【東北】二岐山、新緑輝くブナ林とアスナロの原生林を楽しむ温泉登山

二岐山のブナの巨木

2024年5月10日、福島県は天栄村と下郷町にまたがる日本三百名山「二岐山」を歩いてきました。ブナの新緑が美しい登山道と、那須や福島の山々を一望する山頂を持つ標高1,544mの山です。
男岳と女岳という二つのピークを持つ二岐山は、ダイダラボッチが跨ごうとしたときにイチモツが山体に当り山が割れてしまったという伝説があります。
ブナとアスナロの原生林が残っていることからも、新緑や紅葉の時期が美しい森が山腹を覆っています。良く晴れた日を登山に選べば、萌黄色の若葉から降り注ぐ光のシャワー、苔むした岩々の織り成す深山の光景に心が癒されることでしょう。
登山口に隣接する形で日本秘湯の会会員宿である大丸あすなろ荘があり、下山後に日帰り入浴を楽しむことが出来るのもこの山の素晴らしい所です。大丸あすなろ荘は登山口にある温泉でも珍しい風呂を持ち、川床を利用して作った自噴泉岩風呂、渓流に降りることが出来そうな場所に作られた渓流露天風呂と記憶に残ること間違いなしな風呂が特徴的です。
新緑の季節、新緑がお勧めな裏那須エリアを楽しむ二岐山登山です。

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二岐山は下山後の温泉が本番。温泉を最高に楽しむために山を登ったといっていいくらい、温泉が凄い!!

目次

二岐山日帰り登山の概要

■概要
森がとても美しい山になります。那須岳の北に広がる裏那須のさらに北にあるのが二岐山です。
二岐温泉からは三本槍岳へと続く大白森山、甲子岳へ向かう登山道もあり、実は那須南北縦走を想定した場合のゴール地点でもあります……すごい歩きたい。那須茶臼岳をスタートして三本槍、甲子山、大白森山と歩いてあすなろ荘で一泊してから帰ることが出来るはず。
二岐山ですが、双耳峰になっています。その谷間は序文でも書いたダイダラボッチのイチモツが当たって削れたという面白い伝説を持つ山です。
さらに麓には平将門の妻桔梗とその一族が隠れ住んだと伝えられる御鍋神社があります。なんでも残党狩りが厳しくて一族は鍋だけ残して消えたんだとか……、その鍋を祀ったので御鍋神社。

今回の登山コースですが、男岳へ登ってから女岳方面から下山する時計回りでの縦走になります。南から北へ向かうルートになり、太陽の日差しと森の光を思う存分味わいながら歩けるので初夏のシーズンは時計回りがいいのではないでしょうか?
下山後は大丸あすなろ荘で絶品の秘湯を心行くまで楽しみます。

■アクセス
日帰りは基本自走になります。
須賀川駅から二岐まで1日2本バスが出ていますが、着いてから帰りのバスまでが4時間しかないので宿泊が安全でしょう。
自走の場合は矢吹IC~鏡石ICあたりで下道に出て、国道118号線を西に進み二岐温泉へ向かうルートとなります。

■コースタイム
登山口駐車場8:25→二岐山登山口9:20→ブナ平10:00→男岳山頂10:45→女岳11:25→二岐明神前12:30→登山口駐車場13:10
合計登山時間 約5時間、気軽に歩ける周回登山コースでした。

新緑輝く二岐山の森を歩く

午前8時25分、登山口駐車場。
おはようございます、Redsugarでございます。本日は福島県と栃木県の境目天栄村にある二岐山を目指して車でやってきました。東北自動車道は矢吹ICを降りた後は羽鳥湖高原を抜けて二岐温泉を目指してひたすら車を走らせて……二岐温泉までやってきましたが。登山者用の非常に広い駐車場が完備されていて感動しました。

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ここで登山とは関係ない報告ですが、これまで乗っていた08年式のヴォクシーから23年式の新型シエンタに乗り換え、燃費はリッター23km、自動運転で速度違反で捕まる心配もなくなりました。やっぱり新車って最高~~!!!

農家さんが用意してくれた湧き水

二岐温泉登山口の周辺には数軒の農家さんと温泉が軒を連ねるだけ。農家さんは朝から忙しく働いているのですが、車道脇に登山者も使ってい良いよという形で湧き水を用意してくれています。ブナ林が美しい二岐山の山腹から湧き出る清水、美味いに決まっている。

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往路ではお世話にならなかったけど、これが帰りに凄まじい幸福をもたらせてくれることに。

満開の八重桜

農家さんの軒先には八重桜も満開。5月と言えども山間部は気温が低く、登山口まではひんやりとした空気を肺一杯にして歩くことが出来ます。

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冬の空気と違って春と夏の空気はいろいろと重いというか湿っている感じがあるけど、こういう場所の朝の空気は澄んでて良い……!

