2017年1月22日、奥秩父の盟主たる名峰「金峰山」へ登ってきました。
標高は2,599m、冬季は奥秩父の中で唯一雪山らしい姿になる山。
厳冬期の千代ノ吹上は一見の価値がある、という話を聞いて以来、いつかは行ってみたいと思い続けていました。
なにせ金峰山に最初登った時は大弛峠から、標高差の無い道を歩き続け気が付いたら山頂。
金峰山の楽しさを十二分に感じることはできない登山でした。
じっくりと金峰山の稜線を味わいたいとなれば砂払ノ頭から稜線を歩き、五丈岩を視界に収めながらじっくりと登っていきたい…、白く染まった金峰山の持つ優雅な稜線を楽しみ、雪と氷に包まれた山頂を収める。
しかし、そんな金峰山の幻想の前に立ちはだかっていたのは、雪山特有の歩きにくさ。
そしてとても長く続く樹林帯でした……。
樹林を乗り越え稜線を追い求める、冬の金峰山の旅の始まりです。
冬の金峰山富士見平コースについて
瑞牆山荘から登山開始

2017年1月22日6時10分、JR川越駅。
奥秩父金峰山へ向かうために、本日のパートナーであるたけのやさんと合流するため電車で移動。前日も遅くまで働いていたので、始発で合流となりました、寝不足は変わらず、頭痛がします……。
今日の金峰山は以後ずっと頭痛に悩まされコンディションが上がらない状態に。

中央道をひた走り瑞牆山荘を目指します。
車に乗ると話しちゃうんですけど、おとなしく寝た方が良いのかなと最近思います。20代の頃より確実に寝不足に対する耐性が弱くなっています。

午前9時25分、瑞牆山荘駐車場到着。
少し遅めのスタートになりますが、天気は良い感じです、午後になれば曇るということだったので早速出発することにしました。

プレイボールです、まずは富士見平小屋を目指します。駐車場からいろんな足跡が森のなかに向かって延びている……。

最初は20センチくらいの浅く積もった雪の中を歩き続けます、踏み固められているのでアイゼンがなくてもこの辺は歩けました。

午前10時5分、富士見平小屋到着。
冬でも運営している富士見平小屋、美味しいコーヒーがあるとの看板が出ており、早速休憩したいと思わせてくれます。
でもここでコーヒー飲んでくつろいだら山頂いかなくなっちゃうな。

富士見平小屋でトイレ休憩をしたら山頂へ向かいます、次の目的地は大日小屋です。
これが結構遠い……、樹林と格闘し続けるのですが、久々に12ラウンドKO負けを喫した気分になる樹林でした。

奥秩父は樹林がきれいな場所です、雪を被った樹林帯にも美しさがある。しかし、歩き続けていると着実に体力を奪っていってくれます、白い牢獄やー!

大日小屋まで結構歩きます、だらだら登り続けるので大変です、いわゆる横に長いコースなのですが、時折急な登りがあるため体力が削られます。

巨大なばってん発見、こっちに来るなよということでしょうかね?遊び心のある倒木でした、林業の人もわざとやったんですかね?

ひたすら雪の中を進む、大日小屋まではそんなに積もっていません、アイゼンなくてもストックがあれば歩けそうです。そしてこの日僕はピッケル装備だったのですが、普通に失敗しました、ストックで正解の山でしたね。

午前11時00分、大日小屋。
雪が降り積もった谷底に大日小屋が、ようやく大日小屋前に到着しました……。
軽く休憩したら千代の吹上げを目指して歩くことにします、まだまだ先は長い。

ここからは先頭をたけのやさんに変わってもらって歩いてもらいます、僕の体力が大分減っているので思ったように速度が出ません。
急な斜面も登場、ここまで来るとアイゼンが必要です。雪がさらさらしているのであんまりアイゼンが効いてる気がしません、爪先を蹴り込んで登っていきます、こんなの雪国では日常茶飯事です。
(北海道では冬の雪遊びで雪の斜面歩き等を学習する子供が多いような?)

