【北関東】皇海山、滑落か遭難か、生死を想う百名山の旅

2015年5月10日、奥日光は足尾、日本百名山で最も地味と言われる皇海山に登ってきた。

今回の旅は僕の人生の中で最も過酷な旅となった、

滑落と遭難と言う非日常的なワードが常に頭の中を駆け巡る、そんなブラック登山。

僕は無事滑落することも遭難することも無く帰ってくることが出来たが。

登山旅のあり方と言うものを考えさせられる旅になった。

実行動時間14時間半、朝の4時に出発した我々がキャンプ場へ戻ったのは午後7時20分。

同行したveryblue氏すらが最長と言った過酷な旅の始まりである。

午前11時、白山直下。

鋸山に向かって歩いている。

庚申山から地図上の破線ルートに入ってから登山道の様子が一変した、

笹薮とろくに整備されていない道でルートを見失うこともあるくらいだ。

その上鎖がかけられていないくせにボロボロと岩肌がはがれ落ちるような崖を

さっきから幾度となく昇り降りさせられている。

こんな所を何時間も歩いていては滑落するのも時間の問題に思える…。

「なんだってこんな所に…」

足場の脆いその崖にぶら下がっていたのは、

人独りの体重を支えるにはいささか不安が残るような細さの鎖が一本だった。

わらを縋るような気持ちで鎖を掴みながら、三点を確保して下ってゆく。

視界の端に写る特徴的な山容は崖を降りる僕を見てあざ笑うかのようだ。

冷たい風が体に吹き付ける中、僕達はこの酷い登山道を鋸山へと進んだ。

登山ハイライトである、今回の記事ですが、超長いです。

14時間も歩いている記録なので同じように記事も長いです、

おそらく最後まで読んだ方は最初何があったか覚えてない

という当事者と同じ感想を抱くこと間違い無しな記事です。

つまりこの記事を読んだあなたは皇海山に登ったも同然という記事です、はい。

因みに最初にルートと行程を示します。

1日目

銀山平キャンプ場泊、コテージ8000円

2日目

銀山平キャンプ場、かじか荘発4:30→一の鳥居5:35→庚申山荘前分岐6:35

→庚申山9:00→渓雲山10:15→白山11:00→鋸山11:50→皇海山13:10→鋸山14:20

→六林班峠15:45→庚申山荘17:55→一の鳥居18:35→かじか荘19:20

後半の六林班峠はどこが到達点なのかはわからないが、山荘分岐標識があった地点

そこまでで考えています。

このルートは深田久弥が登ったクラシックルートと言うことでしたが、

深Qはあの帰り道を通っても嫌気がささなかったんだろうか…、

因みに群馬から行けば2時間で登れます。

前日大谷資料館で観光気分を満喫した我々はその足で銀山平キャンプ場へと向かった。

一日目夜はキャンプ場でBBQという

リアルが充実しちゃってしょうがないイベントを行う為だ。

日光で1万円ほど食材やら明日の行動食やらを購入し、買い過ぎだろ…と青ざめつつ

キャンプ場に入場した。

小屋の名前は太平、奇麗なコテージでした。

9日は雨、新緑の紅葉に露がしたたって艶のある景色が広がっていました。

このキャンプ場は静かだしめちゃくちゃ気持ちがいいです。

キャンプ場についたのは15時近く、

日光市内で特盛りの弁当を食べてしまった我々は

腹をすかせる為に松木渓谷を見に行くことにした。

渡良瀬川源流はこのエリアになるらしい、奥日光は確かに秘境である。

なんつっても囲んでいるエリアが尾瀬、日光連山である。

そしてこの日は土砂降り。

一つ気になる問題として短パン派の人は靴に砂利とか石とか入らないんだろうか。

僕は気になるので夏でも長ズボン使ってます。

結局スタートが15時と遅かったことと土砂降りが酷いこともあり

歩き始めて1時間で引き返すことにした、日本のグランドキャニオン松木渓谷よ

いつか出会うことがあればそのときまで。