まずは橋を渡り、大白森山登山口がある林道を目指します。林道はロープがかけられていますが一応外して車を通すことが出来るようです。二岐山の駐車場は僕が停めた温泉側に一か所。二岐山男岳の登山口前にもとても広い駐車場が存在しています。

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この大白森山ですが、那須連山の最北に位置する大白森山、甲子岳といった山々への登山口になります。一部荒れている場所があるとのことですが、北那須の名峰赤崩山や甲子岳は魅力的です。

旺盛な緑の森

二岐山はブナ林やアスナロの原生林があるということですが、麓からすでに自然が強い雰囲気がする……!

防砂堰堤

男岳の登山口までは1時間ほど林道歩きが続き、防砂堰堤を横目に林道を歩き続けます。クマも出没するエリアなのでクマ鈴は必ず携帯しましょう。

道中にも湧水があり、二岐山の水を心行くまで楽しめます。今日も埼玉の美味しい水を背中に積んできてしまったので、コップ一杯分だけ頂くこととしましたが冷たくて美味しぃ~!

林道を進んだ先にある駐車場

林道を進み続けると御鍋神社付近に大きな駐車場が現れます。こちらが男岳側の駐車場で、かなりの広さです。
一応先行者??の方の車が一台駐車されていました。

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こちらの近くにある御鍋神社ですが、平安時代初期に関東にて反乱を起こした平将門の妻桔梗の伝説が残る珍しい神社です。平将門伝説は当ブログでは雲取山の迷走ルートでも出てきましたが、奥さんがまさかの登場。
序文でも書きましたが、妻である桔梗とその一族が当時山奥の秘境であったこの地に逃げ込み暮らしていたが、いつの間にか鍋を残して消えていた……とか。その鍋を祀って御鍋神社としたとされています。

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なんだって奥さんまで祀ったんだろう?という所ですが。日本三大怨霊とまで言われ現在まで名が残る平将門の妻となれば、畏れ多いものがあったんでしょうね……。

二岐山登山口

午前9時20分、二岐山登山口。
駐車場のすぐそこにあるクマの看板が立派な二岐山登山口です。
ここから原生林の森を歩き、山頂まで片道2時間ほどの登山を楽しむこととなります。

朽木に住むきのこたち

入山して早速天然のきくらげの一種を発見しました。黒いブツブツのキノコといい初っ端から景色が期待できそう。

新緑のブナ木

登山口からすぐにブナ林へと入りますが、ブナの巨木が残された森を歩くのはなんでこんなに楽しいのでしょうね。

八丁坂を登る

登り始めてすぐにやってくるのが八丁坂。登山ではおなじみの急登の合図ですが、そこまで厳しい登りが続くわけではありません。

新緑のブナ林の登山道

八丁坂というのは名前だけで、ブナ林が目立つ広葉落葉樹の明るい森が見渡す限り広がります。足元は木の根が張り巡らされ、緩やかな登山道を歩く道は森林浴が気持ちいい。

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フィトンチッドに身体が癒されている……ッ!!
山岳信仰の本にもたまに出てくるフィトンチッドって疑似科学っぽくてマジな感じはしないけど、マイナスイオン的な感じでいうのはアリかなぁ。

苔に覆われた岩の道

登り続けると2mくらいの苔むした岩がゴロゴロと転がる岩歩き地帯がやってきます。ここは雰囲気が大変よく、奥武蔵や奥多摩ではなかなか味わうことが出来ないブナの森+原生林特有の苔むす大地を思う存分に楽しめます。

しばらく登り続けるとあすなろ坂というポイントが現れます。翌檜と漢字で書きますがヒノキ科に分類される常緑針葉樹、あすなろの原生林がここから広がっているよーというエリアになります。
あすなろは一般的には「ヒノキに似てるけど劣るところもあるから、明日はヒノキになろう」ということであすなろと言うらしい(異説もある)

ピンクテープが施された朽木

ピンクテープはバッチリ。地元の方に整備されている山ですが、その整備具合は素晴らしい。

苔と岩と木の根の道

あすなろの森は針葉樹の森ということでブナ林と比べると影が強い森が続きます。しかし、杉林のような緑の砂漠的な景色は全くなく、旺盛な萌黄色に輝く若木に覆われた森に巨大なヒノキの木が伸びているという、東北的な景色が見どころになります。

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苔むす岩、あすなろの巨木、ブナの新緑、裏那須エリアの森は滅茶苦茶綺麗です。ちょっとハマりそう!

