2024年1月5日、年明け早々に東北地方の晴れのチャンスということで雪の磐梯山を歩いてきました。
福島県は猪苗代湖の傍らに鎮座する美しい山で標高は1,816mとなります。猪苗代湖側と檜原湖側で表情を大きく変える山で、数か所で小規模な噴気活動が継続する火山です。
24年は雪が少なく、年明けという降雪がまだそこまで多くないタイミングもあり裏磐梯スキー場から夏道を利用した登山が可能という状況でした。
アルパインの技術がない一般ハイカーが歩ける雪山としては数少ない一座ということもあり、新年最初の登山で訪れることにしました。
櫛ヶ峰の分岐点から見る冬の磐梯山山頂の荒々しい景色は「登ってきてよかった」と心の底から思わせてくれる満足感を持っていましたよ。
下山後は福島のお酒を買って帰りますが、その帰り道には数多くの悲劇が待ち受けているのでした……。Redsugar史上最大の出費を強いた冬山登山の始まりです。
磐梯山雪山日帰り登山の概要
雪の裏磐梯スキー場から夏道を行く
2024年1月5日午前6時50分、檜原湖湖畔。
おはようございます、Redsugarでございます。新年一発目の登山ですが今年は珍しく雪山ということで、妻の帰省先の山形県から車を走らせて裏磐梯は檜原湖までやってきました。
高速で米沢まで走った後は国道121号で喜多方市から北塩原村を経由して檜原湖へ、道路状況は良く雪も少ない中快適なドライブでやってこれました。
裏磐梯スキー場へ向かう直前、冬の夜明けの檜原湖が綺麗だったので湖畔に車を停め散歩をしてみると……、宿泊していたカメラマンの方が紫色の空を撮影中でした。
年明けを裏磐梯で過ごした方々でしょうか、檜原湖湖畔のボートハウスや釣り船店は早朝から大繁盛しておりまして。釣り人たちが列をなして檜原湖へ向かうボートを待っていました。年越しを裏磐梯で過ごしたんでしょうかね?別荘かなぁ?大富豪だなぁ~。
何を釣るんですか?と聞いたらワカサギらしい。氷に穴開けて釣り糸垂らす釣り方じゃないんだ……。
午前7時30分、裏磐梯スキー場。
檜原湖で結構時間を使ってしまいましたが、無事に裏磐梯スキー場にやってきました。登山者用の駐車場は少し下にありまして、砂利の駐車場になります。年明けから雪の磐梯山を目指す奇特な人は少ないようで……、車はほとんどありませんでした。
駐車場からは雪化粧した稜線がよく見える、あそこまで行くの遠いなぁ……
登山スタートということで、まずは営業開始直後の裏磐梯スキー場を登ります。スキー場の端っこをひたすら登るこの時間で身体を温めておく感じですね。稜線に上がっちゃうと寒いので……。
積雪はあるものの夏道が使えるコンディションの磐梯山。ピンクテープを辿りながら櫛ヶ峰の登り口へと向かいます。
木々の隙間から見えるのは磐梯山の爆裂火口です。北側の裏磐梯コースは磐梯山ジオパークの主要なジオサイトを歩くことが出来る地質マニアは嬉しいコース。景色もめまぐるしく変わるから登山者にとっても嬉しいとは思う。
雪化粧した磐梯山は銅沼などはどこにあるのかわからないくらい。雪原のトレースを追って夏道に入ります。
