2022年11月11日、滋賀県と岐阜県の県境にある日本百名山の一座「伊吹山」を歩いてきました。滋賀県最高峰で標高は1,377mとなりますが、その姿は標高に見合わず大変貫禄のあるものになります。
近年は開拓が進み山頂直下まで車道が開通している伊吹山ですが、登山で行くとなればやはり麓から歩きたい。
関東に住んでいると遠く感じる滋賀の山とあって中々足を運ぶことが出来なかったのですが、調べたら新幹線で簡単に日帰りすることが出来るということで、今回は新幹線で行く伊吹山日帰り登山です。
伊吹山は標高自体はそこまで高くないため、シーズンとしては春、初夏、秋がねらい目かなとRedsugarは考えていました。お花の山としても有名な伊吹山ですが、その時期はやっぱり暑い!ということで今回は紅葉の伊吹山を選択。
山頂を歩き回った後は米原の田んぼを温泉を求めて彷徨います……。
新幹線で行く秋の近畿地方日帰り登山の始まりです。
関東から東海道新幹線を使って向かう百名山登山、旅情に溢れた非日常のひと時をお楽しみください。
伊吹山新幹線日帰り登山の概要
東海道新幹線で向かう近畿の山
2022年11月11日午前5時40分、品川駅。
東京駅からおはようございますRedsugarでございます。東海道新幹線始発に乗るために東京に来るなんてビジネスマンっぽい雰囲気があるなぁ~、と思いながら私はガッツリ登山の格好をしています。本日はですね「平日」です、なので早朝の新幹線ホームには出張に向かうであろう方々が沢山……。
オープニングから背徳感が最高潮に満ち溢れた登山だなおい、平日に新幹線で百名山は……やばい予感しかない。
東海道新幹線ですよ!!登山用途では……滅多に乗りません!!
登山で乗るのはもっぱら北に行く新幹線だから太平洋沿いに走る新幹線の車窓からみる景色が新鮮です、赤城山じゃなくて富士山が見えるよ!!やっべぇ超エモくね!?と一人で盛り上がりながら駅で買ったカツサンドをモリモリと食べるRedsugarでした。
始発で乗車した東海道新幹線の車窓から見える富士山からしか接種できない栄養素ってあるわ……。
伊吹山へのアクセスですが少し変則的でして、東海道新幹線の「のぞみ」を使って名古屋まで行った後に「ひかり」に乗り換えて米原に向かうことになります。この新幹線乗り継ぎが慣れてない人間にとっては中々緊張するイベントでした。
東北新幹線や上越新幹線ではまず味わうことのないイベントだから手に汗握ったぜ……!
名古屋からひかりに乗り換え米原に向かう道中見えてくるのは富士……じゃない伊吹山です。正直伊吹山をじっくり眺めたのはこれが初めてだったのですが、標高はそこまで高くないながら風格が他の山と比較にならなくてびっくり。
その積雪量の多さや石灰質の地質の影響で森林限界から上の世界みたいな山肌を持つ伊吹山。周りの山に比べると異質としか言えない風貌だ……。
午前8時10分、米原駅。
めっちゃ関西弁の学生さんが歩いてる、耳にやさしい関西弁が気持ちいいなぁ~。
北海道出身のRedsugarは西の言葉が大好きです。
通勤時間の真っただ中の米原駅、学生や通勤客の間を縫って近江長岡行きの電車が出るホームへと向かいます。
米原ってネットミーム的な米原ダッシュ(米原駅での乗り換えの際に走ること)くらいしか情報を持ち合わせていない状況でしたが、Redsugarの中では伊吹山の窓口かつそれなりに栄えていて、耳にやさしい言葉があふれている幸せな場所として記憶されました。
午前8時45分、近江長岡。
近江長岡方面の電車に乗る人って滅茶苦茶少ないなと思いつつ、やってきた電車に揺られ到着したのは伊吹山の最寄り駅となる近江長岡です。東京駅を出発して約3時間ほどでここに降り立ったと考えると新幹線の偉大さがわかる。
自走だったら夜の23時に出発するくらいの気合が必要な距離を3時間で……、新幹線の快楽にドハマりしそうです。
北陸新幹線や上越新幹線で味わった新幹線+登山の悦楽が東海道新幹線でも味わえるとは!!幸せ!