那須と福島の山々を眺める二岐山山頂へ

ブナ平

午前10時00分、ブナ平。
登山口から約1kmほど来たところでブナ平と呼ばれる平地に出ます。名前の通りブナの木々と笹に覆われた明るい森が広がります。

明るい森

若いブナの木々が一斉に芽吹く、降り注ぐ日差し合わさって景色がまぶしい森です。若いブナ林じゃないと味わえない爽やかな空気を肌で感じながら歩くのは気分が良いものです。

ブナ平には少しくぼんだ場所があり、そこは水が溜まる場所にもなっているのですが。目に見える範囲の水場にはカエルの卵がびっしり、孵化するときをじっと待っているようです。

水たまり周辺は沼地になっていて、泥炭状になった道が少しありましたが難なく抜けて山頂への登り坂へ。
標高を上げると木々の肌は白くなり、ブナの森からカバノキの森へと姿を変えていきます。

残雪が残る道

山頂手前からは降雪の名残があり。地面にはうっすらと溶け残った雪が残っていました。雪と新緑を同時に見られるのは寒いところの特権ですね。特にブナ林と残雪となれば、新潟や東北の春を想起させます。

午前10時45分、男岳山頂。
雪が残る登山道を登りきり二股山の男岳山頂へと到着しました。山頂部は森林限界になっていて360度の眺望が広がります。二股山からよく見えるのはやはり……那須!

二岐山から見る那須赤崩山

山頂からは赤崩山、流石山といった那須北部の山々を見ることができます。写真中央の尖ったピークが赤崩山になりますが、その手前側に広がる新緑の原生林は大白森山へと続く山並みのようです。
二岐山の西側、下郷町へと降りてゆく斜面は登山道もなく、上から見ると新緑が輝く原生林が広がっているように見えます。

二岐山から見る会津駒ヶ岳方面

下郷から南会津へとつながる山間の街並みを眺めてみると、春の霞んだ空の向こうに白い稜線が浮かび上がります。
平たい形から平ヶ岳を想像しましたが、位置的に会津駒ヶ岳から窓明山を含んだ山塊のようです。

二岐山から見る飯豊山

少し北には福島、新潟、山形にまたがる巨大な飯豊山が姿を現します。アクセスが大変な山ですが、また稜線を4日ほど歩く登山をやってみたい。

二岐山さんから見下ろす風車

二岐山の麓には風力発電用の風車があるらしく、山頂からはその姿をよく見ることができました。

山頂に咲くシャクナゲ

男岳の山頂を出発しようとしたところ、稜線部にはシャクナゲの木が多いことに気が付きます。目の前には春の日差しを浴びて花を咲かせようとするつぼみが。

雪道を降る

山頂の景色を楽しんだあとも登山は続きます。男岳が終わったら女岳へ向かうのですが、ダイダラボッチがイチモツをぶつけて出来たとされる鞍部を越えなくてはいけません。山頂からの下り坂にはカリカリになった雪が残るため、慎重に下っていきます。

午前11時25分、女岳。
男岳から45分ほどで女岳に到着しました。こちらは標高が低いこともあって樹林の中のピークとなり眺望はありません。代わりに山頂で結婚式を挙げた方が残したものなんでしょうか……、記念樹という看板が張られた夫婦の木が目立ったいました。

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浅間山とかで結婚式はよく聞くけど……、二岐山のような山深いところで結婚式。本当にそんなことがあるのだろうか?

地獄坂

女岳で本日の登りは終了。ここからは地獄坂と名の付く急登を一気に下って風力登山口と呼ばれる場所を目指します。山頂から見下ろした風力発電側の登山口となり、下山後は林道を歩いて二岐温泉に戻るという訳です。

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気分はもう温泉です、地獄坂をさっさと終わらせて秘湯二岐温泉に入りたい……。

