【北アルプス】雪倉岳、白馬岳頂上宿舎から朝日小屋を目指す夏山登山

雪倉岳から白馬岳を眺める

2023年8月10日から12日まで、北アルプス白馬岳と朝日岳を巡る周回縦走を楽しく歩いてきました。
当記事は2日目となる8月11日、白馬岳を出発して今回の本命である雪倉岳を目指します。雪倉岳へ登った後は水平道に広がる湿原地帯を抜けて朝日小屋を目指します。
白馬岳という北アルプス随一の人気スポットを出発しますが、栂池へ向かう登山道から一歩雪倉岳方面へ踏み出せば白砂を踏む自分の足音だけがじゃりじゃりと響き渡る静かな山歩きが始まります。
花の百名山に選ばれている雪倉岳は8月時点ではタカネマツムシソウやイブキノトラオの群生が素晴らしく、白砂の大地と咲き誇る花道を歩くのは至福の時間でした。
花咲く雪倉岳を越えた後は朝日小屋まで思ったよりもだいぶ長い道のりを歩くことになるのですが、そこに広がっていたのは東北や上信越エリアの山を想起させる穏やかな高層湿原地帯。厳つい岩場や長大な稜線が特徴的なアルプス的景色ではなく、草紅葉を待つ湿原地帯に通る一本の木道、池塘脇に咲くニッコウキスゲやアヤメの花といった優しい景色が登山者を迎えてくれます。
朝日小屋では日本海と白馬の山々の大展望の中で悠々自適なビールタイムを過ごし、海に沈む真っ赤な夕日を堪能します。
朝日小屋を目指して時間に縛られることなくただ山を歩き続ける、すべてから解放された登山二日目をお楽しみください。

redsugar

公共交通機関の時刻を気にする必要もない。帰りの時間を気にしなくてもいい。歩くことに集中するだけでいい、電波も無くてデジタルデトックスできる、そんな二日目が一番楽しかったです。

目次

白馬雪倉朝日周回縦走の概要

■概要
登山二日目は白馬岳頂上宿舎を出発し朝日小屋を目指します。ご来光を楽しんだ後15時までに小屋につけば良いと考えるとだいぶ余裕のある1日です。序文でも書きましたが帰るわけではないのでバス時刻などを気にしなくてもいい、景色を楽しんで歩くことに全力でコミットできるのがこの二日目の良い所。

雪倉岳までは白馬岳の延長の気分で歩くことが出来ますが、雪倉岳から朝日岳までの区間は道のバリエーションが豊かなことと、意外に長くて水の消費が気になるなぁという特徴がありました。
よく考えれば雪倉岳から朝日小屋までは片道約4時間ほどかかる長丁場、白馬岳から考えると一日の工程は8時間に及ぶロングコースを歩くんだから、水は多めで問題ないよなぁと。
水平道分岐地点で朝日岳経由で朝日小屋を目指すことも可能ですが、コースが意外に長いので殆どの人が水平道で直接朝日小屋を目指すのではないかなと思います。最終日に朝日岳でご来光を拝める状況であれば、Redsugar的には二日目は無理せず水平道を歩くのが無難と判断。だって分岐についた時点で結構疲れてるからね。

■コースタイム一日目
八方バス停5:50→猿倉6:30→大雪渓入口7:40→避難小屋10:30→頂上宿舎11:30-12:40→山頂13:30→白馬山荘14:00→夕日観察18:00-18:50
合計登山時間 約5時間、猿倉からテント場までは片道5時間、それ以降は計算に入れてません。

■コースタイム二日目
起床3:00→白馬山荘にてご来光4:50-5:40→スカイプラザ5:50→白馬岳山頂6:30→雪倉岳避難小屋8:30→雪倉岳山頂9:40→ツバメ岩11:10→水平道分岐12:00→朝日小屋13:20→夕日鑑賞18:00-18:50
合計登山時間 約8時間、白馬岳から朝日岳小屋は確かに遠い。

