2024年3月3日、奥武蔵にある関八州見晴台を歩き越生梅林へと下山する梅見ハイキングを楽しんできました。関八州見晴台は奥武蔵グリーンラインからほど近くにある標高771mの展望台となります。
梅の花の季節、関東には梅園が多くどこに梅の花を見に行こうか悩むところではあります、埼玉県であれば越生梅林は日本酒の名前にもなるくらい、郷土の名所として知られていますが登山を絡めて歩けるのかが疑問でした。
今回は越生梅林での花見と登山を思う存分楽しむため、西吾野駅を出発し関八州見晴台に登り飯盛山を経由し大平尾根を歩いて羽賀山から越生梅林へと向かう……奥武蔵の山の中をひたすら歩き東西横断で梅の花を見に行くという登山になります。
越生梅林へたどり着けば、舞台で歌う人々、ミニSLで遊ぶ子供たちの声が聞こえる梅まつり。
地酒と言えばここ、佐藤酒造さんへ行けば樽酒で用意された越生梅林を楽しめる。
季節の花を愛でながら酒を楽しむ花見、梅の花見は奈良時代から続く由緒あるレジャーということで、梅見の酒を楽しむための事前運動を兼ねて、奥武蔵は関八州見晴台登山へと向かいます。

梅林と適度な登山を組み合わせる、見どころの少ない関八州見晴台へ行く理由を見つける……その二つが組み合わさった時。関八州見晴台梅林ツアーの工程が誕生する!
関八州見晴台梅林鑑賞ハイキングの概要
西吾野から関八州見晴台を目指して






午前8時30分、西吾野駅。
おはようございます、Redsugarでございます。
本日は越生梅林を目指すために、山を挟んで正反対の西吾野へやってきました。目指すは関八州見晴台を経由しての梅林での花見酒です。



最初から酒を目指す、最近の低山は最初から山以外を目的にしています。奥武蔵の山々を単純な登山対象として楽しむのは中々ハードルが高い。ですが修験、地理、地酒といった何か別のものを組み合わせることで山歩きの魅力は数倍になっていきます。


本日のコースは西吾野を出発したら昭文社の地図でいうパノラマコースを歩いて高山不動尊を目指します。
秩父へと向かう道沿いに築かれた山間の集落を繋ぐ道路からはすでにいい雰囲気が出ている……、山を歩きすぎてこういう道の写真を見るだけで「空気がよさそう」と思ってしまう。


駅を出て北を目指し進むと線路下を通過する場所へやってきます。登山口はこの線路を越えた先にある木材工房の先です。


線路を越えるとすぐに吾笑楽という休憩所と木多川工房さんの工場が見えてきます。冬に歩くと写真に写るような冬枯れした栗の木が目印として現れるはず。



工房のシンボルツリーなのか、朝の陽ざしの中に浮かび上がる栗の木は生命力にみなぎっていました。


工房のすぐそばに高山不動と書かれたプレートがあります、ボロボロになっているのでいつ朽ちるかもわからない木の板……。


冬枯れしたパノラマコース登山開始となりますが、冬枯れした姿を見て思うのは……緑が茂る時期は草が五月蠅そうということです。緑が生い茂る頃の里山は登りたくないなぁ。


奥武蔵としては一般的な、薄暗い杉林と明るい照葉樹の森が交互に繰り返される森が続きます。ひと気は全くなく、とても静かな山歩きを楽しめるのが良い所。



関八州見晴台は人気の登山スポットと聞きますが、どこから登られることが多いのだろう?メジャーなコースを選択したつもりだけど、人とすれ違うことがまれだった一日。


杉林へと足を踏み入れると地面には枝打ちや林業の痕跡が見られます。緑の砂漠と呼ばれる杉林ですが、足元には常緑樹が茂り始めていて、生態系的には遷移の駒を進めようとしている状況らしい。



人為的攪乱をし続けることが杉林の手入れだけど、お金がなく手入れが進まなくなる現在。自然は少しづつ遷移を進めて元の森に戻ろうとしているのかも?


杉林の中にはしっかりと案内板があり、凛々しい明朝体でバチッと関八州見晴台と書かれています。
市川崑っぽいというか、岡本喜八の沖縄決戦に出てくるテロップを感じさせる。


高山不動への道は古道を思わせます。降り積もった落ち葉の下には踏み固められ、木の根の姿もない道が続く。






午前9時50分、高山不動。
石地蔵を越えてしばらく歩くと高山不動尊へ到着です。境内には数人の登山者が、どこから登ってきたんだろう?
高山不動尊は関東三大不動の一つで伝承によれば開山は600年代(7世紀!)ということで、登山をしてきて出合った仏閣ではかなり古い部類です。周辺には不動滝、白滝、虚空蔵山と山中での修行、修験の痕跡が見受けられます。