銀山平キャンプ場のすぐ上にあるかじか荘、ここで風呂にすることにします。

明日の皇海山登山はこちらについた時点で下山完了。

土器が出土していました。

絶景露天風呂を味わった後はキャンプ場に戻ってBBQです。

正直食材買い過ぎだよねこれ。

栃木が誇る山久の肉と、veryblue氏の熊野土産クジラベーコンで宴がスタートします。

うぇええええええええいッ！！！元気、元気です。

平均年齢30歳の男4人がコテージで焼き肉とか超楽しい。

大学生に戻ったかのようだ。

餃子あり、焼き肉ありの狂気の宴を2時間近く繰り広げ、この日の宴は終了しました。

寝る前に夜空に絵を描く人々。

かめはめ破だって撃てます。

マカンコウサッポーもそれなりの再現度だ、スゴイ！

アホな遊びをした後、記念碑として日付を残しました。

明日はSKY山です。

日付も変わって5月10日早朝4時30分、庚申山登山口。

これから登ろうと言う庚申山、皇海山に対して挑戦的なポーズで宣戦布告をします。

俺たちはこれから14時間をかけてあなた達に登ろうというのだよ。

敬意を示して登山開始です。

朝なので森が青いです、雲も降りてきている為雲の中を歩く幻想的なスタートに。

メンバーのゆうちゃんが鯉のぼりを着けてました、お調子者ですね。

ご来光で空が赤く染まり始める。

谷底にかけて見事な新緑です、新緑シーズンってどこの山に言っても楽しい！

ここは庚申渓谷、これだけ新緑が奇麗なのだから紅葉も素晴らしいことでしょう。

雲の中を通ると少し離れてるだけでもこんなに白くなります。

所々にこういった名所のような物が登場します。

天狗の投げ石は天狗が投げた石が積み上がったような場所だから。

天狗暇すぎだろ。

出発から1時間ほど林道を歩くと一の鳥居に到着です。

猿田彦神社、伊勢内宮の近くにあるやつですね。

長いこと使われているせいか、ぼろぼろになってしまっています。

ここでようやく日が高くなってきました、森の向こうの黄緑が鮮やかだぜ…。

一の鳥居からは庚申山荘とお山巡りルートの分岐地点まで登って行きます。

途中幾つか景勝地があります。

庚申七滝、七つもあったかは定かではないが趣のある滝でした。

枯れ沢のような所を登って行きます。

基本枯れ沢と沢を交互に登って行く感じでした。

文久三年！？？……だめだ水曜どうでしょうしか出てこない。

この石碑はさすがにそんなに古くは感じないが…。

なんというか身勝手な親の伝説がある岩場である。

上を見上げるとこんなのがせり出しているわけである。

蛙岩とかいろいろあったのですが、黙々と登山を続けます。

この仁王門を潜れば分岐まではすぐです。

アカヤシオが姿を見せ始めました、庚申山は5月のGW後半から空けくらいが

アカヤシオのシーズンということかな？

庚申山と皇海山で見ることになる青銅剣。

この剣の位置が分岐点になります、ここでいったん水分補給休憩。

我々は今回お山巡りコースから庚申山を目指します。

休憩したらすぐにスタート、つづら返しで標高を稼ぎます。

ようやく日光が見える位置まで来ました。

アカヤシオも日に照らされて元気になった印象。

目の前の山の所々にアカヤシオツツジがあるのがわかります。

新緑、春の芽吹きである。

いろんなツツジを見たことあるけどアカヤシオは特に奇麗だと思う。

梯子が現れ始めます、この辺はまだアスレチックで楽しい。

鯉のぼりが輝いている。

標高を上げてきました、日光側でしょうか、マジで山深いなここ。

巨岩の下などを潜りながら歩を進めます。

庚申山の梯子は安定性が良いので安心して登ることが出来ます。

吊り橋に岩かなんか直撃しとるやんけ…

べっこりいってます、上から落ちてきたんだよな…

後ろを振り返って納得しました。

ブロック状の岩が落ちてくるわけだね。

落石注意じゃねーわ！橋渡った後に建ててんじゃねー！