■コースタイム三日目
起床2:50→山荘出発4:20→朝日岳山頂5:20→吹上のコル6:10→五輪高原水場7:55→白高地沢出合8:55→兵馬の平10:25→蓮華温泉11:10
合計登山時間 約7時間、五輪尾根の最後の登り返しはうんざりするなぁ……。

一日目の記事はこちら

三日目の記事はこちら

白馬岳、暁の絶景で始まる一日

2023年8月11日午前3時00分、起床。

redsugar

おはようございます……、超寒い……。Redsugarでございます……。
ダウンハガー#7はやっぱりだめだ……さすがに寒いわ……。

白馬雪倉朝日岳周回縦走で一番楽しい一日であろう二日目の朝がやってきました。本日は本命の雪倉岳山頂を楽しんだ後は朝日小屋でのんびり過ごす予定となります。しかし、山の中に泊まる二日目ということはそれ以外にも楽しいイベントが盛りだくさん……「ご来光」とかね?
白馬岳のご来光は「約束されたいい景色」を楽しむことができるため、晴れの日は絶対に見たほうがいいイベントです。というわけで早朝3時に起き、ナマケモノみたいに動きが鈍い体を何とか動かして白湯を作っていたわけです。

redsugar

朝は白湯が染みるよ……、いきなり重いもの食べれないもん。

夜明けの白馬杓子岳と白馬鑓ヶ岳

ご来光の時間は4時50分くらい、地平線が明るくなるにつれて空が紫色に染まっていきます。昼と夜のはざまの時間にだけ見ることができる紫色の空、人によってその存在すら知らないこともあるんじゃないだろうか?
僕も登山を始めて、ご来光を何度も見るうちに様々な空の色を知りましたから……。

早朝の白馬山荘

早起きしたのは理由があって、頂上宿舎から山頂までは空身でも片道30分はかかったりします。往復する労力を払うのは馬鹿らしいのでテントを撤収し縦走開始状態でご来光を見たかったのです。
というわけで白馬山荘までやってくるとすでに早朝の賑わい。すでに歩く気満々の登山者と歯を磨きながらサンダルで歩き回る人など朝の喧騒が広がっていました。

白馬山荘からみるご来光

午前4時50分、ご来光。
白馬岳で見るご来光はどの位置で見るのがよいのだろうか?前回白馬岳山頂からご来光時に撮影していた写真をもとに考えていたのですが、写真を撮る上で一番良いのは白馬山荘の端っこ付近ではないかというのが僕の答えでした。

redsugar

山頂からご来光を見たときに、白馬杓子岳や白馬鑓ヶ岳方面を撮影しようとするとどうしても白馬山荘の屋根がダサい形で入ってしまう。であれば白馬山荘の位置から撮影すればいいのでは?と考えたわけさ。

山荘からみる白馬の夜明け

というわけで山頂まで登る必要がなくなったので、白馬山荘に荷物を置きながらブラブラしながらご来光鑑賞。狙いはばっちりで白馬鑓ヶ岳方面を見ると頂上宿舎も入らない感じで撮影ができた。
さらにさらに、人が少ないのが最高に良い!!!山頂は人でごった返してるんだけど小屋の横は、「通り過ぎる人」か「まだ部屋で寝たいのかご来光を見てすぐに部屋に戻るような人」ばかりですっごい静かにご来光を楽しむことができましたよ……。

redsugar

やっぱり静かな山がいい。

夜明けの稜線

初日に歩いたお花畑上部の巨岩たちに真っ赤な光が当たる。その奥には先っぽだけ赤く染まる立山連峰の山々。

杓子岳の山肌

白馬岳は三山の景色がそもそも秀逸なため、光がどう変わろうともいい景色という良さがある。白馬杓子岳の山肌を見ていても、アイスピックでがりがりと削ったような複雑な山肌が、朝の光の下だと不思議とかっこよく見えてしまう。

山頂のシルエット

小屋から少し歩いて山頂方面へと続く白砂の稜線を歩いてみる。山頂の人だかりと、盛んな往来がシルエットになって浮かび上がってきた。

影富士となる白馬岳

日本海側を見てみれば影白馬岳が水平線の向こうへと伸びている。距離にしていったいどれほど??