大丸あすなろ荘の岩風呂と露天風呂を目指して下山

地獄坂の下りですが、言うほど地獄ではなく単純に斜度がキツイ。つまり下山になれば早く降りれる道です。
斜度が急すぎる場所はトラロープの補助があります。

新緑とミツバツツジ

下山中、ブナの新緑の中には可憐なミツバツツジが踊るように咲きます。

輝く新緑の葉

新緑が濃い二岐山へ来て本当に良かったです。登山口からすぐにこの黄緑色の空を眺めることが出来たのですから。

生命力を感じさせるブナ木

ブナは生命力を感じることが出来て大好きです。巨木があれば神社の御神木のように触ってパワーを分けてもらおうとするのは登山者あるあるか。

午後12時30分、二岐明神前。
地獄坂と名がつくほどに急な斜面を降りきると二岐明神と書かれた鳥居の前に出ます。御鍋神社とは別に、風力登山口側にも立派な鳥居が設けられていました。
ここからは車道に降りて二岐温泉の駐車場を目指します。

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登山はここで終了。新緑に恵まれた素晴らしい登山でしたね!

駐車場へ帰る道中にいくつかの看板が目に入りますが、本日お邪魔するのは大丸あすなろ荘です。
注意点ですが、日帰り入浴だけはお休みのタイミングがあるので、訪れる際は事前に日帰り入浴をやっているかチェックしてください。

農家の岩清水で手を洗う

午後1時10分、登山口駐車場。
農家さんが用意してくれていた二岐山の清水で手と顔を洗い綺麗さっぱり、気分も爽快です。
二岐山の登山用駐車場の良い所は周回コースの中間地点にあることです。男岳側まで行っちゃうと周回後に余計な林道歩きがあるから、温泉の隣の駐車場が一番おすすめかな。

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うぉおおおおっ!この水きもちぃいいいッ!!!!圧倒的開放感!!

農地脇に咲くチューリップ

農家さんが植えたんだろうか?道端には数本のピンクのチューリップ。景色に華を添えていました。

大丸あすなろ荘入口

本日の本番行事と言っても過言ではない大丸あすなろ荘へと入場していきましょう。どんな宿だろうと思ったら……ミシュランで星が付きそうなくらい立派な旅館でびっくりしました。まず門構えがしっかりしている。

とても珍しい岩風呂

本日の男風呂は内風呂以外にも自噴泉岩風呂がありました。これが二岐山に登りに来た登山者に絶対にお勧めしたいあすなろ荘の秘湯になります。亀裂よりコンコンと湯が湧き出る川床を利用した浴槽で、湯船の底にはポットボールがあったりと非常に珍しい温泉です。

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ここは訪れた瞬間歓声を上げてしまうほど素晴らしい温泉でした……!

川沿いに楽しめる露天風呂

次に訪れたのは渓流露天風呂。これも素晴らしい温泉で、当ブログ史上最高の渓流温泉と思っている湯ノ花温泉の石湯に匹敵します。渓流は危ないから入らないでね?ということですが近い……渓流が近いぞ!!!
温泉に入って温まり、脚が届きそうな渓流を眺め、そしてまた温泉に入りと繰り返すことが出来ます。

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まさに、まさに大自然と全身で一つになれる温泉でした。

渓流を眺めながら楽しむ露天風呂
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いやー、これ見たら渓流に足つけたくなっちゃうよね。

下山後はそのまま山形の実家へ家族を迎えに行く必要があり、福島県南部を出発し東北中央道で山形市を目指しました。お昼ご飯を福島で食べようかなぁと思ったのですが、南陽を通りかかる時間が「龍上海的には空いている時間」になることに気が付いてしまったのです……。
結果、南陽市の龍上海本店で毎度の辛味噌ラーメン大盛りを注文することに成功するのでした……。

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龍上海本店は確かにおいしい。赤湯らーめんの青のりの香りというか、磯っぽさがある出汁と佐野らーめんのようなもちもち面が美味しいんだよねぇ。

山頂から見る赤崩山

二岐温泉から登る二岐山、裏那須を見渡す眺望と絶品の温泉を楽しもう。
新緑時期の二岐山は素晴らしい場所でした。これだけ森が美しいのだから、紅葉時期もまた素晴らしい景色なのでしょう。特に山頂から赤崩山方面に広がる斜面は紅葉時期は染まり切ってくれそうです。福島県と栃木県の間には実はいろいろと面白い山があります。那須に注目しがちだけど美しい稜線の流石山。全国の斎藤さんを呼んだ斎藤山。荒海山等、まだまだ楽しそうな山があるので訪れたいところです。
二岐山は山自体も楽しいけど下山後の温泉は天国そのもの、ぜひともポットホールの川床と戯れ、渓流の流れに目を癒されてみてください。
人生最高の山は続く。

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