裏磐梯のこの景観が作られたのは1888年の大噴火によるもので。噴火後の銅沼の様子などは帝国大学お抱えの教師が写真を残しています。火山で作られた銅沼は強酸性で魚類はおらず、裏磐梯スキー場の湧水でもph4、五色沼まで来てようやく濾過されて中性になるそうです。
爆裂火口壁を眺めながら櫛ヶ峰を目指して登山開始……、夏道が使えるから楽なのだが冬靴が重く中々体力を消費します。
登っている最中蝶々のようなスキーコースが刻まれた山が見えます。あれはグランデコのスキー場で、稜線はスノーモンスターで有名な西吾妻山ということになりますね。
雪滅茶苦茶すくねぇじゃん……。
稜線に近づけば荒々しい見た目の岩が氷結した姿を拝めるようになります。爆裂火口壁は夏もいいけど、冬もいいね。
冬の爆裂火口壁を見下ろすと御覧のような景色。雪化粧した火山の姿っていいもんだなと思わせてくれます。
山々の彼方に見える真っ白な山塊は飯豊山です。国内屈指の豪雪地帯となり、磐梯山とは比べ物にならない真っ白な姿が特徴的です。ちなみに磐梯山から見ると台形の左側が大日岳、右側が飯豊本山、北俣山や朳差岳は画面奥へ伸びているのでここからは見えません。
三角形の櫛ヶ峰が良く見える位置まで来ました。大部雪も積もってきて、ギュッギュッと音を立てて歩くのが楽しい。
冬季磐梯山の宿命ですが、裏磐梯は山の北側を歩き続けるという特徴のためここでようやく太陽の光が現れます。ここまで寒みーなと言いながら歩き続けてきたのですが、ずっと日陰だったからしょうがない。
雪化粧の磐梯山稜線を歩く
午前9時30分、櫛ヶ峰分岐。
太陽の光が降り注ぐ稜線の入り口にようやく到着しました。直前まで雪が降り積もった気持ちのいい道を歩いていたんだけど、櫛ヶ峰までやってくると風と太陽の影響か雪の量は少なめ。どちらかというとガリガリに固まった氷のほうが多い世界。
周囲に転がる岩を見渡してみるとエビのしっぽと呼ばれる雪の造形物を見ることが出来ます。これが樹木に漂着し続けると樹氷が出来上がるというわけ。
この岩もキンキンに冷えているので、下手に素手で触ると大変なことになるかも??(実際には皮膚がはがれたりはしない)
磐梯山の爆裂火口壁を登りきると稜線部に到着しますが、冬は極地的な風情がさらに強調された美しい世界が広がります。標高1,800mクラスの山でこんなにいい景色を見れるなんて……。
標高が低いけど雪化粧すると綺麗な山としては那須岳と磐梯山を推したい。
磐梯山は地質的に見ても複雑な構造と発達史を持つ山で、稜線に出ても古い火口と思われる小さな窪地をいくつか見ることが出来ます。
磐梯山は1888年の噴火で檜原湖を形成したという話が語られることが多いのですが、猪苗代湖も磐梯山の噴火によって形成された可能性があるという話もあったりします。福島県の水を遡ると磐梯山一帯はとても重要な場所でしょうね。
檜原湖方面を見てみると、遥か北に大朝日連峰と月山がうっすらと見えます。周囲を見回して気が付くけど、檜原湖周辺は猪苗代方面と違って田圃がありません。標高も高く冷涼な気候なんで米は向いてないんだろうな。
稜線からは飯豊山がよりはっきりと見えるようになりました。大日岳と飯豊本山ってあんなに距離あったっけ??