夜明けの稜線を歩く人々

小屋から少し上ったところで振り返ってみる。はるか南にある槍ヶ岳や乗鞍まで見えるのだから素晴らしい天気。山荘よりも上に上がってしまうと白馬杓子岳の山肌が見えず、どうも締まりのない景色が見えてしまうので、やっぱりご来光の時間は小屋にいるのが一番な気がするなぁ……。

朝を待つ白馬の町

白馬岳から麓の町を見下ろしてみると……雲海などはできておらず。本日は天候的には雲に悩まされる心配はあまりなさそうですね。入山時にお世話になった長野県ですが、下山は新潟県側へ向かうのでこれで見納めな景色です。

黄金色の朝日

白馬岳から見るご来光。北信五岳の向こう側から登ってくる太陽の下には右から高妻山、妙高山、火打山、新潟焼山と名だたる名山がシルエットで浮かび上がります。個人的に一番気になるのは登ったことがない新潟焼山。お勧めは妙高山かなぁ……。

redsugar

どの山も楽しいけど、ツバメ温泉でふやけるまで湯につかってられる妙高がやっぱり好きかな。

白馬岳の目覚め

朝焼けの時間は終わり、午前の山へと雰囲気が変わりつつある白馬岳。小屋に降りて荷物を回収して縦走登山開始と行きたいと思います。しかし、この景色を見ていると三山縦走で白馬鑓温泉に入って帰りたくなるなぁ……。

朝日に浮かぶ山肌の輪郭

朝の黄金色の光に照らされる白馬岳東面の急峻な斜面ですが、スプーンカットされた雪みたいに岩肌が抉られていて複雑な模様になっていますね、それがとても魅力的です。

早朝の白馬稜線

再び小屋まで降りてきましたが……、やっぱり小屋から見る白馬鑓と白馬杓子が一番かっこいい。唐松に向けて稜線を歩く日はやってくるのでしょうか。

白馬山頂から眺める立山方面

立山連峰は今日も快晴。さらに後ろには白山もばっちり見えてます、登山日和とはまさにこのこと。8月の1週目は「夏一番の登山日和」となる確率が高いので、1年間苦労してこの日付を死守しています。
立山を眺めながら時計を見てみたのですが……、まだ6時前なんだよなぁ。

その時、スカイラウンジが開店したらしく、店内からコーヒーの香りが漂ってきたんですね。

スカイラウンジで楽しむコーヒー

午前5時50分、コーヒーブレイク。
気が付いたらスカイラウンジでコーヒーを嗜んでいました。エスプレッソマシンで入れたコーヒー片手に早朝の立山、白馬三山を眺める贅沢感はヤバいです。もし富豪になったなら、高層マンションで朝の都市を見下ろしながらコーヒーを飲むのではなく、シーズン中1部屋借りて小屋に住み込み、晴れの日は毎日この一杯を楽しみたいと思わせてくれる程度には「山の贅沢」を楽しめるコーヒーでした。

redsugar

アルミカップに入れたインスタントコーヒーとはまた違う雰囲気が新鮮だったんだよ……。「The アウトドア!」っていう感じじゃなくて「アウトドアを嗜む貴族」感みたいなのがすげぇんだよ、登山の時間を削る贅沢含め、スカイラウンジでコーヒー飲んでごらんよ、贅沢すぎて涙出るかもよ?

雪倉岳へと続く白亜の稜線巡り

快晴の白馬山頂を出発する

午前6時30分、白馬岳山頂。
コーヒーブレイクを終えてスカイラウンジを出たときに思いました、もうこのまま下山しても割と満足ちゃうんかと……。だめだ惑わされている、今日は朝日小屋まで行ってビーフジャーキー食べないといけないんだった。
というわけで白馬岳の山頂まで登ってきました。やっぱりここから南側を振り返るとあれだな……白馬山荘の屋根が邪魔ですね。