太陽がさんさんと照りつけ、木漏れ日が気持ちよいのですが、風も吹き付けてきたので感動していられません、寒い。

途中までアウターを脱いでいたのですが、ここでアウターを着こみました、手が冷たい……手袋も2重にすべきでした、ウインタートレッキンググローブだけだと寒くてたまりません、ザックからアウターグローブを出して装備しておけばよかったと後悔しました。ザックを下ろすのがめんどくさいのでそのまま上ります。

景色は最高、今日は少し雲が多いですね、西側の山々には雲がかかっています。

樹林の中なのに風が吹き付けています、写真ではただのきれいな景色なんですけど、この時結構風が吹いてて体の体温を着実に奪っていってくれていました。

標高も上がり景色の白さが増してきました、ここはホワイトバランスを蛍光灯にして青くして撮影。まだ写真で遊ぶ心の余裕がある。

それ以上に寒い、二人とも寒さに震えながら上ります、なかなか体温が上がらない。
いや、動いていて暖かいのですか吹き付ける風がその熱を容赦なく奪っていきます、鼻水が無意識に流れ出すくらいには寒い。
景色が雪山そのものとなり、木々の表面は凍りついた真っ青な世界が広がる、トレースはそんなに濃いわけではなく、場所によっては足をつけば穴が開いてしまう、歩きにくい。

ようやく稜線か?太陽の光を追い求めて稜線へと今這い上がります、上はすごい勢いで風が吹いてる。

午後12時25分、砂払いノ頭到着。
ようやく稜線、ここから山頂までまだ少しありますが、展望も開けて大分歩きやすくなります。

少し上の方まで行くと景色が広がります。
快晴であれば屏風のように横一面に広がるアルプスが見えていたことでしょう。今日はどこも雲の中に頭を突っ込んでおります。

雲が出てきてしまったので先を急ぎますが、全線速度が上がりません……。
これまでの樹林帯歩きで足がパンパンです、雪山は通常の2倍くらい疲れやすいのですが、この日は寝不足も重なったため本当に大変でした。

振り向いて八ヶ岳、赤岳は雲に包まれてしまっています……。

富士山が見えてからは歩くのが楽しくなる、冬の醍醐味は富士山。富士山を見ながら歩けば不思議と力がわいてくる。
千代の吹上げを登り金峰山山頂へ

午後12時30分、千代の吹上げ到着。
ついに冬の千代の吹上げに到着しました、雪はちょっと少ない気もしますが、立派な景色です。
今までの樹林とは全く別の世界が広がります、この景色を見るためだけに今日歩いてきた、樹林という予期したおまけがついてきたけど。

稜線からの富士山、とても良し。

風が強い、風速20mとかはないけど、10~15位の風が吹き付けています。細かい砂のような雪が頬を叩き、いつの間にか顔は真っ赤になっていた。

山頂までまだまだ距離があります、近く見えるんですけど、ここからも長いのです。アイゼンをつけているお陰で膝にかかる負担も大きく、足が疲れやすいんですよね。

千代の吹上げをゆっくり撮影して体力を回復させたら山頂へ向かいます、どんどん進むたけのやさん。フリークライミング等をやっているだけあって体力はもちろん僕よりも全然あります、すいすい上がっていく。

稜線はとにかく冷えるの一言、岩の表面を見ても氷の粒がびっしりとつきまとっています。

青空広がる金峰山、しかし風は冷たく体の芯から引きっています、指先が冷たい、そして時折歯がガチガチする……。ご飯パワーが切れると体温が下がる体質なので、早急にご飯を食べなくてはなりません。

すべて稜線というわけではなく、北側の斜面を歩いて上っていく場所もあります、北側斜面は雪がバリバリなので足を引っ掻けないように注意です。

雪の結晶のその一つ一つが綺麗に見えるくらい、乾燥した空気が周りを包み込んでいる。

登る、登る、歩く、歩く。

疲れたら休憩しても良い、でもひたすら振り絞って歩く、歩く、登る、登る。

富士山を撮影するといって休憩したってバチは当たらないだろう、良い景色なんだもの。

白いサンゴ礁におおわれたような、岩と低木の世界、山頂は真上にあるというのにたどり着かず。
初めて「ここでもう帰ってもいいかも」という気持ちになる、あと100m無いのに。

岩が凍っている。最後のつづら折りを登る、カリカリと音をたてる足元、さらさらと上から流れてくる雪の結晶。
金峰山の冬は谷川岳や日光白根山よりも数倍キツイ場所である、まずは寝不足を解消したいけど。

すごい速度で姿形を変える雲、今ならまだ間に合う!
下山に使う以外の最後の力を振り絞り山頂に立つんだッ!!写真を撮りながら全力で登るんだ!ゆっくりと急いで!

