2017年9月24日、南アルプスは鳳凰三山へ行ってきました、標高は最高峰観音岳が2,841m、オベリクスクのある地蔵岳が2,764m、山荘のある薬師岳は2,780mとなっています。
南アルプスでは最も甲府側に位置する山で、その稜線の美しさから南アルプスデビュー等に最適の山として登山雑誌などで紹介されることの多い山です。
非常に人気の山であるため、あらゆるコースレポートが存在する鳳凰三山ですが稜線の美しさ、景色の良さがこの山の特徴であって、決してコースが優しい山ではないのです。
普段1泊2日で歩かれるであろう鳳凰三山を今回は日帰りで挑戦します、久々の合計登山時間10時間超えの日帰り登山の始まりです。
鳳凰三山日帰り周回登山について
標高差3,000mを越える健脚登山の始まり

2017年9月24日午前3時5分、談合坂サービスエリア。
9月は中央道を走ることが多く、談合坂でよく朝ごはんを食べた月でもありました。
写真を撮り忘れてけどもこの日ももちろんスタ丼を食べて登山を開始します。
やっぱり登山の日の朝はスタ丼だぜ。

午前5時45分、青木鉱泉駐車場。
青木鉱泉までの道はダートもありなかなかスリリングなドライブとなりました、ていうか南アルプスの林道はやっぱり怖い場所です。東北の山々もびっくりするようなコンディションの林道。
しかし何よりもキツイのは林道慣れしたベテラン登山者の運転するSUVが後から猛烈な勢いで追い上げてくる事だろう。

青木鉱泉ってこんな建物、日本家屋風の立派なお宿でした。
トイレをお借りしたんですけどもとても綺麗に掃除の行き届いた和式のトイレでした。
洋式トイレじゃないと嫌という方は注意しましょう。

駐車料金1,000円を支払い車に戻ったりなんだりして準備を整える……、青木鉱泉には自販機がありコーラがあるのは確認。
下山時の備は整っているということか。

午前5時45分、ドンドコ沢登山道より登山開始。
タフコースと聞くドンドコ沢、オベリスクから薬師岳まで鳳凰三山の核心部へ向かう登山の始まりです。


Q.南アルプスの登山口といえば?
A.標高が低い!
北アとかに比べると登山口の標高が低いことの多い南アルプス、このドンドコ沢の登山口もそこまで高いところではありません。その為樹林帯はまぁ濃ゆい……。青木鉱泉の標高は1,090m、地蔵岳の標高は2,764m。
つまり標高差1,600mほどをまずは登ることとなります、これは広河原→北岳に匹敵します。
累計の標高差で簡単に3,000mを超越する鳳凰三山戦、開戦である。


林業の方なのかな、出迎えの看板を作ってくれてました、ここは小武川っていうのか。



川の周辺は改良工事を行っているらしく、迂回路を利用して登っていかなくてはなりません。


登山道は最初はずーっとこの有様、深いというか……荒れてるって言ったほうが……。


水の山南アルプス、ドンドコ沢という名前の通り登山道のいたる所に沢が現れます。中継地点も軒並み滝、水と共に歩む山ですね。


南精進ヶ滝を目指します、指導標はしっかりしており、変に全ての滝を目指さない限りは普通に登れるかと。
場所によっては少し登山道から離れないといけない滝があるので注意。


午前7時5分、南精進ヶ滝到着。
ドンドコ沢コースで滝を見れる場所は軒並み主道から脇道へ逸れる感じです。
南精精進ヶ滝ですが一本滝が勢い良く吹き出しており、見た目はしっかりとしているものでした。



水がジャバジャバと流れる登山道を黙って登る。
スタートから結構時間が流れていますが、時の流れを微塵も感じさせない景色が続く。
それと、あんなに車が泊まっていたのに全然人がいない、どういうことなんだ。


道が荒れ気味なんでケルンが所々に積まれています、八ヶ岳とかに比べると全然歩きにくいです。


足首上まである登山靴なら余裕で渡れますが、踝までのシューズだとちょっと厳しいかも。あらゆる状況に対応するということを考えるとやっぱりハイカットの登山靴がいいよなーと思います。
最近トレイルランニング用のシューズで歩く方をよく見ます、足首が強くないと挫きそうで僕はできないなとおもってしまう。


午前7時30分、鳳凰の滝と地蔵岳方面の分岐。
この分岐で鳳凰の滝方面はおすすめしません。鳳凰の滝自体そんなにいいものではないし、道がわかりにくく滑落の危険もある場所です。
基本的に登山道中のスポットはすべて回収する事を心がけているので今回は歩いてみることに。