硬貨が突き刺さった方位盤

午前7時前くらいの白馬岳山頂はあんまり人がいないので山頂を満喫できます。午前5時くらいにみんな山頂を満喫しているのでこの時間にはもういないんだな。さらに、白馬山荘にいる人はそもそも翌日の工程がどこに行っても長いから7時にはすでに山頂を後にしているってわけだ。
山頂に置かれた方位盤を見てみると割れ目にこれでもかというくらい小銭が詰め込まれている、そんな無理やり詰めなくても……。

栂池を目指す登山者

僕も特に山頂に用があるわけではないので、そのまま栂池へと続く稜線へと向かうことにします。こっちはやっぱり人がたくさん歩いていて、メジャールートっていう感じがするね。

絶壁の白馬旭岳

山頂を少し過ぎた場所から西を振り返るときれいな台形を描く白馬旭岳の姿を拝むことができました。東側斜面の切れ落ち方というか、筒を二つに割った後の断面みたいな絶壁がすごーい。

白馬岳から三国境を目指して降りていきます。快晴すぎる空の下で歩く白馬岳山頂界隈の満足度で顔には笑顔が張り付いたままです……。

稜線から見る雪倉岳方面

白馬岳山頂から三国境は下り40分の工程、歩きやすい道が続くけど景色が最高なんですよ。白馬岳北部の雪倉岳と朝日岳方面は眺めているだけで「歩きたい」という気持ちを掻き立ててくれます。白砂の地面と草原、ハイマツが織りなす景色がどこまでも続いてる巨大な山々、テンションが上がらないわけがない。

雪倉岳へと降り立つ白砂の道

三国境までやってくると小蓮華山へと向かう登山道から離れて雪倉岳へと伸びる白砂の稜線へ足を踏み入れることとなります。雪倉岳方面へ一歩足を踏み出した瞬間は悪魔的な刺激が脳を駆け巡りました、ザクザクと乾いた音を立てる足元、人気の少ない朝日小屋へ向かう縦走路へと降り立ったという事実が高揚感をもたらします。

道端の巨岩と登山者

雪倉岳のピストンをする人は多いようで、軽量装備で白馬山荘から歩いてきた人を結構な数見かけました。この日の白馬からの縦走者は20人もいないくらいでしょう。この道は栂池へとつながるメジャールートに比べれば歩く人がはるかに少ない道。

整備されたような砂利道

三国境からの導入部がすでに楽しい。砂利道って小石で滑って歩きにくいんだけど、こういう堆積した砂利道は足元がふかふかした感じがあって歩きやすいんだよね。ウッドチップの道を歩くかのように快速歩行で下っていける。

redsugar

逆に上りになると一歩上って半歩ずり下がるような感じになるから、地獄になるんだけども。下りで歩く分には最高、富士山の砂走みたいなもんです。

白砂の舗装路

坂道を下りきるとランウェイのような道が雪倉岳へ向かって伸びている。何でここだけ盛り上がってるんだろう、人為的に作られたわけではなさそうだが……、天然のランウェイをモンベルおじさんであるRedsugarが進みます。

redsugar

モンベルのいいところはですね、ギアが一つ壊れてもすぐに同じものが調達できることにあります。あとなんでも修理してくれるし、コストパフォーマンスもいい。モンベラーが通りますよ。

雪倉岳はどれなんだ?と思った人がいるかもしれませんが、写真二枚目の右側の緑色の山が雪倉岳です。左側は鉢ヶ岳で正規の登山ルートはないけど一応登る道はあるといった山です。正規の登山道は鉢ヶ岳の中腹をトラバースする形で作られています。

redsugar

三国境から降り立ったこの写真のポイントが雪倉岳登山最初の絶景ポイント。鉱山道分岐までは歩きやすく素晴らしい景色、お花畑が延々続く、天国ぅ~!?