注意看板のすぐ側には傾いた橋がかけてありました、

メンバーのくまさんが転んで落ちるかと思ってビビりましたが…。

崖側を見るといつ落石が怒ってもおかしくない状態、こんな所に長居すべきではない。

ルートが激しくなってきて思ったように速度を上げることが出来ません。

庚申山も所々火山のような土壌があり、ボロボロと岩肌が崩れて非常に危険でした。

一同の前に画面左「登るべき岩」が現れます、ここで本日最初の撮影タイムです。

この岩凄く気持ちがよかったです、高度感があるので怖かったですけど…。

後ろを振り向くとかなり登山慣れしてそうな人物が…。

彼と彼の鯉のぼりは非常に絵になります。

庚申山に満足である、あっぱれ。

ダッフィーも満足、しかしこの土壌、赤いのがわかるだろうか。

ここは火山性の土で出来ている、つまり脆い…。

因みに我らがveryblue先生はこんな感じのポーズをとっていました、流石登山芸人。

10分ほどカメラで遊んだら庚申山に向けて急ぎます。

この梯子は固定が弱かったのでちょっと怖かったですね。

眼鏡岩、因みにこの日のメンバーは普段全員眼鏡でした。

道が細くなり始めました、相変わらず左側は切れ落ちてて下が見えない。

上には修行僧が入ったと言う祠があります。

微妙に天井が低いため頭打ちそうになりました。

この道の細さと片側が無い、笹で道が滑るという状態が、

後半我々を痛めつけるとはこの時誰も知りません。

庚申山のアカヤシオは目を楽しませてくれます、ヒヤッとするような道の中で

こういった花が出てくるのはとても重要なんですね。

登るよりもこういったトラバースが一番キツい。

山をぐるぐる回っていたルートから山の中に入る道に変わりました。

どうやらお山巡りルートが終わって庚申山に入るようです。

樹林帯に入ると尾瀬方面からの風が叩き付けているのかせせらぎが強く聞こえます。

荒れてる森ですが、苔などが生き生きしています。

画面中央の菱形のマークはルートが正しいことを表すマークです。

そして画面奥、青空が広がっているのがわかるでしょうか？

午前9時、庚申山山頂到着である、登山開始から4時間半で到着です。

そしてとうとう今日の本命、皇海山が姿を現します。

そう、この記事でこれまで登っていたのはただの通り道の一つに過ぎない庚申山。

皇海山はここから遥か北、鋸山の向こう側にあります。

画面右奥に見える白い山は日光白根山です、至仏山からも見えたな…。

どっしりとしたあの特徴的な山容、是非登ってみたいです。

ダッフィーもまん…誰だスイカなんて持ってきた登山芸人は！！

この日は尾瀬方面から0度の風が吹き込み非常に寒いとのこと。

その通りで風は糞強いわ、気温は冬かという位寒くてとんでもない状態。

レインウェアを慌てて着込んでなんとか耐えました。

因みにこの写真、中央右にそびえるのが皇海山、左側が鋸山。

皇海山に登る為には鋸山から一度下り、皇海山を登るのがわかります。

さらにピストンなので同じルートを帰らなくてはならない、登る前からベリーブルー。

そして庚申山から鋸山への破線歩きが始まる…。

滑落か遭難か、生死を思う旅はここで始まりを告げたのだ。

庚申山から鋸山へ向かうルートは高原地図では破線ルート扱い。

深田久弥が歩いたクラシックルートではあるが、難易度の高さと不明瞭な道。

これが合わさり一般的ではないとみなされている。

残雪が姿を見せ始めた、この辺は風が強く吹き付けるので気温が低いからだろう。

森の姿は奇麗、緑が美しく苔も育っている。

だが道はその分不明瞭、ここにはあまり人が入らないことを物語っている。

そして徐々に笹が深くなる、薮漕ぎがスタートし始めた。

右側の岩の下がルートかと思ったら獣道だった、一回目のルートロスト。

笹薮を独りで戻ってみたら正しい道に出ることが出来たが、