ヤブを抜けると滝直下に……鳳凰の滝は奥にあるのですが登っていく道が見当たらない、最近の悪天続きで道が全然わかりません。3分ほど考えた結果、危ないから戻ることにしました。


目まぐるしく木漏れ日の強さが変わる樹林帯を必死で登ります。歩いてみて思ったのですが、高原地図のコースタイムは少し優し目でつけているようです。普通に歩いていたら結構早く歩けました。


白糸の滝、よくある名前の滝です。こちらは展望台が登山道の中継地点にあるため絶対に見ることができる滝となっております。


これが白糸の滝、ズームレンズがないと全然見えないやつでした。ドンドコ沢の滝で日向山の滝の様な絶景はなかなか撮影しづらいものがある。


登山道のコンディションは結構きっつい、初心者にはあまりおすすめできない。上りの斜度も結構きついし距離も長い。



日帰りでこのコースを歩く場合、標高差は単純計算で3,000mくらい。
しかも稜線でアップダウンをお見舞いされる。
北岳日帰りと距離、標高差が数値的には似たようなコースであるため覚悟が必要だろう。


標高がそれなりに上がってきて森の様子も変わってきた、表面の白い木々と苔に覆われた森が広がる、僕にとってはこれは奥秩父的な景色と思っている。



ピンクテープではなくて赤ペンキの印が目立つ、傾斜もゆるくなりだいぶ歩きやすい森が続くエリアだった。


スタートからこの森を歩ければどんなに幸せなことかと思うのですが。


午前9時30分、鳳凰小屋前中継地点到着。
地蔵小屋手前で一旦天国地帯に突入、天空の庭園と言うに相応しい優しいスポットなのでゆっくり歩きたいですね。


鳳凰三山の一角、地蔵岳がキリリとした表情で姿を表します。
オベリスクが天に向かって突き上がる、あれは確かにかっこいいけども。辺りには清涼な水が滾々と流れており、水の山という言葉がよく似合う景色が広がっている。


印に従い地蔵小屋を目指します。


倒木が多いですけど道はしっかりしているので、迷うことはないかと思います。


明瞭な道を歩き続ければ地蔵小屋はもうすぐ……なはず。
もうすぐと言い聞かせて結構歩いた。
鳳凰三山のシンボル、オベリスクへ


午前9時50分、地蔵小屋到着。
先行していた登山客の方々と小屋の方が仲良く談笑している小屋に到着しました。



アットホームな雰囲気のある小屋です、地蔵小屋といえばブログを定期的に更新していたり、情報発信が多く、いつかは実際に見てみたいと思っていた小屋でした。
お腹のすき具合などを考えると特に何か食べたいわけでもなかったので、バッジだけを購入。


水はこちらの洗面所の所からジャバジャバと湧き出ています。
天気が良かったからか食器が軒先に干されていたり、生活感がすごい出ている小屋でした。
小屋の主人の方も気さくで、山頂の様子などを談笑して小休憩することができました。


まずは普通に樹林を抜ける。





午前10時30分、天国に見える地獄のビーチ歩きスタート。
森が明るくなり地面が砂地に変わったら最後の登りが始まります。はじめてこの景色を見る方ならテンションが上がるでしょう、山の上に来て白砂のビーチが広がるなんて……。
青空が海のように見える天空のビーチ、しかし景色とは裏腹に圧倒的に歩きにくい場所でもあるのです。



地面にトレースはあるものの、砂の影響で踏み固められているとは言い難い。
雪の中を歩いているような気分。


空がまだ青いうちに山頂にたどり着きたい。





景色だけは最高ですが、歩いてみるとめちゃくちゃきつい、日向山でも同じ経験をしましたが地蔵岳はこれまでの登り分体力を使っているため、更にきついわけです。


一歩二歩と登りますが、砂地であるため少し足が沈み込んで思うように体が前に進みません。
そしてハイカットの登山靴じゃないと砂が靴に入ってかなり辛い事でしょう。



幸いだったのは前を見れば青空があること、これで曇ってたら一時間ほど休んで下山していたと思う。


ガスに包まれる観音岳方面、眺めつつも心の中では



「知るかバカ! そんなことよりも地蔵岳だ!」
景色はいいけど体力的に本当にこの坂きついんです。


この白砂の大地では倒木は皆流木のような姿になってしまいます。


午前10時55分、地蔵岳到着。
地蔵岳山頂には指導標がありません、いやあるのかもしれないけど探した感じ何もない。
お地蔵様と鉄製の櫓があるだけで、基本的にはオベリスク直下が山頂という認識。