雪倉岳を目指して鉱山道分岐側にやってくると目立つのがタカネマツムシソウの群生です。白馬岳ではあまり見かけなかった紫の美しい花ですが、雪倉岳周辺では大群生を見せてくれます。群生と白馬旭岳をセットにした景色は見応えがあります。

redsugar

あ、あ、アルプスぅ~!!!っていう感じがする。

鉢ヶ岳

鉱山道分岐点まではこちらの鉢ヶ岳を見ながら歩いていくんですが……、稜線に直登する道があるようで数人の方が山頂へ向かっていました。安全に登るなら雪倉岳避難小屋方面から南下する形で緩やかな尾根を歩いたほうがいいようです。

雪倉岳方面から見る白馬旭岳

白馬旭岳は少し北側から見るとずいぶんと印象が変わる山です。こんなに立派に見える山だとは思わなかった。

タカネマツムシソウと白馬の稜線
redsugar

足元のマツムシソウ群生を合わせて一枚。

雪倉岳の巨大な山容

のんびりとし続けるわけにもいかないので雪倉岳避難小屋を目指します。鉢ヶ岳の山腹に作られたトラバース道をたどって雪倉岳を目指しますが、近づけば近づくほど「デカい」と思わせてくれる山体……。あれを登った後、一回下ってから朝日小屋までまた標高上げるの大変だなぁ。

雪倉岳、牧歌的絶景を魅せる山

午前8時30分、雪倉岳避難小屋。
鉢ヶ岳をトラバースする道は思っていたんと違うっていうくらい長く、雪倉岳避難小屋にはやっとのことで到着といった感じ。驚いたのは避難小屋手前からは黒部方面が開けて見えたことです、北アルプスも雪倉岳くらいに来ると高い山が四方八方にあるといった感じじゃないんだなぁ。タカネマツムシソウは相変わらず群生しています。

redsugar心の声

雪倉岳避難小屋には水はございません。白馬岳から朝日小屋までは長い距離を歩くから水を十分に持って行かないと渇水で死にそうになります。

雪倉岳方面から見る白馬岳の景色

雪倉岳避難小屋で出会った登山者と談笑すると、朝日小屋までの道のりは東北的で素晴らしいのだとか。雪倉岳を降りる場所から世界が変わると言っていたので楽しみですが……雪倉岳の登りですでに世界が変わったくらい素晴らしい景色が広がっています。

redsugar

この白馬岳方面を見た景色はすっげぇよなぁ……。これを見れて本当に良かったと思うわ。

雪倉岳は花の百名山ということですが、僕が訪れた8月初旬はタカネマツムシソウとイブキノトラオがメインでした。チングルマやハクサンイチゲが群生しているときも見てみたいなあ。

北側から見る白馬岳

何度見ても素晴らしい白馬岳方面。ここから見ると白馬旭岳の突き上げるような鋭鋒的な山頂には驚きます。人と同じで山も見る角度で全然印象変わるなぁ……。

雪倉岳から白馬岳を眺める

行きかう登山者の方に写真撮影を頼まれたので快く了承。そしたらお礼に撮影してもらえるとのことで、久々にサムネイルっぽい自撮りをさせてもらいました。

redsugar

ここ数年は三脚を持たない、軽量化に徹する、40㎜で見たものを撮るみたいなスタイルだったので自撮りサムネイルは全然作ってなかったんだよね。

白馬旭岳と白馬岳の景色

雪倉岳山頂から見る白馬岳、白馬旭岳、こちらから見る白馬岳は大雪渓側から登った際に見る姿とは全く違い、穏やかで雄大な雰囲気にあふれていました。切れ落ちた山肌が特徴的なキレた見た目じゃない。

redsugar

なんていうか、北海道っぽさがあるよな……。

午前9時40分、雪倉岳山頂。
雪倉岳山頂では家族連れっぽい方々が食事中、聞けば栂池に下山する前に雪倉岳に登りに来たらしい。意外に時間がかかる工程、小学生の子供たちがんばれ!という気持ちになりましたわ。

redsugar

立派な石碑が特徴的な雪倉岳。ただ景色の良さは山頂より少し下の地点がお勧めかな。山頂が広い雪倉岳は山頂の真ん中の景色があんまりよくないのよ。

白馬岳山麓と池塘

雪倉岳の山頂は想像していたよりもすごい広い。白馬から縦走を行っていた数人の登山者だけが山頂を後にして北を目指す。山頂を出発すると雪倉岳東斜面の先に巨大な池と頸城山塊のシルエット。

redsugar

ここから先が本当に長い道の始まりである。雪倉岳は山体がかなりデカく、道は穏やかだが横に長くとにかく時間がかかる。真夏の酷暑、照り付ける太陽の光が体力を奪い去っていく!ピンチ!!!