後ろを振り向いて驚いた、笹が僕の身長より高く、仲間が見えない。

声も聞こえづらいので大声で叫んだ、この時藪って怖いなと思い始める。

ひたすら踏み後が不明瞭な道でルートを探しながら登る。

ピンクテープと菱形の標識が命綱になって行く、ルート上にテープが張ってあったので

ここではテープ＝登山道ととらえます。

11座あると言う鋸山のピークの4番目、渓雲山。

ここまでのピークは残念ながら標識を見つけることが出来ず。

再び薮の中を進みますがここで2回目のコースロスト、

原因は道が蛇行したことと、薮で道が見えないと言う状況。

獣道側に10分ほど進んでしまい、尾根から外れて行っていることに気がついて

そのまま尾根に急いで登りました…、あれ以上降りてたら遭難してたと思う。

シャクナゲのつぼみがありました、後にも先にもシャクナゲを見たのはここだけ。

奥に男体山が見える…、このときは山を見て

あれに登りたいこれに登りたいと思うことも無く、とにかく必死でした。

赤い色が落ちて木に同化した標識。

第6峰、薬師岳に到着です、大体道の約半分を来たことになります。

大分皇海山が近づいてきました、そして近づけばわかるその山容の迫力。

確かに鋸山から見ればその貫禄は百名山に相応しいと思える物です。

北側には日光白根山と男体山も見える。

ここから次の白山までは痩せ尾根が続きます、低木が左右にありますが

それがなければ幅１mほどの尾根道が露となり、非常に怖い思いをしたことでしょう。

なぜか写真が残っていませんでした、低木のトンネルとおぼつかない足下で

非常に不安になる道を歩かされた記憶がある。

そして姿を見せる熊野岳、最初見たときはここを登るとは思いませんでした。

ただよく見ると奥に鎖が着けられていることに気がつき絶句します。

ここは火山だったので岩が脆く足場が不安定、なのにこの崖を登って行くというのか。

足下に伸びた鎖から全員無言で下りを開始します。

思い出すだけで手から汗がにじみ出る崖である。

足をかけるとその崖から飛び出た石がぐらつく、つまり浮き石状態。

確かな足場を確保しつつ慎重に降りて行きます。

笹薮に隠れて岩が転がっていて非常に危険です、追加で倒木もあるよ♬という状態。

ここは鎖ではなく虎ロープがかけられていました、だがよりに寄って巨大な一枚岩。

ロープより鎖が欲しいんだけど。

凹凸も少ない為慎重に登って行きます。

今までみたいにゴツゴツしててくずれやすい訳ではありません。

逆に一枚岩で足場が確保しづらいというパターンでした、上から見てわかるその斜度。

次に現れたのは鎖も何も無い崖、石が動きまくるため上手く降りれませんでした。

くまさんがかなり難儀して下ってくる。

veryblue氏が先頭を歩いているが、経験豊富な氏を持ってしてもキツい場所のようだ。

右に道は見える、その先が繋がってるのが画面中央ではないことを祈る。

再び鎖もロープも無い崖にしがみついて下る、

登りなら何とかなるけど下りの方が難易度が高いため慎重に降ります。

剣ノ山、ここまでくれば鋸山はすぐそこです。

大分近づいてきた、位置的にこっちが上に見えるかのような錯覚を覚える。

低木のトンネルを潜って鋸山へ向かいます、10分ほどで鋸山に到着です。

午前11時52分、鋸山山頂到着。

ここは群馬県というわけである、スタートから6時間が経過している…。

疲労がかなりたまってきているが、ルート半分も来ていないことに一同焦りを覚える。

下りはこの六林班峠というのを使用する、

この時点ではこの道がどのような場所か知る由もなく。

鋸山から緩やかに下り、登り返しているように見える稜線。

実際は標高を100mほど下ろしてから250m登り返すというかなり鬼畜な稜線。

鋸山に荷物をデポし、最小限の水を持ち皇海山へ向かいます。

この鋸山の下りがまた肝を冷やしてくれる場所でした…、

