し下ったところにこの看板があります。大山七沢トレイルマップということですが、下山地点を見てみると七沢温泉と広沢寺温泉の二つがしっかりと記載。今回は登山道上にある玉翠楼を目指します。
不動尻方面の登山道ですが、こちらは男坂とは全く雰囲気が違い木造の階段や見晴らしのいい景色に恵まれた優しい登山道です。ピンテもたくさんあって、山登りっぽさはこちらのコースのほうがあるかなー。
道中で草原とすすきが気持ちよい開けた場所に出ました、ロープウェイかしら?と思ったけど大山にあるのはケーブルカー、よく見たら送電線でした。丹沢という樹木に覆われたイメージが強い山域で、山頂以外でこういった開けた場所があるのは結構珍しい。
この一帯は歩いていてとても気持ちが良い。
吹き抜ける風、いつしか空に湧きあがった雲が大山の尾根から浮かび上がる。
カラッと晴れた冬の午後、温泉に向けて気持ちのいい草原を歩く。1年頑張ったなぁと思いながら心の垢を洗うような登山、最高か。
流石の丹沢、道中の案内は抜群ですし崩落地点の整備もばっちりです。そんな中、年代物の保安林看板が昭和の雰囲気を醸し出しているのですが、それもまた風情があって良し。
不動尻に向けて一気に標高を落とすタイミングになってようやく表れました、杉の大植林地帯。昭和の負の遺産やーと思いながら歩く杉林はまだ休眠状態、これが2月になれば悪魔の黄色い粉を振りまくと考えると……、やっぱりミツマタシーズンに歩くのは辛そうだな。
道中足元に目をやると、登山客が積み上げたであろう小さな積み石の上に松ぼっくりが……、かわいい。
道しるべとして積みあがったケルンのような厳つさはなく、手芸のような素朴さを残した道中のそれに温かみを感じてしまった。
これを作った人は絶対かわいい、ぜーーーーーーったいかわいい!!
登山をしていると人の痕跡に安らぎを覚えることがあります、これまでの登山の経験からも、人は完全な自然の中に置かれると寂しかったり怖かったりするんだろうなと思う。こういうビニール紐やピンテがあったとき、そこを歩いたであろう人の姿を想像し、安らぎを覚えるんだなぁと。
不動尻への登山道は大山の女坂くらい歩きやすい……、小走りで走って降りることが出来る!!
午後1時30分、不動尻。
登山道を駆け降りてやってきたのは不動尻、一気に開けた場所に出たなぁーと思ったらミツマタの群生地でした。不動尻にも観光客が数人いて、ミツマタの開花状況を確認しているようでした。
ミツマタに近づいてみると……、12月は流石にまだつぼみ。株はたくさんあるので一斉に開花したら綺麗でしょうね。
不動尻から先は二ノ足林道を谷太郎川沿いに広沢寺温泉へ向かいます、この渓流が意外に心地よく見どころになっていました。
苔むした岩に渓流、不動尻だけかな?と思っていたけどこの川雰囲気が良い!
林道を進むとやってくるのが山神隧道、不動尻にやってくるときに一番つらいのはこの隧道じゃないでしょうか……?
正直滅茶苦茶怖い!!怖かった!!!一回途中まで進んだんですが、真っ暗なトンネルの中で上下の間隔がなくなってしまった。慌てて引き返してヘッドライトを装着して再度突入するくらい怖かった……。
山神隧道を抜けた後は杉林の林道を広沢寺温泉へ向けて歩くのみ。
林道を抜けた先に待っていたのは登山口で見たような農家さんの産直と広沢寺でした。登山口のミカンに追加で購入が決定、無農薬カボスは強い、皮をすりおろして大根おろしに混ぜたくなる!カボス果汁を入れた蕎麦汁を作りたい!ということで購入、美味しくいただきました。
広沢寺は広く見どころが多い所だなぁと思えます、不動尻のミツマタをターゲットにこの辺を重点的に楽しむのもいいんじゃないかなぁ?
午後2時20分、玉翠楼。
早朝に丹沢大山を目指し、山頂から恐怖の隧道を辿ってついに辿り着いた温泉……広沢寺温泉玉翠楼ですが年を締めくくるに相応しい素晴らしい温泉でした。昭和初期に作られたという宿に入り、中庭を抜けて温泉へ向かう雰囲気は良し、岩作りの露天風呂に身体を沈めると一年の疲れがにじみ出るようでした。
年末に入る温泉はなぜこんなにも情緒に溢れているのだろうか?1年の終わりだというのにこれまでの人生の走馬灯が頭をよぎり、そのあとこれからの不安が一瞬襲い来る、それも一瞬にして過ぎ去りお湯の暖かな感触だけが残る、火照る身体、ぬくもりに包まれた空気が鼻腔を通り過ぎる快楽……、年末の身体の大掃除や~~。(早口)
入浴後、バスが来るまでの時間にやることは一つ……風呂上がりのビールとおつまみを味わうこと。
玉翠楼は味噌田楽をはじめとして、風呂上がりの悦楽を提供する小鉢に恵まれた宿です、枝豆でもいい、飯でもいい、キンキンに冷えたビールとおつまみを味わう至福の時間を過ごしましょう。
12月の夕方は寒い、でも登山客にはさ……フリースやダウンとかポカポカするうえにアウトドアな気分を盛り上げるギアがあるじゃん?それを羽織ってさ、ししおどしと鯉に彩られた池を眺めながら食べる味噌田楽、それを流し込むスーパードライ……昭和のノスタルジーみたいなものをすげー感じられるのよ、タイムスリップしたような気分になるのよ!それだけでこの玉翠楼に来た甲斐があるってものよ!(超早口)
昭和へタイムスリップしたような気分、と言いましたが玉翠楼自体が昭和初期の洋館づくりとなっていて雰囲気抜群。現代の自分が見るとどちらかというと昭和というよりも大正時代のような雰囲気を感じてしまうモダンな空気があふれていました。
戸棚に集められた人形は古いものから今のものまで、驚くべきは机に並べられた昆虫標本……博物館にあるような丁寧なつくりのそれは職人の技を感じさせるようなものでした。時間の流れ、時代の違い、非日常の今を十二分に演出してくれるような素晴らしい宿、それが玉翠楼だったかなと。
午後3時45分、広沢寺温泉バス停から厚木へ。
温泉を出発して数分の所にあるバス停へ到着した後は厚木へ。温泉で食べたおつまみだけでは当然腹が減る、ということで厚木駅で見かけた焼肉屋に……入ってしまった。年末の大山登山は至極の露天風呂から一人焼肉で締める、これ以上ない満足感に溢れた登山となってしまいました。
焼肉でフィナーレを飾った後は埼玉へ、お土産をたんまりと購入してお家へと帰るのでした。
孤独のグルメもびっくりするぐらい、人間火力発電所になる勢いで焼き肉をしてしまった……。下山後の焼肉は至福の時間、焼き肉のうまみが数倍違う。
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