境内に入るとお地蔵さんや変わった形の木々と不思議な空間が広がる。




高山不動は実際に山岳修験の道場として栄えていた場所になります。開山の伝承を読むと中臣鎌足の第二子が関東鎮護のために建てたもの。中臣鎌足とは中大兄皇子と共に大化の改新を断行した中央豪族で死に際して藤原の姓を与えられ、以後彼の一族は藤原氏として繁栄していきます。
そんな歴史を持つ高山不動ですが、11世紀ごろの木造りの軍荼利明王像(重要文化財)などがあり、冬至のタイミングで一般人も拝観できるイベントがあるそうです。



高山不動の寺院は素晴らしく、歴史を感じさせる重厚な建築が山の中にドンっと現れます。境内を見て回っていると……赤いおみくじがあるので引いてしまいました。結果はそれなりに良し。


高山不動の境内からは西に秩父の山々が見えます。三月と言えども標高が高い場所には雪が積もっているようでした。
関八州見晴台から越生梅林を目指して






高山不動から山道を登っていくと関八州見晴台入り口と書かれた石碑がある場所へ。関八州見晴台は高山不動の奥の院ということでお寺が管理しているのかな。



関八州見晴台っていうのは相模、武蔵、安房、上総、下総、常陸、上野、下野の関東にあった八つの国(行政区分)のことです。そんなに見えるのかと思うけど、眺望がいいということを言いたいんでしょう。実際安房以外は全部見えそうだけど。


石碑がある場所から先は、柴刈りが出来そうな細い木々が道の両脇に延々と広がる景色が広がります。




午前10時30分、関八州見晴台。
入り口からほどなくして高山不動の奥の院がある関八州見晴台山頂へ到着しました。こんなにたくさんの登山者が居ますが、どこから登ってきたんだろう……?
ちなみに眺望ですが、それなりに良いのですが木々が育っていて八州全部見えるかな??というと結構微妙な感じ、山頂は人も多いので先に進むことにしました。



関八州見晴台は越生の10名山として扱われています。越生梅林に合わせて登るのがいいのかなぁ。


関八州見晴台から飯盛峠へ移動する際に見つけたのが驚きの草ヒロ(捨てられた廃車)。
周りに道が無い……、多分昔は道があったのかもしれないけど、それでもなんでこんなところに置かれているのかわからない。山にはこういうものが良くある。



ミステリーだけど、きっとこの車がここに捨てられるまでにはかなり切羽詰まったドラマがあったのでは、と想像してしまう。


関八州見晴台から一度林道……というか奥武蔵グリーンラインに降り立ち飯盛峠を目指します。
この奥武蔵グリーンラインですが、見た目とは裏腹にアメリカンバイクの集団が通って行ったり、スポーツカーが走って行ったりとにぎやかな道になります。



真ん中歩いていたら普通に轢かれる可能性が高いから注意しないとやべー道です。


林道を進むと飯盛峠が現れますので、ここから登山道へ再突入。


午前11時30分、野末張見晴台。
飯盛峠から登山道へ入るとすぐに野末張見晴台という関八州見晴台よりも静かだし景色がいい場所がやってきます。
メジャーになることで登山者のオーバーツーリズムが発生している関八州見晴台よりも、こちらの静かな見晴台のほうが全然いい所。



不思議な磐座が鎮座していたり、景色は西側以外綺麗に見渡せたりと良い場所ですよこれ。


野末張見晴台からは北側の眺望がよく、群馬、栃木、茨城といった北関東方面の山並みを見渡すことが出来ます。


野末張見晴台から少し降りると……案内板ありすぎで初心者を迷わせる気満々の場所がやってきます。
向かうべきは羽賀山ということで、画面中央の少し左にある看板に従って進みます。



ちなみに複雑に見えるけど、野末張見晴台方面(西)、アジサイ山公園方面(北)、羽賀山方面(東)、ヤマザクラ山方面(南)という4つの場所へ行ける交差点と覚えておけばオッケー


登山道が交差する看板ポイントは重機が入り道路工事をする真っただ中。


野末張見晴台から大平尾根を東へと進むと羽賀山へ到着。眺望なし、杉林の中のひっそりとした山頂です。


羽賀山を歩いていて驚いたけど、磐座を思わせる巨岩がとても多いのです。杉林の中に白肌の岩が露出し、場所によっては巨大な磐座が地面に寝そべっている。


薄暗い杉林の中、木漏れ日が白い岩肌を照らしそこがぼわっと浮かび上がります。古来縄文文化から弥生、現代まで通して山は恵みと死が表裏一体の山中他界であり、神霊はこうした磐座に降り立つという信仰も……。
場所によっては名前がついていたりする、現在でも山を歩いていると名前はない場所だけど、何者かの存在や視線を感じる瞬間というのを経験した登山者もいるんじゃないでしょうか。


杉と岩の森を抜けて雑木林へ降りてくると下山となります。


午後12時25分、羽賀山登山口。
登山口に降りたら出迎えてくれたのは草ヒロ、奥武蔵はなんでこんなに廃車が多いんだろう。山奥で育ったやんちゃさんが若いころに車に入れ込んで、ある時期にめんどくさくなってパーツ取りの車を放置した、そんなことを思わせる。
梅の香りと酒を楽しむ越生梅林