地蔵岳の山頂を見回せば多くのお地蔵様を見つけることが出来るでしょう。


残念ながらオベリスクを覆い隠すように雲がかかってしまいました、オベリスクも僕が登れるような代物には見えないし。
今日は日帰り周回登山、ここであれに登ると後々キツそうなので遠慮しておきます。
果てなき稜線の先、鳳凰三山最高峰へ至る


次なる目的地は観音岳、地蔵岳からは降ってから登ってというアップダウンが待っている。
向こうもガスの中に隠れてしまったようです……、ガスの中で歩くのは性能2割減なんでキツイ。


オベリスクから少し下ると大量のお地蔵様スポットへ、平坦な砂地が広がっているため休憩にはちょうどいいですね。


観音岳へはハイマツ帯を抜けていきます、人が歩いている割には歩きにくい。


稜線は白砂と花崗岩でめちゃくちゃ綺麗、稜線の美しさは凄まじいものがある。
単純に地面の美しさで言ったら今まで登った山では一番です。


この日の南アルプスはご覧のような感じで、鳳凰三山と北岳、仙丈ヶ岳の間の谷間から次々と雲が湧き上がり鳳凰三山からは南アルプス本体を見ることができない状態でした、なんとも悔しい限りです。


観音岳までは地味に遠い、コースタイムを見ればわかりますが結構アップダウンを繰り返します。


青空が見えれば最高の景色が広がることでしょう、晴れてはいるけども展望がもっとほしい。





あがったと思ったらまたすぐに降る……マジで足にくる。


この盆栽みたいな松が現れたら山頂はだいぶ近づいて来た証拠です。


下から見上げると山頂までは結構ありますね……、鳳凰三山の稜線歩きは中々にタフ。


後ろを振り返ると地蔵岳が消えていた、地蔵岳はガスの中、そして伝説へ。


山頂から見下ろす黄色い木々は非常に美しい、このモコモコした紅葉が非常に良い。


観音岳山頂から続く斜面は見事に黄色に染まっていた。


岩場が多いのですが、ペイントによりルートはしっかりとわかる。


午後1時00分、観音岳山頂。
地蔵岳でぐったりしていた時間もあったのですが、観音岳まで2時間かかりました、遠いわッ!
ここが鳳凰三山の最高峰観音岳、周りは青空と花崗岩の美しい景色が広がります。



晴れてるんだけど周りは雲だから全然展望がない。


ダッフィー、曇りですッ!!



この観音岳からの景色は何としても、何か収穫が欲しい!!
そう思い今までのコースタイム、一応巻いている分を全てこの観音岳に置いていくことに。
山頂で雲が晴れるまで待機し続ける勝負が今始まるッ!!


観音岳から見るオベリスク、これがどうしても見たくて待っていた。
白砂の稜線の向こうにすらっと立つオベリスク、素晴らしい景色です。
こんなに白くて綺麗な稜線見たことないぞというくらい独特な山頂の景色でした。


谷間から上がってくるガスに巻かれるオベリスク、凄まじい速度でガスは空へ消えてゆく。


うーん??さっき下から見た方が黄色かったぞ。
上から見ると圧縮されてしまってあんまり綺麗に見えず残念。


午後1時35分、薬師岳へ移動開始。
下山にかかる時間を考えるとここが限界です、薬師岳から中道を利用して下山します。
巨岩と白砂の楽園、薬師岳へ


薬師岳方面はもちろん白い、ヘヴンリーロードを下るぜッ!!といった感じ。
稜線で最も歩いてて楽しかったのはこの観音岳→薬師岳間だろう、登山道の景色が良い。


歩き続けていると願いを受け止めたかのように現れる青空。
そのまま雲が標高1,000mくらいのところまで下がってくれないかな。


甲府側は緑のハイマツに覆われ、西の北岳側は白砂と花崗岩の大地が広がる。稜線を境にパキッと景色が分かれているのが鳳凰三山。


観音岳方面を振り返る。



「おい、晴れてんじゃねーかッ!!」
下山したら晴れるこの現象、一体なんなんでしょうね?