ここで後ろから次々と登山者が登ってきて、山頂へ向かって行きます。登山者を入れた景色が様になるので、しばらく櫛ヶ峰の麓で写真を撮影させてもらいました。
カッコいいねぇ……。
談笑しながら山頂を目指す登山者を眺めているだけで幸せになれます。自分が登るのもいいけど、登る人を見ているのも楽しいなぁ……。
先行している方々を後ろから撮影しながら山頂へとジリジリ登っていきます。弘法清水小屋手前の雪の壁のようになった斜面を登る方々はまるでアリみたい。雪で真っ白な景色だからこそ登山者が浮かび上がる。
弘法清水小屋を目指す途中で見てほしいのは後ろの景色。櫛ヶ峰ですがこの山は弘法清水小屋付近から見る時が一番カッコいいのでは?何回も登っている磐梯山だけど、櫛ヶ峰に関しては冬が一番カッコいい。
午前10時25分、弘法清水小屋。
山頂手前の弘法清水小屋に到着すると数人の登山者が休憩中。ここから先は特に雪が深いうえに寒いので注意です。
磐梯山は山頂部がちょっと尖がっているのですが、その関係で弘法清水小屋からは雪が一気に深くなるうえに気温もグググッと下がります。
ちなみに弘法清水って空海に関係がありそうな名前ですが、小屋自体は昭和34年に開業したレトロでポップな休憩所兼売店と自己紹介をしています。
一応弘法大師全国行脚に紐づいて、磐梯山では空海が手長&足長という巨人の妖怪夫婦を討伐する伝説があります。内容としては昔話「3枚のお札」的な展開で、空海の挑発に乗って小さくなった手長足長を壺に入れて封印してしまうというものです。
その伝説では、壺に入った手長足長を山頂に埋めて磐梯明神として祀るといった感じで終わります。
午前11時5分、山頂。
急に雪が深くなった山頂手前、結構な急登を必死で登り続けると磐梯山山頂が見えてきます。櫛ヶ峰から約1時間半と結構時間がかかりました。山頂の木柱は半分くらいが埋まっている状態、24年は雪が少なめだったのでしょうがないかな。
木柱があるところからさらに上に一段登れるのですが、風の通り道になっていて強風ですっごい寒い!!
山頂から飯豊山方面を見ようと西に目を向けると……スキー場が切り開かれた磐梯山周辺の山々の景色の方が目立ちます。星野リゾートのネコママウンテンですが、広大な土地を切り開いたんだな。
山頂を喜ぶ人々の向こうには会津盆地が見えますが……でっかい。石高でいうと20万石くらいのパワーがあるらしい会津盆地。歴史を振り返るとかつては海に面した巨大な入り江だったらしく、喜多方市ではカイギュウやクジラの仲間、二枚貝の化石が出土するそうです。
凄い内陸の国だと思っていたのに、海のものが出るなんて……。
南側には福島県の水がめ猪苗代湖を見下ろすことが出来ます。こちらも会津盆地に負けないくらいスケールが大きい湖。裏磐梯と比較すると標高が低い影響か水田地帯が広がってます、序文に記載した山岳信仰系の寺社仏閣が基本南側にあるのは米と地形が関係しているのでしょう。
恵日寺があったのは画面の右側、猪苗代湖の西側だそうです。平安初期に開基し、明治の廃仏毀釈で廃寺になるまで千年続きました。会津地方の文化成熟に大きな影響を与えたといわれる恵日寺は全盛期には子院が三千八百坊もあったと会津風土記に記されています。盛衰も繰り返していて、平安末には越後の豪族城氏と関係を持ったことで最盛期を迎えますが、城氏が越後平氏ということで源平の乱の影響で急転直下の衰勢を迎えることに……。その後室町期に復興を果たしますが、明治政府の廃仏毀釈により歴史を閉じました。寺宝も同時に散逸してしまったといわれます。
色々調べると山と寺においては明治期は受難の時代で、廃仏毀釈は山岳信仰系の書物では日本史的に大きな失策と書かれることが多いです。民間信仰的な文化がここで一気に途絶えた面もあり、近代化と軍国化の負の側面が伺い知れます。
裏磐梯方面は平らな土地は少なく、山が入り組んだ複雑な地形をしています。猪苗代湖に比べると標高が高いなぁというのが肉眼ではよくわかるんだけど……。
今では一大避暑地の裏磐梯。別荘を一つ買ってもらえるなら裏磐梯が良いなと思っているRedsugarです。
旅酒を抱えた帰路の悲劇
午前11時20分、山頂出発。