山奥の農道を越生梅林に向かって歩いていると、梅の香りが漂ってきました……。すぐに目の前に満開の梅が現れます。街道沿いに植えられた梅はどれも満開。


バイクが来たー、バイクが停まったー、撮影!みたいな感じで道行く車やバイク、観光客が梅の花を写真に収めていきます。


午後1時00分、越生梅林。
羽賀山登山口から30分以上歩きましたが、ようやく越生梅林に到着しました。聞いていたよりは小さいけども、梅の花が農地一帯に植えられていて梅の産地らしい景色が広がっています。


梅が植えられた農地のど真ん中を歩いていくので、梅の花の撮影はし放題。


名勝越生梅林と書かれた看板がある付近ですが、梅林をきれいに楽しむなら少し高いところからじゃないと難しいかも。




越生梅林入り口と書かれた門から中へ入ると観光客向けのステージやミニSLなどがありました。ステージではちょうどおじいさんバンドが演奏準備をしていて、子連れの方々やおじいちゃんおばあちゃんが軽食片手に談笑を楽しみます。
ミニSLは親子連れに大人気、実際に石炭を燃やして走っているのか煙を上げながら走っていました。


梅の花に目を奪われがちですが、足元に目を向けるとフクジュソウが満開。黄色い太陽のような花を空に向けています。




梅林の景色を楽しんだら本日の本番、メインディッシュと言ってもいいでしょう。
越生梅林のすぐそばにある酒蔵、佐藤酒造さんへ向かいます。すると梅まつりに合わせて期間限定のお酒の販売や、店頭では越生梅林の山廃純米酒の樽酒が販売されています。
紙コップに波々と注がれた日本酒、一杯500円ということで別に安くはないんだけども……2杯も飲めば千鳥足になること間違いなし。



紙コップ一杯で約200ml、四号瓶が720mlなわけで。山廃純米酒の四号瓶が1,700円程度と考えると良心的値段だなと思う。ていうか紙コップいっぱいの日本酒を2杯いただいてしまったんですが、完全に出来上がってしまいました。うぃ~、気持ちいぃ~……


佐藤酒造でお土産の日本酒を二本購入。その後、山廃日本酒を2杯も飲んでしまい……気分が良いまま次の目的地を目指します。越生に来たなら絶対に訪れたいお店……それは!







がーん!完売でお店しまってるぅううううッ!!!!
越生で訪れたいコッペパンのお店、和こっぺさんですが大人気すぎて到着時には売り切れになっていました。和こっぺさんはSNSでずっと見ているのですが、毎日凄い美味しそうなサンドを作っていて、いつかハイキングで訪れたいと思っていたのですが……残念。ハイカーというよりも自転車系の方々に人気のお店らしいです。






和こっぺさんでご飯を買おうと思っていたのに残念……、家に帰ってご飯を食べようと切り替えて越生駅を目指します。道中歩いていると酒を飲んで見えるものの色がおかしくなっちまったのか?と自分の目を疑うような光景が。
ここは越生のワンダーランド旧越生酒造の敷地ですが、ロケットニュースなどでも取り上げられるB級観光地。
敷地内にはどこから持ってきたんだよ……と思うような置物が大量に展示されています。



このピンクの裸婦像とか一体何なんだよ……。


最後の最後でとんでもない観光地が出現した越生でしたが、無事に駅に到着。日本酒がいい感じに回っていたおかげで、電車内ではぐっすりと眠りについて帰路につくことができましたとさ。


さて、今回購入した関八州見晴台~越生梅林ハイキングのお土産はこちらになります。越生は毛呂のゆずも特産品として置いてあるので、ゆず七味、ゆず胡椒は買っておいて損はありません。香りがよいゆずの調味料、冬の時期の鍋なんかでは力を発揮してくれます。
お酒は越生梅林の生原酒、こちらは美味しくないはずがありません。アルコール度数高めのガツンと来るお酒をぜひお楽しみください。



そして注目したいのは3月3日にぴったりの桃色にごり酒!甘酒のような風味でありながらしっかりとお酒の味がするこの一品が今回の目玉でした。


生原酒が美味しいのはわかっています、ひな祭りということでちょっと豪華なご飯を楽しんだのですが、タコの刺身などと合わせると口に含む空気すら美味しく感じるお酒です。それに対してピンク色のにごり酒ですが、口に含むと甘い、滅茶苦茶甘い!!けど甘酒特有の臭みなどは全くなく、すごく甘い日本酒といった感じ。
子供たちを祝いにやってきていた義父母に大好評であっという間になくなってしまいました……。



乾物に合わせて飲むと美味しかったお酒です。乾物を噛み締めて出てきた出汁の味を感じた直後にお酒をスーッと飲むと甘じょっぱい感じになって良い……。砂糖醤油で味付けした焼き餅とか合うんじゃないかなぁ。





関八州見晴台と越生梅林を訪れたのは3月3日ということで、帰宅後はひな祭りのお祝いをしましたとさ。
この時のために佐藤酒造さんで甘酒のようなピンクの新酒を買っておいて本当に良かったなぁ……。


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