近江長岡駅に到着したのは良いのですが、微妙に電車とバスの接続具合が悪いためバスの出発まで少し待つんですよね……。ということで、そんなに料金がかからないということで駅前のタクシーに飛び乗って登山口を目指すことにしました。
近江長岡の駅前にはタクシーが数台、通年で登山客が来るので朝方は客に困らないのかもね。
午前9時00分、三ノ宮神社前。
タクシーに揺られて十数分ほどで伊吹山登山口である三ノ宮神社のバス停にやってきました。平日なのでひたすらに静か……。というか朝の新幹線でやってきたバキバキに気合の入った登山者は私以外いなかったようです。
神社に参拝を済ませたら伊吹山山中へ出発です。
ついに伊吹山に足を踏み入れる、そんなときに思い出したのは日本武尊の伝説ではなく石田三成でした。明らかに大河ドラマの影響なんだよなぁ。
午前9時15分、登山開始。
三ノ宮神社から伊吹山登山道一合目へ、もっと整備されているもんだと思ったらかなり普通の登山道でびっくりしました。大きめのゴツゴツした石がゴロゴロ転がっている登山道ですが、よく見たら登山客のゴムで表面が磨かれていましたね。
2合目付近までは樹林帯を登っていきます。タクシーの運転手に聞いたけど伊吹山は若狭湾からくる空気の影響で低層の雲が出来やすいんだとか。この日も低い雲の影響で一合目から二合目までは靄に光が差し込む景色が続きました。
樹林帯を抜けると伊吹高原荘という宿泊施設の隣にやってきます。施設の裏側にあるもみじが蛍光色かというくらい輝く黄色でびっくりした。
伊吹高原荘からは樹林帯が終わりススキが目立つ草原地帯が始まる。伊吹山は日本本土の腰のくびれ部分に近いというか、若狭湾と伊勢湾に挟まれた特殊な地形ゆえに冬は豪雪地帯になることもありスキー場があったほど。
登山道を歩いていると過去の時代を刻んだ異物が景色の中に点々と転がっていることに気が付く。
かつてスキー場であっただろう草原地帯。今はパラグライダーを楽しめるらしく、早朝にもかかわらず大きなキャノピーを背負った人が坂道を登っていく。
一合目からほどなくして二合目に到着、山頂までの距離はまだまだ。距離にして4.3kmとのことだが標高差で考えると約700m近くあるのかぁ……、スカイツリー一つ分よりも遠い状況です。
草原地帯に切り開かれた登山道を黙々と登る。振り返ると木々が全くないためパーッと開けた景色が目の前に広がる……のだが、この日はなぜかすごい霞んでいて琵琶湖はおろか数キロ先の麓さえ見えなかった。
滋賀までやってきたんだから琵琶湖を見たかったなぁ……。
蒼天へ抜ける眺望の伊吹山
二合目を抜けて三合目に向かう道中、ススキの穂が躍る草原の向こうに見えるのは巨大な伊吹山。裸地化した山肌が特徴的、聞けば積雪だけではなく鹿の食害の影響もあり裸地化が進んでいるとのこと。
日本全国鹿増えすぎなんだよなぁ。
午前10時25分、伊吹山三合目。
森林限界的に木が生えていない伊吹山を眺めながら三合目のトイレに到着。ここから先は上野口コースを登って一気に標高を上げていくことになる。麓から見ていると崖みたいな斜面だなぁと思っていたんだが……登ってみるとまぁきついですわ。
道中は紅葉した木々が点在しており、急坂を登って一息つく際の目のやりどころになっていた。
伊吹山は木が生えてないんだけどまだ比較的健康的に見える山肌だ。似たような景色を中倉山で見たことがあるが、やはりあちらは由来が煙害ということもあり、どこか不健康さを感じさせる山肌なんだよな……。
九十九折に作られた登山道を登っていくと中腹に六合目避難小屋が見えてきた。僕が登った時はこの石室の避難小屋は健在だったのだが、2023年の豪雨災害で斜面の崩落に巻き込まれてしまったらしい。
午前11時10分、伊吹山六合目避難小屋。
避難小屋からの眺めはよく、空気が霞んでさえいなければ遠く琵琶湖も見渡せたんだろうなぁ……。
裸地化が進む山肌は見通しだけはよく、目の前には霞んだ青空がどこまでも広がっていた。
避難小屋から先は膝に来そうな露岩が多い九十九折の登山道を歩いて山頂を目指していく。紅葉なんて終わってしまった山肌が続くので11月は特にみるものが無いという感じ。
山頂部にやってくると細かい石が草地に転がる荒涼とした景色が広がっている。
やっぱり鹿の食害の影響がでかいのかなぁ~などと思いながら小屋を目指します。