薬師岳が近づいてくると薬師岳の奇岩がたくさん見えてくる。
漫画スプリガンの最終巻付近で特殊部隊cosmosがこの辺の要石爆破しまくってたのを思い出した。
山にまで来て思い出すことが漫画な30代です。


午後1時55分、薬師岳山頂。
観音岳から歩くとすごくスムーズに薬師岳に到着することができます。
短い区間だけれども歩いてて楽しいし、もっと距離があればいいのにと思う場所です。


薬師岳には新築になったばかりの小屋があります、薬師岳小屋の目の前には登りがいのある岩場もあるし……、次回は何としてもここに泊まりに来なくては。


ペイントに従っておりましょう、青木と書いてある印の先が中道登山道です。
中道登山道、精神を試される長き道へ


甲府側は白砂の大地ではなくて、いつもの奥秩父的な登山道。
さらば鳳凰三山、短い夢を見させてもらった。次回来る時は夜叉神峠からの縦走にさせていただきます。



下山直後からハイマツトンネルをお見舞いされる、中道登山道はスタートからきつい。


最初はこういった奥秩父的な道を歩く、気持ちいけど斜度がないので全然標高が落ちない。


そして、深淵の下山が始まる。
「奥多摩かここは、なんで南アルプスまで来て奥多摩みたいな……」
としょっちゅうdisの対象になる奥多摩さんのような道がここで始まる。


午後2時40分、御座石。
中道登山道は一人で歩くようなもんじゃない、怖い。
コース自体は長い、暗い、斜度がいきなり急、長いといった感じ、長いが2回入るくらい長い。
周回コースをオススメできない真の理由はドンドコ沢と中道登山道という罰ゲーム級の道を二回も、それも標高差1,500m越えのものを歩かされることにある。


すれ違う人がほとんどいない中、必死で降り続ける。
途中で出会った方々は皆刑罰を受けているような表情を浮かべていた。
膝が弱い人はここを降りれば確実に膝をぶっ壊して途中リタイアだろうしかし、この下山道は途中に小屋なんてものはない、3時間以上降り続けなくてはならない。


同じような景色がずーっとつづく、暗いし雰囲気悪い。


この有無を言わさぬ圧倒的な落葉松樹林が広がってから勝負である。
その辺に熊でも出そうな薄暗い雰囲気の中を降り続ける。



足元は笹の根と木の根でとても滑りやすい、やはりこれは罰ゲームを超えた刑罰……。


降り続けるとところどころ作業用の林道が現れたりする。
指導標をちゃんと見ないと変なところに入りそうになるので注意したい。



谷底みたいなところまで降りてきたらようやく一安心、あとは青木鉱泉へ向かうだけだ。


午後4時35分、中道登山道入り口。
めちゃくちゃ辛かった、なんなのこの登山道……。
僕が今まで登った下山道でもトムラウシに匹敵する下山の辛みがあった、もう二度とあるかない。


下山後も青木鉱泉まではスパルタンな林道歩きが続く。
むしろ林道が長い、地図上では35分と書かれているが絶対それ以上長い。
中道登山道で足が完全に破壊されている上で歩くのだからなおさら辛い。
しかし、地獄に仏はいた。蜘蛛の糸(デリカD5)をもった仏様が通りかかり、「にいちゃん乗ってく?」と救いの手を差し伸べてくれたのだ!!
僕は脊髄反射で「よろしくお願い申した」と返し青木鉱泉まで乗せてもらいました。
最後に助けてくれる人がいなかったら青木鉱泉手前で力尽きてのたれ死んでいたことでしょう。


午後5時10分、青木鉱泉。
無事帰ってこれた青木鉱泉、すげーーーー長く感じた登山でした。
一人でこれだけの距離を歩いたのは久々です、それもあってなおのこと辛く感じた登山でした。
青木鉱泉で帰りを待っていてくれた自販機、もちろんコーラを注文。


下山後は本当にコーラが美味しい……。
登山の疲れを癒してくれる炭酸が脳天へ突き抜けます、非常に大変だったこの山を乗り切れて本当に良かった。


下山後どこでお風呂に入るか迷ったのですが、新しい場所に行く気力がなく。
知っているところで確実に温泉に入りたいという思考が働き尾白の湯へ。ここは甲斐駒ヶ岳黒戸尾根や日向山登山の時に使用した温泉です。
設備が非常によく整っており、食事含めてすべて賄うことができます。


温泉で綺麗さっぱり今日の疲れを癒した後は牛乳を一杯。尾白の湯のいいところは八ヶ岳高原牛乳が飲めるところか、地産の牛乳って本当に美味しい。


お風呂の後はご飯、東京まで体力が持たないと判断したため尾白の湯でご飯を食べることに。
尾白の湯は様々なメニューがあるのですが、日向丼が手軽でオススメです。


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