足場がボロボロ崩れるし雪渓が残っています。

なだらかに見えていましたが実際は一気に50mくらい崖を下っているようです。

鞍部に下ってきました、もうすぐ群馬県ルートと合流する筈。

標識前の木は雷かなにかで裂けたんだろうか、とんでもないことに。

ようやく、群馬県ルートとの合流地点に。

看板の言う通りここは一人出来ては行けません、絶対遭難します。

群馬県から入って皇海山と鋸山しか行かなければリスクは減るかもしれませんが…

庚申山六林班峠のクラシックルートは遭難の危険がかなり高い道です。

山頂まで0.7キロということだがこの数字、なかなか減らない。

疲れているからか時間の経過が早く感じる…、でも距離は長く感じる…。

青銅の剣が見えました、これがあるということは山頂が目前ということか。

剣の奥にありました…、山頂碑です。

三角点です、そこに添えられた札には那智の字が書かれていました、

熊野信仰ということでしょうか。

全員ぐったりしています、ダッフィーも適当において写真を撮る位です。

午後1時35分、皇海山登頂である。

栃木100名山、そらそうだよな。

ここまで看板を背負った人々や登山道整備の人には頭が上がりません。

山頂を急いで出発します、この時点で我々の頭にあるのは帰りのルートです。

六林班峠はコースタイム上3時間近く、普通に行けば鋸山から登山口まで6時間付近。

鋸山に戻れば14時半近くになるので、下山完了が20時台になる可能性があるのです。

この道の悪い山の中をヘッデンで下るとか悪い冗談です。

皇海山にも雪渓があり、足跡が雪渓で寸断される場所が多いです。

そして鋸山への取り付きに戻ってきました、俺良くこんなとこ降りたな。

この斜度の雪渓で滑ることでもあれば停まること無く谷底へGOです。

登りの方が楽だと言ったな、あれは嘘だ。

ボロボロ崩れる道なんて登りだろうが下りだろうが難しいです。

午後2時20分、鋸山へ戻ってきました。

ザックの回収と水分・行動食の補給を行って下山を開始します。

滑落死のリスクタイムは終り、これから遭難のリスクタイムを始めようか…。

皇海山がつぶやいたような気がしました。

六林班峠に向かって下山を開始します、画は滑って転ぶveryblue兄貴。

笹薮の足下には穴だの倒木だの無数のトラップが仕掛けられているのです。

斜面に生える笹薮の中では道がわかりにくい。

この印だけが行く先が正しいことを教えてくれている。

西日の中薮を必死で進みます、目ではなく足下の感覚が重要です。

足下が柔らかくなったら踏み後ではない可能性が高いのです。

道がどこにあるかなんて目で見たってわかりゃしないんだよ、ここは。

トラロープが落ちています、切れてはいてもこれがあるということは道が正しい証。

泥まみれになったveryblue氏を追って行きます、最後尾はかなり怖い。

道を見失う状況って？という疑問を浮かべたことがありますが、

ここはその疑問に答えてくれます。

前の人から目を離して周りを見回しただけで簡単に遭難出来ます。

なぜなら薮が元の形に戻って道はなくなり、

先を歩いている人は笹で遮られて見えなくなるから。

大きな指導標が出てきました、安堵感を覚えます。

だってルート上のピンクテープはこの有様なんだもん。

後ろを振り向けばどこを歩いてきたなんてわからないような道に。

倒木があれば先頭から順に叫んで位置を確認して行きます、まだ体力がある証拠。

そして書いてある文字が消えた看板に到着、辛うじて庚申山荘という字が見える。

ここからは庚申山荘に向けてのルートになるということか。

尾根道から山の中腹を横断するルートへと入ります、日の光からは遠ざかる形に。

斜面だとしても笹薮は一向に手を緩める気配がない、そして斜面ということが手伝い。

とにかく横に滑る。