午前11時55分、伊吹山山頂。
山頂に到着すると立派なトイレがまず登山者を出迎えてくれる。車で山頂直下まで来れるから小屋やトイレがきれいな建物なんですよね、ちょっと現実に引き戻された。
そして、ちょうど山頂に到着するタイミングで麓の雲が上がりガスってしまった。
山頂の山小屋は飲食のバラエティが豊かな感じ。山頂は観光地化されている趣もあるので広く歩き回るのがお勧め。
まず伊吹山山頂の日本武尊(やまとたける)にご挨拶。日本武尊と伊吹山の関係性を簡単に説明するとですね……。
日本武尊は古事記や日本書紀に登場する東国征伐を行った伝説的英雄。西国の蛮族と戦った後に当時はまだ大和ではなかった関東あたりで戦ってきなさいと言われて赴くわけです。そんで道中、いろんな蝦夷と戦い征服して陸奥の国までたどり着きます。道中、割と荒々しくその地の神や民と戦った日本武尊は長野経由で大和に帰る途中、結婚を約束していたミヤズヒメと伊吹周辺で少しの間暮らします。
そんな二人の元に、伊吹に悪い神がいるとの知らせが。日本武尊は伊吹の神を成敗しに向かいますが、そこで敗北して天に召されます。
読んでみると割と調子乗って戦って負けているような気もするが……そんな感じの関係性。
お話としてはなんだそれと思う部分もあるのですが、当時の東国の扱いやその入り口でもあった場所に聳える伊吹山の信仰は調べてみると結構面白い。古来の日本の中心に近い山には人の歴史が長いこと刻まれてるんだなぁと感心します。北国で育つとそういう純日本的な歴史との身体的な触れ合いがないんですよね。
伊吹山山頂から北~東側の山々を眺めてみましょう、伊吹山とはずいぶん雰囲気が違います。なんというか奥武蔵や奥多摩みたいな普通の山が連なっている……。
地図で見るとビビるが、越前大野のほうまで真緑というか低い山しかない。めっちゃ山深い場所が延々広がっていく……。
すっかりガスがかかってしまった山頂、だだっ広い草原で視界が0はちょっと怖い。
ガスはすぐに抜け、陽光が降り注ぐが周囲にはまだガスが多い。海風の影響なのか目まぐるしく天気が変わる一日。
午後12時30分、松仙館。
流れるガスで晴れたり曇ったりの山頂を徘徊していたのですが、下山まではかなり余裕があるので松仙館で小休憩を入れることにしました、天気もその間に回復してくれるといいなという願いを込めて。
小屋の中はなんだか飲み屋のような風情がありました。おいてある日本酒は彦根の酒蔵ひのやさんの六瓢箪かな?
一升瓶が平然と並んだ小屋のカウンター、ここで一夜を過ごせば大変上機嫌な夜を過ごせそうです。
昼間ということもあり、お手製プリンを頂きましたが疲れた体に糖分がじっくりと染み渡り大変美味しかったです。
メニューが豊富な伊吹山山頂の山小屋。小屋番さんと常連のお客が昼間から酒を酌み交わし人生相談。それをBGMにストーブの隣でプリンを食べる、なんというか……山小屋の風情があるなと思った瞬間。
ダメだ、晴れねぇと諦めて小屋を出た僕はそのまま西登山道へ赴くことにしました。琵琶湖の眺望が良いとされる場所へ向かう道中で振り返ると伊吹山の山頂が良く見渡せます。
西側に行くと積雪対策の柵なんだろうか、巨大な防雪柵のようなものが置かれていました。
そして肝心の眺望は……ない!!!霞とガスの影響で琵琶湖を見ることが最後まで出来なかったのよ……。
午後1時30分、伊吹山山頂。
山頂の天気があんまりよくなかったなと思って下山を開始、九合目まで降りたところで……天気が回復しました。
一気に晴れて青空が広がり始めたので、苦虫を嚙み潰したような顔で山頂まで登り返しました。
一合分登り返すのは結構しんどいものがあった、でもおかげで青空の山頂を満喫できました。
晴れたついでに東登山道方面をぐるりと一周して下山することにしました。個人的には西登山道よりも穏やかな道が広がる東登山道は伊吹山山頂では一番お勧めなエリアでした。晴れた空の元歩く草原地帯、気持ちいいに決まっています。
東登山道から見る山頂方面の「山」っていう感じの隆起感もいいのよ、こっち側は絶対歩いたほうがいい。
草原地帯にはぽつぽつと石灰質と思われる石が姿を見せます、ポツンと姿を見せるそれらはRedsugar的に大好物な被写体で、大変楽しく歩き回ることが出来ました……!