朝日岳全容

雪倉岳の北面には巨大な朝日岳の姿が現れるのですが、確かにこれまでの山と違って緑です、圧倒的な緑。
白馬岳方面の白砂の大地は無縁な緑色の巨大な台形が目の前に転がっている。よく見たら写真の左側の小屋が見えるけど……あそこまで行くの?マジで?

雪倉岳から朝日岳へ向かう

雪倉岳北面に作られた登山道は朝日岳との鞍部を目指し緩やかに下っていきます。これがすんげー長いの、長いよ。
水平道っていうあたりから湿原地帯が現れ始めるのですが……それまでは本当に長く膝に来る道を歩くこととなります。

ツバメ岩、湿原地帯の小屋を目指して

午前11時10分、ツバメ岩。
雪倉岳から北に進むこと1時間半ほどでツバメ岩直下までやってきました。白砂の大地が広がる南側に比べると北側は非常に厳しいというか、三俣蓮華岳の巻道を歩かされているような感じでした。ツバメ岩は雪倉岳からも見えていた山の亀裂みたいな場所にあるのですが、崩れた岩が堆積した場所でもあるので長居はしたくない所。

高層湿原と白馬岳方面の稜線

ツバメ岩を越えてからが本日の第二の天国スポットとなります、湿原地帯!!北アルプスにはいくらでもあるでしょ?と思いがちですが、登山してて出会える高層湿原地帯は実はそんなに多くない。パッと思いつくところで栂池、弥陀ヶ原、五色平、太郎平、雲ノ平、烏帽子田圃とか、ルート上で東北のような湿原木道歩きできます!っていうのは嬉しい事でした。

redsugar

いきなり北アルプスから東北の山にやってきたような錯覚。ワタスゲ咲いてるし池塘もあるし牧歌的。

朝日岳の高層湿原

水平道へと向かう途中は写真のような湿原がいくつも存在し、木道の上を小気味よいリズムで進むことが出来ます。雪倉岳を登るときの白砂を踏みしめるじゃりじゃりという音と、木道を歩くコツコツいう音には甲乙つけがたい。

午後12時00分、水平道分岐。
湿原地帯を進み続けると朝日岳山頂を経由するか、水平道を歩いて朝日小屋を直接目指すかという分岐に差し掛かります。1日の始まりでは朝日岳を登ろうと思える元気があった、エレガンスコーヒーを飲んでいるあの時は。
ですが雪倉岳を越えてボロボロになった今はこう思う。

redsugar

いや、普通に水平道一択やろ。何今から登り返すとかいってんの?助走つけてぶん殴って白馬旭岳の斜面に転がすぞ?(憤怒

人とはたった半日でこんなにも人格が変わってしまうのだ……。

草原のニッコウキスゲ

水平道方面はお花畑が広がり苦労とは無縁のような景色が続きます。水平っていうのは名ばかりで最後ちゃんと登らされるんだがな。

朝日岳の岩場

朝日小屋を目指して木道が続く水平道ですが、花畑が終われば鎖場が現れ最後の登り道がスタートします。もうここまで来る頃には早く小屋でテント張って寝たいという気持ちで一杯です。

北ア最北の有人小屋は花の天国

朝日山荘を見上げる

鎖場を超えて朝日岳の中腹をぐるりと回りこむような形で北へと向かいます。ここでようやく朝日小屋の三角屋根が見えるようになりました。朝日小屋がある一帯は草原地帯になっていて見るからに居心地がよさそうです。

redsugar

小屋が見えてからの最後の登りは案の定きつい。一日の最後にやってくる登り坂ほどつらいものはない。

午後1時20分、朝日小屋。
水平道の最後の登りを頑張ると花畑というか湿原地帯に木道がすらりと伸びた天国みてーな場所にたどり着きます。た、助かった……みたいな感じで歩いていくと巨大な三角形の小屋が出現。日本海に面した場所にある朝日岳中腹の小屋……冬場の凄まじい積雪を考慮してこういう形なんでしょうね。
サマーシーズンは小屋の外でテント場受付をしていますので、そちらで2000円をお支払いして受付を済ませます。