しばらく雪渓と笹薮を交互に進んで行きますが、標高を全く下げてる気がしません。

ずっと水平に歩かされています。

そして最初の沢が現れました、水場から下って行くのだろうか？

と思いましたがただ横切るだけ、そりゃそうだよね。

ルート場はずっと中腹を横断して庚申山荘から一気に下るんだもの…。

このときは頭の中に地図の道が浮かんでいました、あれがマジならこの道ずっと続く。

そしてロープが張られ、崩壊した沢沿いの道と片方が切れ落ちた笹道が始まります。

沢に降りては登り返して、細い笹道を歩きます。

同じ景色を何回見ればいいのだろうか。

笹のおかげで斜度がそれほどあるようには見えません、

しかし歩けば「右側に滑り落ちれば50mはとまれないだろうな…」という道です。

道がありません、多分かつて道があったんでしょう。

今は崩れ落ちてなくなってます。

足を進めればモロモロと音も無く地面が滑り落ちて行きます、

落ちない所を上手く踏んで渡りきります。

何度目だ。

また沢だ…、写真に残っているだけでも8回の沢越えをしています。

実際はそれ以上の沢越えを行ったと記憶しています、まさにエンドレスエイト。

このポイントでゆうちゃん足を滑らせる、後ろから見ててマジでビビりました。

しかしロープを握っていたことと大した高さではない為何も問題は無かったのですが。

こういう所で人が転ぶのをみると心臓に悪い。

開けた場所に出ました、時刻は17時半。

普通だったら家でシャワー浴びてるか小田急で丹沢から新宿に帰ってきた位。

だが僕は今足尾の山奥で、いつ着くのかもわからない庚申山荘に向かって歩いている。

開けていて気持ちのいい場所ですが、傾いた日。

そしてあるけどあるけど山荘が見えないことに焦りを感じています。

そしてまた日のあたらない斜面へ入ります。

鋸山から歩くこと3時間、ようやく庚申山荘との分岐の表示が見えました…。

既に18時近くだったので急いで山荘に向かいます、しかしかなりの速度で歩いたのに

ほぼコースタイムと同じくらいの時間ってどういうことだ？？

そしてついに庚申山荘が見えてきました…、長かった…。

そして全員無事に戻ってくることが出来たということに感動を覚えます。

午後5時50分、庚申山荘前到着。

とりあえずここで最後の水分補給と行動食補給を行います。

これまでの道で全員完全なシャリバテ状態になっていました。

庚申山荘からは一の鳥居へ向かって一気に標高を下げていることに気がつきました。

そうか、足に優しくないな。

順調に日がくれ、残照にむかっています。

なんとか林道に出る頃まで日が持ってくれればとおもい走るように登山道を下ります。

そして午後6時34分、一の鳥居に帰ってきました…。

既に回りは写真のように暗くなっていました。

ここから歩くこと40分、なんとかかじか荘に夜7時20分に到着した我々は

風呂に入ることが出来、そこから東京までの家路につくことが出来ました。

温泉では誰も露天風呂に移動する気力が無いほど疲れきっていました。

日暮里へ帰ってきたのは夜23時も近くなった頃、

自身最長の旅はこれで終りを向かえました…。

足尾の奥地にある皇海山、深田久弥と同じ道を歩いた我々ですが

そのルートには驚かされました、何より長い。

ヤマレコにはこのコースで午後5時には下山している方も居ますが、

凄い健脚かトレランなんでしょうか？

veryblue氏や、八ヶ岳縦走の経験があるメンバーを持ってしても

コースタイムを巻くことが難しかったです。

群馬県側から入り皇海山と鋸山を登って戻るルートが一般人向けかと思います。

このクラシックルートはよほどの健脚か、

若さに自身のある方以外にはお勧めされないルートだと思いました。

皇海山の地図はこちら

この登山で役に立ったアイテムはこちら 

この皇海山ではレインウェアが無ければ死んでいました…、めちゃ寒かった…