日本武尊に青空の山頂を満喫できたことを感謝!
すっかりと青空が広がる伊吹山山頂、山頂から見渡す空には11月だというのに夏のような雲が浮かび上がるのでした。
伊吹山下山後に歩く米原の田んぼと温泉
午後1時55分、伊吹山下山開始。
結局山頂に2時間近く滞在してしまった……、日帰り登山としては滞在最長記録な気がする。青空も満喫できたので下山して温泉を楽しんで帰ることにしましょう。
伊吹山表参道はピストンになる。下山時刻を計算するとちょうどバスに間に合うはず。滋賀の温泉楽しみだなぁ~!!
さっき一回降ったよな……と思いながら歩く九合目。伊吹山を歩いて分かったが下りのほうが大変、結構膝に来る道なんだよね。
午後2時25分、伊吹山六合目避難小屋。
登りは長かったが下りは滅茶苦茶早いのが伊吹山でした、急坂に切られた登山道なので下りが速いのは当たり前か。
六合目避難小屋から三合目までも非常にスムーズに下山。斜度がきつくて自然と小走りになっちゃう道のわきにはもりもりと茂ったススキが風に揺れています。
伊吹山を見返すと西側から登ってきた雲がちょうど山頂にかかり始めていました。今日に関しては粘り勝ちかな、山頂で青空を満喫できたので良かった。
登った後は一合目にある伊吹高原荘に立ち寄り登山バッチを忘れずに購入しましょう。気付けの一杯でマウンテンデューを一気に流し込んで気分転換もばっちり。
午後3時30分、伊吹山登山口。
山頂から1時間半ほどで登山口に帰ってきました、下山の速度が恐ろしく早いな伊吹山。
伊吹山登山口から近江長岡の駅に向かうバスに乗車しますが、温泉に入りたいのでジョイ伊吹にあるいぶき薬草湯を目指しましょう。
午後3時50分、伊吹薬草湯休業のお知らせ。
悲劇、何たる悲劇だろうか、たまたま休業日を引いてしまった……平日だからか?俺風呂入れないの……?
嘘でしょ?お風呂セット持って登りましたよ、その努力は無駄だったんかーい!?
ジョイ伊吹前で降りて威風堂々と温泉を目指したRedsugarの目の前に現れたのは無慈悲な赤看板でした。
歩いて駅に向かうにはかなり距離がある、ていうか風呂入りたい。
地図で温泉を検索するとどうやら数キロ先に営業中の温泉があるようなので、そちらを目指すことにしました。
目指すは美肌の湯「鴨池荘」です。ジョイ伊吹からは3キロ程度離れた所にあります。僕は歩く速度が速いので30分もあれば行けるはず、米原の水田地帯を突っ切り温泉を目指します。
これが意外に楽しい散歩だった、登山が終わった後に知らない街を歩くのはやっぱり楽しい。田畑が広がる米原の田舎道から見上げる伊吹山は地元の人にとってシンボルなんだろうなと思える特徴的な姿をしていた。
午後4時20分、鴨池荘到着。
伊吹山と田んぼのコラボレーションが楽しめたので温泉までの道中は退屈しませんでした。鴨池荘で汗を流した後はビールで乾杯。ほろ酔いで帰る手段を探す。
鴨池荘に到着したのは良いんですけど、帰りのバスに関しては「何となく帰れそう」っていう温度感。酒を飲みながらしっかり調べると意外と早く埼玉に帰れることが判明。新幹線のすばらしさを改めてここでも感じました。
日が暮れる米原の田んぼから眺める伊吹山はすっかりと晴れていました、夕方の5時近い時間にそんな伊吹山を眺める、近畿地方にいる自分がなんだか可笑しくなってきた。登山という行為の中に含まれるこうした「旅の成分」が持つ非日常感っていいよなぁ。
午後5時35分、米原行バス乗車の後、午後6時台の新幹線乗車。
あっという間に日が暮れて、暗くなったタイミングでバスがやってきました。正直マジでバスが来るのかすげぇ心配だった。近江長岡についた後、すぐにやってくる電車で米原に戻ったんですが……タイミングよく新幹線が来てしまったので飛び乗ってしまったのが唯一の反省点、米原で何かご飯を食べようと思っていたのを忘れてました。
新幹線の車内でご飯を食べていないことに気が付いたのですが後の祭り、車内販売のおつまみを食べながらビールを飲んで東京駅までのひと時を過ごしましたとさ。
これにて東海道新幹線で行く秋の伊吹山登山旅、終了!!
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