午後1時15分、金峰山山頂到着。
ようやく金峰山山頂へ到着しました、長かった……、樹林を歩き続け稜線に上がってどれくらい歩いたのだろうか。
でも山頂は良い、頭痛も自と気にならなくなりました。
五丈岩輝く金峰山山頂

金峰山山頂といえば五丈岩。
不自然に積み上げられたこの岩は本当に自然の産物なのか疑いたくなります。
絶対に誰か積んだでしょといいたくなるような見た目をしている五丈岩、流石に冬の期間は登れません……。

ゆっくりと雲が太陽に被さり、空は白と青のコントラストに包まれて行く……。
神妙な気持ちになってしまいます、それと同時にとてつもない寒さが……、今までの陽光の暖かさが激減したからか。

山頂指導標が新品になってました、前来たときはこんなんじゃなかったけどな。

即座にコッヘルに水をいれて火を着けます、カップラーメンで体を暖めるためにもお湯が必要です。
そしてラーメンができるや否や体に注ぎ込んで体温をあげます。カップラーメンを補給して体が動くようになったので山頂指導標へ向かいます。

午後1時45分、金峰山山頂標。
この団子のような山頂標こそが山頂の証です。冬の金峰山、ようやく登ることかできました……、辛かったー。

下で待つたけのやさんの所で補給をしなくては体が持ちません、こんな寒い奥秩父経験したことがない、流石約2,600m……。

たけのやさんと合流し、二人で肩を震わせながら下山開始です。

稜線から降りるのが名残惜しい、あんなに苦労して上ってきたのに、山頂には一時間といないわけです、今日ばかりは自分の体力の無さを恨みます。

下山のタイミングでも八ヶ岳は雲の中でした……。

既に速度が全く上がらなくなっている僕、後続の方にどんどん先に行ってもらいます。

午後2時15分、砂払いノ頭到着。
ピストンで駐車場まで戻ります、この先の長い樹林が今から不安でならない。横に長くアップダウンが数回続くので、下山にも体力を使うのが金峰山です。

それでも下っているんだという気持ちのお陰で幾分か楽に下れます、足取りも軽い。

午後3時15分、大日小屋到着。
大日小屋までは比較的すんなりと下山できます、ここから横にながーい道なので軽く覚悟を決めましょう。
全体を通して長い時間を歩いているわけではないのですが、時間感覚が長くなる魔法をかけられているような気分です。

目指すは富士見平、富士見平まで行けば駐車場までは30分ないはずだ!!
このような体力勝負の雪山から早く脱出したい気持ちで一杯です。
大日小屋からの道のりは本当に疲れていたんでしょう、写真がろくに残っていません。午後になり雪も少し溶け、アイゼンをつけなくても歩けそうな状態でしたが、ストックがないためアイゼンを外すことが出来ず……。
ピッケルだけもってきた数時間前の自分を叱責したい気分にかられました。

午後3時55分、富士見平小屋到着。
ようやく富士見平小屋に到着しました……、感覚的に長かったです。
小屋前では数組のパーティーが休憩をしていました、ベンチに荷物をおいて一息着いたら我々も下界に向けて出発です。

後は駐車場に向かうのみです。

午後4時35分、瑞牆山荘駐車場到着。
金峰山下山完了です、出発時間が遅かったため少し日がくれてしまいました。満足度は十二分の登山でしたが、随分と体が冷えてしまったので温泉へ急ぎます。
僕の希望はただひとつ「あっついあっついお風呂」です、山梨の温泉はどれもぬるめの物が多いのですが、今回はどうなることやら。

午後5時15分、若神楼到着。
高速の入り口に程近い場所にあるこちらのホテル、日帰り温泉もやっております。入浴料は1,000円と少しお高めですが、風呂の広さと立派さは十二分です。
内装も立派でとても満足度が高い温泉でした。しかし、お湯の温度は比較的ぬるめ、僕の冷えきった体が満足するような熱々のお湯ではなかったことが残念です。山梨の温泉はぬるいお湯に長時間入るタイプなんだろうな…。
個人的に冬入った温泉で気持ちよかったランキングを作ると、奥多摩三頭山の数馬の湯、八ヶ岳稲子湯でしょうか。
上記の二つは入ったときにしびれるくらい気持ちよかった思い出があります。
今日の疲れを温泉でしっかりと流した後、埼玉(東京に近い埼玉)への帰路へ着くのでした……。

コメント
コメント一覧 (2件)
金峰山の神社は長野県側にあるから、どちらかというと長野のものなのでしょうか。
VERYBLUEさん
廻り目平から上った方が楽しかった場合は長野のもの、でいいのではないでしょうか。
山梨側の登山道はあんまり楽しくない気がするんですよね。