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この形だと布団干すの大変そう

とりあえず到着祝いのコーラを開封、山で飲むコーラは最高だ……約250kcalをおいしく摂取出来て一気に元気が出る。テント場を見まわしてみると昨晩の頂上宿舎とは雰囲気がまるで違います。張られているテントの種類が全然違うんですね。写真を見てもらうとビビィで寝るためグラウンドシートの上に日傘で寝ている方もいる。
自立型シェルターってそんなメジャーじゃないと思うんだけど、このテント場ではよく見かけましたね……。

redsugar

ULドームシェルターを設営した後は日没までやることがマジでないので、ビーフジャーキーをかじりながら酒を飲んでのんびりすることにしました。朝日小屋はFMが入ったので、それを聞きながらぼんやり。

朝日小屋の手ぬぐい

朝日小屋はめったに来ることもないだろうから手ぬぐいを購入。渋いピンク色の手ぬぐいの模様は高山植物のお花柄。
今回持ってきた手ぬぐいですが、南アルプス茶臼小屋と光岳小屋とレア手ぬぐい、手ぬぐいは良いですよ~ニヤニヤできますからね。

キャンプ場に咲くアヤメ

ロング缶を飲んだ後も特にやることがない……、酔いも微妙。なので小屋の周りを散歩してみます。
朝日小屋は湿原地帯のど真ん中に建設されていて、テント場周辺はイワウチワやアヤメ、チングルマやハクサンイチゲが群生する高層湿原となっています。おそらく小屋が建設される前はテント場付近もすべて高層湿原だったんでしょう。

黒部方面から雲が沸き上がる朝日小屋は曇ったり晴れたり。小屋の方に聞いてみると、よくあるのは海から雲がやってきて白馬へと向かう、そして夕方になるとその雲が戻ってくるというパターンらしい。

redsugar

雲も出勤通学すんだな。

朝日小屋のライチョウ

小屋前の湿原地帯を眺めていると黒い三連星的なフォーメーションを組んだライチョウ軍団が現れました。雛鳥も三連星の後をついてピヨピヨと草地を歩く姿がかわいい。

高山植物から首を出すライチョウ
redsugar

ライチョウがどこにいるかわかるかなぁ?こう見るとライチョウのカモフラージュってよくできてるなと感心するわ。岩だけじゃなくて草地でもこんなに見えないんだね。

夕日に輝くチングルマの穂

午後6時00分、夕日鑑賞開始。
小屋に到着してから5時間ほどが経過してようやく夕日鑑賞が始まりました。その間ロング缶飲んだし、ライチョウ見たし、翌日の凍ったお寿司を購入したりと色々イベントが発生しました。朝日小屋名物の凍った寿司ですが、僕はすごくおいしかったので次回訪れたときは5個くらい買いたい。
夕日は日本海側ということでテント場から木道を少し歩いたところが鑑賞スポットになります。周囲はチングルマの群生が素晴らしく、斜めの光が穂を明るく照らしてくれています。

朝日岳へ続く木道

朝日小屋から北又小屋コース側に行くと写真のような感じで木道と湿原が広がる場所になります。夕方だけどまだ日は高く、これから1時間ほど傾く陽光で変わりゆく景色を追いかけます。

白馬雪倉岳、朝日岳の午後

テント場からは雪倉岳、白馬岳、白馬旭岳の三座を眺めることができます。朝日小屋から見ると一番でけぇのは雪倉岳です、北側から見ると「あんな形してたっけ?」という気持ちになること間違いありません。なんか歩いた時の印象と随分違って見えるんだよな……。