山頂に滞在していたのですが、強風と底冷えする寒さで流石に辛くなってきたので下山します。山頂から少し降りるだけで一気に暖かくなるので、局地的な風で気温が随分と下がるもんだなと。
山頂を下から見上げると、形状的にも風の通り道になっていたんだろうなというのが良くわかります。
櫛ヶ峰を目指して先行する登山者を見ていると面白いなぁと思える場面に遭遇。大きな景色を前にして歩く人はずっと見ていられるから不思議です。街で人が歩いているのを見つめることはないけど、開けた山ではそれが出来てしまう。
櫛ヶ峰の荒々しい山肌が麓に向かって滑り落ちていくような斜面の先を登山者が歩いていく様子を見ていると、山の大きさを再発見できたような感覚になります。景色に対して人は思い込みや慣れが発生するから、山に入ると大きなものも大きく感じられなくなる。カメラを使ったりすると、そういう思い込みや慣れを外して巨大なものがちゃんと巨大に見えたり。
午後12時55分、櫛ヶ峯分岐。
登山者の方々を眺め、写真を撮りながらゆっくりと下山をしていたら稜線の滞在時間が随分と伸びてしまいました。
午後に入り太陽の日差しも急に傾き始めます。冬場は午後3時までに下山したいところですが、これだとぎりぎりになりそう。
櫛ヶ峰の山肌を眺めたあとは、一気に下山です。
午後2時00分、裏磐梯スキー場へ。
降りは時間がかかるだろうなぁと思っていたのですが、雪山って下山が早いの法則が磐梯山でも発動し気が付けばスキー場にたどり着いていました。雪がクッションになっているおかげで足の運びが凄く早くなるんですよね……。
裏磐梯スキー場を後にして妻の実家へと帰るのですが、朝から何も食べていなかったので流石に空腹。新年から営業していた裏磐梯ビューパークで塩味のラーメンを頂き、お土産に裏磐梯エリアの旅酒を購入して帰路につきました。
喜多方市へと降り立ち、そこから米沢を目指して雪のない冬道を帰りますが。悲劇はそのあと待っていました……、妻の実家にたどり着いた翌日、埼玉へ帰ろうと車の荷台を開けようとしたとき
あれ?ちょっと左の後輪パンクしてない!?
購入して1年も経っていないほぼ新品のスタッドレスタイヤが無残にもパンクしていました。ご実家と懇意にしている車屋さんに駆け込み、何とか一本中古のタイヤを融通していただき埼玉に帰れたもののスタッドレスは4本セットということもあり値段がつかない状態で廃棄することに……。
タイヤの処理をする際に業界の闇というか、納得できないこともあったけど翌月には新車が来るということで、ほぼ新品のアイスガード7を泣く泣く処分するという年始になりました。
ヴォクシー用のアイスガード7凄い高かったんだけど、金ドブになってしまった……。
さて、道の駅で購入したのはこちらの旅酒。見た感じいかにも観光客向けっていう感じで、味はどうだろうと思っていたこともあり、どんな酒も大体美味しく飲める熱燗でいただくことにしました。
というか1回冷酒で飲んでみたら「熱燗にしろ」というメッセージをすごい感じたので……。
登山用のカップにお酒を注ぎ、熱湯を入れたお鍋にコップを沈めます。するとふわ~っと沸き立つ甘い香りが部屋に充満します、やはりこれは熱燗にして楽しむお酒に間違いない。
上燗ほどの状態になったところでコップを取り出し、そばを食べながら飲んでみれば甘酒のようなまろやかで濃厚な甘みが口に広がる…これは美味い!!熱燗で正解!!
磐梯山下山後のお土産ですが、旅酒のほかにも家族4人で使えそうなあかべこの小物入れを購入してきました。福島の郷土玩具といえばあかべこですが、日本の郷土玩具の中でもトップクラスのかわいさだと思う……。
あかべこ、犬張子、姫だるま鈴あたりは本当にかわいい。
北海道の郷土玩具のクマの木彫りですが……、私の父が副業で掘っていた頃がありまして。家にはアイヌの民芸品と一緒に何個も置いてありました、あれはかわいいというよりも怖い部類に入る民芸品だとおもう。
コメント
コメント一覧 (1件)
こんにちは。
雪の磐梯山、やっぱり最高かよと言いたいですね。
稜線からの磐梯山は本当にかっこいいです、また登りたくなりました。
やっぱり年始とは思えないくらい雪が少なかったですね。