朝日小屋の朝日神社

朝日小屋のわきには朝日神社の社がありますが、夕日の時間になると光を受けて浮かび上がる社。山開きの際に神社開きの神事が執り行われ、日本酒や魚の干物といったものが捧げられるようです。見た感じ直会として神人共食となるお供えなんじゃないかな。

redsugar

山の恵みである水に育まれた米からできた日本酒。山あてを感じさせる海の幸。山幸海幸の古来からの風習を感じさせて良い儀式だと思う。

真っ赤な夕日とチングルマの穂

午後6時50分、夕日鑑賞終了。
傾く夕日を追いかけて小屋の前と木道を右往左往していましたが、それも終わりのようです……日本海に日が沈む。
今回の登山では二回も夕日を拝めてラッキー、しかも二日目は海に沈む夕日を山の上から見るなんて言う贅沢。
日本海に面した小屋は一日の終わりの景色が素敵でいいよね。

日本海に沈む夕日

ガスが黙々と沸き上がる中、日本海に沈む夕日を眺める登山者たちはブヨと必死に格闘していました。ハッカスプレーで防御した僕ですらブヨがうざかったくらいなので、虫よけなかった人たちは本当につらかったんじゃないだろうか。
二日目の夕日は素晴らしい景色でしたが、ブヨとの戦いの記憶が濃ゆい。
テント場に戻った後は即就寝、最終日三日目の朝日岳から五輪尾根を下って蓮華温泉を目指します。早く温泉で洗体してきれいさっぱり生まれ変わりてぇ……っ!!

redsugar

次回!白馬雪倉朝日最終回!!蓮華温泉を目指す地獄の五輪尾根!滑ると即死、恐怖の朝露!Redsugar五輪尾根に沈む!の巻。絶対に見てくれよな!!

雪倉岳から白馬岳を眺める

白馬岳の次は雪倉岳、夏場に超お勧めな北ア北部の名コース!
圧倒的名コース、この登山の直前に歩いた表銀座縦走がちょっとぬるく感じるような圧倒的な景色が転がっている北アルプス屈指の名コースでした。白馬岳~雪倉岳の間は歩いていて脳から不思議な物質が常に漏れ出ているのではないか?と錯覚するくらい高揚感をもたらせてくれます。
栂池と白馬岳の喜びを知ってしまったあなた、次は雪倉岳を歩くことをお勧めします、山の喜びがより深くなりますよ……ッ!!
さて、雪倉岳から先は中々難しい、クソ暑い真夏に歩いたからという理由もありますが、結構大変な道でした。でも朝日小屋まで来ると北アルプスっぽくない雰囲気があって、それはそれで良いのです。
日本海を眺めながら夜を待てる小屋、テント場って贅沢だし、独特の雰囲気があるよなぁ~……、どことなく鳥海山の夜を思い起こさせる朝日小屋、押し寿司おいしいし、五輪尾根は楽しいので体力に自信がある方や若い方にはお勧めです。次回は五輪尾根かぁ……滑るんだよなぁ。
人生最高の山は続く。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • こんにちは。
    白馬〜雪倉〜朝日の記事を楽しみにしていました。
    雪倉からの白馬方面は本当に最高ですね。
    実は僕、この記事の数日前に逆ルート(蓮華温泉〜朝日〜雪倉〜三国境〜白馬大池〜蓮華温泉)で歩きました。
    その時は高曇りでしたが、雪倉に登頂した時の白馬方面の稜線と景色に大興奮したのは今でもよく覚えています。
    紅葉の時期もめっちゃ良さそうなので、季節を変えて歩いてみたいですね。

    • ろっぴ様
      毎度ご覧いただきありがとうございます
      逆ルートはすごいですね、五輪尾根で最初に標高を投げ捨ててから登っていくのは相当骨が折れそうでビビっていました。
      蓮華温泉周回だと、下山後に心行くまで風呂が楽しめそうでいいですねぇ……。
      このコースは秋もよさそうですよね、僕もぜひ赤と黄色が映える紅葉に歩いてみたいと思いました!

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